警察学校
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
警察学校(けいさつがっこう)とは、警察官を教育・訓練する機関。警察官の訓練機関は様々な国に設置されているが、本稿では特にことわりが無い限り日本の警察における警察学校について述べる。
警察学校には大きく分けて、都道府県警察本部直轄の警視庁警察学校および道府県警察学校と、管区警察局に属する管区警察学校の2種類がある。都道府県の警察学校は警察法(昭和29年6月8日法律第162号)第54条を、管区警察学校は同法第32条を設置根拠規定とする。この他、警察庁には警察大学校が(同法第27条)、皇宮警察本部には皇宮警察学校(同法第29条第4項)がそれぞれ設置されている。
「学校」と名が付いているが、学校教育法(昭和22年3月31日法律第26号)などに定める学校ではなく、あくまで警察組織内の教養施設(職業訓練施設)であり、警察官・警察職員に対する研修事務が主内容である。入校中の初任学生も所属員であることから、地方公務員法に基づき給与が支給される。警察学校での初任教養・初任総合教養を修了し現場での職務に就いた後も、本人の希望や担当する職務により研修を受けることを命じられる場合がある(現任教養・専科教養などといわれる)。単に「警察学校」といった場合は、都道府県の警察学校を指す場合が多い。警察内部では「警校」、「警学」、「学校」などと略称される。
目次 |
[編集] 都道府県警察学校
- 都道府県警察学校は前述のとおり都道府県警察内の組織であるため、実際の組織形態や運用については各都道府県間で大きな差があります。従って、本項の内容は必ずしも全国全ての警察学校で共通した内容であるとは限らないことに留意してください。
都道府県警察の警察学校では、新任の警察官や職員(事務吏員・技術吏員)に対し警察業務上必要な知識、技能などを修得させるための教育訓練を行うほか、現任の警察官や職員に対して職務に必要な専門的知識や技能、指導能力、管理能力の教養、警察業務に関する研究を行う機関であり、各都道府県に1校置かれている。また、必要に応じて分校がおかれる場合もある。このうち、北海道警察学校だけは、北海道に管区警察学校が存在しないため、新任・現任の警察官や職員に対する訓練のほか、他の都府県では管区警察学校が行うべき幹部として必要な教育訓練も行うものとされている(警察法第54条第3項)。
都道府県警察により組織形態は若干異なるが、典型的には学校長(警視長、警視正または警視)が校務を掌理し、副校長・校長補佐・教頭(警視または警部もしくはこれらと同等の職にある吏員)が学校長の補佐を行う他、教官(主に警部補またはこれと同等の職にある吏員)、助教(主に巡査部長またはこれと同等の職にある吏員)など(都道府県により教授、教師、助教授などの職名の場合もある)が置かれている。また、部・課・係等の部署が置かれ、校務を分掌する。学校の組織については、都道府県の条例や規則で定められている。
専門的な科目の講義や講演などの場合にはしばしば講師が外部から招かれる場合もある。
[編集] 施設
警察学校には教場棟や管理棟、寮舎のほか、都道府県により規模や有無が異なる部分もあるが、概ね射撃場、武道場、体育館、講堂、運動場、プールなどが設置されている。
一部の警察本部では、射撃練習場が警察学校にしか設備されていないことから、射撃練習の為現場の警察官が日帰りまたは短期(通所または寮に滞在)で警察学校にやってくる場合がある。
[編集] 都道府県警察学校の所在地一覧
管区 | 都道府県 | 所在地 (市区町村) |
---|---|---|
北海道警察学校 | 札幌市南区 | |
函館方面分校 | 函館市 | |
旭川方面分校 | 旭川市 | |
釧路方面分校 | 釧路市 | |
北見方面分校 | 北見市 | |
東北管区 | 青森県警察学校 | 青森市 |
岩手県警察学校 | 盛岡市 | |
宮城県警察学校 | 名取市 | |
秋田県警察学校 | 秋田市 | |
山形県警察学校 | 天童市 | |
福島県警察学校 | 福島市 | |
警視庁警察学校(東京都) | 府中市 | |
関東管区 | 茨城県警察学校 | 東茨城郡茨城町 |
栃木県警察学校 | 宇都宮市 | |
群馬県警察学校 | 前橋市 | |
埼玉県警察学校 | さいたま市北区 | |
千葉県警察学校 | 東金市 | |
神奈川県警察学校 | 横浜市栄区 | |
新潟県警察学校 | 新潟市 | |
山梨県警察学校 | 甲斐市 | |
長野県警察学校 | 長野市 | |
静岡県警察学校 | 藤枝市 | |
中部管区 | 富山県警察学校 | 富山市 |
石川県警察学校 | 金沢市 | |
福井県警察学校 | 福井市 | |
岐阜県警察学校 | 関市 | |
愛知県警察学校 | 春日井市 | |
三重県警察学校 | 津市 | |
近畿管区 | 滋賀県警察学校 | 大津市 |
京都府警察学校 | 京都市伏見区 | |
大阪府警察学校 | 交野市 | |
兵庫県警察学校 | 芦屋市 | |
奈良県警察学校 | 奈良市 | |
和歌山県警察学校 | 和歌山市 | |
中国管区 | 鳥取県警察学校 | 鳥取市 |
島根県警察学校 | 松江市 | |
岡山県警察学校 | 岡山市 | |
広島県警察学校 | 広島市南区 | |
山口県警察学校 | 山口市 | |
四国管区 | 徳島県警察学校 | 徳島市 |
香川県警察学校 | 高松市 | |
愛媛県警察学校 | 伊予郡松前町 | |
高知県警察学校 | 南国市 | |
九州管区 | 福岡県警察学校 | 福岡市中央区 |
佐賀県警察学校 | 佐賀市 | |
長崎県警察学校 | 長崎市 | |
熊本県警察学校 | 熊本市 | |
大分県警察学校 | 大分市 | |
宮崎県警察学校 | 宮崎市 | |
鹿児島県警察学校 | 鹿児島市 | |
沖縄県警察学校 | うるま市 |
[編集] 初任科
[編集] 初任科生の身分
都道府県警察の警察官に採用された者は先ず、警視庁警察学校または道府県警察学校(以下、「都道府県警察学校」の項において「警察学校」という)に配属され、初任科生として一定期間の研修を命じられる。立場的にはまだ見習い警察官で現場へ出ることはほとんど無い(例外として、大規模な警備事案の際に後方支援(雑用)のために出動した事例もある。日本航空123便墜落事故や、あさま山荘事件など。)が、巡査の階級に任じられ、採用された当日から法律上の身分は警察官となる。それに伴い、都道府県の条例に基づき俸給額が決定され、採用当日から支給される。
警察官に採用された者は、入校式が執り行われた後、初任科の教養を受ける。採用時期は、採用人数の多くない警察本部では他の県職員と同様に4月に年1回、そうでないところでは採用試験の時期や成績により適宜の時期に、それぞれ採用される。したがって、後者の都道府県にあっては年間に複数回、採用された者の入校の時期に合わせて初任科教養が開始されることになる。初任科教養の期間は採用区分で異なり、大学卒業相当で採用された者(警察官I類・A種など。呼称は都道府県により異なる。)は6ヶ月間、短期大学、高等学校等卒業程度で採用された者(警察官II類・III類・B種など)は10ヶ月間である。採用区分により、初任科教養の期間のほかに現場研修や初任総合科教養の期間にも違いがある(後述)。
制服や警棒・手錠・拳銃・警察手帳などの装備品は、都道府県の条例に基く員数が採用・入校時点で支給または貸与される。これらは職務を遂行するにあたり必要な装備なので、全て無償であり、警察学校での研修を終えた後も、条例に定める使用期間の終わらない装備品については現場で使用し続ける。ただし、装備品等以外の術科で使用する体操着・武道着や、テキスト・参考書籍類などの中には、個人負担となるものもある。
警察学校入校中は、地方公務員法(昭和25年12月13日法律第261号)第22条第1項に規定する「条件附採用」の期間とされ、その間に成績不振、素行不良などの事由があれば本人の意に反して免職され、または条件附採用の期間終了後に正式採用されない場合もある。なお、大卒程度の警察官にあっては同項本文の規定により6ヶ月間の初任科教養修了後に正式採用されるが、大卒以外の警察官にあっては、同項後段により初任科教養期間中は条件附採用の期間が延長される。
[編集] 初任科教養
初任科教養では、警察官としての基本の心構えや一般教養、警察実務(警務、捜査、警備、交通など)・職務遂行に必要な法学(刑法、刑事訴訟法、警察法、警察官職務執行法など)などの理論の他、拳銃操法・武術・教練・部隊(集団)活動などの実技を学ぶ。また、体育実技の授業も行われ、警察官として必要な体力の養成も図られる。教場での実務や法学の教養を「座学(ざがく)」、実技の教養を「術科(じゅつか・じゅっか)」と呼ぶ。
教養科目のうち、公安警察に関する項目については、警察が日本共産党やその関連団体だとみなした団体について、同党の過去における破壊活動とみなした事実及びその当時から党綱領が現在まで改められていないことを根拠に「依然として暴力革命路線を執り続けている」との見解をもっており、同党の綱領や決定について、極めて批判的(=右翼的)な見解で講義がなされている。
武術に関しては、逮捕術を全員履修するが、その他柔道・剣道・合気道(合気道は女性警察官のみ)などの中から1~2科目を選択履修する場合や、あらかじめカリキュラムで指定されたいくつかの武術を全員が履修する場合などがある。どちらのケースでも、卒業までに初段以上を取得することが推奨ないし義務付けされている。都道府県によっては、昇段試験で行われる試合の結果により段位を判定するために、必ずしも全員が初段位を取得取得できるとは限らないため、段位の取得が卒業の要件とはされていない場合もあるが、昇任試験の内申には段位が考察項目となっているため、卒業後も段位まで到達しないと後の昇進に影響することがある。なお各都道府県警察組織内で段位認定を行うことがほとんどであり、柔道なら一般的な講道館、剣道なら全剣連といった全国的な組織による認定段位とは異なるため、後に事務手続きにより移行を行う者もある。
拳銃操法に関しては、警察官等けん銃使用及び取扱い規範(昭和37年5月10日国家公安委員会規則第7号)第14条に定める「けん銃の安全規則」を暗誦させるなど、安全管理については特に厳しく指導される。射撃の腕前についても訓練が行われ、試験で一定水準の成績を残すことを求められるが、射撃の成績の不振のみを理由に卒業が認められないということはない。
警察学校に特有の術科として、先述のけん銃操法以外では、出動服(機動隊の制服として一般に知られている制服)やジュラルミン製の大盾などの装備を着装して暴動や違法デモを鎮圧する為の部隊行動等を訓練する「警備実施」や、出来るだけ犯人を死傷させずかつ警察官自身の受傷を防止しつつ逮捕するための技術である先の「逮捕術」が挙げられる。
教養期間中の数日間、警察署での実務研修が行われる場合もある。実際に交番等において、現場の警察官に付いて職務を見学・実践するというものである。ただし、身分はあくまで警察学校の学生であるし、職務上必要な知識等を十分には有していない状態なので、実務研修中は指導役の警察官の職務を見学するか、その指示により手伝い程度の仕事をすることが主な役目となる。
これ以外に、社会人としての教養を高めるため、外部の各界から講師を招いて講演が行われたり、華道・茶道・手話・英会話など警察実務と直結するものではない講座などが行なわれたりする。また、課外の余暇時間を用いて部活動を行なっている学校もある。
[編集] 警察学校での生活
警察学校では、入校した時期と採用区分により、学生を「期」と呼ばれるグループに分ける。多くの場合、入校順に一連の数字を「期」の前に付し、それらのグループを「初任科第○○期」と呼称する。1つの期をさらに、概ね小隊規模の人数(約30人)の小グループに分け、それらを「××教場」「××班」などと呼称する。教場や班の名に冠する「××」には、担任の教官の姓名や一連の番号など、都道府県により異なる名称が入る(小規模な県警察では、期を教場ごとに分けない場合もある)。警察学校入校中、学生は教養や寮生活のあらゆる場面でこの期・教場を1つの単位として行動することとなり、他の期・教場との間の競争を通し切磋琢磨しながら学んでいく。警察学校での教養過程を修了し現場に出た後でも、苦楽を共にした同期・教場ごとの結束は長期にわたり持続する傾向が強い。同時に入校した、採用区分が異なる期を「兄弟期」などと呼ぶことがあり、大卒程度の採用区分である期が卒業するまでは行動を共にする機会も多く、同期に準じた連帯感を有している場合が多い。
各教場(班)で学生の中から教場(班)長・副教場(班)長が選ばれ、期ごとに学生の中から総代・副総代が選ばれる。選出方法は都道府県により異なるが、例えば採用試験の成績順や、教場(班)・期の中の最年長者などの方法で入校時に指名される。教場(班)長・総代は、それぞれの集団で学生のリーダーとなり、学校生活の運営や、教官など警察学校の職員と学生の間の連絡調整等にあたる。
基本的に、男性・女性とも同じ教場(班)に属し、格闘技など一部を除いて座学・術科とも共通の教養を履修する。
学生は、一定の期日ごとの交代制で各種の当番勤務に就く。当番の主な例として、授業の前後に用具などの準備をする教場当番、警察学校の敷地内に設けられた模擬交番や警備派出所に詰め敷地内の警戒や出入構者の確認等を行なう警備当番、教官室や当直室などに詰め外部からの連絡取次ぎや建物内の警戒等を行なう当直当番などがある。これらのうち後二者は、課業時間外にも所定の勤務場所において、実際の交番勤務などの様に徹夜または交代で当番の任務を果たさなくてはならない。警察署にあっても当直等の当番があるので、警察学校における当番はその予行演習と位置づけることもできる。
初任教養中は全国的に例外なく全寮制で、通学は認められず学生は警察学校の敷地内にある寮に入居しなければならない。6~10ヶ月の間「居住」するため、入校にあたって住民登録も警察学校の所在地に移動させることになる。寮では、起床・食事・学習時間・自由時間・消灯などのスケジュールが定められており、学生はそれに従って行動することになる。
寮は棟ごとなどの単位で男女別に分かれており、一般に両者間の行き来は特段の事情が無い限り認められない。食堂など一部の施設は、男女共用になっている場合もある。部屋は個室か、そうでない場合でも寝室部分をパーティションなどで区切った簡易個室となっている施設が現在では多いが、学生が共同で使える雑談室や勉強部屋も備えられている。浴室は多くの場合、共用の大風呂であり、これとは別にシャワー室が設けられている場合もある。個室でない寮の場合、各部屋に部屋長が置かれる場合がある。寮費は基本的に無料だが、食費・光熱水費等については一部自己負担の場合もある。
戦後間も無くの頃までの警察学校と違い、今現在はかなり行動の自由が利く様になっており、自由時間も多い。都道府県で運用に差はあるが、休日に実家に帰宅するには学校長などの決裁による外泊許可が必要との建前になっているものの、特段の事情が無ければ認められるのが実態となっている。食料品などの物品の差し入れや、課業時間外の家族・知人などとの面会や架電も認められている場合が多い。
とはいえ、平日は一般的に課外の外出は特段の事由(通院など)がない限り認められておらず(すなわちウィークデーは休日を挟まない限り月~金までは学校施設から出られない)、外出した際も飲酒は認められない場合が多い。さらに入校後1ヶ月程度(4月入校の場合はゴールデンウィーク前後まで)は外泊が認められない。また休日であっても課外訓練や奉仕活動等に事実上義務として参加することもある。ほかに懲罰として外泊許可の取消がなされる場合などもある。このうち後者は、警察官の職務が集団で事にあたるという特質から、1人のミスが大勢に影響を与えるということを身に染みて実感させるための連帯責任として、教場員全員が外出外泊禁止などの処分を一律で受けることも多い。一種の通過儀礼(あるいは「しごき」)としての側面がどちらかといえば強いとされている。
このように警察学校は一般的な学校ではなく、あくまでも警察官を錬成する場である以上、『自由』な校風が主流になりつつあるとはいえ、社会一般的な『自由』は必ずしも保障されていない。また先生である教官たちは「上司」であることから指示命令は地方公務員法32条「上司の職務上の命令に従う義務」の摘要を受けるため絶対であり、逆らったり指示を履行しなかったり、その他組織(上司)にとって、都合の悪い・気に入られない態度を取ることは厳罰によって処断されるほか、程度によっては地方公務員法に定められた各処分を受けることになる。このように警察学校内では社会通念上でいう学校のイメージは全く通用しない。いわゆる一般の専門学校的な学校を想定して入学した者は、その厳しさに耐えきれずに去っていくことが多い。
[編集] 卒業
初任科の研修期間終了前に、卒業試験が行なわれる。座学の科目では筆記試験や口述試験、術科の科目ではこれらに加えて実技試験などの方法で、概ね2~3日かけて行なわれる。併せて、術科の段位や級位の認定試験も、卒業試験の日程に前後して行なわれる。これらの結果と、学習態度や寮生活の様子などの「平常点」を総合的に判断して、卒業時に勤務評定が行なわれる。これに基づいて、成績が上位であるなど優秀な者は卒業時に表彰される場合がある。
初任科を卒業した警察官は、人事異動により都道府県内の各警察署に配置(卒業配置:略称「卒配(そつはい)」)され、大卒程度で7ヶ月間、それ以外で8ヶ月間、現場実習生として実際の職務に就きながら研修を行なう。卒配先の警察署は、卒業前にあらかじめ本人からの希望を聞いた上で、適性や事情を勘案して決定される。以前は、男性警察官は地域課に配属され交番で勤務し、女性警察官は交通課で交通取締りに従事するなど性別により初期の配属先が分かれているケースが多かったが、近年では女性警察官も交番に配置されるなど、性別による区別がなくなりつつある。また、都道府県によっては交番のほか刑事・生活安全・交通などいくつかの部署でそれぞれ数ヶ月づつ実習を行なう場合もある。
[編集] 初任補修科
現場実習の後、配属先の警察署を所属部署としたまま初任総合科(略称:初補(しょほ))学生として再度警察学校に入校し、新任時研修の総仕上げ的な研修を受ける。大卒程度で2ヶ月間、それ以外では3ヶ月間、それぞれ警察学校に入校し、現場実習での結果なども取り入れた研修が行なわれる。
また、同時期に初任科として入校している学生がいる場合は、先輩として後輩の指導にあたることも求められる。
初任補修科修了後は、原所属の警察署に戻り、通常の勤務に復帰する。初任補修科の修了をもって、新採用時の研修が全て終わり、一人前の警察官であると警察社会の中で認められるようになる。
初任補修科教養が修了した後も、基本的には卒配先の警察署で勤務を続けることになる。その後、人によって差はあるものに1年~数年程度勤務した後、他の警察署等の所属に異動することになる。また、この頃に本人の希望や適性などにより、専門の部署に異動する場合もある。
[編集] 一般職員初任科
警察職員として都道府県に採用された者は、概ね1ヶ月程度警察学校に入校して初任研修を受ける。職務の内容が異なるので、当然警察官とは別のカリキュラムによる教養を受けるが、科目によっては警察官の学生と共通の講義を受ける場合もある。
地方公務員として必要な法律や実務の研修がカリキュラムとして組まれているが、事務職員ではあるものの警察組織の一員となるので、教練等の術科を履修し、礼式や動作の基本なども身につけさせられる。
[編集] 皇宮警察学校
皇宮警察学校は、警察庁の付属機関である皇宮警察本部に設置され、皇宮護衛官に対して各種の教養を行う機関である。東京都千代田区の、皇居の敷地内に所在する。
初任者や現任の護衛官に対して教養を行うという点では都道府県警察学校と同様であるが、その職務の特性から乗馬訓練や警防(消火活動)訓練がカリキュラムに組まれているなどの違いがある。
[編集] 管区警察学校
管区警察学校は、警察庁の地方機関である管区警察局に附置される、警察官・職員の教育訓練施設である。都道府県警察学校がいわゆる新人の初任教養を主な任務としているのに対して、管区警察学校では中堅幹部(警部補・巡査部長の警察官および同相当職の一般職員)に昇任した者の教養や、管区機動隊員や各種の高度な専門的知識・実技技能についての教養など、現任の警察官に対する訓練を主な任務としている。
管区警察学校に設置される主な課程は、下記の通り。
- 巡査部長任用科 巡査部長の昇進試験に合格した者に対して行われる教養(約30日間)
- 警部補任用科 警部補の昇進試験に合格した者に対して行われる教養(約50日間)
- 主任任用科 主任級(巡査部長相当職)に昇進した事務吏員・技術吏員に対して行われる教養(約二週間)
- 係長任用科 係長級(警部補相当職)に昇進した事務吏員・技術吏員に対して行われる教養(約二週間)
- 専科教養 主に中堅幹部に対して、特定の分野に関する専門的な知識及び技能を修得させるために行う教養(期間は内容により様々)
これ以外に、関東管区警察学校のみに初任幹部教養科が置かれ、国家公務員採用II種試験により警察庁に採用された警察官の研修を行う。
北海道警察は管区警察局に属していないため、これらの課程も北海道警察学校に設置されている。また、同じく管区警察局に属していない警視庁と皇宮警察本部の警察官・皇宮護衛官・警察職員は、関東管区警察学校に入校してこれらの教養を受ける。
[編集] 管区警察学校での生活
管区警察学校は都道府県警察学校と異なり、その管区内の都道府県の警察職員が混合で入校するため他自治体警察の実態や運用の相違点などを互いに知ることが出来る。一方で授業カリキュラムは初任教養とは比較にならないほど膨大で厳しく、各卒業考査は大学入試並の詰め込み勉強を否応なく強いられる。成績は1位から末番まで明確に決定され、その成績順が直接自分の将来に影響するため、熾烈な成績争いとなる。
基本的に初任教養と同じく通学は認められておらず全寮制である。入校生はその間、校内に所在する寮に寄宿して生活する。
既に警察社会人として一本立ちしていることから平日の課外外出及び週末の外泊などは比較的自由であり、飲酒も認められ、就寝点呼までに帰寮すればよい。
[編集] 管区警察学校一覧
- 東北管区警察学校(宮城県多賀城市)
- 関東管区警察学校(東京都小平市)
- 中部管区警察学校(愛知県小牧市)
- 近畿管区警察学校(堺市北区)
- 中国管区警察学校(広島市南区)
- 四国管区警察学校(香川県善通寺市)
- 九州管区警察学校(福岡市博多区)
[編集] 海外の警察学校
[編集] アメリカ合衆国
連邦政府と、各州に一校ずつ、そして規模の大きな法執行機関には自前の、映画にもなった「ポリス・アカデミー」がある。日本とは違い、法執行官を目指す人は私費でも入学し研修を受ける事が出来る。これは実務経験者を保安官や副保安官として雇用する機関があるため。ほとんどは各自治体警察(「アメリカの警察」参照)に採用されトレーニー(候補生)として入学する人で、本来の修業期限内に卒業(及第・落第がある)出来なければ所属先から解雇される事になる(私費入学の人は学費が続く限り在学してよい)。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 警察庁
- 警視庁警察学校
- 千葉県警察学校の運営に関する訓令(千葉県ホームページより。PDFファイルにつき、閲覧には専用ビューワソフトが必要。)
- 法令データ提供システム