近鉄800系電車

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800系電車（800けいでんしゃ）とは、近畿日本鉄道が保有した特急・通勤形電車の一系列。

1992年までに全車両が廃車された。

本項ではその改造車である880系電車についても記述する。

[編集] 800系

1955年、奈良線用に製造された近鉄初の量産型高性能車。上本町寄りからモ800（偶数）(Mc)+ク710(Tc)＋サ700(T)+モ800（奇数）(Mc)と組成。台車は近畿車輛製シュリーレン形で、モ800がKD-12、サ700がKD-12A、ク710がKD-20Aを装備。主電動機は三菱電機製 (MB-3020-B) の110kW×4個（600V時代、1500V昇圧後は125kW）、駆動装置は三菱電機製WN形、主制御器は日立製作所製 (MMC、停止・抑速用電気制動付) で、性能は架線電圧600V時の起動加速度2.1km/h/s、平坦線釣り合い速度110km/hとなっている。

2250系同様の軽量車体構造が採用されているが、軽量穴が台枠に加えて垂木にも設けられた。そして、高抗張力鋼より安価な普通鋼で軽量化を実現している。前面は当時流行していた2枚窓の湘南形スタイルだがEH10のように前面窓上部が一段くぼみ、また「く」の字断面となっていた。側扉は2ヵ所で1,100mm片開き。側窓はスイス製の技術導入によって得た、サッシュレスのフレームレス1段下降窓で、バランサーによるフリーストップ構造が採用された。車体塗色はマルーン一色を戦後の新製車で初採用したが、さらに前面から側面にかけて窓下にはステンレスの飾り帯が付けられていた。当時の奈良線の車両限界から全長18500mm、全幅2700mmという中型車として製造されている。ただしこのことは後継する900系や8000系より短く、他方昇圧後の600系より長いという意味で結果的に活躍の幅を狭くしてしまったきらいがある。

登場時から奈良線で充当され、特に新生駒トンネル貫通などによる同線の車両限界拡大完成までの間、主に料金不要の特急列車 (快速急行列車の前身) に使用された。その後、橿原線・天理線直通電車に使われたが、さらにその後は京都線・橿原線で長く使用され、廃車前は主に生駒線、時に田原本線で使用された。なお僚車820系と異なり、京阪線への乗り入れには用いられなかった。

[編集] 改造・廃車

モ801~804は1956年に台車をKD-20に履き替え、モ805~12は当初よりKD-20を装備して登場した。また、当初はMc-T-Mcの3両編成であったが、1958年に乗客の増加に対応してク710形（簡易運転台付き）が製造され4両編成となった。本形式はのちに簡易運転台を撤去して、サ710形に改称された。705･715は三菱製ラインデリアの実験車となり、のちに正式に装着された。なお、1969年の1500V昇圧時に主電動機出力が125kwに増強され、主制御器が改造されるとともに、補助電源装置・空気圧縮機が取り替えられた。このとき820系と異なり抑速制動は存置されたが、理由は大阪－天理間の運用が残り、橿原線車両限界の関係と奈良線勾配区間での充当が考慮されたからである。しかし車両運用上の煩雑さが大阪側で残ったため、需要と要望があったにもかかわらず1年ほどで運用自体が姿を消した。以降は、京都線・奈良線（奈良－西大寺間）橿原線・天理線で急行をメインとして重宝されることになる。

1975年4月に京都線新祝園－山田川間で発生した踏切（現在の木津川台駅付近）事故で807F (808+714+704+807) が転覆大破し、808の先頭部は並行する片町線線路に乗り上げる惨事となった。この結果復旧不可能な808+704は1977年に廃車となり、復旧した714+807は820系と4連を組んで使用された。この際800系側の抑速制動は使用不可能になり、また704の貫通路の改造が行われた。

1989年、809F・811Fから廃車が始まり、1992年の801Fを最後に系列消滅した。

[編集] 880系

1986年に伊賀線の880系として事故被災車の807F (807+714) と805F (806+713+703+805) の805+713が転属、狭軌改造された。714、713に平妻非貫通運転台が増設され、2両編成となった。下回り機器は860系同様、廃車になった6800系のものを流用している。また、方向幕装置が前面窓下に設けられた。なお、805Fの片割れとして残った703は平妻貫通扉付きの運転台を新設して806とともに車体更新を行ない、主に田原本線などで充当された。