環境問題
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環境問題(かんきょうもんだい)とは、人類がより良い生活を目指した結果、気候などの変化によって発生した問題の総称である。
昔から、人類は自然環境を資本として利用しながら文明を発展させてきた。このため原始的な狩猟採集生活に比較してはるかに高い生産力を実現し、文化的な生活を保つことができたのである。しかし、環境に過大な変化をもたらすことが逆に人類の生活を脅かす結果になる事態もみられる。
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[編集] 概論
文明の環境への影響は紀元前からみられる。エジプトなどの古代文明は森林の過剰な伐採が原因で砂漠化を招き、生産力を保てなくなって衰亡したと言われている。しかし、環境問題が特に顕著となってきたのは産業革命以降である。石油や天然ガスなどの化石燃料を使用することで莫大なエネルギーを取り出すことが可能になり、また、石油化学工業によって多くの人工物質を合成・使用することができるようになったことは、人類の活動が環境に与える影響もより多くなったことを意味する。
20世紀末期までは、環境破壊の重大さは比較的軽視される傾向があった。経済的な要請と環境保護は相反することが多く、結果として経済的な発展と引き換えに、環境に多大な負担をかけざるを得なかったという側面がある。
環境問題が一般に取り上げられるようになった契機としてレイチェル・カーソンの『沈黙の春』(1962年)が挙げられる。同書は産業界からは激しい非難を浴びたが、DDTの全面禁止など、その後の米国の環境行政に大きな影響を与えた。
1972年、ローマクラブが取りまとめた報告書『成長の限界』が出版された。現在のまま人口増加や環境破壊が続けば、21世紀半ばには資源の枯渇や環境の悪化によって、人類の成長は限界に達すると警鐘を鳴らしており、破局を回避するためには、地球が無限であるということを前提とした経済のあり方を見直し、世界的な均衡を目指す必要があると論じている。
その後酸性雨、オゾンホール、地球温暖化、異常気象など全地球規模の気候の変化が顕著になってくるにつれ、人々の環境に対する関心は徐々に高まってきた。環境ブームとも言える、「環境に優しい」「地球に優しい」製品がもてはやされる傾向が出現してきたのもそれに含まれる。これらは安易な発想にもみえるが、一面では喜ばしい現象であると言える。環境への負荷を減らす行動が、企業にとって営利追求と一致することになるからである。ただし、「環境に優しい」「地球に優しい」製品が必ずしも客観的な根拠に基づいていないことがあることは注意が必要である。
[編集] 環境保護への取り組み
1992年、ブラジルのリオデジャネイロで国連地球サミットが開催された。180の国と地域の代表、120人の首脳、多くのNGOなどが参加した本会議にて、地球温暖化問題が最大の課題として論じられた。ここで、「持続可能な発展」を実現するための「リオ宣言」や、これを実現するための行動計画「アジェンダ21」が採択され、「気候変動枠組条約」と「生物多様性条約」への署名が開始されている。
1997年、京都にて「気候変動枠組条約第3回締結国会議」(いわゆる京都会議)が開催された。ここでは二酸化炭素 (CO2) 、メタン、フロンガスといった地球温暖化ガスの総排出量を削減することが取り決められた。削減目標は国ごとに割り当てられ、先進国全体で2012年までに1990年の総排出量から5.2%削減することが求められている(アメリカ合衆国:7%削減、EU:8%削減、日本:6%削減、など)。この数値は全くの政治的妥協の産物であり、科学的根拠はない。また、ロシアはいわゆる「ホットエア」の問題がある他、EUは東欧への技術導入で楽にCO2削減が可能であり、特に日本などは追加的にCO2を削減するのに大変費用がかかるとされる。
温暖化問題に理解のあったクリントン政権のアル・ゴア副大統領が開票トラブルのあった選挙で敗れ、京都会議で採択された京都議定書から、米国ブッシュ政権が離脱。しかし、ロシアが京都議定書の枠組みにはいることによりし京都議定書は発効した。また、NGOという形での市民活動のほか、国家的な取り組み(排出規制、環境基準、研究)や、企業による取り組み(環境技術の開発、ゼロ・エミッションの追求、リサイクルなど)といったかたちで、環境破壊を食い止め、もしくは復元することを目指す運動は様々な形で推進されている。
環境問題の本質的課題である地球温暖化問題の解決には、アメリカの京都議定書調印が不可欠であり、アメリカの調印が無ければ発展途上国などから協力を得るための説得力を欠くことになるとの意見もあるが、各国にキャップをはめて規制をする手法よりも、排出量削減取引や技術協力を主軸としたインセンティブを主とした手法をポスト京都議定書では採用すべきだとの声もある。
営利を目的としない市民活動をNPOとして優遇する体制も整備されてきている。さらにカーシェアリングやレジ袋の使用自粛など草の根レベルでの環境に対する取り組みも盛んになってきている。
[編集] 持続可能性(Sustainability)
比較的新しい概念として、環境負荷を低くして文明を永続させるための持続可能な発展や持続可能性ということが国際的に盛んに言われている。これは「将来世代の利益を損なわずに、私たちが発展できるレベル」で経済発展をするというコンセプトで、特に途上国の開発の問題では頻繁に使われている。
パーマカルチャーという永続可能な農業・生活設計やそれを実践したエコビレッジなどが各地にあり、なかでもオーストラリアにあるクリスタルウォーターズが有名である。