Microsoft Windows 95
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Windows 95(ウィンドウズ きゅうじゅうご)は、Windows 3.1の後継としてマイクロソフトが1995年に出したOSである。正式名称はMicrosoft Windows 95 Operating System。
Windowsファミリーのひとつであり、コードネームはChicago(シカゴ)。Windowsの内部バージョンは4.0(初期版)。
目次 |
[編集] 概説
大きな特徴は、OSの基本を32bit化し、ユーザーインタフェイス (UI) の進化と、ネットワーク機能の充実である。
[編集] GUI
まず、アップルコンピュータとのGUI絡みの裁判が決着したことで、デスクトップに自由にアイコンを置ける等、マッキントッシュで発達した優れたユーザーインターフェイスのアイデアを大幅に取り入れることが可能となった。これにより、タスクバーやスタートメニュー、マウスの右ボタンのクリックで表示される内容の一覧から希望する処理を選択するといったユーザーインターフェースを採用し、ファイルシステムを (VFAT) としてWindows 3.1では不可能であった長い(最大256バイト)名称のファイル名が利用可能になって、従来のWindows 3.1からUIデザインの大幅な刷新が図られた。完成度の高かったこのGUIはその後ほとんど変更を加えられておらず、Windows XPのビジュアルをカスタマイズしたLunaを外した状態のクラシックモードはWindows 95のGUIとほとんど同一である。
[編集] NOS
また、ビジネス分野でのLANの普及に対応し、ネットワーク設定の容易化を進めた。特に日本ではネットワーク機能付きのWindows for Workgroup 3.11が販売されなかったこともあり、大きな期待を集めた(*1)。当初の戦略としては、LANはNetBEUIまたはIPX/SPX、WANはMSNを利用すると位置付けていたが、前年の1994年ごろより、インターネットでWWWの普及に弾みが付き始めたのに対応して、インターネットに必要な通信プロトコルのTCP/IPを選択することもできた。次の組込み版バージョンではTCP/IPが初期状態で選択されており、Windows 95を使えばインターネットに接続できるというイメージ戦略も成功し、Windows 95の人気に拍車をかけることになった。
(*1.代替として、Windows NT Workstation 3.5が他国の販売価格と比較して安価に提供されており、先進的なユーザがその導入を行っていたが、ごく一部の動きに留まっていた)
[編集] その他
さらにTCP/IPなどのネットワーク機能以外にも、マルチメディア機能の強化、プラグアンドプレイによる周辺機器の容易な増設など、分かりやすさを狙った設計となっている。そのため、それまで専門的な知識を必要としたパソコンは、誰でも手軽に使えるものになった、というコピーがなされた。
インターネットを使ってソフトの修正モジュールが配布されるようになったのも、大きな特徴であった。(初期版は特に修正モジュールが多かった。)ゲームはWindows 3.1にもあったマインスイーパ・ソリティアのほか、新たに(Win32sの付属サンプルでもあった)フリーセル・ハーツと、ホバーが付属する。
英語版が先行して発売され、日本語のベータ版もリリースされていたことから日本でもある程度の情報が広まっていたが、日本語版の発売された1995年11月23日(祝日(勤労感謝の日))の秋葉原などでは、深夜11月23日になった瞬間に販売を始める店が多く、業界関係者や、報道陣を中心に、一種のお祭り騒ぎの様相を呈した。この様子はテレビなどで報道され、売り上げに貢献した。なお、その後のWindowsの新バージョンの発売開始日はWindows 95の時ほどの賑わいは起こっていない。
Windows 95の成功は、このようにWindows 3.1では無かった新技術・新機能の導入もさることながら、ユーザー・市場のニーズをよく読み、それに応えたというマーケティングの成功といえた。これによりWindows 95はデスクトップOSの事実上の標準となり、ライバルのGUI機であるマッキントッシュにも衝撃を与えた。
直接的な後継OSとしては、以下のものが存在する。
- Windows 98
- Windows 98 SE (Second Edition)
- Windows Me (Millennium Edition)
現在では、さまざまな問題点を解決するためにまったく新しく設計されたWindows NT系のOSが主流となり、以下のものが存在する。
- Windows NT (3.1、3.5、3.51、4.0)
- Windows 2000
- Windows XP
- Windows Server 2003
- Windows Vista
[編集] 構造
Intelアーキテクチャの、32ビットプロテクトモードで動作するOSであるが、MS-DOSやWindows 3.1との互換性を持たせるためにコードの多くが、8086/80286互換の16bitコードで記述されている。
システムの構造として、MS-DOS上にプロテクトモードで動作するWindowsの基本部分が載っている、と解説される場合が多いが、実際にはWindowsカーネルが完全にMS-DOSを乗っ取り、制御するため、この解説は不正確である。(参考文献[1])
しかしながら、Windows Meに至るまでシステムの随所でMS-DOSのコードを呼んでいること、メモリ保護が不十分にしかなされていないこと、システムリソースと呼ばれる領域の一部が64キロバイトという狭い領域に制限されていることなどが要因で、動作が不安定になる場合も多い。このためWindows 95の系統はMeで終止符を打たれ、Windows on Windows (WOW) という仕組みで16ビットコードを分離したWindows NTシリーズのXPにコンシューマ向けOSとしての座を譲ることとなる。
[編集] マイナーバージョン
マイナーバージョンは次の4つに分かれる。
- 初期版 - 内部バージョン4.0
- OSR (OEM Service Release) 1 - 内部バージョンは4.0a。初期版にサービスパック1を適用したものと、当初からOSR1のものがある。※この2つのバージョンのみ単体パッケージとして販売された。
- OSR2およびOSR2.1 - 内部バージョンは4.0b。初期版発売から1年あまり経った1996年末頃、ハードウェアとのセットを条件とするOEM専用版(単体パッケージでは発売されず)としてリリース。多数のバグ改良と、HDDのDMA転送のサポート、FAT32(非公式)などの新機能が盛り込まれ、大きな変化が生じた。OSR2.1ではAGPバスやUSBへの対応がされた。ただしWindows 95で利用可能なUSB機器はほとんど存在せず、正式にはWindows 98(安定版はSE)まで待たねばならなかった。
- OSR2.5 - 内部バージョンは4.0c。1997年頃、ハードウェアセットのOEM専用版としてリリース。Internet Explorer 4.0が統合され、機能的にはWindows 98に近くなっているが、このため処理が重くなっている。誤って「OSR3」と呼ばれることがあった。
また機能拡張パックである「Microsoft Plus! for Windows 95」が別売されていた。これを利用するとアイコンに使用できる色数が16色から多色に増えたり、フォントのスムース表示機能が拡張されたりする。他に、ディスク圧縮ツール、Internet Explorer 2.0(英語版は1.0)などインターネット用のツール、アイコン・サウンド・壁紙のデータ「デスクトップテーマ」、3Dピンボールゲームが付属する。
DirectXの開発が始まったのもWindows 95からである。
[編集] システム要件
- コンピュータ本体 i486SX以上を搭載したコンピュータ
- メモリ 8MB以上(12MB以上を推奨)
- ハードディスク 75MB以上の空きディスク容量が必要(インストールする機能により、さらに容量が必要となる場合がある)
- ディスプレイ 640x480以上表示可能なもの
- ドライブ CD-ROMドライブ
- アップグレード版ではコンピュータにMS-DOS Ver5.0以上とWindows 3.1がインストールされていることが必要
[編集] 対応機種
- PC/AT互換機
- PC-9800シリーズ
- EPSON PCシリーズ (OSR1のみ)
- FM TOWNS (OSR1のみ)
- FMR280 (OSR1のみ)
[編集] 出荷本数の推移
- 1995年8月24日 - 40万本
- 1995年8月27日 - 100万本
- 1995年10月末 - 700万本
- 1995年11月末 - 1000万本
- 1995年12月末 - 1853.4万本
- 1996年12月末 - 6426.1万本
- 1999年3月末 - 1億9300万本
[編集] 参考文献
- Unauthorized Windows 95, Andrew Schulman, IDG Books, 1994
邦訳: 『Windows 95 内部解析』 Andrew Schulman 著, 太田純 監訳, ソフトバンク・パブリッシング, 1995年, ISBN 4-89052-768-0
[編集] 前のバージョン
後継バージョンは上に書いてあるのでここでは省く