JR東海371系電車
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371系電車(371けいでんしゃ)は、東海旅客鉄道(JR東海)の直流特急形車両。
1991年(平成3年)3月16日に営業運転を開始した。1991年度グッドデザイン賞を受賞。
7両編成1本(7両)のみが新製された。製造は、日本車輌製造、川崎重工業、日立製作所の3社が担当している。
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[編集] 登場の経緯
小田急電鉄は、3000形「SSE」を使用した、JR東海御殿場線に乗入れる連絡急行「あさぎり」を新宿~御殿場間に運行していたが、使用車両の老朽化にともない、1991年3月のダイヤ改正において「あさぎり」を特急に格上げし、運転区間を新宿~沼津間に拡大するとともに小田急、JR東海の共同運行とすることになった。そのためにJR東海が新製したのが371系である。同時に小田急が新製した20000形「RSE」とは、走行性能や定員等の基本仕様は合わせられているが、具体的な設計についてはそれぞれに任されたため、両社の設計思想の違いが明確に打ち出されており、興味深いものがある。 2006年10月~11月の全般検査でパンタグラフが菱形からシングルアーム型に変更されている。
[編集] 編成・車体
中間に2階建てのグリーン車(普通席との合造)2両を組み込んだ7両編成で、下り(沼津)方の1号車からクモハ371形101(Mc1) - モハ370形101(M'1) - サロハ371形101(Tsd1) - サロハ371形1(Tsd) - モハ371形201(M2) - モハ370形1(M') - クモハ371形1(Mc)である。
車体は、JR東海が新製した在来線用特急用車両で唯一普通鋼製であるが、同社の標準であるワイドビュー仕様で、座席の肘掛けレベルまで拡大された連続窓が特徴的である。前頭部は、大形の曲面ガラスを使用し、スカート(排障器)まで一体化した三次曲面による流線型で、2階建て車においては、2階から1階までを一体に繋いだ超大型の曲面ガラスを使用した大胆な構成となっている。100系を意識して設計されたといわれ、車体塗色や、内装は東海道新幹線と同様としている。
[編集] 形式紹介
1編成しかないため、各形式(番台)とも1両ずつのみの存在である。2002年に連結面間の転落防止幌の設置が行われている。なお、パンタグラフはこれまで菱型式が採用されていたが、2006年秋に実施された全般検査によりシングルアーム式に変更された。
[編集] クモハ371形
[編集] 0番台
制御電動車で7号車。禁煙車である。モハ370とユニットを組む。パンタグラフ付き。座席数は60席。
[編集] 100番台
制御電動車で1号車。禁煙車である。向きは0番台と逆であり、モハ370-100とユニットを組む。基本的に0番台と同じ。
[編集] モハ370形
[編集] 0番台
中間電動車で6号車。喫煙車である(「あさぎり」の場合。ホームライナーでは全ての車両が禁煙車となる)。クモハ371-1とユニットを組む。和式トイレと男性専用トイレ・洗面所が設置されている。座席数は60席。
[編集] 100番台
中間電動車で2号車。禁煙車である。向きは0番台と逆であり、クモハ371-101とユニットを組む。設備は車椅子対応車で、車椅子対応の洋式トイレと男性専用トイレ・洗面所が設置されている。2004年に、一番新宿寄りの座席が車椅子対応の1人掛け席に交換されており、0番台より座席数が2席少ない。
[編集] モハ371形 200番台
中間電動車で5号車。喫煙車である。パンタグラフ付き。インバーター方式の補助電源がある。座席数は68席。
[編集] サロハ371形
[編集] 0番台
2階がグリーン車、1階が普通車構造のダブルデッカー式の付随車で4号車。喫煙車である。売店とカード式の電話が設置されている。小田急20000形との相違点が一番多いのが本車両で、階下普通席が、小田急20000形では4人向い合せのセミコンパートメント席が3区画(12席)となっているのに対し、本車両では1+2配列のリクライニングシート18席となっている。グリーン席の設備には読書灯、スポット空調吹出口、オーディオコントロールパネル、係員呼び出しボタンがある。かつては衛星放送等を放送するサービスが行われていたが、すでに廃止され、液晶モニタも撤去されている。
[編集] 100番台
2階がグリーン車、1階が普通車構造のダブルデッカー式の付随車で3号車。禁煙車である。車両の向きは0番台と逆であるが、座席の配列は0番台とともに海側が1人掛け席である。3号車-4号車間は2階フロアレベルでの移動となり、階下席の奥は行き止まりになっている。突き当たりは非常用の避難口になっていて、ホームレベルで外に出られる緊急用扉が0番台とともに海側に設けられている。そのため2階客席に避難口のスペースが出っ張ってしまい、海側1人掛け席が1席少なくなっている。階下席のみ、座席間隔が他の普通車と異なり1100mm(他車は1000mm)で、側窓の日除けも横引きプリーツカーテンでなくフリーストップ式のロールカーテンになっている。
[編集] 性能
制御方式は、当時新製されていた近郊形の211系5000・6000番台、213系5000番台、311系に準じた界磁添加励磁制御で、最高運転速度は120km/hである。メインで運転をする静岡支社内は最高速度が110km/hのため、性能には余裕のある運転となる。311系と同様、クモハ371形とモハ370形でユニットを組んでいるが、モハ371形は213系に準じた1M車で編成中の電動車は5両となっている。これにより、御殿場線内の急勾配(25‰)においても100km/hを発揮し、33‰勾配で1ユニットをカットした状態で起動可能な性能を確保している。歯車比が4.21なのは小田急20000形に仕様を合わせたためであるが、165系等の急行形電車が採用していた数値であるのは御殿場線の線形も影響している事からであろう。
ブレーキは回生ブレーキ併用の電気指令式空気ブレーキで、JR東海の車両としては初めて運転台のマスターコントローラーにワンハンドル式を採用している。小田急電鉄の方式に合わせているため、JR東海では唯一右手でマスターコントローラーを扱う車両であり、乗務に当たっては指導操縦者と共に最低一度は見習として乗務が必要となる。
保安設備はJR東海用のATS-STと小田急用のOM-ATSを搭載する。
[編集] 運用
371系の運用は次の通り。但し、1編成のみであることから、検査時等は「あさぎり」は小田急20000形が、ホームライナーは373系または料金不要の快速列車に振り替えて313系や211系が代走するが、最近では、代走日が1日のみの時は、ホームライナー沼津2号に使用後に静岡車両区へ戻して検査を実施し、終了後の夜に三島へ回送してホームライナー浜松3号から運用に復帰というパターンとなっている。なお、ホームライナーではサロハ(2階グリーン席・1階普通席)の2階グリーン席は通路扱いで着席はできない(1階は着席可能)。
- 平日
- ホームライナー沼津2号~あさぎり2号~あさぎり3号~あさぎり6号~あさぎり7号~ホームライナー浜松3号~ホームライナー静岡4号
- 休日
- ホームライナー沼津2号~あさぎり2号~あさぎり3号~あさぎり6号~あさぎり7号~ホームライナー静岡3号
- なお、ホームライナー浜松3号(土休日は静岡3号)は三島始発のため、あさぎり7号の沼津到着後に、三島まで回送列車が運転されている。
- 車掌の担当
- あさぎり号のJR線内は全て沼津運輸区が担当。ホームライナーは静岡運輸区が編成後部とドア扱いを担当し、編成前部は浜松運輸区が担当している。
[編集] 関連商品
2005年12月13日にマイクロエースがNゲージ鉄道模型として発売した。
[編集] 関連項目
- JR東海の在来線車両 (■国鉄引継車を含む全一覧 / ■カテゴリ) ■Template ■ノート
- 小田急ロマンスカー
[編集] 外部リンク
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