民族主義
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民族主義(みんぞくしゅぎ)は自らの民族を政治、経済、文化の主体と考え、至上の価値観を置く思想、運動。マイノリティによる民族主義は、少数民族、先住民族が自らの言語、文化、宗教などの維持存続を求め、民族自決の主張をともなうこともあるが、一方で分離主義など、戦争、紛争の要因ともなる。
左翼思想と一致したナショナリズムに関しては左翼ナショナリズムがある。
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[編集] 民族主義の展開
国民を単位とした民族主義をナショナリズムという。民族主義、国民主義、国粋主義、国家主義など訳される。ただし、民族の概念自体がその所属集団によってまちまちであり、ナショナリズムとかならずしも同一ではない。複数の民族で成り立っている国家が複数民族の権利を主張する場合にはエスニシティーと呼ばれる。
民族主義が嵩じると民族による国家の形成・純化・拡大を主張し、対外的に自民族との差異と優越性を主張し、排外的性格を帯びる事がよくある。大国にあっては近隣諸国の自民族居住地域などの併合、少数民族にあっては分離独立などを主張し、ややもすると戦争や紛争を惹起する。自民族居住地域が近隣にない場合も、領土を併合する前や後において、被支配民族との近縁性、一体性(日鮮同祖論など)を強調することで正当性を主張する場合もあるが、これは民族の純化という点からは遠く、むしろナショナリズム的な動きと言える。
フランスでは、フランス革命後、国民国家の形成にともなってフランス人としての自覚が芽生えるが、ナポレオン戦争によるフランスの支配下、こうした概念に触れたヨーロッパの各国民はかえっておのおのの民族主義を高揚させた。アジアにおいては、日露戦争が同様の役割を果たしており、日本への期待を生んだ。第二次世界大戦後には、多くのアジア・アフリカの国家が民族主義を高揚させて独立を果たした。
日本では水戸学、国学の影響を受けた尊王攘夷運動として現れ、民族の独立維持に寄与した。その後、国家主義的傾向が強まり、大東亜戦争でピークに達する。敗戦後、その反省から戦前的な民族主義はタブーとなる一方で、アジア・アフリカの民族主義には情緒的な共感が寄せられた。1990年代後半から再び民族主義・国粋主義的思潮が勢いを増してきているように近隣諸国から思われ、同様に民族主義を高揚させる中国、韓国、北朝鮮などの一部近隣国と政治的に対立する要因のひとつともなっている。
しかし、実際の日本人はナショナリズムを抵抗なく発揮する東アジア近隣諸国に挑発・刺激される形でのナショナリズムの発揮はあるが、本質的にはスポーツなどの一部の文化的なナショナリズムの発揮を除けば、愛国心が欠如していると思われる程、自国への国際的な立場へには無関心な傾向がある。これには、日本では愛国的な発言をする者(とくに男性)を危険思想の持ち主と見なす風潮が一般化しているため、表面に愛国心を出すことを躊躇している者が多いためとの見方もある。 ただし、愛国心の発露の仕方は個人や文化によって異なるため、必ずしも日本人に愛国心が欠如しているとは言えないと言える。
[編集] 現在の民族主義政党
- ロシア自由民主党
- ドイツ国民民主党(ドイツ国家民主党)
- オーストリア自由党
- 国民戦線 (フランス)
- デンマーク党
- 進歩党 (ノルウェー)
- 純粋フィンランド人
- ブロック・ケベコワ - カナダのフランス語・カトリック政党
- フラマン系自由党 - フラマン系社会党 - フラマン系キリスト教民主党 - フラマン語の民族政党
- ワロン系自由党 - ワロン系社会党 - ワロン系キリスト教民主党 - ワロン語の民族政党
- スウェーデン党 - フィンランドのスウェーデン語政党
[編集] 関連項目
[編集] 著名な民族主義者
[編集] 書籍
- 『増補 想像の共同体 ナショナリズムの起源と流行』ベネディクト・アンダーソン NTT出版 ISBN 487188516X
- 『ナショナリズムと自由民権』田村安興 清文堂出版 ISBN 4792405491