欧州連合の旗
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欧州連合の旗、または欧州旗(European flag)は、長方形の青地に、円環状に配置された12個の金色の星で構成される旗である。
欧州旗は普通、欧州連合(EU)とものとされているが、最初にこの旗が定められたのは欧州評議会(COE)においてであった。もともと欧州全体を代表するシンボルとする意図を持って定められ、EUやCOEといった特定の組織が独占使用することにはCOEは否定的であった。
なお、12個の星の数は最初から決まっていたもので、「完璧さ」と「充実」とを表し、国の数を表すものではなく今後とも増えたり減ったりすることはない。
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[編集] 起源
この旗は元来、1955年12月8日、欧州評議会によって、アイルランド首席紋章官のジェラルド・スレヴィン(Gerard Slevin)の案が採用されたものである。
欧州評議会は当初からこの旗を、他のヨーロッパ統合を目指す地域内組織に使用してもらいたいと望んでいた。ヨーロッパの経済統合を進めた欧州共同体(EC)はこの旗を1986年5月26日にシンボルとして採用した。1992年、マーストリヒト条約によって欧州共同体に代わり政治的統合を求めて発足した欧州連合(EU)もこの旗を採用した。それ以来、欧州旗の利用方法などは欧州連合と欧州評議会の共同で管理されている。
欧州旗はユーロ採用各国で発行されるすべての紙幣(ユーロ紙幣)の表面に描かれ、12個の星はユーロ硬貨に表されている。
[編集] 星の数について
星の数は12個に固定されており、欧州連合の加盟国数とは関係づけられていない。(1986年~1995年の間は、EC/EUの加盟国数と星の数が一致していた。)
星の数に関してはこのような話がある。旗のデザインを協議していた1953年、欧州評議会の加盟メンバーであった国と地域は15つあった。旗を決める際、「星の数を15個とし、星の一つ一つが現状の各加盟メンバーを表し、星の数は将来の加盟メンバーの増減にかかわらず変更しないこととする」という提案があったが、これが議論を呼んだ。西ドイツは、加盟メンバーの中にその帰属が議論の対象となっていたザールラントがあることから、西ドイツとザールラントが別々の星として表現される案に反対し、星はその表す地域の「主権」の意味を含むようにしようと提案した。今度はフランスが星を14個とすることに反対し、それはザールラントの西ドイツへの吸収を意味すると抗議した。言い伝えでは、ここでイタリア代表が、15個でも14個でもだめだとすると13個となるが、それは不吉な数であり、また初期のアメリカ国旗が13個の星を円形にあしらっていたのでデザインが同じになってしまうと反対したという。
そこで政治的に問題のない星の数として、また同時に完全と無欠(perfection and completeness)のシンボル数として、結果として「12」という数が採用された。[1]
12という数には、ヨーロッパのさまざまな文化と伝統で次のような特別な意味があるため、欧州旗の星の数が12であるということはヨーロッパの伝統に連なるものといえる。
- 黄道の十二星座(十二宮)
- 時計の十二の時刻
- 一年の十二の月
- キリストの十二使徒
- 『皇帝伝』の十二人のローマ皇帝(スエトニウスの『ローマ皇帝伝』から)
- オリュンポスの十二神
- ローマ法の十二表法(ローマ法)
一方、12個の星の数は、そこにより深い隠された意味を求める、根拠のない多くの主張や陰謀論を生んだ。たとえば、カトリック美術に描かれる、聖母マリアの頭の後ろにある12個の星が輪になって連なった後光と関連付けられ、そこから欧州統合の目的はカトリックの復権や神聖ローマ帝国再建である、などといった反バチカン的陰謀論につながることがある。興味深いことに、いくつかの頑固なキリスト教系宗教団体は、星の輪がバビロニア神話の「天后(w:Queen of Heaven)」イシュタルを表すとして、EUの背後に異教的な動きがあることの証明だという正反対の主張をしている。多くの機関は党派を問わずこのような説をうわさに過ぎないと無視しているが[2]、しかし1955年に欧州旗のデザインを手がけたアルセーヌ・ハインツ(Arsene Heitz)はヨハネの黙示録の一節、『一人の女が太陽を着て、足の下に月を踏み、頭に十二の星の冠を戴いていた。』(第12章の1)にインスパイアされたと認めている。[3]
[編集] よくあるデザインのミス
次のものは、欧州旗を描いたり掲揚したりする時によくある間違いである。