UH-1 (航空機)
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UH-1(UH-1 IROQOIS・イロコイ、愛称:HUI・ヒューイ)は、アメリカのベルエアクラフト社が開発した汎用ヘリコプターである。アメリカ陸軍に採用され、ベトナム戦争などで活躍し、大量生産された。また、アメリカ空軍も過去に使用している。現在は後継機種のシコルスキーUH-60 ブラックホークに置き換えがすすんでいるが、日本の陸上自衛隊を始めとする多くの国々では現役である。
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[編集] 概要
UH-1は西側のヘリコプターとしては最大の1万機以上の生産数を誇る汎用ヘリコプターである。後方スライド式大型ドアをキャビン両側に持ち、その後に燃料タンク、その真上にタービンエンジンというタービンヘリの標準形を作り上げた機体。ローターはベル社伝統の安定棒付き2枚ブレード。一般的によく使われる愛称の「ヒューイ」は部隊配備当初の型番HU-1の1を英文字のIと読び「HUI=ヒューイ」と呼んだことに由来する。
1955年に開発が始まり、1956年に原型機XH-40が初飛行した。米陸軍で採用されたが、全く新しい兵器である汎用ヘリコプターを活用する方法をなかなか生み出せず、活躍の機会は無かった。UH-1は開発費を回収できず、ベルは苦境に立たされてしまい、倒産寸前となっていた。しかし、1960年代にベトナム戦争が拡大すると、陸軍は機動性の優れたUH-1を重用し、多くの兵士の輸送に使用した。そのため、ベルに大量の発注が行われ、すっかり経営を回復することができた。しかしベトナムでの損失数は数千機以上と計り知れない。
HH-1Hは民間のベル205を軍用救難ヘリとしたモデルで、1971年~1973年に30機がデリバリーされ、HH-43に代わる基地救難機として配備された。
ヒューイ・シリーズはUH-1B、UH-1D、エンジンを強化、キャビンを15人乗りに拡大したUH-1Hと発展、戦後は民間機として204Bと205Aが造られ、現在に至る。また、UH-1の機関系を基にベルが製作した攻撃ヘリコプターがAH-1 コブラである。
イタリアの航空機メーカー、アグスタ社では民間型がAB205Bとして長年ライセンス生産が行われ、イタリアばかりでなく、ベル社がカバーしきれていない中近東やアフリカ諸国に輸出された。
米国海兵隊では、海上を飛行する際の安全性を考慮して双発が要求された。このため、ベル社はベル212を開発し、軍用としてUH-1Nが開発された。アグスタ社でもライセンス生産が行われAB212と名づけられた。AB212には本家の米国には存在しない対潜ヘリコプターバージョンも開発され、イタリア海軍で使用された他、イランなどにも輸出された。
その後、このベル212を強化する形で、カナダ政府の協力を得てベル412が開発された。エンジンが強化された他、ローターが2枚から4枚に変更となり、武装バージョンも製造された。イタリアではAB412グリフォーネと命名されてライセンス生産された。
日本では富士重工業が1962年(昭和37)から陸上自衛隊向けにUH-1Bのライセンス生産を行い、1972年(昭和47)までに90機を納入した。同年からは大型化したUH-1Hに切り替え、1991年(平成3)までに133機を納入、民間型のB204も販売した。さらに同年から、AH-1Sのエンジンを搭載し、ワイヤーカッターなど装備した富士独自の改良型 UH-1Jの納入に切り替わった。防衛庁では1997年(平成9)からUH-1後継機として、三菱ライセンス生産のUH-60JAの導入も開始したが、大変高価なためにUH-1Jと混用する計画に変更した。2006年(平成18)現在までに100機以上を納入、最終的に120機程度となる予定である。また、J型の民間版205B も開発し、販売している。
[編集] 要目
- メインローター直径:14.69m
- 胴体長:12.69m
- 全高:4.53m
- 自重:2,787kg
- 最大重量:5,080kg
- エンジン:T53-K-703 (1,800軸馬力(shp))一基(UH-1J)
- 使用燃料 JP-4
- 最大速度:230km/h
- 武装:標準搭載はなし。キャビンに機関銃等を搭載することが可能。
[編集] 派生型
- XH-40 - 社内モデル ベル204 原型機。3機製造。
- YH-40 - 前量産型、6機製造。
- HU-1A - 社内モデル ベル204量産型。1962年にUH-1Aに名称変更。
- HU-1B - HU-1Aのローターなどの改良型。1962年にUH-1Bに名称変更。
- UH-1C - UH-1Bの武装ヘリ型としてエンジンを強化した型。
- YUH-1D - UH-1Dの前量産型。7機製造。
- UH-1D - 社内モデル ベル205量産型。ベル204より機内容積を拡大。
- HH-1D - UH-1DのSAR型。
- UH-1E - UH-1B/Cのアメリカ海兵隊向け。
- TH-1E - UH-1Eの訓練型。
- UH-1F - UH-1B/Cのアメリカ空軍向け。
- TH-1F - UH-1Fの訓練型。
- UH-1G - AH-1Gとの混同防止のために未使用。しかし、一部ではUH-1D/Hのガンシップ型を非公式にUH-1Gと呼称。
- UH-1H - UH-1Dのエンジン強化型。
- CUH-1H - UH-1Hのカナダ軍向け。
- EH-1H - ELINT任務機。
- HH-1H - UH-1HのSAR・救急任務機。アメリカ空軍向け。
- JUH-1H - 戦場監視任務機。4機改造。
- TH-1H - UH-1Hのアメリカ空軍・訓練型。
- UH-1J - 日本の富士重工におけるUH-1Hの改良型。陸上自衛隊向け。
- HH-1K - SAR型。アメリカ海軍向け。
- UH-1L - アメリカ海軍向け。
- TH-1L - UH-1Lの訓練型。
- UH-1M - UH-1Cガンシップ型の改良型。
- UH-1N - 社内モデル ベル212。エンジンを2基に増備(ツインパック)。
- VH-1N - VIP輸送用。
- HH-1N - SAR型。
- CUH-1N - UN-1Nのカナダ軍向け。
- UH-1P - UH-1Fのアメリカ空軍、特殊作戦向け。
- UH-1V - アメリカ陸軍の救出作戦向け。
- UH-1X - 1機のみ製造。
- RH-2 - 調査・研究機。
- ベル204およびベル205 - 民間向け。
- ベル212 - 民間向け。海上保安庁も採用。エンジンを2基に増備(ツインパック)。
[編集] 登場作品
- ディア・ハンター(1978年、映画)
- 地獄の黙示録(1979年、映画)
- プラトーン(1986年、映画)
- ワンス・アンド・フォーエバー(2002年、映画)
- ブルーサンダー(テレビドラマ)
- 超音速攻撃ヘリ・エアーウルフ(テレビドラマ)
- 戦国自衛隊1549(2005年、映画)
- 仮面ライダーアギト PROJECT G4
- 平成ゴジラシリーズ
- 平成ガメラ3部作
- ULTRAMAN
- 日本沈没(1973年、映画)
- 首都消失(映画)
- 宣戦布告(2002年、映画)
- 守ってあげたい(2000年、映画)