近鉄1420系電車
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1420系電車(1420けいでんしゃ)とは、近畿日本鉄道が保有する通勤形電車の一系列。
なお、本稿では同じく三菱電機製VVVFインバータ制御装置を搭載した2両編成の車両である1422系・1430系など派生系列(1422系・1430系・1435系・1436系・1437系)と、その4・6両編成版である1620系についても記述する。
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[編集] 1420系
1420系はVVVFインバータ制御試作車として登場した1421Fのことである。正式形式名も1422F以降の車両は1422系と呼び、1421Fのみ1420系として区別されている。双方とも三菱電機製GTO素子のVVVFインバータ制御装置を搭載した2両編成であり、登場時は1250系(初代)を名乗っていたが、1230系(1233系、1249系)の増備により1990年に現番号・系列に変更されている。
1421Fは1984年6月に1250系の1251Fとして製造された。近鉄のVVVFインバータ制御車第1号であり、また1500V鉄道線では初めてのVVVFインバータ車両である。1984年当時の世界最大の高耐圧、4,500V、2,000AのGTOサイリスタを使用している。主電動機に三相交流誘導電動機を装備し、従来の直流直巻電動機と比較してメンテナンス・フリーを実現している。また、従来の抵抗制御車に比べて加減速度の向上を実現している。制動装置は回生ブレーキ併用電磁直通ブレーキ(HSC-R)方式を採用し、従来の界磁チョッパ車や抵抗制御車との混結も考慮している。電空演算システムを採用し、本来Tc車が受け持つべき制動力の一部をMc車の電力回生制動力に分担させている。MGはHG-77463-Oir形(70kVA)をTcに設置している。CPはTcに当初D-3-F形を設置していたが、後にHS-10形に変更している。
界磁チョッパ車の1200系と同じ普通鋼製の車体を持つため、1422系や1430系、1230系と異なり裾が絞られていないスマートな車体をしている。空調関係も1200系と同等のものを採用している。登場時はマルーンレッド一色の塗装で登場し、3200系登場後にシルキーホワイトとのツートンカラーに変更されている。また、シリーズ21やLCカーを除くVVVFインバータ車の制御車は、車体側面の運転室扉と乗降扉間にVVVFのシンボルマークが銀色のシールで貼り付けられているが、本編成は当該部分に窓があるため、シンボルマークは乗降扉側に寄せてある。しかも、本編成のみが立体のエンブレム状であるために他系列と容易に見分けることができる。
1252F(現1422F)以降の車両登場後に1250系(2代)と区別するため1251系に改番。1990年に1230系(1233系、1249系)の増備のため、現在の番号に変更されている。製造当初はモニタ装置を搭載していたが、現在は撤去されている。電算記号は、大阪・名古屋線系統の青山越え可能な2連車を意味するWから由来してVW51、その後上記改番によりVW21となり現在に至る。
試作車的要素が強いため、不慮の故障発生時を想定して、運用時には同じく試作車的要素の強い界磁チョッパの1400系1401Fと半固定編成を組んで青山町以西で使用されることが多かった。ただし2005年9月をはじめ名古屋線の名古屋まで入線したことも複数ある。
大阪線に配属。2006年4月より長期休車中。
[編集] 1422系
1987年4月に運用開始。1420系の量産車として登場。最大車体幅2800mmの大型車体を大阪線・名古屋線車両で初めて採用している。従来の鋼製から裾を絞ったアルミ車体に仕様変更されている。安定した大型アルミ押出材の供給が可能となり、構体の組立工数の削減が可能になってためであり、特急車と急行車の5200系を除き、その後の車両にもこのアルミ車体は採用され、近鉄車両の標準仕様となっている。運転台もベージュ系のものを採用している。台車はMc車はKD-95形、Tc車はKD-95A形。制御装置は16ビットの制御回路のマイコンを採用している。この制御装置は3200系にも採用されているものである。制動装置はTc車にHSC-R形を設置。MGはHG-77463形、CPはHS-10形をそれぞれTc車に配置している。登場時は1250系(2代)を名乗っていたが、こちらも1230系(1233系、1249系、1252系、1253系、1254系)の増備によって、1990年に現番号に変更されている。量産車として製造されたが、全線共通仕様の設定に伴う仕様変更のため、6編成のみの製造で、その後の車両は1430系にモデルチェンジされている。電算記号は、大阪・名古屋線系統の青山越え可能な2両編成車を意味するWを用いてVW52~57となっていたが、上記の改番によりVW22~VW27と改められた。
全車、大阪・名古屋線に配属。
[編集] 1430系
1990年7月に登場した、2両編成のVVVFインバータ車である。1422系を標準軌全線共通仕様に変更した車両である。1420・1422系と同様に、三菱電機製のインバータ装置を採用している。全線共通仕様であるが、1230系と異なり、全車大阪・名古屋線に配置され、奈良・京都線には配置されていない。
1230系と同様に1435系、1436系、1437系と細かく分類されることが多い。1435系(1992年3月登場)は1230系に対する1249系同様、補助電源装置がSIV(静止型インバータ)BS-483Q形(70kVA)に改良された。1436系(1993年3月登場)では1252系同様Tc車のディスクブレーキを1軸1ディスクとしたボルスタレス台車が採用され、滑走検知装置も搭載された。1437系(1993年9月登場)から1軸2ディスクに変更され、滑走検知装置も搭載されていない(後に1ディスクに改造)。1998年1月に登場した最終編成のク1545は当初より各軸1ディスクとなっている。
近年、バリアフリー対応として車外転落防止幌や車内案内表示器の設置などが行われている。 電算記号は、1420系、1422系同様に大阪・名古屋線系統の青山越え可能な2両編成車を意味するWを用いて「VW」である。これには更に、三菱電機製のVVVF制御装置搭載車という意味合いも含まれている。 名古屋線所属の車両ではワンマン対応工事を進めており、それに加えて1253系同様の内容のバリアフリー改造も同時にされている。
系列 | 編成名 | 電算名 | ク1520(Tc) | モ1420(Mc) |
---|---|---|---|---|
1420系 | 1421F | VW21 | 1521 | 1421 |
1422系 | 1422F - 1427F | VW22 - VW27 | 1522 - 1527 | 1422 - 1427 |
1430系 | 1431F - 1434F | VW31 - VW34 | 1531 - 1534 | 1431 - 1434 |
1435系 | 1435F | VW35 | 1535 | 1435 |
1436系 | 1436F | VW36 | 1536 | 1436 |
1437系 | 1437F - 1445F | VW37 - VW45 | 1537 - 1545 | 1437 - 1445 |
[編集] 1620系
1994年(平成6年)11月に登場。大阪線用のVVVFインバータ制御、アルミ車体の4・6両編成を組成する系列。三菱電機製のGTO素子によるインバータ装置を採用した1420系列(1437系)の4・6両編成バージョンである。インバータ装置の製造メーカー以外の仕様、性能・車内設備は1020系(1026系)と同等である。
全車大阪線に所属し、主として上本町-青山町間にて急行から普通まで幅広く使用されている。長距離運用を想定していないせいか、全編成トイレは設置されていない。また、L/Cカー5800系はこの系列をベースに座席をデュアルシートに変更したものである。
電算記号は4両編成が大阪線系統の4連車を意味するGを用いてVGとなり、6両編成がVFである。同線の6両編成車を意味するFの記号を初めて採用し、その後5800系&5820系(DF)にも継承されていくことになる。1641Fのみが6両編成で、1621F~25Fは4両編成である。1625Fと1641Fで生産を完了。後継系列はインバータ装置のメーカーから考えると、「シリーズ21」の9820系であるが、9820系は2006年時点では大阪線には配備されていない。
1020系同様、バリアフリーの一環として、車内案内表示器を出入り口上部に設置、及び車外転落防止幌を取り付けの改造を受けた車両がある。
系列 | 編成名 | 電算名 | ク1720(Tc) | モ1670(M) | サ1770(T) | ク1620(Mc) |
---|---|---|---|---|---|---|
1620系 | 1621F - 1625F |
VG21 - VG25 |
1721 - 1725 |
1671 - 1675 |
1771 - 1775 |
1621 - 1625 |
系列 | 編成名 | 電算名 | ク1720(Tc) | モ1650(M) | サ1750(T) | モ1670(M) | サ1770(T) | ク1620(Mc) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1620系 | 1641F | VF41 | 1741 | 1651 | 1751 | 1691 | 1791 | 1641 |
[編集] 関連商品
1436系と1620系についてはそれぞれグリーンマックスよりNゲージ鉄道模型で発売されている(商品名は「近鉄1436/1252/6422系セット」と「近鉄1620/1026/6620系セット」)。特に説明書には記載されていないが1437系も無加工で製作可能であり、別売の台車の変更などの小加工で、1430系など他形式の一部も製作可能である。
[編集] 関連項目
近畿日本鉄道の車両 |
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現有車両 |
広軌線:9820系・9020系,9200系・9000系・8810系,8800系・8600系・8400系・8000系(60番台~90番台),5820系,5800系,5200系,3220系,3200系,3000系,2800系・2680系・2610系・2000系,2430系・2410系,1810系,1620系・1430系・1420系,2050系・1400系・1201系・1200系,1230系・1220系・1020系,1010系 南大阪線:6820系,6620系・6400系,6600系,6200系・6020系 独立線区:260系(内部・八王子線用),620系・610系・600系(養老線用),860系(伊賀線用),7000系7020系(けいはんな線-大阪市営地下鉄中央線乗入) 事業用用:モト75形,モト90系,五位堂・高安入替車,モワ24系電気検測車(はかるくん) |
過去の車両 |
6441系,6000系,2600系,2400系,1800系・モ1650形・1600系,2470系・1480系,1470系,1460系,1450系,8000系(20番台~50番台),920系,900系,820系,800系 特急車格下げ車両:680系(旧奈良電特急),683系(旧奈良電予備特急),2250系,6421系,6431系 元大阪電気軌道:モ1000形,モ1100形,モ1200形,モ1300形 元大阪鉄道:モ5800形,モ6601形 元伊勢電気鉄道:モニ6201形,モニ6231形 元奈良電気鉄道:400系 その他の近鉄発足前の車両:2200系,モ5251形,モ6301形 |