斜張橋
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斜張橋(しゃちょうきょう)は、橋の形式のひとつで、塔から斜めに張ったケーブルを橋桁に直接つなぎ支える構造のもの。
ケーブルを利用し吊って支えることから広義には、吊り橋の一種と言えるが土木工学分野、橋梁工学分野では吊り橋とは区別される。斜張橋はこの狭義の吊り橋(以降、単に吊り橋と記す)に次ぐ中央径間(スパン、塔と塔の間隔)を得られる。
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[編集] 歴史
古くは西洋の中世の城の城門の巻き上げ式の跳ね橋が斜張橋と言える。日本では、祖谷のかずら橋にその原型を見ることができる。
近代的な斜張橋は戦後、ドイツでライン川に架けられたものとされる。少ない材料で多数建造するのに適していたからとされる。
ただケーブルにかかる負荷の計算など構造解析が難しく永らく小規模なものに止まっていた。しかし20世紀終盤から現代にかけコンピュータシミュレーション技術などの進歩により急速に発展し長大な橋が生まれつつある。 本四連絡橋の一つ多々羅大橋は当初、吊り橋で計画されたが、途中で斜張橋に変更された。同じ本四架橋で初期に建設された吊り橋大鳴門橋の中央径間(876m)を超える890mを実現し、世界最長の斜張橋となっている。 またケーブルの張り方が均等でない、塔が斜めであるなどの特殊な形状のものも可能となってきている。 たとえば米国のサンダイアル(日時計)橋は、斜めに傾斜した塔の片側だけにケーブルが張られており、その名の通り傾いた塔が日時計となっている。また東京の葛飾ハープ橋は、川を斜めに渡るため、橋桁すなわち路面がS字型という特殊な形状をしている。
[編集] 吊り橋との相違
どちらもケーブルの張力を利用した吊り構造という点では同じである。大きく異なるのは、斜張橋が塔と桁をケーブルで直結しているのに対し吊り橋は塔の間にまず渡したメインケーブルがありそこから垂らしたハンガーロープで桁を吊っていることである。また両端にアンカーレッジというメインケーブルを繋ぎとめる重しがいる。斜張橋はこの重しは不要である。一方で桁が塔の方に引かれるため圧縮する力がかかる。また同じスパンの場合、塔の高さは斜張橋の方がやや高くする必要がある。
[編集] 構造
- 主塔
- ここから張られたケーブルで桁をささえる。
- 塔は通常2本であるが1本の場合、3本以上の場合もある。
- 塔の形状はさまざまで一本の棒状、吊り橋と同様の2本組、塔の上部をすぼめた逆Y字形など各種存在する。
- ケーブル
- 主塔と桁を繋ぎ桁を支える。
- 構造上、塔から左右に張られたケーブルと桁でバランスをとるため吊り橋のような両端のアンカーレイジは不要である。
- ケーブルの張り方にはいくつか種類があり塔の先端で全てのケーブルをまとめた放射形式、少しずつずらしたファン形式、さらにずらしケーブル同士が平行に張られたハープ形式などがある。放射型はケーブルの塔頂でのとりまとめ構造が複雑になるのでケーブルの本数の少ない小型の橋にしか用いられない。主観の問題ではあるが美しさではハープ型が最良とされている。
- 桁
- 橋桁あるいは補剛桁ともいい、人や車の通行する部分である。形状はトラスや箱型があるが近年のものは箱形が多い。
[編集] 世界の斜張橋
以下、長さは中央径間である。
- 多々羅大橋 (日本) 890m 1999年
- ノルマンディー橋 (フランス) 856m 1993年
- 武漢白沙長江大橋 (中国) 618m 2000年
- チンジョウミンジャン橋 (中国) 605m 1996年
- ヤンプー大橋 (中国) 602m 1993年
- リオン・アンティリオン橋(ギリシャ)2003年
- ミヨー高架橋(フランス)2004年
中国では1000m超の橋が2本計画されている。
[編集] 日本の斜張橋
- 多々羅大橋 (瀬戸内しまなみ海道:広島県・愛媛県) 890m 1999年
- 名港中央大橋 (伊勢湾岸自動車道:愛知県) 590m 1998年
- 鶴見つばさ橋 (首都高速道路湾岸線:神奈川県) 510m 1995年
- 生口橋 (瀬戸内しまなみ海道:広島県) 490m 1992年
- 東神戸大橋 (阪神高速道路5号湾岸線:兵庫県) 485m 1994年
- 女神大橋 (ながさき女神大橋道路:長崎県) 480m 2005年
- 横浜ベイブリッジ (首都高速道路湾岸線・国道357号:神奈川県) 460m 1991年
- かつしかハープ橋 (首都高速道路中央環状線) 455m 1987年 ※世界初の曲線斜張橋
- 櫃石島橋 (瀬戸中央自動車道・JR瀬戸大橋線:香川県) 420m 1988年
- 岩黒島橋 (瀬戸中央自動車道・JR瀬戸大橋線:香川県) 420m 1988年
- 名港東大橋 (伊勢湾岸自動車道:愛知県) 410m 1998年
- 名港西大橋 (伊勢湾岸自動車道:愛知県) 405m 1986年
- 大和川橋梁 (阪神高速道路4号湾岸線:大阪府) 355m 1983年
- 天保山大橋 (阪神高速道路5号湾岸線:大阪府) 350m 1986年
- 大島大橋(大島大橋有料道路:長崎県) 350m 2001年
- 舞鶴クレインブリッジ (京都府) 350m 2000年
- 美原大橋 (国道337号:北海道) 340m 2005年
- 坂東大橋 (国道462号:群馬県・埼玉県) 936m(但し全長) 2004年
- たっぷ大橋 (北海道道81号岩見沢石狩線:北海道) 284m 2004年
- 小鳴門大橋 (徳島県道11号鳴門公園線:徳島県) 280m 1997年
- 末広大橋 (徳島県道29号徳島環状線・旧徳島県道211号津田安宅線:徳島県) 250m 1976年
- 豊田アローズブリッジ (伊勢湾岸自動車道:愛知県) 820m(但し全長・最大支間長は235m) 2005年