欧州評議会
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
欧州評議会(おうしゅうひょうぎかい、Council of Europe)はヨーロッパ地域の46カ国によって構成される国際機関である。欧州審議会(おうしゅうしんぎかい)、欧州会議(おうしゅうかいぎ)とも訳される。加盟権は法の支配の原則を受入れ、基本的人権と自由を市民に保障するすべてのヨーロッパ諸国に開かれている。評議会の成功例のひとつは欧州人権裁判所成立の基礎となった1950年の欧州人権条約の締結である。
目次 |
[編集] 設置場所
欧州評議会は独仏国境のストラスブールに設置されている。当初はストラスブールの大学宮殿で会合が開かれていたが、現在では市郊外に建設されたヨーロッパ宮殿に常設されている。なお、欧州評議会は、EU加盟国の首脳会合(サミット)である欧州理事会(European Council)や同じくEUの機関である欧州連合理事会(Council of the European Union)と混同されやすいが別の組織である。
[編集] 創設
欧州評議会は第二次世界大戦直後の1946年9月19日にウィンストン・チャーチルがチューリッヒ大学でアメリカ合衆国のような「欧州合衆国」を作るべきだと呼びかけた演説にもとづき、1949年5月5日ロンドン条約により正式に創設された。評議会の公用語は英語及びフランス語である。
[編集] 目的
- 民主主義と法の支配の保護
- 人権の保護
- 社会権(欧州社会憲章)
- 言語権(欧州地域・少数民族言語憲章)
- ヨーロッパの文化的アイデンティティーと多様性の促進
- 差別、排外主義、環境権、AIDS、麻薬、組織犯罪などヨーロッパ社会が直面する諸問題の提起
- 改革を通じた民主的安定の奨励
[編集] 機関
欧州評議会の機関としては次のものがある。
- 事務局
- 閣僚委員会
- 議員会議(定数315議席)
- 欧州地方自治体会議(上下両院制、定数315議席)
- 欧州人権裁判所
なお、1993年と1996年には加盟国首脳会議が開催されている。
[編集] シンボル
欧州評議会は1955年以来、青地に12の金星が円を描く有名な欧州旗を用い、1972年以降ベートーヴェンの交響曲第9番最終章の歓喜の歌をもととする頌歌を定めた(なお、加盟国と言語が多いため、インストゥルメンタルで演奏され公式な歌詞はない)。
両方とも、欧州連合の旗と歌として1985年に取り入れられた。なお、欧州連合の欧州旗適用後、混同を避けるために欧州評議会は金の星の背景に斜体で小文字の「e」が入った独自のロゴを使うことがある。[1]
[編集] 欧州の日(ヨーロッパ・デー)
また1964年、1949年5月5日の欧州評議会創設にちなみ5月5日を「欧州の日」と定めた。1985年、ミラノでの会議で、1950年5月9日のフランス外相ロベール・シューマンによる「シューマン宣言」(ヨーロッパの軍事上重要な基幹生産物である石炭と鉄鋼を国家を超えた機関に管理させ、その機関をもとにヨーロッパの連邦化と平和の維持とを進めることを提唱した。1952年の欧州石炭鉄鋼共同体発足につながる)を「欧州統合の始まり」として記念し、欧州の日は5月9日に移されることになった。
欧州の日には旗にちなむ青色と金色で欧州連合の建物が飾られ、各地でヨーロッパ頌歌が演奏される。
[編集] 加盟国
当初、10カ国で出発したが、2004年現在、ベラルーシを除く46カ国が加盟する汎欧州的な組織となった。この中には欧州とアジアに跨るイスラム国トルコや旧ソ連圏のロシア、ウクライナ、グルジア、アルメニア、アゼルバイジャン等の諸国、またアンドラ、リヒテンシュタインなどのミニ国家も含まれる。
1949年5月1日創設時の原加盟国
その後の加盟国(加盟年)
- ギリシャ(1949年) 、トルコ( 1949年) 、アイスランド( 1950年) 、ドイツ連邦共和国( 1951年) 、オーストリア(1956年)、キプロス(1961年)、スイス(1963年)、マルタ(1965年)、ポルトガル(1976年)、スペイン(1977年)、リヒテンシュタイン(1978年)、サンマリノ(1988年)、フィンランド(1989年)、ハンガリー(1990年)、ポーランド(1991年)、ブルガリア(1992年)、エストニア(1993年)、リトアニア(1993年)、スロベニア(1993年)、チェコ(1993年)、スロバキア(1993年)、ルーマニア(1993年)、アンドラ(1994年)、ラトビア(1995年)、モルドバ(1995年)、アルバニア(1995年)、ウクライナ(1995年)、マケドニア(1995年)、ロシア(1996年)、クロアチア(1996年)、グルジア(1999年)、アルメニア(2001年)、アゼルバイジャン(2001年)、ボスニア・ヘルツェゴビナ(2002年)、セルビア(2003年)、モナコ(2004年)。
特別オブザーバー
非欧州オブザーバー
ベラルーシ議会は1992年9月から1997年1月まで特別ゲストとして参加していたが、1996年の非民主的な憲法改正住民投票やアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の権威主義的体制下での民主的自由(ベラルーシ・メディアなどの表現の自由)に対する制限を理由に参加停止されている。 ベラルーシは1993年3月12日に完全加盟を申請しており、申請はなお有効である。
[編集] 対日関係
欧州評議会はオブザーバー国日本に対して死刑廃止を求めている。ただし日本は現在のところ戦時における特別な司法制度が存在しないのに対し、EU諸国には軍法の下での死刑制度が規定される国が多い。
[編集] 外部リンク
- 欧州評議会公式サイト(英語)
- 外務省関連サイト(日本語)