京急1500形電車
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1500形電車(1500がたでんしゃ)は京浜急行電鉄の通勤形電車。1985年(昭和60年)3月に営業運転を開始した。
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[編集] 概要
旧1000形の老朽取り替えを目的に、第2世代の東京都交通局(都営地下鉄)浅草線・京成電鉄・北総開発鉄道(→北総鉄道)への乗り入れ車両として製造が開始された。
[編集] バリエーション
- 1984・1985年度に製造された20両は車体の材質が普通鋼製となっている。雨樋が従来のタイプなので、前面が丸みを帯びている。浦賀寄りから3号車にはパンタグラフ2基を搭載していたが、後に浦賀寄りのパンタグラフを撤去した。登場当時は戸袋窓があったが、更新工事の際に埋め込まれた。また、更新工事の際に増圧ブレーキを装備する予定であったが、2001年9月15日のダイヤ改正で日中の都営線直通快特を120km/h運転することとなり、その資材を界磁チョッパ車の8両編成に転用した。このため、鋼製車は現在も増圧ブレーキを装備せず、日中は本線の普通電車や大師線を中心に運用している。
- 1987年度製の車両からは車体の材質がアルミ合金製となった。現在は6両運転の実績の多い1637編成を除いて増圧ブレーキを装備しているので、普通から快特まで幅広く運用している。また、この車両からオールシーズン対応の空調制御システムを導入した。1989年から他社線へ乗り入れを開始した。
- 1549編成は冷房能力向上のための試験で屋根を白く塗装している。
- 1990年8月には京急初のVVVFインバータ制御車両である1700番台が登場した。この車両には製造当初から前面に排障器(スカート)を装着する。
- 1700番台の第2編成(1707編成)からは座席がバケットシートとなった。
- 1536号車の車体は事故により載せ替えられ、2代目となっている。
- 2006年には、6両編成では初めてのVVVFインバータ制御車両が更新工事により登場(1649編成)。
[編集] 制御装置
- 1500・1600番台は界磁チョッパ制御。制御段数は直列12段、並列8段、弱め界磁無段階。
- 1700番台は東洋電機製造または三菱電機製GTO素子によるVVVFインバータ制御。ほとんどが東洋製インバータを搭載し、三菱製インバータは川崎重工業製の1731編成のみ。
- 2006年度に走行機器の換装を施工した1649編成の制御装置は、三菱電機製IGBT-VVVFとなっている。
- 主電動機:100kw(界磁チョッパ車)120kw(1700番台)155kw(VVVF更新車)
[編集] 性能
- 最高速度は界磁チョッパ車は120km/h、VVVFインバータ車は130km/h(営業最高速度120km/h)
- 起動加速度は界磁チョッパ車8連(6M2T)は3.3km/h/s、界磁チョッパ車4・6連及びVVVFインバータ車は3.5km/h/s
[編集] 更新工事
- 2001年度から車体・車内の傷みが激しくなって来たため、鋼製車の更新工事が始まった。最初に更新されたのは1517編成である。また、翌2002年度にはアルミ車の更新工事も始まった。
- 2006年度からは小田急電鉄8000形や京王電鉄7000系などと同様に主回路を界磁チョッパからVVVFインバータへ改造した車両が登場した。手始めとして1649編成から施工され、出場まで半年近く掛かっていたが、2006年7月下旬に通電されていたことが確認された。出場してからも長らく久里浜工場の試験線で教習を実施していた。これは誘導障害防止の結果を明らかにする目的がある為であり、各種試験をクリアしたのち9月9日頃から営業運転を開始した。中間電動車2両を抜き取り6連としては初のVVVFインバータ車となった。また、従来の1500形6連は全電動車を基本としていたが、VVVFインバータ制御に改造することでMT比4M2Tでも同等の性能が得られるようになった。
- 1649編成の後に更新工事を行った1545編成は、更新の際に、4両から6両への組み換えは行ったものの、全車電動車であるため、VVVF化改造は行われなかった。
[編集] 外観
- 1500・1600番台にスカートを設置した。一見すると1700番台と同じタイプだが、連結器部分の切り欠きの形状に違いがある。
- 鋼製車は戸袋窓を埋め込んだ。
- 転落防止用外幌の取り付けとそれに伴う妻窓の埋め込み。
- 2100形と同じタイプの外幌を新設の台座を介して設置。
- 冷房装置を2000形と同じ形状のものに交換。ただし1533・1701編成のみ試験を兼ねて形状の違う装置を搭載している。
- 後部標識・戸閉灯はLED式であったが、経年変化による輝度低下が激しいため、電球式に交換した。外されたLEDのうち状態が良いものは久里浜工場で修繕される都営浅草線用5300形の照度調達用として使用した。
- 車端部の「KHK」のロゴを「KEIKYU」に変更。
[編集] 内装
- 床材を張り替えた。色は黄色に近いクリーム系統。
- 座席を2000形と同じバケットシートに交換。優先席は青色の座席表地となった。シート間には手摺りを設置。また、アルミ車のみ座席が片持ち式としたが、運転室後部は従来と同じ構造である。
- 座席端部の仕切り(袖仕切り)を東日本旅客鉄道(JR東日本)の209系やE231系の色違いのタイプに交換した。従来は「つや消し」だったが、2005年度の更新からは車内の明るさや清潔感を増やすために「つやあり」のものに変更した。
- 化粧板を張り替え。
- 車いすスペースを両先頭車に設置。
- 天井を張り替え。これにより冷房吹き出し口の羽根がなくなった。
- 車内案内表示器とドアチャイムを設置した。ドアチャイムは京急では初採用である。
- 窓枠を交換した。これにより、カーテンを固定する器具が露出していて1段引き下ろしだったのが枠内に収められ、フックを増設した。
- 2005年度分の更新工事施工車からは、火災対策のため号車間を仕切る扉を新1000形の4次車と同様に各号車の浦賀寄りに増設した。