警察手帳
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警察手帳(けいさつてちょう)は、日本において、警察官、皇宮護衛官及び交通巡視員に装備品として貸与される手帳である(警察手帳規則(昭和29年7月1日国家公安委員会規則第4号)、以下単に「規則」)。身分を証明するものとして使用される。
日本の警察では、明治時代から使用されていたが、2002年(平成14年)10月1日に形状が大きく変更された。
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[編集] 機能
警察手帳は、証票、記章及びそれを保護している本革部分の総称である。証票は身分証明書の機能があり、記章は一目で警察官等であることを示す機能があり、本革部分は証票及び記章を保護する機能がある。
警察手帳は、警察学校に入校した時点で貸与され、本人の身分証としての役割を果たす(過去には卒業・正式配属の時点で貸与された県警もあったという)。
警察手帳は、警察法第68条1項及び同施行令第9条1項で警察官に貸与することが定められ、その制式と取扱いは前述の「警察手帳規則」で定められている。同規則によれば、警察手帳は取扱いを慎重にし、特に指定がなければ常時携帯義務が課され、これは私服の刑事も例外ではない。着ている衣服に紛失防止紐で常に繋いでおかなければならない。また、職務の執行に当たり、警察官、皇宮護衛官又は交通巡視員であることを示す必要があるときは、証票及び記章を呈示しなければならない(規則第5条)。残念な事に、弁護士でもこの条項を知らない人がおり、“一部の県条例・訓令に提示義務の規程はあるが、制服を着ていれば身分証・記章提示の義務はない”と言う人が見受けられる。
紛失は大問題になるので普通は勤務中のみの携帯で、職務時間外は所属庁(勤務している警察本部や所轄署)に返却する規則が定められている。例外として千葉県警察で2006年8月から、勤務時間外で法律の執行を要する事態に遭遇した場合に備え、自分の責任で厳重に管理する(鞄やバッグに入れたりせず身に着ける)事を条件に、勤務時間中・時間外を問わず、手帳の携帯が常時認められる事になった。
[編集] 形状
[編集] 旧規格手帳
警察手帳は、従来、その名の通り手帳の形状をして実際に手帳として書き込みが出来るようになっていた。その表紙に黄金色の警察記章(警察を表す旭日章)がつけられ、その下に警察庁、警視庁又は各道府県警察名と、その警察官が所属する警察組織の名称がやはり金文字で記されており(例外が皇宮警察で表記は「皇宮護衛官手帳」)、表紙を捲った1ページ目に制服姿の保持者写真が貼られ、写真と台紙にかけて規定の浮き出し印(エンボス印)が捺され、氏名、「警視庁警部補」などというように階級、所属庁(警察庁・皇宮警察・警視庁・道府県警察本部の事)、身分証番号が書かれていた(ここから数ページを「恒久用紙」と言っていた)。恒久用紙の他は普通のメモ帳が装填されていた。
多くのドラマや映画では単に表紙を提示するだけで身分を示しているシーンが目立ったが(後述の通り実際にこの方法がまかり通っていた事、小道具としての身分証を製作する手間を省く事がその理由)、実は規則第5条で手帳を開いて身分証を提示する事が義務づけられていた。ただ実際には身分証提示が為されない事が多く、後述するデザイン変更へと至る。 ちなみに、ドラマや映画では表紙に警察記章と警察手帳と書かれているが、これは警察関係者との衝突を避けるために作られた架空のもので、実在しない。
[編集] 現行規格手帳
2000年(平成12年)3月、当時続発していた警察不祥事への対策を練るため、警察刷新会議が設置された。同年7月に同会議が発表した緊急提言において、警察官の「匿名性」が問題視され警察官の責任所在の明確化を求められた。この提言を受け、警察官の身分証たる警察手帳のデザイン変更が検討され、2002年(平成14年)10月1日から、新デザインの警察手帳が使用され始めた。
新デザインの警察手帳は、手帳としての機能をなくして身分証としての機能に特化した。手帳表面に文字やマークは一切無く、内部の恒久用紙とメモ帳も廃止されることとなった。そして、手帳を開くと上面にカード型の身分証票、下面に金属製の記章(バッジ スクロール入り「POLICE」の文字と、同様の所属庁名で上下を挟まれた、後光を放つ旭日章)が配されることとなった。開陳が容易になることで、身分を証明する証票部分を呈示し易くなった。また、手帳外被はドラマや映画等では黒であるが、実際のものは濃い焦茶色(チョコレート色)である。革の汚損防止にビニールカバーが嵌められている事もある。
なお、この形状変更に伴い、被指定者に交付されて手帳に貼られた「司法警察員の証」を廃止した県警が多数ある。
[編集] 取扱いに関する注意事項および違反行為
- 警察手帳は職務中の警察官全てが常に携帯しておくものであり、私服勤務の者はもちろんのこと、制服勤務の者でも必ず携帯していなくてはならない。
- もしも紛失した場合は戒告処分となるなど厳重な処罰が下される。失くさないように茄子環(読みは「なすかん」、リング金具の一種)付きの紐が付けられており、これを衣服の一部に留めておけば落としたり失くしたりしないようになっている。
- 警察官や公務執行中に市民から要求された場合以外には、無用に見せてはならない。貸し出したりなどは厳禁。
- 外革、表紙にシールなどを貼ってはならない。実際、埼玉県警察でプリクラを貼った警察官が処分されている。