小田急多摩線
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多摩線(たません)は、神奈川県川崎市麻生区の新百合ヶ丘駅から東京都多摩市の唐木田駅までを結ぶ小田急電鉄の鉄道路線である。多摩ニュータウンへのアクセス路線となっている。
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[編集] 路線データ
[編集] 歴史
多摩線は、小田急電鉄で一番新しい路線である。
1963年7月11日に新住宅市街地開発法が公布され、それに基づき東京都は多摩ニュータウンを建設する計画を立てた。そして、ニュータウンの多くの居住者が都心へ通勤することを考慮し、小田急電鉄と京王帝都電鉄(現:京王電鉄)の2社に新線の建設を要請した(計画段階では、西武鉄道多摩川線の延長案もあった)。
小田急は当初、喜多見駅から分岐してよみうりランド付近及び稲城市内を経由して多摩中央(現在の「多摩センター駅」のことを指す)に至るルートを検討したが、狛江付近の反対運動などの理由で建設を断念し、その後百合ヶ丘駅付近から分岐することに計画を変更した。百合ヶ丘付近にはS字カーブがあり、輸送のネックが生ずることが予想されたことから、路線の付け替えを行い、その途中に分岐駅となる新百合ヶ丘駅を設置することとした。
1974年6月1日に、多摩線の新百合ヶ丘駅~小田急永山駅間が開業した。しかし、小田原線の線路容量が逼迫していることもあって、多摩線のほとんどの列車は線内折り返しで運転せざるを得ず、朝ラッシュ時のわずかの各停を除き、新宿駅方面へは新百合ヶ丘駅で乗り換えが必要となった。また、多摩ニュータウンに並行して乗り入れている京王帝都電鉄相模原線が開業当初から都心(新宿駅・都営新宿線)直通の列車を運転していたことと、さらに2005年3月20日の小田急線運賃改定まで、小田急多摩センター駅~小田急永山駅間の運賃と京王多摩センター駅~京王永山駅間の運賃に差異もある(大人初乗り運賃で京王帝都が130円に対して小田急は加算運賃があり140円であった)ことから、小田急多摩線は京王相模原線にかなりの乗客を奪われていた。そのため、日中はあたかも地方ローカル線のような線内列車のみが行き来する閑散路線と化していた。
そして、転機が訪れる。小田原線の複々線化等で改良が進んだ2000年12月2日に同線直通の急行運転開始を発端とし、2002年3月23日には 当時の営団地下鉄(現:東京地下鉄)千代田線への相互乗り入れを行う多摩急行が、2004年12月11日には新宿発着の区間準急がそれぞれ設定されると共に、2000年12月2日には夕方ラッシュ時の新宿発の特急ロマンスカー「ホームウェイ」も運行されて、利用度の改善が図られた。また、先に述べた運賃についても加算運賃の廃止や旅客運賃の値下げから、大人初乗り運賃が京王より安い120円となった。(注:京王相模原線は建設費の償還を目的とした加算運賃が設定されているため、隣接する相模原線の駅から乗車する場合の大人初乗り運賃は130円だが、それ以外の路線では120円である。)
なお、2004年12月11日に黒川駅と小田急永山駅の間に新駅としてはるひ野駅が開業した。
また、2006年1月31日には五月台・栗平・黒川・小田急永山・小田急多摩センターの各駅においてホームの屋根に「発電パネル」を設置し、太陽光発電が開始された。太陽光によって発電された電力は、自動券売機や自動改札機に利用されている。
なお、当初、多摩線は、新百合ヶ丘駅~小田急多摩センター駅間のみ建設される予定だったため、小田急多摩センター駅開業当時、「小田急多摩線全通」という記述が、書籍などで見られた。
[編集] 年表
- 1974年6月1日 小田急電鉄多摩線として新百合ヶ丘駅~小田急永山駅間開業。各駅停車のみの運行。
- 1975年4月23日 小田急永山駅~小田急多摩センター駅間開業。
- 1979年1月8日 運賃改定に伴い多摩線加算運賃を設定。
- 1979年3月26日 ダイヤ改正が実施され、全列車が4両編成での運転となる。
- 1990年3月27日 小田急多摩センター駅~唐木田駅間開業。
- 2000年12月2日 夕方のラッシュ時限定で新宿駅発の特急ロマンスカー「ホームウェイ」の運行開始(多摩線で特急ロマンスカーが毎日運行となる)。また同時に小田原線直通運転の急行の運行開始。停車駅は新百合ヶ丘駅・小田急永山駅・小田急多摩センター駅・唐木田駅。
- 2002年3月23日 小田原線を経由して営団地下鉄(現:東京地下鉄)千代田線に乗り入れする多摩急行の運行開始。停車駅は新百合ヶ丘駅・栗平駅・小田急永山駅・小田急多摩センター駅・唐木田駅。
- 2004年10月~2006年3月 五月台・栗平・黒川・小田急永山・小田急多摩センター駅の各駅にてリニューアル工事が実施される。
- 2004年12月11日 黒川駅~小田急永山駅間に、はるひ野駅が設置される。また同時に新宿発着の区間準急の運行開始。
- 2005年3月20日 運賃改定に伴い多摩線加算運賃を同日利用分から廃止(定期運賃の加算運賃は4月1日以降利用分から廃止)。
- 2006年1月31日 五月台・栗平・黒川・小田急永山・小田急多摩センターの各駅でホーム屋根に太陽光発電装置が設置され、「省電力」化が開始される。
- 2005年6月~2008年2月(予定) 新百合ヶ丘駅にてリニューアル工事が実施される。
[編集] 列車種別
2004年12月のダイヤ改正で、現在5種類の列車種別が存在する。
[編集] 特急(ロマンスカー)
2000年12月2日に定期列車として多摩線に登場した。当初は1日1本のみであったが、2002年3月23日のダイヤ改正で1日2本となった。2003年3月29日のダイヤ改正から平日に1日3本と土曜・休日に1日2本に新宿始発の「ホームウェイ」が乗り入れるようになった。なお、唐木田駅始発のロマンスカーは設定されていない。
しかし、現在定期運行されているホームウェイ号はすぐ先に急行が走っている場合が多く、速達性は今一つ欠けている面もある。
[編集] 過去の臨時特急列車
臨時列車ながら過去にも、特急列車は定期列車運行前にも、運行された。現在は、新百合ヶ丘駅に特急ロマンスカーが停車することになったため、多摩線始発の臨時特急の運行は基本的には行わないことになっている。
- 臨時運行された際の臨時特急の列車名称
- 江の島・鎌倉Express
- 湘南マリンエクスプレス
- ともにゴールデンウィークや夏休み中に運行され、唐木田・多摩センターから江ノ島線の藤沢駅・片瀬江ノ島駅間を結んでいた。
- また、一時期、3000形「SSE」で「片瀬江ノ島駅発 新百合ヶ丘駅・唐木田駅経由 経堂駅行」(唐木田駅~経堂駅間は当時あった経堂車庫への回送運転を旅客扱いとした)という特急も運行された。この列車は、藤沢・新百合ヶ丘・唐木田の各駅でスイッチバックをする必要があるというすごい列車であった。
[編集] 急行
2000年12月2日のダイヤ改正から多摩線の定期運行が始まった。平日朝ラッシュ時に小田原線を経由して、東京メトロ千代田線の綾瀬駅へ向かう上り直通急行列車2本と、千代田線を通ってJR東日本常磐緩行線の松戸駅・我孫子駅へ向かう上り直通急行列車各1本、新百合ヶ丘駅~唐木田駅間に下り1本・上り2本が運転される。
[編集] 多摩急行
2002年3月23日に登場した種別である。唐木田駅から小田原線を経由して、東京メトロ千代田線の綾瀬駅に直通する。さらには同線を経由しJR東日本常磐緩行線の松戸駅・柏駅・我孫子駅・取手駅まで直通する列車も存在する。多摩線内では急行と同一の停車駅である。平日は上り26本・下り32本、土曜・休日は上り24本・下り26本が運転される。
[編集] 区間準急
2004年12月11日に従来の各駅停車の一部を置き換えられる形で登場した種別である。多摩線内はすべての駅に停車する。平日は上り14本・下り13本、土曜・休日は上り17本・下り18本が運転される。
[編集] 各駅停車
多摩線開業と同時に登場。ほとんどは線内折り返しだが、平日の早朝から正午前にかけて上り6本・下り4本と、夕方から深夜帯にかけて上り1本・下り5本にそれぞれ小田急小田原線新宿駅発着列車がある。なお、平日朝に成城学園前駅始発の下り1本も存在する。
[編集] 女性専用車
平日朝7:10~9:30に代々木上原駅に到着する上り東京メトロ千代田線直通急行の進行方向最後尾車両(実施区間は唐木田~東京メトロ綾瀬駅間)(東京メトロ千代田線内は9:30を過ぎた時点で女性専用車の扱いは取りやめとなる)
[編集] 駅名及び停車駅
各駅停車は省略(区間準急を参照)
駅名 | 駅間キロ | 累計キロ | 区間準急 | 急行 | 多摩急行 | 特急ロマンスカ| | 接続路線 (括弧内は接続路線の駅名・駅番号等) |
所在地 | |
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小田急小田原線新宿方面・東京地下鉄千代田線直通運転 | |||||||||
新百合ヶ丘駅 | - | 0.0 | ● | ● | ● | ● | 小田急電鉄:小田原線 | 神奈川県 川崎市 麻生区 |
|
五月台駅 | 1.5 | 1.5 | ● | | | | | | | |||
栗平駅 | 1.3 | 2.8 | ● | ● | ● | | | |||
黒川駅 | 1.3 | 4.1 | ● | | | | | | | |||
はるひ野駅 | 0.8 | 4.9 | ● | | | | | | | |||
小田急永山駅 | 1.9 | 6.8 | ● | ● | ● | ● | 京王電鉄:相模原線(京王永山駅) | 東京都 多摩市 |
|
小田急多摩センター駅 | 2.3 | 9.1 | ● | ● | ● | ● | 京王電鉄:相模原線(京王多摩センター駅) 多摩都市モノレール:多摩都市モノレール線(多摩センター駅) |
||
唐木田駅 | 1.5 | 10.6 | ● | ● | ● | ● |
[編集] これからの計画
[編集] 路線延伸計画
2006年8月、神奈川県相模原市にある在日米軍相模総合補給廠の一部返還が決まったことにより、唐木田駅から町田市小山田地区・相模原市中心部への延伸案が相模原市より提案された。
ルートは、唐木田駅から東京都道158号小山乞田線(尾根幹線道路)と交差し、町田市に入る。そして小山田地区の団地群を抜け、東京都道47号八王子町田線(町田街道)と交差、相模総合補給廠を縦断し、相模原駅で横浜線と交差、その先は相模原市の中心部を抜け、相模線上溝駅へ向かう。そのうち、相模原駅と上溝駅に駅を増設、さらに町田市の小山田地区と町田街道との交差部付近に新駅が設置される予定である。
この計画自体は前述の通り「相模原市独自の提案」であるため町田市の合意も必要となり、計画通りに進むとは言い難い。 小田急電鉄は、自らが整備費を負担しない「公設民営方式」を打ち出している。
なお、2006年11月より、相模原市や町田市、小田急電鉄とで、多摩線延伸についての検討がはじまった。
[編集] 地下鉄乗り入れ計画
新百合ヶ丘駅から川崎縦貫高速鉄道という地下鉄が武蔵小杉駅、さらには川崎駅方面まで計画されており、開通した時には相互直通運転(川崎延伸後は京急大師線とも)が予定されている。