Microsoft Windows Vista
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開発者: | Microsoft |
OSの系統: | Microsoft Windows |
最新リリース: | RTM (ビルド 6000) / 2006年11月8日 |
対応プラットフォーム: | x86,x64 |
カーネル種別: | ハイブリッドカーネル |
ユーザーインタフェース: | グラフィカルユーザインターフェース |
ライセンス: | プロプライエタリ |
開発状況: | RTM |
Windows Vista(ウィンドウズ ビスタ)はWindows XPの後継としてマイクロソフトが販売しているパーソナル・コンピュータ用OSである。開発時のコードネームはLonghorn(ロングホーン)[1]。一般家庭向けや企業向けなどに機能の異なるエディション(種類)が8つあり、Windows史上で最もエディションの多いバージョンとなった。
2006年11月30日にボリューム ライセンス契約者へ提供が開始され、2007年1月30日に全世界での発売開始が予定されている。
目次 |
[編集] 概説
正式名称は「Microsoft Windows Vista」。“Vista”という名称はマイクロソフトによるとイタリア語で“眺望”という意味を持つとされている(英語では複数の意味を持つ)。公式見解では、「混乱を解消し、あふれる情報を整理し、未来を垣間見せる」とのこと。次期OSの名称が発表されたとき、賛否両論が飛び交った。
内部バージョンはWindows NT 6.0。Windows XP(内部バージョン:Windows NT 5.1)の発売(2001年11月)から5年ぶりのリリースである。5.xから6.xのメジャーバージョンアップである。Windows 2000(内部バージョン:Windows NT 5.0)のマイナーチェンジと言えるXPはGUI以外の主要機能がWindows 2000と殆ど変わっていないが、今回も、変更点はGUIとセキュリティが中心であり、カーネルやWin32 APIはほとんど変わっていなく、マイナーバージョンアップ的である。
MicrosoftはWindows 2000以前、ほぼ4年サイクルでのメジャーバージョンアップ実施していたが、様々な事情[2]によりXPリリースから過去例を見ない期間OSの新バージョンをリリースできなかった。この為Vistaには多くの新機能をユーザーへ提供しなければならなくなった[3]。このプレッシャー故か、当初2003年発売予定が2004年に延期になり、2004年度発売が2005年度へ、さらには2006年冬へ延期となり、更に一部の新機能搭載を見送り[4]、コンシューマ向けのリリースを2007年1月30日へと再延期し、ようやく予定通りリリースすることを決定した。
[編集] 新機能
- ユーザーインターフェイス
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- Windows Aero
- 新しいユーザーインタフェース。そのうち上位版のAero Glassは3Dグラフィックを使用し、ウィンドウを透過したり立体的に傾けるなどの視覚効果が可能で、従来のWindowsのインターフェースに比べて高度なグラフィック描画能力が必要である。スペックとしては、マザーボード内蔵用のグラフィックチップであるIntel GMA 950のグラフィックスを基準としているようである。Aero GlassはStarter Edition及びHome Basic Editionには含まれない。
- また、コントロールパネルの「パフォーマンスの情報とツール」の「視覚効果の調整」で「パフォーマンスを優先する」を選択すると、Windows 2000風のデザインとなり、高度なグラフィック描画能力は不要になる。
- 操作性そのものの見直し
- スタートメニューの表示方法やフォルダウィンドウの操作性などが変更になった。
- 日本語環境の充実
- 新デザインの日本語フォント「メイリオ」搭載と、JIS漢字コードのJIS X 0213:2004 (JIS2004)対応。
- セキュリティ
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- ユーザーアカウント制御(UAC)
- 標準のアカウントは管理者グループに所属しているものの、一般ユーザー(XPの制限ユーザー)の権限で動作し、管理者権限が必要なときにダイアログでその確認を求める機能が付いた。コントロールパネルでその機能を切ることができる。また、切ることによりXPとの互換性が向上する。
- 既存のパーソナルファイヤーウォール機能に加えてスパイウェア(悪意のあるソフトウェア)を検出・削除する機能。
- 保護者による子供のパソコン利用規制機能。
- ドライブの暗号化。Ultimate Editionのみ対応。
- .NET Framework 3.0(Windows XPへも提供される)
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- Windows Presentation Foundation(WPF)。新しいグラフィックサブシステム。開発コード名Avalon。
- Windows Communication Foundation(WCF)。新しい通信サブシステム。開発コード名Indigo。
- Windows Workflow Foundation(WF)。
- アプリケーション
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- Low-Rights IEによるセキュリティ対策の向上、CSS2やアルファチャネルPNGへの対応、タブブラウザ機能や、RSS対応。Low-Rights IEはWindows Vistaでしか利用できない。
- 音楽機能
- 新音楽サービスURGEに対応し、より洗練されたUIの「Windows Media Player 11」を搭載(Windows XPへも提供される)
- エンターテイメント機能
- Xbox Liveに標準対応し、次世代DVD規格ではHD DVDのみを標準サポートするなどマイクロソフトの他製品と絡めた戦略が見られる。マイクロソフトはこのHD DVD技術を全面的に支持しており、Windows Vistaでは標準搭載されている。
- サイドバー
- サイドバーには「ガジェット」と呼ばれるミニアプリケーションを利用でき、電卓、時計などの良く利用する機能や、天気やニュース等の情報をシームレスに入手し、表示するための機能。
- Windows Liveにネイティブ対応。
[編集] 搭載取りやめの機能
- データベース管理システムをファイルシステムと結合することで、より柔軟で高速なファイル・リストの表示、検索、管理が可能になる。当初はマイドキュメントに相当する部分でのみ提供する予定だった。代わりにSQL ServerやADO.NETで採用されることになった。
[編集] エディションについて
Windows Vistaは、世界市場向けに5エディション、地域市場向けを含めて合計8エディションが予定されている。日本では世界市場向けの5エディションが発売される。Starterを除くエディションでは32bit版と64bit版の両方が提供される。ビジネス向けのエディションは2006年11月、一般家庭向けのエディションは2007年1月発売が予定されている。
- Windows Vista Home Basic
- Windows Vista Home Premium
- Windows Vista Business
- ビジネス向け下位版。中小規模の企業ユーザー向けでもある。Windows XP Professional、Professional x64、Tablet PC Editionの後継製品。Home Premiumと比べ、ドメインの制限は撤廃され、リモートデスクトップやデュアルプロセッサ、IIS、P2Pでのミーティング機能等が提供される。一方、メディアセンター機能は提供されない。一般企業のユーザーを対象としている。プロダクトアクティベーションが必要であり,またボリュームライセンスで購入する場合にも「Volume Activation 2.0」と呼ばれるパッケージ版とは異なる仕組みのアクティベーションが必要になる。国内通常版参考価格は39.690円。アップグレード版参考価格は27,090円。
- Windows Vista Enterprise
- ビジネス向け上位版。大規模なグローバル企業向けでもある。Windows XP Professional、Professional x64、Tablet PC Editionの後継製品。Businessの機能に加え、Virtual PC、多言語対応、高度なセキュリティ機能、UNIXベースのアプリケーションを実行できる機能などが提供される。企業での情報処理技術者を対象としている。一般販売はされず、マイクロソフトとのソフトウェア契約を締結したユーザのみに提供される。こちらもプロダクトアクティベーションが必要となる。
- Windows Vista Ultimate
- 家庭向け・ビジネス向けの全機能を搭載した最上位版。Home Premium、Businessの機能に加え、ゲーム環境への統合機能が提供される。またエンターテイメント関連の各種サービスも提供される予定であるが、詳細は未定。ハイエンドのヘビーユーザーやパソコンゲーマーを対象としている。国内通常版参考価格は51,240円。アップグレード版参考価格は33,390円。
地域市場向けに、以下のエディションも予定されている。
- Windows Vista Starter
- 発展途上国向けの低価格、機能限定版。Internet Explorer 7とWindows Media Player 11は提供されるが、それ以外のほとんどの新機能は提供されない。また、同時に起動できるウィンドウ数やネットワーク、画面解像度、最大メインメモリといったOSの主要な機能に対して大幅な制限が加えられる。32bit版のみのリリース予定。
- Windows Vista Home Basic N
- Windows Vista Business N
- 独占禁止法に抵触しないために、欧州連合 (EU) で発売されるエディション。Windows Media Player 11などのメディア機能が搭載されない。
[編集] ベータ版の取り扱いについて
従来MSDN(Microsoft Developer Network、Microsoft社のソフトウェア開発者向けサポートサービス)などの使用者のみβ版を試用できたが、2006年6月8日よりMSDNを利用していない一般ユーザーでもCPP(カスタマプレビュープログラム)を通してβ版を試用できるようになった。ただし、マイクロソフトはメインで使用する環境への導入を推奨していない。 現在このβ版の配布(ダウンロード)は終了しており入手することはできない。ほかにもWindows XP/2003向けにWinFX、Avalon、Indigoのβ1がプレリリースされている。
2006年6月8日から配布されたベータ2を使用しているユーザーは、先着10万人限定で2006年8月31日より、RC1の一歩手前の「Windows Vista pre-RC1」 の配布が開始された(こちらも終了)。
また、Release Candidate 1ではインターネットだけの配布に留まらず、Windows NT 3.5やWindows 2000のようにコンピュータ雑誌に添付して広く配布中。
[編集] Windows XPからのアップグレードについて
マイクロソフトはWindows XPがプリインストールされた一部のパソコンについて、Windows Vista Capable PCというロゴを用意し、ロゴシールの筐体貼付を許可している。これは、Windows Vistaにアップグレードできる要件を満たしているというマイクロソフトの保証と言える。 しかし、β版の使用検証報告から、このロゴ付きPCでは確かにWindowsVistaのアップデート(導入)は可能だが、スペックが追いつかず、実用上快適に動かす事は難しいのではないかという説も存在しているが、RC1(Release Candidate、製品候補版)ではだいぶ改善されたという意見がある。
なお、マイクロソフトが現在公示しているWindows Vistaの動作に必要な最低システム構成は次の通りである。
また、Windows Vista Premium Ready PCと呼ばれるものも存在しており、こちらはWindows Vista Ultimate Editionが利用可能な環境に与えられる。Premium Readyのロゴシールもある。Premium Readyに準拠した環境は次の通りである。
- 1GHz以上のプロセッサ
- 1GB以上のメモリ
- Aeroに対応したグラフィックプロセッサ(DirectX 9対応でビデオメモリ128MB以上搭載、かつデバイスドライバがMicrosoft Windows Vista Display Driver Model(WDDM)に対応していること)
- 40GB以上のハードディスクで、空き領域が15GB以上あること
- DVD-ROM搭載
- オーディオ出力
- インターネットに接続可能
また、利用しているPCがWindows Vistaに対応しているかどうか確認できるアプリケーションのベータ版がマイクロソフトから配布されている。Microsoft Windows Vista Advisor RC (英語) 2006年10月26日からPCベンダーおよびDSP版のアップグレードキャンペーンをはじめた。但し、Windows XPのエディションによってはアップグレード料金がバラバラであり注意が必要である。
[編集] 前バージョン
- Windows XP(コンシューマー向けとしては最新バージョン)
[編集] 関連項目
- Microsoft Windows
- .NET Framework3.0 (WinFX)
[編集] 脚注
- ↑ Windows XP同様、製品名Windows Vistaとは別にプログラム内部においてWindows NTカーネルを継承している為、Windows NT 6.0という別称も持つ。なお、Windows Vistaはあくまでもコンシューマ向けの次世代Windowsであり、サーバ向けの次期Windowsは、コードネーム「Longhorn Server」として別途開発中。
- ↑ XPは前世代のOSが経験しなかったブロードバンド時代への対応やウイルス等へのセキュリティ対策などへ緊急へ対応する必要もあり、マイクロソフトの開発リソースがXPのアップデート開発に優先的に回され、必然的にVista開発が遅れたという説が有力視されている。
- ↑ そして新機能のテストに予想を上回る期間を割かなくてはならなくなってしまい、その結果またリリース日付が伸び、その分新たな機能を…といった悪循環に陥った結果、リリースが大幅に伸びた。
- ↑ 開発当初の段階から発表されていた重要(とされていた)機能、WinFSの搭載が中止となった。更にCommon Security APIなど、標準APIの変更も予定していたが、これもファーストリリースでは提供されず、マイナーアップデート(SP1)以降で提供する予定に変更となっている。
[編集] 外部リンク
- Microsoft Windows Vista(公式)
- Microsoft Windows Vista(公式サイト-詳細)