優先席
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優先席(ゆうせんせき)とは、日本の鉄道車両やバスなどに設置されている、高齢者や身体障害者などの着席を優先させる座席。優先座席(ゆうせんざせき)やシルバーシートの呼称を使う事業者もある。
優先席は、他の席と座席表地の色を変えたり、座席部の壁や窓に優先席を示す表示を貼付したりする。写真は西日本旅客鉄道(JR西日本)で運用されている201系の優先座席で、濃い紺色の座席と、身障者や高齢者、けが人、妊婦をイメージしたイラストが添えられている。
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[編集] 概要
旧・日本国有鉄道(国鉄)で設定した当初、高齢者や身体障害者を対象にし、他の座席と区別するため、新幹線の座席に使うシルバーグレー色の予備布地を利用してシートを設定した事からシルバーシートの名前を付与した。私鉄など他の事業者については座席表地の色については必ずしも踏襲していないが、識別マークはシルバーシートを引き継いだ。呼称は「シルバーシート」「(お年寄りや体の不自由な方の)優先席」とまちまちであった。
しかし、近年では利用対象を高齢者や身体障害者以外にも、怪我人、妊婦、乳幼児連れなど、一時的に何らかのハンディキャップを持つ人に拡大するため、高齢者専用を思わせる「シルバーシート」という名称から、各鉄道・バス事業者共「優先席」への変更が全国的に進んでいる。
関東地方と近畿地方の鉄道事業者(後述する一部の事業者を除く)やJRグループでは、心臓ペースメーカーなどを装着した人への配慮のため、この優先席付近では携帯電話の電源をオフにするように呼び掛けている。ペースメーカーに携帯電話からの電波を当て続けると、まれに作動が不安定になる事が実験で確かめられた。
また、携帯電話のマナーを強化するため、近年大手私鉄などで優先席付近のつり革を白色からオレンジ色のものに変更する会社も増えて来ている。この他、東日本旅客鉄道(JR東日本)埼京線の205系は黄緑色、東京臨海高速鉄道りんかい線の70-000系は水色にそれぞれ変更している。
札幌市交通局(札幌市営地下鉄)では、優先席にあたる座席を「専用席」としている。ラッシュ時間帯でも若者や健常者が座る事は稀である。車内での携帯電話は全面電源オフを呼び掛けている。
[編集] 優先座席の廃止
阪急東宝グループの阪急電鉄および能勢電鉄では、1999年(平成11年)4月1日より優先座席を廃止し、全車両の全座席が優先座席と同様に扱われるよう乗客のモラル向上を呼び掛けた(実質的には区分のみを廃し、全座席を優先座席化するものである)。これは優先座席を利用すべき対象者(高齢者・身体障害者・怪我人・妊婦・乳幼児連れなど)が事業者により設定された場所に追いやられる形は好ましくなく、本当に必要な人が間近の席でも利用できるように、との思考の転換によるものである。
加えて、2003年(平成15年)6月10日より、ペースメーカーなどを装着する人への配慮のため、携帯電話の電源オフをルール付けた車両を全列車に1~4両ずつ設けている。同じく阪急東宝グループの神戸電鉄と、阪急電鉄との相互直通運転を行う大阪市交通局(大阪市営地下鉄)堺筋線では、翌2004年(平成16年)2月16日より導入されている。
横浜市交通局(横浜市営地下鉄)も、阪急電鉄に職員を派遣・研修(実際は南区からの要請)させるなどして、同様の全座席の優先座席化を2003年12月1日から実施した。ただし、携帯電話については全車両での電源オフをルール付けしている。
なお、2004年2月16日より近畿地方の鉄道事業者は「優先席付近では携帯電話の電源をOFFにする」という統一ルールを設定し実施しているが、阪急電鉄・能勢電鉄・神戸電鉄及び大阪市営地下鉄堺筋線では、本節で前述のとおり車両に優先席がなく、また携帯電話の電源オフをルール付けた車両を運行しており、実際の状況には即さない事から、同ルールの適用対象外事業者となっている。
[編集] 歴史
- 1973年(昭和48年)9月15日 - 国鉄の中央快速線の快速、特別快速に日本で初めてシルバーシートが設置された(9月15日は敬老の日)。
- これにならって、大手私鉄などにもシルバーシート(優先席)が設置されはじめ、関東・近畿地方の国鉄各線にも広がった。
- 1997年(平成9年)5月 - JR東日本がシルバーシートを「優先席」に改称。その後、関東地方の大手私鉄も順次シルバーシートを「優先席」に改称。
- 1999年(平成11年)4月1日 - 阪急電鉄と能勢電鉄がすべての座席を「優先座席」とする。
- 2003年(平成15年)9月15日 - 関東地方の鉄道事業者で。優先席は1両あたり2ヶ所に増設、優先席付近での携帯電話の電源オフなどの統一ルールを実施。ただし、京王電鉄と小田急電鉄は先行して実施していた。
- 2003年12月1日 - 横浜市営地下鉄がすべての座席を「優先座席」とし、全車両を携帯電話電源オフとした。
- 2004年(平成16年)2月16日 - 近畿地方の鉄道事業者でも優先座席付近では携帯電話の電源オフ統一ルール(阪急電鉄・能勢電鉄・神戸電鉄および大阪市営地下鉄堺筋線を除く)を実施。ただし、京阪電気鉄道は先行して実施していた。
- この頃から関東地方のバス事業者(小田急グループ路線バスの一部(神奈川中央交通(湘南神奈交バス、津久井神奈交バス、横浜神奈交バス、相模神奈交バス、藤沢神奈交バスを含む)、江ノ島電鉄(江ノ電バスを含む))、相鉄グループ路線バスの一部(相模鉄道(相鉄バスを含む))、京王グループ路線バスの一部(京王電鉄バス、京王バス東、京王バス中央、京王バス南、西東京バス、多摩バス)、関東バス、西武バス、国際興業、東武グループ路線バスの一部(東武バス(東武バスイースト、東武バスウエスト、東武バスセントラルを含む))、都営バス、東急バス、京急グループ路線バスのすべて(京浜急行バス(羽田京急バス、横浜京急バス、湘南京急バスを含む)、川崎鶴見臨港バス(臨港グリーンバスを含む)、京成グループ路線バスの一部(ちばレインボーバス))など)も優先席付近で携帯電話の電源をオフにするよう呼び掛けを始めている。
- 2005年(平成17年)2月3日 - 福岡地方の鉄道事業者でも統一ルールを実施。優先座席付近では携帯電話の電源オフ、それ以外の場所ではマナーモードに設定の上通話は自粛。ただし、九州旅客鉄道(JR九州)は先行して実施していた。