対空戦車
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対空戦車(たいくうせんしゃ)とは、戦車の車体に、対空砲・対空機銃などを装備、又は対空能力を有する砲塔を装備した戦車である。その機動性により、前線の戦車部隊に追随し、前線部隊を航空機などの脅威から防御することを目的としている。ただし、通常の戦車と比べて、装甲などは薄くなっており、また武装も対空兵器中心であるため、敵の地上部隊と直接戦闘を行うことは得意としていない。
もっとも、搭載する機関銃/砲は兵器特性から発射速度が非常に大きいため、第二次世界大戦では火力支援という形で使用され、大戦後も後述のようにゲリラ等、正規軍以外の勢力に対し、対地攻撃に使われる例もある。
[編集] 歴史と概要
第二次世界大戦期、制空権を連合軍に奪われたドイツ国防軍は、I号戦車の車体を利用したI号対空戦車(20mm機関砲装備)、IV号戦車の車体を利用した、メーベルワーゲン(37mm機関砲装備)、ヴィルベルヴィント(4連装20mm機関砲装備)、オストヴィント(37mm機関砲装備)といった対空砲装備の対空戦車を作り、連合軍の空からの攻撃に対抗した。
連合国側もイギリス戦車クルセーダー巡航戦車の砲塔に20mm機関砲を2門連装搭載したクルセーダーAA、アメリカM2/3ハーフトラックに37mm機関砲を搭載したM15対空自走砲、12.7mm機関銃を4連装砲塔で搭載したM16対空自走砲(厳密にはトラックに機関銃を搭載しただけであり、自走式対空砲と呼ぶ。)などが作られたが、連合国側の航空優勢もあってか、本来の任務ではあまり日の目を見ることはなかった。またアメリカでは朝鮮戦争でも使われたM19(連装40mm機関砲装備)が作られた。
第二次世界大戦後、西側諸国ではドイツ連邦軍(西ドイツ軍、en:Bundeswehr参照)がレオパルド1の車体を利用したゲパルトという対空戦車を開発し、装備している。日本の陸上自衛隊は74式戦車の車体を利用した87式自走高射機関砲を保有している。両者は砲塔左右にエリコン製35mm機関砲を装備して高度な追尾技術を有している点で酷似している。前者の追尾機器配置の意匠には特許があり、後者が同一の配置に出来なかった経緯を持つ。ただし、機器やソフトウェアの点では後者の方が後発であるためより新しい技術が導入されている。
アメリカではM42ダスター自走高射機関砲(連装40mm機関砲装備、手動追尾)がつくられ、ベトナム戦争にも派遣された。さらに高度な追尾技術を有する新型対空戦車M247ヨーク対空戦車も開発されたが、このようなシステムの高価格、さらに「アメリカ軍は常に味方の航空優勢下で戦える」という考え(驕り?)もあり、現在このような兵器を保有していない。唯一、M113装甲兵員輸送車に20mmM61バルカン砲を搭載したM163 VADSを保有するのみである(これも自走式対空砲である)。
東側諸国ではソ連がZSU-57-2、続いてZSU-23-4“シルカ”(4連装23mm機関砲装備)を開発した。特に後者は世界で初めて追尾レーダーを備えた対空戦車であった。第四次中東戦争で自走対空ミサイル2K12“クープ”とともにエジプト軍に配備され、開戦初日に40機(諸説あり)とも言われる膨大な数のイスラエル機の撃墜に一役買った。またソビエト連邦のアフガニスタン侵攻では輸送車列の護衛、チェチェン紛争では建物の上層階から攻撃してくるゲリラに対抗するという別の目的に使われた。
現在ロシア軍では2S6“ツングースカ”が主力である。これは4門の30mm機関砲に加え、8基の小型対空ミサイルを備えていて、より広範囲の敵航空機に対応できる。
このような対空戦車の存在意義に関しては疑問もある。その一番の原因は、地上車両にとって最大の敵である攻撃ヘリコプターが装備する対戦車ミサイルの射程延長化である。これにより、機関砲の射程外から攻撃される事態が想定される。加えて、システムの高価格は中小諸国がこうした兵器を持つのを難しくしている。
対抗手段として前述のツングースカの様に小型ミサイルを装備する、あるいは機関砲弾自体の射程延長化が進められている。ただ、それならば高価な対空戦車は不要だという意見もある。現代で対空戦車とはやや異なる、安価な軽車両に対空ミサイルを装備したものが増加してきているのは、こうしたためである。ただし、ミサイルでは敵が有効なECMを使用した場合無力化されてしまうので、そうした電子妨害が効かないという点で機関砲は有効である。
[編集] 関連項目
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