東武10000系電車
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10000系電車(10000けいでんしゃ)は、東武鉄道の通勤形電車。
本稿では改良型の10030系電車と、VVVFインバータ制御試作車である10080系電車についても記述する。1983年(昭和58年)から1995年(平成7年)にかけて3系列合わせて486両が製造された。
目次 |
[編集] 系列別概要
[編集] 10000系
1983年から8000系の後継車として、地下鉄有楽町線直通用9000系をベースに製造された地上専用車である。
9000系と同じく、軽量ステンレス製の20m4ドア車体であるが、正面は中央に貫通扉がある左右対称のデザインとなっている。制御装置はバーニア付界磁チョッパ制御である。ブレーキ装置は回生併用電気指令式空気ブレーキとなり、勾配区間用に抑速ブレーキも備えている。
8両・6両・2両編成が造られ、主に伊勢崎線(太田以南)・日光線(新栃木以南)・東上線(小川町以南)で運用されている。
11606Fからは、床板の色が緑色から茶色に変更された。また、8両編成の一部は1989年に中間車を組み込み10両編成化された。
また2004年より、10000系の10両固定編成の一部で母線引き通しを実施した編成が登場し、一部のパンタグラフを降下させて運用している。この工事によって使用停止としたパンタグラフには、側面に黄色の識別用シールを貼付している。
それと同時に、客室つり革増設工事が行われている。また最近では、優先席付近のつり革についてオレンジ色のものへの交換が進められている。
[編集] 10030系
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東武10030系・・・10000系のマイナーチェンジ車である(つきのわ駅付近にて撮影)。
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10030系50番台車(2004年8月31日撮影)・・・10030系の後期型である50番台車は、冷房装置カバーが一体型になっている(鐘ヶ淵駅付近にて撮影)。
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1988年に、マイナーチェンジを施した10030系が登場した。正面形状が8000系車体修繕車に似たデザインに変更された他、10000系の凸凹の多いコルゲート車体からビードプレス車体へ、さらにステンレスの光沢を抑えたダルフィニシュ(梨地)仕上げになり、外観が大きく変化した。また、台車はボルスタレス式に、補助電源装置はブラシレスMG(電動発電機)からSIV(静止形インバータ)に変更され、乗務員室助士席側には簡易モニタ装置が設置された。室内設備もラジオ受信アンテナの追加や、つり革形状を三角形とするなどの変更点がある。
10両・6両・4両・2両編成が造られ、伊勢崎線・日光線・宇都宮線・東上線・越生線などで運用されている。
1992年以降に製造された車両は、客室内では車いすスペースや補助送風機(スイープファン)の設置、外観では冷房装置のカバーが連続式になるなどの変更点があり、車両番号の下2桁を51以降の付番(本稿では50番台車と表記)とした。さらに、雪害対策として強制パンタグラフ上昇装置の追加や、屋根上の吸出式通風装置の廃止などの小改良が続けられた。
1993年からは、本線系統の途中駅での自動連結・解放運転に備え、これまでの密着自動連結器に代わり先頭車に電気連結器付密着式連結器を装備した車両が登場した。この計画の影響で1993年~1994年に本線系統へ集中的に新車投入したため、50番台車は本線所属率が高い。また、本線にそれ以前に投入された車両も1994年のダイヤ改正までに密着式連結器に改造された。
東上線でも本線系統との車両転配の利便上を考慮し、最終増備車11667Fと11461Fが密着式連結器で投入された。この編成のみ先頭車前面の窓回りの縁取りが黒く塗装されているのが特徴であったが、その後他の10030系と同様になっている。その後、他の東上線所属車も密着式連結器に改造されたが、8両・10両編成は営業運転では連結することがないため、改造されていない。
1995年新製の11267Fには試験的に東武初のシングルアーム式パンタグラフが搭載され、後に20070系や30000系に反映された。
2004年より、10030系の6両固定編成の一部で母線引き通しを実施した編成が登場し、一部のパンタグラフを降下させて運用している。この工事によって使用停止としたパンタグラフには、側面に黄色の識別用シールを貼付している。
[編集] 10080系
1988年に10030系と同時に登場した、東武では初めてGTOサイリスタ素子によるVVVFインバータ制御を採用した車両である。
試験車両的な位置づけで、4両固定1編成のみ在籍する。1990年に100系をインバータ制御で登場させる契機となった。車体は10030系初期車と全く同一で、他の10000系列と連結して使用されるため、インバータ車ながらも性能を若干落としている。
2005年後半からインバータ装置の不具合により長く休車となっているが、50000系列同様のVVVFインバータ制御装置への換装が進められている。
[編集] 車両編成
※この節では、編成の組成両数について2両編成は「2R車」、4両編成は「4R車」、6両編成は「6R車」、8両編成は「8R車」、10両編成は「10R車」と表記する。
[編集] 概要
10000系では、それ以前の車両とは全く異なる車両番号の付番法則を用いる事になった。
具体的には、万の位で形式、千の位では浅草・池袋方から何両目であるか(10両目の場合は「0」)、百の位では編成の組成両数(10R車の場合は「0」)、残りの下2桁で編成番号を表す方法になっている。例えば「12608」であれば10000系で6R車の第8編成、浅草・池袋方から2両目という事になる。
この付番法則では電動車・制御車・付随車の区別は一切考慮されない。「16xxx」という番号は6R車ではクハ(制御車)、8R車ではモハ(電動車)、10R車ではサハ(付随車)となっている。
この付番法則は、以後の東武鉄道の通勤形電車すべてに適用されているため、編成両数さえ分かれば、車両番号は登場前に予測可能である。
[編集] 2R車
本線にのみ配置。22本44両が在籍する。
主に4R車の増結用であるが、2R車を3本連ねた「ブツ6」運用や2R車を4本連ねた「ブツ8」運用も見る事ができる。かつては亀戸線と大師線でも使用された。
1995年度に全車に自動扉締め切り装置が設置された。これは浅草駅のホーム有効長の関係で8両編成列車の後部2両がドア扱いできないためである。
[編集] 4R車
本線・東上線ともに配置。30本120両が在籍する。
10000系に4R車はなく、10030系で初めて登場した。伊勢崎線では浅草口で2R車を増結して6両編成を組むほか、4R車同士の8両編成又は6R車に増結されて10両編成を組成するなど様々な使い方がされる。また、一部は日光線新栃木以北や宇都宮線にも入線する。東上線では10両編成や8両編成を組む他、単独で越生線でも運用される。ワンマン運転化前の小川町~寄居間でも使用されていた。
[編集] 6R車
本線・東上線ともに配置。41本246両が在籍する。
本線の区間準急や区間急行は基本的に6両編成であるため、最も使いやすい編成となっている。東上線ではワンマン化前の小川町~寄居間などで単独使用されていたこともあるが、現在は常に寄居方に4R車を連結して10両編成で使用される。
[編集] 8R・10R車
東上線にのみ配置。8R車が2本16両、10R車が6本60両在籍。
10000系は8R車が最初に登場した。東上線の10000系は当初8R車が6編成の配置だったが、うち4編成(11803F~11806F)が1989年に中間車2両を新製して10R車化され、11003F~11006Fに改番された。この中間車2両は10030系登場後の新製だったが、編成美を損なわないために車内外のデザインは10000系と同一とされた。ただし床の色や手摺りなどが一部異なる。
10030系については、最初の2本は10R車で登場したが、その後の増備は6R車と4R車のみとなった。
[編集] 編成図
左側が浅草・池袋方となる。
- 2R車:モハ11200-クハ12200
- 4R車:クハ11400-モハ12400-モハ13400-クハ14400
- 6R車:クハ11600-モハ12600-モハ13600-サハ14600-モハ15600-クハ16600
- 8R車:クハ11800-モハ12800-モハ13800-サハ14800-サハ15800-モハ16800-モハ17800-クハ18800
- 10R車:クハ11000-モハ12000-モハ13000-サハ14000-モハ15000-サハ16000-サハ17000-モハ18000-モハ19000-クハ10000
[編集] 仕様
10000系 | 10030系・10050系・10080系 | ||
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定員 | Tc1,Tc2 | 150名 | 142名 |
Tc3,Mc | 150名 | 152名 | |
その他の車両 | 170名 | 152名 | |
自重 | Tc1,2 | 29t | - |
M1,2,Mc | 39t | - | |
M3 | 37.5t | - | |
T1,2 | - | 28t | |
T3 | - | 32.5t | |
Tc3 | - | 34t | |
車長 | 20,000mm | ||
車幅 | 2,874mm | ||
車高 | 4,145mm | ||
設計最高速度 | 110km/h | ||
営業最高速度 | 100km/h | ||
起動加速度 | 2.5km/h/s | ||
減速度 | 3.7km/h/s(常用) 4.5km/h/s(非常) |
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歯車比 | 5.44 | ||
冷房消費 | 42,000kcal/h/車両 | ||
備考 | 10080系はTc1,2とM1,2のみ |
[編集] 主な使用路線
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