アメリカ海兵隊

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アメリカ海兵隊（－かいへいたい）、英語表記：United States Marine Corps（略称：USMC、通称：Marines）は、アメリカ軍を構成する5軍のうちの2番目に小さい軍隊で、2002年時点で170,000人の現役兵と40,000人の予備役を擁している。

アメリカ海兵隊紋章

[編集] 概要

海兵隊はアメリカ本土の防衛を任務とせず、海外での武力戦闘を前提に組織され、アメリカの権益を維持・確保するための緊急展開部隊として行動し（この為“殴り込み部隊”とも揶揄される）、また必要に応じ水陸両用作戦（上陸作戦）を始めとする軍事作戦を遂行することを目的とする。

特徴として、陸海空の全領域において作戦行動ができる点が挙げられる。独自の航空部隊を保有することで空での軍事行動が可能であり、しかも配備されている航空機は、艦載機として運用できる仕様になっていることから、海上に海軍の空母や強襲揚陸艦などの航空機運用プラットフォームさえあれば、さらに活動範囲を広げることができる。陸上においては海兵隊の任務の性格上、無論地上部隊の装備は充実しており、例えば陸軍と同様の戦車を多数配備している。さらには戦闘艦艇こそ無いものの、独自の物資輸送船をも保有している。これら特徴は陸海空軍と比較しても際立っている。

海兵隊の出撃には議会の承認を必要とせず、大統領の命令のみで行動可能である。

軍政面では、海兵隊は海軍省の部局であるため海兵隊の装備調達などは海軍省が行うが、軍令面では、アメリカ海軍からは独立している。しかし、両者は緊密な関係を保っている。その様子は、例えば海軍の強襲揚陸艦にて海軍将兵らと共に勤務している海兵隊将兵らの姿からも窺い知れる。

[編集] 海兵隊総司令官

海兵隊総司令官はアメリカ海兵隊の中で最高位の軍人であって、統合参謀本部の一員でもあり、海軍作戦部長（海軍軍人最高位）ではなく海軍長官（文官）に直属する。

海兵隊内に、総司令官より先任者がいたとしても、官職としての海兵隊総司令官は海兵隊の最高指揮官である。ピーター･ペース統合参謀本部議長（海兵隊大将）とジェームズ･L･ジョーンズ欧州軍司令官（海兵隊大将）は海兵隊司令官に匹敵する地位であるが、指揮系統上、海兵隊司令官はこの二人に報告する義務はない。

司令官は海兵隊をいつでもすぐに戦えるような状態に保っておかねばならないが、直接前線の指揮官として従軍することは行わない。しかし同職は海兵隊の象徴であり、部隊の統率者であるので崇高なる尊厳を海兵隊の中で保つ事になる。

現在の海兵隊総司令官はマイケル･W･ヘギー海兵隊大将である。

[編集] モットー

海兵隊の標語は、ラテン語の"Semper fidelis"。英語ではAlways faithfulになり、直訳すれば常に忠誠をである。通常口語体では Semper Fi! (センパーファーイ！）と言う。この標語は、紋章内スクロールにも記されている。

もう一つ有名なものに"The Few, The Proud."もある。意訳すれば誇り高き少数精鋭（？）となろう。この言葉は海兵隊の特徴を端的に表しているものとも言える。

[編集] 沿革

1945年2月23日に硫黄島摺鉢山で星条旗を掲げる海兵隊の兵士達を撮った写真『硫黄島の星条旗』を基に建てられたアメリカ海兵隊の記念モニュメント

イラクで活動するアメリカ海兵隊の兵士（2004年）

士官クラスのサービスドレス

下士官・兵クラスのサービスドレス

MARPAT迷彩戦闘服

ブルードレス

アメリカ海兵隊は1775年に酒場で募兵が行われ、創設された。当初の目的は、当時の艦船乗り組みの海兵隊員の一般的な任務である。すなわち、平時には警備隊として艦内秩序の維持を担当し、戦闘時には敵艦へ接舷した際に斬り込み隊として白兵戦を行ったり、接近した敵艦の乗組員を小銃で狙撃したりすることであった。白兵戦に備えて、刃から首を守る為の革製のカラーを付けた制服を着用。別名“レザーネックス”（Leather Necks）と呼ばれるのはこれにちなむ。

アメリカ海兵隊の海外派遣は、地中海の自由航行権をめぐるトラブルから発生したリビア海賊との戦争（1801年～05年）が初めてで、この時は、自国艦を拿捕されてその乗組員の身代金6万ドルを支払ったものの、今後はアメリカ籍の船の航行を妨害しないことを約束させることに成功した。

その後、米墨戦争で陸軍に先んじて宮殿を占領^※注1する等の活躍を見せるものの、平時は常に解体の危機にさらされていた。

その存在価値が見直されるのは、第二次世界大戦時のことである。このとき海兵隊は、水陸両用軍団として太平洋戦線の島嶼における敵前強行上陸を主体とする上陸戦闘を研究し、海兵航空団が編成され、ガダルカナル島、タラワ環礁、マリアナ諸島、硫黄島、沖縄などにおける激戦の経験は、史上最強といわれる現在のアメリカ海兵隊の基礎となった。

第二次世界大戦後は、朝鮮戦争において韓国救援の先遣部隊として派遣され、釜山に追い詰められた国連軍の中のアメリカ軍の中核として困難な時期を支え、マッカーサー元帥の立案した仁川上陸作戦（クロマイト作戦）に中核戦力として用いられ、上陸後のソウル奪還にも一番乗りの一翼を担った。また、中華人民共和国の参戦によって総崩れとなった国連軍の殿を勤めたのもアメリカ海兵隊であった。その後もゲリラの掃討戦に従事し、また国連軍が行った攻勢には常に主力として用いられ、アメリカ海兵隊は朝鮮戦争の休戦を38度線の防御陣地で迎えることになる。

その後も、ベトナム戦争、グレナダ侵攻、湾岸戦争、イラク戦争などアメリカの行った大規模軍事行動には常に最前線に投入され、アメリカ海兵隊は規模の大小はあるものの全世界に展開されており、アメリカの有事の際には世界中どこにでも展開できる能力^※注2を保有している。

^※注1…このときの栄誉は、海兵隊賛歌の歌詞になっている。

^※注2…アメリカ海兵隊は部隊だけでなく、世界中に散らばった物資輸送船（これをアメリカ海軍の用語で「事前集積艦」と呼ぶ）を持っており、海兵隊が派遣されるときは派遣地域の近くにいる物資輸送船と軽装備で輸送された人員をドッキングすることによって、少数であっても世界中に迅速に展開できる強力な即応部隊としての能力を維持している。

入営者の人間性を徹底的に否定し“人間を兵器に変える”とも評される苛烈な練兵で有名。映画「フルメタル・ジャケット」ではベトナム戦争当時の訓練が元軍事教練指導官によって再現されている。

[編集] 階級

士官 Officers
- 将官
  - 大将 General
  - 中将 Lieutenant General
  - 少将 Major General
  - 准将 Brigadier General
- 佐官
  - 大佐 Colonel
  - 中佐 Lieutenant Colonel
  - 少佐 Major
- 尉官
  - 大尉 Captain
  - 中尉 First Lieutenant
  - 少尉 Second Lieutenant
准士官
- 1等准尉 Chief Warrant Officer 1
- 2等准尉 Chief Warrant Officer 2
- 3等准尉 Chief Warrant Officer 3
- 4等准尉 Chief Warrant Officer 4
- 5等准尉 Chief Warrant Officer 5　准尉以上の階級から階級章は肩に付ける
下士官及び兵
- 海兵隊先任曹長 Sergeant Major of the Marine Corps
- 上級曹長 Sergeant Major
- 先任曹長 First Sergeant
- 曹長 Master Sergeant
- 一等軍曹 Gunnery Sergeant
- 二等軍曹 Staff Sergeant
- 三等軍曹 Sergeant
- 伍長 Corporal　伍長より制服（ブルードレスB）のズボンに赤い線が入る
- 上等兵 Private First Class
- 一等兵 Private
- 二等兵 Private

[編集] 昇進

海兵隊では二度昇進を見送られた者は強制的に除隊させる規則があるため、名誉階級などの例外を除いて同じ階級のまま10年以上勤務する事は出来ない。

兵
- 海兵隊に入隊した兵は二等兵に任命される。海兵隊員としての初期教育課程を終えると全員一等兵に昇進する。

士官
- 士官候補生として入隊して小隊指揮官課程（Platoon Leader Course）と基本術科学校（The basic School）を終えると専門別に1週間から16ヶ月の教育を受けて少尉に任命される。
- 少尉任官後の5～6年の勤務を経て、成績がよければ中尉に昇進する。
- 10～12年経つと有望な士官は少佐となるための専門教育を受けて昇進するが、佐官は非常に狭き門であり少佐にまでなれる人間は少ない。

退役
- ２０年以上勤務した海兵隊員が退役すると退役軍人としてのさまざまな恩給を受けることが出来る。１９年目以前に昇進見送りなどの理由によって強制退役させられた場合は退役軍人としての恩給を受けることが出来ない。
- 少佐にまで昇進できず、大尉のままでいる士官はほぼ２０年目での退役を強いられる。

名誉除隊
- 戦場での名誉の負傷によって勤務できなくなった場合や名誉有る職業への転職などの理由によって除隊する場合を名誉除隊と呼び勤務年数に関係なく退役軍人と同様の権利が付与される。

不名誉除隊
- 軍事裁判による有罪判決や休暇中の犯罪行為など軍人として不名誉な行為によって強制的に除隊処分を受けた場合には給料の支払い停止、医療保険の停止、場合によっては市民権の停止などの厳しい処分を受け、事実上軍人としてのあらゆる権利を剥奪される。
- 海兵隊には元海兵隊という呼び名が存在しないが、不名誉除隊処分を受けた者は元海兵隊を名乗ることも禁止される。