ロジャー・フェデラー
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ロジャー・フェデラー(Roger Federer, 1981年8月8日 - )は、スイス・バーゼル出身の男子プロテニス選手(1歳年上の先輩マルチナ・ヒンギスは旧チェコスロバキア出身の“移住選手”である)。8歳からテニスを始め、1998年のウィンブルドン・ジュニアに16歳で優勝。2000年のシドニー五輪でベスト4に進出し、銅メダル決定戦でフランスのアルノー・ディパスカルに敗れたが、その直後から急成長を始めた。2001年のウィンブルドン4回戦で、大会4連覇中だった第1シードのピート・サンプラスを「3時間41分」のフルセット(スコア:7-6, 5-7, 6-4, 6-7, 7-5)で破った。1993年 - 2000年までの8年間を通して、サンプラスが同選手権の優勝を逃したのは1996年の1度だけであったため、この試合はサンプラス時代の終焉を告げる出来事となった。快挙を得た19歳のフェデラーは、世界中のテニスファンから大きな注目を集めた。
2年後の2003年、ウィンブルドン選手権の男子シングルス決勝でマーク・フィリプーシス(オーストラリア)を 7-6, 6-2, 7-6 のストレートで破り、4大大会初優勝を達成する。こうしてフェデラーは、スイス出身のテニス選手として最初の4大大会優勝者になった。2004年には全豪オープン、ウィンブルドン、全米オープンの年間3冠を獲得したが、これは1988年のマッツ・ビランデル以来16年ぶりの快挙であった。この年はATPツアーでも年間11勝を挙げている。
2005年もウィンブルドンと全米オープンで優勝し、4大大会年間2冠を獲得した。ウィンブルドンでは2年連続の決勝対決となったアンディ・ロディックに快勝し、大会史上8人目となる3連覇を達成。全米オープンではアンドレ・アガシを 6-3, 2-6, 7-6, 6-1 で破り、大会2連覇を果たす。2006年の全豪オープンでは決勝でキプロスの新星マルコス・バグダティスに勝ち、2年ぶり2度目の優勝。4大大会決勝初進出から「7連勝」はテニス史上の新記録となったが、2006年の全仏オープン決勝戦で苦手のラファエル・ナダルに 6-1, 1-6, 4-6, 6-7 で敗れてしまい、初めての準優勝を全仏で経験した。しかし、最も得意なウィンブルドンでは強さを維持し、1回戦でリシャール・ガスケ(フランス)を破った勝利により、スウェーデンのビョルン・ボルグが持っていた芝生コートの最多連勝記録「41連勝」を更新する。同大会の決勝戦では、全仏決勝で敗れたナダルに雪辱を果たし、芝生コートの連勝記録も「48勝」に伸ばした。同年の全米オープンでは年間3冠とともに史上3人目の大会3連覇を達成し、彼の4大大会優勝は史上単独6位の「9勝」となった。
フェデラーは2003年10月から、男子プロテニスツアーの決勝戦で「24連勝」の記録も作ってきた。しかし、2005年度の年間最終戦「テニス・マスターズ・カップ」の決勝戦で、以前から苦手意識が強かったアルゼンチンのダビド・ナルバンディアンに 7-6, 7-6, 2-6, 1-6, 6-7 の逆転で敗れてしまった。
フェデラーはオールラウンド・プレーヤーとして、ピート・サンプラスに憧れてきた選手である。事実、彼のプレースタイルは非常にオーソドックスであり、またサーブ、ストローク、ネットプレーのいずれをとっても、無駄のない美しいフォームから放たれる。まさに「教科書通りのオールラウンド・プレーヤー」と言えるだろう。プレー中は“ポーカー・フェース”を貫く、冷静な試合巧者でもある。ジュニア時代のフェデラーは試合中に癇癪を起こしたり、ラケットを投げつけたりするなど、マナーが悪い選手であったが、メンタルトレーニングを経て今の彼になった。
ロジャー・フェデラーは2005年と2006年の2年連続で、「ローレウス・スポーツ賞」の男子最優秀選手賞を受賞した。2000年に創設されたこの世界的なスポーツ賞で、男子最優秀選手賞の2年連続受賞は、2000年と2001年の第1回・第2回を連続受賞したゴルフのタイガー・ウッズ以来2人目となる。2006年4月にはUNICEF親善大使に任命された。
2006年10月、フェデラーはAIGジャパン・オープン(AIGオープン)で初来日した。決勝ではティム・ヘンマンを 6-3, 6-3 のストレートで破って優勝した。この大会の準々決勝では、日本の鈴木貴男選手に 4-6, 7-5, 7-6 と苦戦する場面もあった。11月に開催された、テニス・マスターズ・カップでは決勝戦でジェームズ・ブレークを 6-0, 6-3, 6-4 で下し2年振りの優勝を果たす。これにより四大大会3勝を含むATPツアー年間12勝となった。また、年間獲得賞金ではピート・サンプラスが1997年に記録した金額を大幅に更新する約843万ドルという歴代最高記録を残した。
[編集] 4大大会優勝
年 | 大会 | 対戦相手 | スコア |
---|---|---|---|
2003年 | ウィンブルドン | マーク・フィリプーシス | 7-6, 6-2, 7-6 |
2004年 | 全豪オープン | マラト・サフィン | 7-6, 6-4, 6-2 |
2004年 | ウィンブルドン | アンディ・ロディック | 4-6, 7-5, 7-6, 6-4 |
2004年 | 全米オープン | レイトン・ヒューイット | 6-0, 7-6, 6-0 |
2005年 | ウィンブルドン | アンディ・ロディック | 6-2, 7-6, 6-4 |
2005年 | 全米オープン | アンドレ・アガシ | 6-3, 2-6, 7-6, 6-1 |
2006年 | 全豪オープン | マルコス・バグダティス | 5-7, 7-5, 6-0, 6-2 |
2006年 | ウィンブルドン | ラファエル・ナダル | 6-0, 7-6, 6-7, 6-3 |
2006年 | 全米オープン | アンディ・ロディック | 6-2, 4-6, 7-5, 6-1 |
[編集] 4大大会男子シングルス優勝記録
- 1位:14勝 ピート・サンプラス(アメリカ)
- 2位:12勝 ロイ・エマーソン(オーストラリア)
- 3位タイ:11勝 ロッド・レーバー(オーストラリア)、ビョルン・ボルグ(スウェーデン)
- 5位:10勝 ビル・チルデン(アメリカ)
- 6位:9勝 * ロジャー・フェデラー(スイス)
- 7位タイ:8勝 フレッド・ペリー(イギリス)、ケン・ローズウォール(オーストラリア)、ジミー・コナーズ(アメリカ)、イワン・レンドル(チェコスロバキア)、 アンドレ・アガシ(アメリカ)
- 12位タイ:7勝 ルネ・ラコステ(フランス)、アンリ・コシェ(フランス)、ジョン・ニューカム(オーストラリア)、ジョン・マッケンロー(アメリカ)、マッツ・ビランデル(スウェーデン)
- *は現役選手。
[編集] 関連項目
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