ニュージーランド
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- ニュージーランド
- New Zealand (英語)
Aotearoa (マオリ語) -
(国旗) 国章 - 国の標語 : なし ¹
- 国歌 : 神よニュージーランドを守り給え
-
公用語 英語、マオリ語、ニュージーランド手話 首都 ウェリントン 最大の都市 オークランド 元首 エリザベス2世 総督
首相アナンド・サティアナンド
ヘレン・クラーク面積
- 総計
- 水面積率世界第73位
268,680km²
極僅か人口
- 総計(2004年)
- 人口密度世界第120位
3,993,817人
15人/km²GDP(自国通貨表示)
- 合計(2005年)
1,531億ニュージーランド・ドルGDP(MER)
- 合計(2005年)世界第43位
1,076億ドルGDP(PPP)
- 合計(2003年)
- 1人当り世界第56位
852億6,000万ドル
21,600ドル独立
- 日付イギリスより
1907年9月26日通貨 ニュージーランド・ドル (NZD) 時間帯 UTC +12 ²(DST: +13) ccTLD .NZ 国際電話番号 64 - 註1 : かつての標語は、"Onward"。
註2 : チャタム諸島は、ニュージーランド本土よりも45分進んでいる。
註3 :女王や総督が臨席する場合には女王陛下万歳を唄う
ニュージーランドは、南西太平洋の島国。2つの主要な島と、多くの小さな島々からなる。北西に2,000km離れてオーストラリア大陸と対する。南方の南極大陸とは2600 km離れている。北はトンガ、ニューカレドニア、フィジーがある。イギリス連邦加盟国。
目次 |
[編集] 国名
正式名称は、New Zealand (英語: ニュージーランド)、Aotearoa (マオリ語: アオテアロア)。略称は、NZ。
日本語の表記は、ニュー・ジーランド。漢字による表記は、新西蘭であり、略称は、新。
New Zealandという国名の由来は、歴史を参照。また、マオリ語のアオテアロアは、「白く長い雲のたなびく地」という意味("ao"=「雲」、"tea"=「白」、"roa"=「長い」)で、元々は、北島のみを指す語であった。かつては、ニュージーランド全体を指すマオリ語としては、英語の New Zealand を マオリ語訳した Niu Tireni が使われていた。
[編集] 歴史
[編集] ポリネシア人開拓者
9世紀頃、ポリネシア人開拓者が島々にやってきていて、彼らの子孫は マオリ人と呼ばれる。また、ニュージーランドの東に位置するチャタム諸島に行った子孫はモリオリ人と呼ばれている。モリオリ人がチャタム諸島に、ニュージーランドを経由して来たのか、他のポリネシア地域から直接渡ったのかは今でも議論がある一方、言語学的には証明がなされている(Clark, 1994, AUP ; 下部"文献"参照。)マオリ人はニュージーランド北南島(特に北島)を「アオテアロア」(長い白い雲の土地)と呼んでいた。
最初の居住者はモアというダチョウに似た飛べない大きな鳥の狩猟者たちで、モアは15世紀に絶滅した。人間が訪れる前には "harpagornis"(史上最大の猛禽類であり、鷲の仲間で羽を広げると3mあった)がモアを餌にしていたがモアと共に絶滅した。
民族(iwi)の縄張り(rohe)に分かれていた。マオリは海産物、植物、動物、モア、ポリネシアネズミ、サツマイモ(kumara)を食べていた。
[編集] ヨーロッパ探検家
ヨーロッパ人として初めてこれらの島を発見したのは、オランダ人のアベル・タスマンで、1642年12月に Heemskerck号と Zeehaen 号で、南島と北島の西海岸に投錨、マオリとの争いがあった為に西岸をトンガへ北上。 北南島西岸のスケッチをした。 彼は、最初、アントワープ出身の水夫 Jacob Le Maireが1616年に発見したチリの南の土地 だと思い、Staaten Landt("Staten Island") と地図に書いた。1643年に、 Hendrik Brouwer によって改めて調査された後、 そうでないと分かり、オランダの知識人は オランダの地名 Zeeland, ゼーラント州に因み、Nova Zeelandia(New Sealand, 新しい海の土地) とラテン語で名付け、後にオランダ語で Nieuw Zeeland と呼ばれたが、タスマンが訪れてから100年以上後、ジェームズ・クックがエンデバー号で1769-1770年に訪れた時に英語で New Zealand と呼んだ。ジェームズ・クックが " Sea land " と直訳しなかったのは、オランダ語の発音の名残と、デンマークの Zealand, シェラン島(コペンハーゲンがある島)にも因んだと言われる。ジェームズ・クックはその後の第2次・第3次航海でもニュージーランドを訪れた。その時に北島・中島・南島と名付けたが、中島が今の南島に、その時の南島が今のスチュアート島になった。
[編集] ワイタンギ条約以降
1769年、イギリス人ジェームズ・クックが、島全体および周辺の調査を行った。この調査の結果、ヨーロッパ人の捕鯨遠征が始まった。その後イギリスからの移民が始まった。
1830年代前半に、植民地会社が組織されると移民はさらに増加した。 1840年2月6日、イギリスは、先住民族マオリとの間にワイタンギ条約を締結し、イギリス直轄植民地とした。1860年代には、入植者とマオリ族との間で土地所有をめぐって緊張が高まり、1843年と1872年の二度に渡って、戦争が勃発したが、鎮圧された。19世紀後半になると工業化が進んだ。
1907年9月26日、イギリス連邦内の自治領となり、事実上独立した。第一次世界大戦では志願兵によるオーストラリア・ニュージーランド軍団 (ANZAC) を結成してガリポリの戦いに参加し、激戦を経験した。1931年にイギリス議会は、ウェストミンスター憲章を定め、自治領の独立を認めたが、ニュージーランド議会が独立を決断したのは、1947年11月だった。
戦後のニュージーランドはイギリスを主な貿易相手国とする農産物輸出国として発展したが、1970年代にイギリスはECの一員としての結びつきが強まり、ニュージーランドは伝統的農産物市場を失い、オイルショックが追い打ちをかけた。国民党政権は、農業補助政策を維持する一方、鉱工業開発政策を開始したものの、いずれも失敗し、財政状態が悪化した。
1984年、労働党のロンギ党首が政権を取るとともに、「国民の支持が得られなくともやるべきことは断行する」という固い決意のもとに、電撃的な上からの改革が押し進められた。21の国営企業(電信電話、鉄道、航空、発電、国有林、金融など)が民営化され、ほとんどが外国資本に売却された。大学や国立研究所は法人化され、学費は大幅に値上げされた。保護と規制は撤廃され、外資に門戸を開き、許認可を極力なくし、中央の官僚は半減された。ニュージーランドの改革は、新古典派経済学の理論にもっとも忠実に従ったものであり、国家財政の黒字化、経済の発展などの成果を生んだが、一方で貧富の格差の拡大や人材の海外流出が激しくなるなどの弊害も生んだ。このため現在のクラーク労働党政権は、政府による介入を部分的に復活(公営金融機関の復活、ニュージーランド航空への政府の資本参加など)させ、行き過ぎた改革の是正を図っている。
[編集] 参考文献
- Clark, Ross (1994). Moriori and Maori: The Linguistic Evidence. In Sutton, Douglas G. (Ed.) (1994), The Origins of the First New Zealanders. Auckland: Auckland University Press, pp.123-135.
[編集] 政治
政体は立憲君主制。連合王国国王(イギリス国王)が国家元首となる。通常任務時は、連合王国国王により任命されたニュージーランド総督 (Governor-General of New Zealand)が国王の代行を務める。
行政府の長は首相。議会による選出に基づき、総督が任命する。通常は総選挙において議席数を最も多く獲得した政党の党首が選出される。副首相および閣僚は、首相の推薦に基づき、総督が任命する。
議会は一院制で、パーラメント (Parliament) と呼ばれる。定数は121人。任期は3年。小選挙区比例代表併用制により、投票者は小選挙区票と政党票を投じる。投票者は18歳以上のニュージーランド国籍または永住権保有者。小選挙区数は人口分布により変動する。2005年総選挙では、62の選挙区に加え、マオリ市民の議席を保障するために設けられたマオリ選挙区7を加えた、総数69の選挙区が設けられた。2005年総選挙での政党別議席獲得数は、ニュージーランド労働党 50、ニュージーランド国民党 48、ニュージーランド・ファースト党 7、緑の党 6、マオリ党 4、統一未来党 3、ACT党 2、革新党 1。
労働党のヘレン・クラーク党首は、ニュージーランドファースト党・統一未来党・緑の党からの協力を得て、革新党との連立政権を発足させた。中道の統一未来党からは閣外協力を得ている。労働党・革新党の連立政権は、1999年の総選挙で、労働党と旧連合党の中道左派勢力が連立を組んだのがはじまり。労働党は3期連続して政権運営を担当している。
ニュージーランドは、女性の政治的権利を早くから保障してきたことで知られている。1893年に世界で初めて女性参政権を実現させたのはニュージーランドである。2005年3月には女性が初めて議会議長に任命され、2006年8月までの間二人の国家元首(国王、総督)と三権の長(議会議長、首相、主席判事)すべてが女性で占められた。
なおイギリスと同様に、成文憲法を持たないが、1986年制定のConstitution Actが国の基本法となっている。
[編集] 地方行政区分
- オークランド (Auckland)
- ベイ・オブ・プレンティ (Bay of Plenty)
- カンタベリー (Canterbury)
- ギスボーン (Gisborne)
- ホークスベイ (Hawke's Bay)
- マルボロ (Marlborough)
- ネルソン (Nelson)
- ノースランド (Northland)
- オタゴ (Otago)
- サウスランド (Southland)
- タラナキ (Taranaki)
- タスマン (Tasman)
- ワイカト (Waikato)
- マナワツ・ワンガヌイ (Manawatu-Wanganui)
- ウェリントン (Wellington)
- ウェストコースト (West Coast)
- チャタム諸島 (Chatham Islands) - 特別領
以上の他に、海外領土が3カ所ある。なお、本記事中のデータは、これらの領土を含んでいない。
- トケラウ (Tokelau)
[編集] 地理
ニュージーランドは、北島と南島の2つの主要な島と多くの小さな島々で構成される。北島と南島の間には、クック海峡がある。
北島(ノースアイランド)には、首都であるウェリントンがあり、政府機関および行政機関が集中している。また、同国最大の都市であるオークランドは、商業および経済の中心地となっている。オークランドは、オークランド市、マヌカウ市、ワイタケレ市、ノースショア市の4市によって構成されている。オークランドの年間降水日は100日以上で、雨の多い街である。近くの観光名所として、温泉地として有名なロトルア、タウポ、ワイトモ鍾乳洞の土蛍などが有名である。北島は、南島ほど険しい山脈はないが、火山活動が活発である。最高峰は、2797メートルのルアペフ山で、活火山である。
南島(サウスアイランド)は、最も陸地面積の大きな島で、中心都市はクライストチャーチ。島の中央には「南半球のアルプス山脈」と呼ばれる南アルプス山脈がそびえる。最高峰は、3754メートルのクック山(マオリ語ではアオラキ、「雲を貫く」という意味)で、その他に3000メートル以上の峯が18ある。他にもタスマン氷河、サザンアルプス、クック山、ミルフォード・サウンドのような豊かな自然も有名である。クイーンズタウンは世界的に有名な観光・保養地である。温泉地も各地に点在する。
気候はほぼ全土が西岸海洋性気候に入り、夏は涼しく、冬の強烈な寒波も感じない。一年を通して温暖な気候であるが、北島・南島ともに多くのスキー場があり、世界中からスキーヤーが訪れる。南半球の地理的、気候的な条件も好まれ、世界中のスキー連盟およびスキー部の冬季強化合宿地に選ばれている。
[編集] 経済
[編集] 鉱業
ニュージーランドの鉱業は小規模である。有機鉱物資源では、亜炭(20万トン、2002年)、石炭(371万トン)、原油(150万トン)、天然ガス(244千兆ジュール)が採掘されているが、国内需要と比較すると取るに足りない。幸い高低差の大きな地形を生かした水力発電が国内の総発電量の54%を占めているため、有機鉱物資源の輸入量を抑えることに成功している。例えば原油が総輸入額に占める割合は6.0%に過ぎない。
金属鉱物資源では、金(9.8トン)、銀(32トン)、鉄鉱(45万トン)が目立つ。金の採掘はニュージーランドへ移民をひきつけた最初の要因であった。1860年台に金が発見されると、一気にヨーロッパ系の人口が倍増し、主要輸出品目となったほどである。
[編集] 工業
ニュージーランドの工業は、畜産物の加工が主力である。例えば、世界第3位の羊皮生産(10万トン、世界シェア6.3%、2004年時点)、同第4位のバター(47万トン、5.7%)、同第5位の羊肉(51万トン、4.1%)、同第6位の毛糸(2.2万トン、2.1%)などだ。世界シェア1%を超える生産物は他に、チーズ(29万トン、1.6%)、牛肉(72万トン、1.2%)、アルミニウム(95万トン、1.2%)、製材(429万立方m、1.1%)、リン肥料(34万トン、1.0%)がある。アルミニウムは主要産出国(オーストラリア)に近いこと、水力発電が60%を占める豊富な電力を生かしたものだ。
[編集] 貿易
- 輸出品目 - 乳製品、肉、木材・木製品、魚、機械類
- 輸出国 - オーストラリア 20.3%、アメリカ合衆国 15.5%、日本 11.5%、イギリス 4.8%、中華人民共和国 4.6%、大韓民国 4.4% (2002年)
- 輸入品目 - 機械設備、自動車、航空機、石油、エレクトロニクス、織物、プラスチック
- 輸入国 - オーストラリア 22.1%、アメリカ合衆国 13.6%、日本 12%、中華人民共和国 8%、ドイツ 5.2% (2002年)
[編集] 国民
人口の約80%がヨーロッパ系移民の子孫で、パケハ (Pakeha、マオリ語で「よそ者」から白人の意味)と呼ばれている。 次に多いのが、先住民族マオリ人で、約15%である。3番目に多いのは、1996年の国勢調査では、太平洋諸島系民族であったが、2001年の国勢調査では、アジア系が6.6%、太平洋諸島系が6.5%と両者が並んだ(ただし、2001年の国勢調査では、調査対象数が拡大している)。マオリ文化は、ニュージーランドの公的生活において重要な特徴である。
宗教は、英国国教会 24%、長老派教会 18%、カトリック教会 15%、メソジスト 5%、バプティスト 2%、その他のプロテスタント 3%、無回答または無宗教 33% (1986年調査)だった。
[編集] 文化
[編集] 世界遺産
ニュージーランド国内には、ユネスコの世界遺産リストに登録された自然遺産が2件、複合遺産が1件ある。詳細は、ニュージーランドの世界遺産を参照。
日付 | 日本語表記 | 現地語表記 | 備考 |
---|---|---|---|
1月1日 | 元日 | New Year's Day | 週末にあたる場合は、次の月曜日 |
1月2日 | Day after New Year's Day | 土日にあたる場合は、次の火曜日か水曜日 | |
2月6日 | ワイタンギ・デー | Waitangi day | ワイタンギ条約 |
移動祝祭日 | 聖金曜日 | Good Friday | |
移動祝祭日 | 復活祭 | Easter Sunday | |
移動祝祭日 | イースター・マンデー | Easter Monday | |
4月25日 | アンザック記念日 | ANZAC Day | ガリポリの戦いにおけるアンザック軍団を記念 |
6月第1月曜日 | Queen's Birthday | ||
10月第4月曜日 | 労働記念日 | Labour Day | |
12月25日 | クリスマス | Christmas Day | 週末にあたる場合は、次の月曜日 |
12月26日 | ボクシング・デー | Boxing Day | 土日にあたる場合は、次の火曜日か水曜日 |
[編集] その他の話題
[編集] 軍事
国防政策では、陸軍を主体とした3軍を再編し、本土防衛と国際連合の平和維持活動 (PKO)を重点活動とした。ニュージーランドはオーストラリア、アメリカなどと共に、ANZUS条約に入っている。「ANZUS」の「A」はオーストラリア、「NZ」はニュージーランド、「US」はアメリカを表している。この条約は軍事条約であり、太平洋の安全保障が目的である。しかし、ニュージーランドは核兵器を好まないのに対してアメリカは核兵器を軍艦につんでいるので、ニュージーランドとアメリカはにらみ合いが続き、間にオーストラリアが入っている状態である。また、反核政策を堅持。反戦の立場からイラク戦争に反対、派兵しなかった。
[編集] 日本との関係
- 1985年よりワーキングホリデー協定(30歳以下の人が1年間、休暇を楽しみながら海外生活を体験できる制度。1雇用主の元で3ヶ月以内の短期就労が認められている)を結んでいる。2004年の日本人への査証発給件数は3789件(85年よりの累計45257件)、NZ人への発給件数は211件(85年よりの累計8769件)となっている。
[編集] 関連項目
- ニュージーランド関係記事の一覧
- タウマタファカタンギハンガコアウアウオタマテアポカイフェヌアキタナタフ(国内にある丘に関する記事)
- ラーナック城
- ニュージーランドの国立公園一覧
- ニュージーランドの大学の一覧
- オーストラリア区
[編集] 外部リンク
[編集] 公式
- ニュージーランド 公式サイト - 観光&ビジネス (日本語)
- ニュージーランド 政府観光局 公式サイト (日本語)
[編集] その他
- イギリス連邦加盟国
- アンティグア・バーブーダ | イギリス | インド | ウガンダ | オーストラリア | ガイアナ | ガーナ | カナダ | カメルーン | ガンビア | キプロス | キリバス | グレナダ | ケニア | サモア | ザンビア | シエラレオネ | ジャマイカ | シンガポール | スリランカ | スワジランド | セーシェル | セントクリストファー・ネイビス | セントビンセント・グレナディーン | セントルシア | ソロモン諸島 | タンザニア | ツバル | ドミニカ国 | トリニダード・トバゴ | トンガ | ナイジェリア | ナウル | ナミビア | ニュージーランド | パキスタン | バヌアツ | バハマ | パプアニューギニア | バルバドス | バングラデシュ | フィジー | ブルネイ | ベリーズ | ボツワナ | マラウイ | マルタ | マレーシア | 南アフリカ | モザンビーク | モーリシャス | モルディブ | レソト
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