消防本部
出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』
消防本部（しょうぼうほんぶ）は、日本における消防専門の市町村部局である。消防組織法に基づいて市町村に設置される。常備消防ともいう。消防本部の業務実施機関として消防署が置かれる。
法的には消防本部の組織形態をとっているが、異なる呼称を採用している例もある。一定規模の都市（人口概ね30万人以上）の消防本部は、消防局と称することが多い（福岡市の消防局は消防本部と消防署の総称）。焼津市や静岡市は消防防災局という呼称を採用している。横浜市は、消防・総務・市民の3局を統合した安全管理局という組織としている。組合消防（後述）の場合も市町村単独の消防と同様に消防本部、消防局と称している。以上の各組織に差はなく、その自治体組織が部所制を採っているか部局制を採っているかの違いだけである。道府県消防本部は存在しないが、唯一東京都のみ、特別区の消防については都知事の管理とされることから都が東京消防庁を設置し、都内市町村（東久留米市と稲城市と諸島の町村を除く）からも事務委託を受けている。
目次 |
[編集] 概要
消防本部で働く者を消防職員という。消防職員は全て地方公務員である。そのうち消防階級を有する者を消防吏員（しょうぼうりいん）と呼び、その他にも事務職員や技術職員らがいるが、実際に消火・予防・救急・救助に当たるのは消防吏員のみであり、消防職員のほとんどが消防吏員である。
消防本部の長を消防長という。行政職では部長級に当たる。消防長の任用については政令で規制されている。長年、消防吏員として勤務した者が消防長となる消防本部もあれば、市町村の他部局にいた者が消防長として転任する消防本部もある。また、都道府県の消防行政経験者から任用することもある。消防長は市町村長が、その他の消防職員は消防長が任免する。なお、地域の規模（人口・所属吏員数）にもよるが消防長は消防司令以上から就任出来る。
市町村に消防本部が設置されることを常備化というが、全ての市とほぼすべての町村が常備化されている。常備化されていない町村は離島・山間部にわずかに残るのみである。財政が困難で常備消防が持てない自治体は近隣の市や町が運営する消防本部に事務委託することが多い。消防事務委託を行うのは、東京都（東京消防庁）を除けば主に小規模の町村が多いが、中にはいなべ市（桑名市へ委託）や みどり市（桐生市へ委託）のような例もある。
小規模な市町村が単独で消防本部を組織することは負担過多となることから、人的面・財政面で効率的な運営を行うため、複数の市町村が一部事務組合や広域連合を結成し（消防組合）、消防本部を設置する例も多い（組合消防）。例えば鳥取県では3消防本部だけで全県を管轄している。消防は、このように広域行政の優等生だと言われているが、早い時期に広域化されたため、平成の大合併における市町村合併の枠組みと消防本部の管轄が整合しないことも多く、消防行政にとって問題となっている。（下記の市町村合併に関してを参照）
[編集] 市町村合併に関して
2000年以降、平成の大合併と呼ばれる市町村合併が地方で進行すると、消防本部の管轄にも影響が生じている。消防の広域行政化は1970年代に大部分が完了したため、平成大合併での新たな市町村区域と整合しないことが多い。この場合、新市町村の区域と消防管轄が即一致することは稀である。様々な事情により、旧来の消防管轄が継承されることがほとんどである。その結果、新市町村が複数の消防管轄に分割されることとなる。こうした事例は全国各地に見られ、滋賀県東近江市、広島県広島市・廿日市市、山口県周南市などが挙げられる。
総務省消防庁は、平成の大合併を受けて、より広域の消防再編を推進しようとしている。これは、消防の財政基盤などを強化することを目的としているが、地方自治体の自由意思によるべき消防再編を国が一方的に推し進めることに、憲法が保障する地方自治への不当な介入だとして、憂慮する意見も出ている。
[編集] 問題
島根県では、合併協議から離脱した斐川町に対し、新たに合併した出雲市が常備消防を実施しないことを通告する事件も起こった（消防組合設置まで拒否するものであり、町が独自に消防を置かねばならない）。住民の安心・安全の根幹を支える消防を盾にとった出雲市に対しては、消防庁をはじめ全国の消防関係者から非難の声が挙がる事態となっている。
大阪府では、堺市と高石市が「堺市高石市消防組合」を設置している。しかし、2006年4月1日に政令指定都市に移行した堺市が組合を解散し2007年度を目途に単独消防組織（堺市消防局(仮称)）の設置を検討している。これに対し高石市は組合の解散･常備消防の独立に反対している。両市は大阪湾に石油コンビナートを有し、万が一化学火災が発生したときに備えて特殊化学自動車などを数台配備している。しかし、高石市は財政が悪化している上に早期の常備消防の設置や化学火災に対応した車輌の購入ですら厳しい状況である。堺市への委託案も浮上したが、高石市が反対している。
消防組合が解散して2つの消防本部に分裂したケースもある。岐阜県の北部飛騨地方に属する高山市と飛騨市の消防本部は現在両市が単独で運営しているが、もともとは飛騨消防組合消防本部（以下、同組合）という組織で成り立っていた。だが、2004年の飛騨市発足に伴い、加入していた吉城郡旧3町村が同組合から脱退。飛騨市の合併に参加した旧神岡町の消防本部を統合し飛騨市消防本部を立ち上げることとなった。これに伴い、神岡町に消防事務を委託していた吉城郡上宝村は飛騨市発足により神岡町との事務委託関係を解消させ、同組合に加入した。残った高山市、大野郡・吉城郡（上宝村を含む）の一部も2005年に合併した。合併に参加しなかった大野郡白川村は消防事務を高山市に委託し、同組合は解散した。
[編集] 消防本部の組織構成
- 消防本部（消防局・東京消防庁・安全管理局・消防防災局）
- 消防署（分署）
- 出張所（分遣所・機関員駐在所）
[編集] 消防吏員の階級
[編集] 都道府県の消防本部
数は2005年4月1日現在。平成17年版消防白書（総務省消防庁）による。
- 北海道（計71 市21 町7 村0 組合43）
- 札幌市消防局 - 函館市消防本部 - 苫小牧市消防本部 - 小樽市消防本部 - 旭川市消防本部 - 釧路市消防本部
- 青森県（計14 市2 町1 村0 組合11）
- 青森地域広域消防事務組合 - 弘前地区消防事務組合
- 岩手県（計13 市2 町0 村0 組合11）
- 盛岡地区広域行政事務組合消防本部 - 両磐地区消防組合消防本部
- 宮城県（計12 市5 町0 村0 組合7）
- 仙台市消防局 - 塩釜地区消防事務組合消防本部 - 大崎地域広域消防事務組合消防本部
- 秋田県（計15 市3 町1 村0 組合11）
- 秋田市消防本部 - 大曲仙北広域市町村圏組合消防本部
- 山形県（計15 市8 町2 村0 組合5）
- 山形市消防本部 - 鶴岡地区消防事務組合消防本部 - 酒田地区消防事務組合消防本部 - 米沢市消防本部 - 最上広域事務組合消防本部 - 西置賜行政事務組合消防本部 - 西村山行政事務組合消防本部 - 上山市消防本部 - 天童市消防本部 - 南陽市消防本部 - 村山市消防本部 - 東根市消防本部 - 高畠町消防本部 - 川西町消防本部
- 福島県（計12 市2 町0 村0 組合10）
- 福島市消防本部 - 郡山地方広域消防組合消防本部
- 茨城県（計27 市11 町5 村1 組合10）
- 水戸市消防本部 - 日立市消防本部 - つくば市消防本部 - 土浦市消防本部 - 石岡市消防本部 - かすみがうら市消防本部 - 取手市消防本部 - 稲敷地方広域市町村圏事務組合消防本部 - 阿見町消防本部 - 鹿行広域事務組合消防本部 - 常総地方広域市町村圏事務組合消防本部 - 筑西広域市町村圏事務組合消防本部 - 茨城西南地方広域市町村圏事務組合消防本部 - 鹿島南部地区消防事務組合消防本部 - 小美玉市消防本部 - 那珂市消防本部 - 常陸太田市消防本部 - 北茨城市消防本部 - 笠間市消防本部 - 茨城町消防本部 - 大洗町消防本部 - 東海村消防本部 - 大子町消防本部 - 高萩市・日立市事務組合消防本部
- 栃木県（計15 市4 町1 村0 組合10）
- 宇都宮市消防本部 - 小山市消防本部
- 群馬県（計11 市3 町0 村0 組合8）
- 前橋広域消防本部 - 高崎市等広域消防局 - 太田市消防本部 - 桐生市消防本部
- 埼玉県（計38 市18 町4 村0 組合16）
- さいたま市消防局 - 川口市消防本部
- 千葉県（計32 市21 町1 村0 組合10）
- 千葉市消防局 - 船橋市消防局
- 東京都（計6 市3 町2 村1 組合0）東京消防庁は市に含む
- 東京消防庁 - 大島町消防本部 - 八丈町消防本部 - 三宅村消防本部
- 神奈川県（計27 市18 町7 村0 組合2）
- 横浜市安全管理局 - 川崎市消防局
- 新潟県（計22 市10 町2 村0 組合10）
- 新潟市消防局 - 長岡市消防本部
- 富山県（計16 市8 町6 村0 組合2）
- 富山市消防局 - 高岡市消防本部 - 魚津市消防本部 - 氷見市消防本部 - 滑川市消防本部 - 黒部市消防本部 - 小矢部市消防本部 - 射水市消防本部 - 上市町消防本部 - 立山町消防本部 - 入善町消防本部 - 朝日町消防本部 - 宇奈月町消防本部 - 砺波広域圏消防本部
- 石川県（計12 市4 町3 村0 組合5）
- 金沢市消防本部 - 松任石川広域事務組合消防本部
- 福井県（計11 市1 町2 村0 組合8）
- 福井市消防局 - 敦賀美方消防組合消防本部
- 山梨県（計10 市4 町0 村0 組合6）
- 甲府地区広域行政事務組合消防本部
- 長野県（計14 市2 町0 村0 組合12）
- 長野市消防局 - 松本広域消防局 - 上田地域広域連合消防本部 - 飯田広域消防本部 - 諏訪広域消防本部 - 佐久広域連合消防本部 - 北アルプス広域消防本部 - 木曽広域消防本部 - 伊那消防組合消防本部 - 伊南行政組合消防本部 - 千曲坂城消防組合消防本部 - 岳南広域消防組合本部 - 岳北消防本部
- 岐阜県（計22 市14 町1 村0 組合7）
- 岐阜市消防本部 - 大垣消防組合
- 静岡県（計30 市14 町3 村0 組合13）
- 静岡市消防防災局 - 浜松市消防本部
- 愛知県（計38 市25 町4 村0 組合9）
- 名古屋市消防局 - 岡崎市消防本部
- 三重県（計16 市9 町1 村0 組合6）
- 津市消防本部 - 四日市市消防本部
- 滋賀県（計11 市4 町0 村0 組合7）
- 大津市消防局 - 東近江行政組合消防本部
- 京都府（計15 市9 町2 村0 組合4）
- 京都市消防局 - 舞鶴市消防本部
- 大阪府（計33 市23 町5 村0 組合5）
- 大阪市消防局 - 東大阪市消防局 - 豊中市消防本部 - 泉大津市消防本部 - 高槻市消防本部 - 貝塚市消防本部 - 茨木市消防本部 - 八尾市消防本部 - 和泉市消防本部 - 箕面市消防本部 - 摂津市消防本部 - 忠岡町消防本部 - 美原町消防本部 - 堺市高石市消防組合 - 枚方寝屋川消防組合 - 柏原羽曳野藤井寺消防組合 - 守口市門真市消防組合 - 吹田市消防本部
- 兵庫県（計32 市24 町1 村0 組合7）
- 神戸市消防局 - 姫路市消防局 - 尼崎市消防局 - 明石市消防本部 - 西宮市消防局 - 芦屋市消防本部 - 伊丹市消防局 - 相生市消防本部 - 加古川市消防本部 - 赤穂市消防本部 - 宝塚市消防本部 - 三木市消防本部 - 高砂市消防本部 - 川西市消防本部 - 小野市消防本部 - 三田市消防本部 - 加西市消防本部 - 篠山市消防本部 - 養父市消防本部 - 丹波市消防本部 - 朝来市消防本部 - 淡路広域消防事務組合消防本部 - 豊岡市消防本部 - 宍粟市消防本部 - にしたか消防本部 - たつの市消防本部 - 加東市消防本部 - 猪名川町消防本部 - 中播消防事務組合（2007年4月・姫路市消防局と合併予定） - 佐用町消防本部 - 美方広域消防事務組合
- 奈良県（計13 市6 町0 村0 組合7）
- 奈良市消防局 - 中和広域消防組合
- 和歌山県（計19 市7 町5 村0 組合7）
- 和歌山市消防局 - 田辺市消防本部
- 鳥取県（計3 市0 町0 村0 組合3）
- 鳥取中部ふるさと広域連合消防局 - 鳥取県東部広域行政管理組合消防局 - 鳥取県西部広域行政管理組合消防局
- 島根県（計9 市3 町0 村0 組合6）
- 松江地区広域行政組合消防本部
- 岡山県（計14 市9 町0 村0 組合5）
- 岡山市消防局 - 倉敷市消防局 - 津山圏域消防組合消防本部
- 広島県（計18 市8 町4 村0 組合6）
- 広島市消防局 - 福山地区消防組合消防局
- 山口県（計13 市8 町0 村0 組合5）
- 山口市消防本部 - 下関市消防局 - 宇部市消防本部 - 周南市消防本部 - 岩国地区消防組合消防本部 - 柳井地区広域消防組合消防本部 - 光地区消防組合消防本部 - 下松市消防本部 - 防府市消防本部 - 美祢地区消防組合消防本部 - 山陽小野田市消防本部 - 長門市消防本部 - 萩市消防本部
- 徳島県（計12 市4 町0 村0 組合8）
- 徳島市消防局 - 阿南消防組合消防本部 - 徳島中央広域連合消防本部
- 香川県（計10 市4 町1 村0 組合5）
- 高松市消防局 - 丸亀市消防本部
- 愛媛県（計14 市7 町3 村0 組合4）
- 松山市消防局 - 新居浜市消防本部
- 高知県（計15 市6 町0 村0 組合9）
- 高知市消防局 - 嶺北広域行政事務組合消防本部
- 福岡県（計26 市10 町1 村0 組合15）
- 福岡市消防局 - 北九州市消防局
- 佐賀県（計7 市2 町0 村0 組合5）
- 佐賀広域消防局 - 唐津・東松浦広域市町村圏組合消防本部
- 長崎県（計10 市6 町1 村0 組合3）
- 長崎市消防局 - 佐世保市消防局
- 熊本県（計13 市1 町0 村0 組合12）
- 熊本市消防局 - 有明広域行政事務組合消防本部 - 八代広域行政事務組合消防本部 - 水俣芦北広域消防本部 - 人吉下球磨消防本部 - 上球磨消防本部
- 大分県（計14 市10 町0 村0 組合4）
- 大分市消防局 - 別府市消防本部
- 宮崎県（計9 市6 町0 村0 組合3）
- 宮崎市消防局 - 都城市消防局
- 鹿児島県（計20 市4 町1 村0 組合15）
- 鹿児島市消防局 - 川内地区消防組合消防本部
- 沖縄県（計19 市9 町2 村0 組合8）
- 那覇市消防本部 - 沖縄市消防本部
- 合計（計848 市382 町79 村2 組合385）
