アンモナイト
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アンモナイト亜綱 | |||||||||||
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分類 | |||||||||||
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アンモナイトは古生代デヴォン紀から中生代白亜紀末に海中に生息していた有殻の頭足類の絶滅分類群。平らな巻き貝の形である。
標準的な殻の形態が古代エジプトの神アモンの持つヤギの角に形が似ていることから、フランスのブリュギエールがAmmoniteという呼び名を作った。日本ではその形から菊石と呼ばれることがある。
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[編集] 概要
アンモナイトは、普通は巻き貝の形をしているが、次第に下へ巻くのではなく、平面的に外側へと巻いていったような形をしている。外側には殻の伸びる方向に垂直なしわを多数つけていることが多い。したがって、ヒツジの角や菊の花のように見える。
数cmから十数cm程度の化石が多いものの、ドイツで発見されたPachydiscus seppenradensisの化石(白亜紀)のように直径2mに達する種もあった。
外見では巻き貝に見えるが、その断面を見れば、巻き貝では内部がずっとつながっているのに対して、アンモナイトでは多数の部屋に分かれていることから、巻き貝ではないことがわかる。この構造は、現生の動物ではオウムガイの殻によく似たものが見られることから、アンモナイトも頭足類であると考えられた。
化石の出土数が多いことに加え、年代により形に変化があるため、示準化石として地質学上有用なものである。化石の出土が多い理由は、そもそも生息数が多く生息域が広かったこともあるが、殻が劣化しにくい材質であることも大きい。通常は、同一平面に螺旋に巻いた渦巻であるが、白亜紀には、「異常巻き」と呼ばれる細長く伸びたような殻のものや、ひもがもつれたような非常に複雑な形状のものなどの様々な形態のものが現れている。古くは系統としての寿命が尽きて異常な巻きが生じた奇形的なものとされたが、現在は白亜紀に浅海域が発達し、そこに生じた複雑なニッチに適応して様々な生活型のアンモナイトが分化したためと考えられている。
[編集] 本体の性質
化石に出るのは殻ばかりであるから、軟体部がどのようなものであるかは、明らかではない。オウムガイとは別の群とは考えられているが、それに近い形で似たような生活をしていたと考えれば、ごく短い足を多数持って、水中半ばを漂うように泳いでいた、という姿となるが、タコに近く復元すれば、殻から長い足を出して、海底をはい回ったという図になる。
20世紀末以降の判断では、断片的に軟体部の情報の残された化石の情報から、殻の形の似ているオウムガイよりも、現在のイカやタコに近縁であるとする説が有力である。
[編集] 殻の構造
殻の内部は隔壁によって奥から順次区分され、オウムガイと同様殻の内部の体液が排出されて空洞となり、中性浮力を生じるための浮き袋として機能したと考えられている。そのため、巨大な種であっても行動には不自由しなかったと考えられている。オウムガイの飼育研究から殻の成長に伴って軟体部が断続的に殻の口のほうに移動し、その後に残された空洞は最初は体液で満たされているが浸透圧の操作によって体液が排除されたと予想されており、積極的にガスを分泌するのではないと考えられている。オウムガイとの相違点として、オウムガイの隔壁が殻の奥に向かってくぼむのに対してアンモナイトの隔壁は殻の口の方向に突出する傾向があること、隔壁間の空洞を連結する連室細管はオウムガイでは隔壁の中央部を貫通するのに対してアンモナイトでは殻の外側に沿っていることが多いことなどが挙げられる。
隔壁はしばしば殻の本体と接する縁の部分で複雑な襞状に折れ込んで殻を補強しており、殻の内面に現れた隔壁と接する線(縫合線)の形状は分類学上重視される形質のひとつとなっている。
[編集] 主な化石発掘地
北海道は、アンモナイトの世界的な産地の1つとなっており、600種類以上のアンモナイトが発見されている。
[編集] 日本
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