完全数
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完全数(かんぜんすう)とは、その数自身を除く約数の和が、その数自身と等しい自然数のこと。6 = 1+2+3, 28=1+2+4+7+14 など。完全数が無限に存在するかどうかということも分かっていない。
古代の人は、最初の完全数が6なのは「神が6日間で世界をつくったから」、次の完全数が28なのは「月の公転周期が28日」と関連があると考えていたとされる。
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[編集] 概要
完全数は、メルセンヌ素数と関係が深く、M がメルセンヌ素数ならば M×(M+1)/2 が完全数であることが、ユークリッドによって証明されている。このことから、紀元前には、(22-1)(21)=6, (23-1)(22)=28, (25-1)(24)=496, (27-1)(26)=8128 が完全数であることが知られていた。また M = 2n-1 であるので、完全数 M×(M+1)/2 = (2n-1){(2n-1)+1}/2 = (2n-1)(2n)/2 となり、これは 2n-1 番目の三角数である。つまり全ての完全数は三角数でもある。
その後、オイラーが登場するまでは、(213-1)(212)=33550336, (217-1)(216)=8589869056, (219-1)(218)=137438691328 が完全数であることしかわからなかった。オイラーは、全ての偶数の完全数が、メルセンヌ素数 M を用いて M×(M+1)/2 で表せることを示した(オイラーの定理)。
[編集] 偶数の完全数
M=2n-1が素数であるとき M(2n-1)=(2n-1)(2n-1) の約数は 1,2,4,…,2n-2,2n-1,M,2M,4M,…2n-2M,2n-1M であり、これらの約数のうち2n-1M自身を除く総和は
したがって (2n-1)(2n-1) はその数自身を除く約数の総和がその数自身に等しい完全数である。
[編集] 奇数の完全数
奇数の完全数が存在するか否かは、未解決である。もしNが奇数の完全数ならば、Nは次の各条件を満たさなければならない。
- である。
- ここでq,p1,p2,...,pkは相異なる素数でを満たす (Euler)。
- 上記のとき、Nはより小さい (Nielsen,2003)。
- 上記で、e1≡e2...≡ek ≡ 1 (mod 3) でない(McDaniel 1970).
- 上記で、e1 = e2 = ... = ek = βのとき、β = 1でない (Steuerwald)。
- このほか、βは2 (Kanold, 1941), 3 (Hagis, McDaniel, 1972), 5, 12, 17, 24, 62 (McDaniel, Hagis, 1975), 6, 8, 11, 14, 18 (Cohen, Williams, 1985) の値もとりえない。一般に、このかたちになる奇完全数Nは各βについて高々有限個しか存在しない。実際この場合、Nの相異なる素因数の個数は高々 4β2 + 2β + 3 でしかなく、上記のNielsenの結果より有限性が従う(山田智宏)。
- Nは12k+1または36k+9の形をしている(Touchard, 1953およびSatyanarayana, 1959)。
- Nは二つの平方数の和でなければならない(Stuyvaert, 1896による?)。
- N > 10300 (Brent, Cohen, Te Riele, 1991)。
- Nは少なくとも9個の相異なる素因数を持つ (Nielsen, 2006)。
- Nは108より大きい素因数を持つ(大野泰生、後藤丈志, 2006)。
- これは1955年にMuskatによって主張されていたが、その証明は発表されていない。これより古い下界としては107 (Jenkins, 2003), 106 (Cohen, Hagis, 1998) などがある。
- Nの2番目に大きな素因数は104より大きい (Iannucci, 1999)。
- Nの3番目に大きな素因数は100より大きい (Iannucci, 2000)。
- Nの相異なる素因数の個数をkとし、Nのi番目に小さい素因数をpiとするとき、p1< 2+2k/3である(Grün, 1952)。またi=2, 3, 4, 5, 6のとき、piはより小さい(Kishore, 1981)。
- Nは重複も数えて少なくとも75個の素因数を持つ (Hare, 2005)。
上記のことから、現在知られている完全数はすべてメルセンヌ素数と一対一の対応がついている。数表は参照:メルセンヌ数
[編集] 関連する数
約数の和を考えることで特徴付けられる数の種類には他にも次のようなものがある。完全数と合わせて、これらの名称には古代ギリシャの数秘学の影響が見られる。
- 不足数
- その数を除いた約数の和がその数より小さいとき、この数を不足 (deficient) 数という。
- 過剰数
- その数を除いた約数の和がその数より大きなとき、過剰 (abundant) 数という。
- 友愛数
- その数を除いた約数の和が互いに等しいような2つの数のペアを友愛 (amicable) 数という。
- 社交数
- 友愛数が2つのペアよりもっと大きな組からなっているとき、その組を社交 (sociable) 数という。
- 準完全数
- 準完全 (quasiperfect) 数 とは、約数の和が 2n + 1 に等しいような数をいう。これは過剰数である。そのような数はいまだに見つかっていないが、存在するならばそれは奇数の平方数で 1035 より大きく、少なくとも7つの約数を持つということが示されている。
- 概完全数
- 概完全 (almost perfect) 数 とは約数の和が 2n - 1 に等しいような数である。これは不足数である。2k の形をした自然数はこの条件を満たしているが、この形であらわされる自然数以外でこの条件を満たすものが存在するのかどうかはわかっていない。
[編集] 参考文献
- Pace P. Nielsen, Odd perfect numbers have at least nine different prime factors, arXiv:math.NT/0602485, 2006.
- Richard P. Brent, Graeme L. Cohen, H. J. J. Te Riele, Improved techniques for lower bounds for odd perfect numbers, Math. Comp. 57 (1991), 857--868, MR 92c:11004.
- J.E.Z. Chein, An odd perfect number has at least 8 prime factors, Doctoral Thesis, Pennsylvania State University, 1979.
- Graeme L. Cohen, Ronald M. Sorli, On the number of distinct prime factors of an odd perfect number, J. Discrete Algorithms 1 (2003), 21--35.
- G. L. Cohen and R. J. Williams, Extensions of some results concerning odd perfect numbers, Fibonacci Quart. 23 (1985), 70--76.
- Takeshi Goto and Yasuo Ohno, Odd perfect numbers have a prime factor exceeding 108(完全数、円分数、及び ABC 予想), Preprint, 2006. 後藤丈志のサイト"奇数の完全数の最大素因子について"で入手可能。
- Otto Grün, Über ungerade vollkommene Zahlen, Math. Z. 55 (1952), 353–-354.
- R.K. Guy, Unsolved Problems in Number Theory, 3rd Edition, Springer-Verlag, New York, 2004.
- P. Hagis Jr., Outline of a proof that every odd perfect number has at least eight prime factors, Math. Comp. 35 (1980) 1027--1032.
- P. Hagis, Jr. and G. L. Cohen, Every odd perfect number has a prime factor which exceeds 106, Math. Comp. 67 (1998), 1323--1330.
- P. Hagis Jr. and Wayne L. McDaniel, A new result concerning the structure of odd perfect numbers, Proc. Amer. Math. Soc. 32 (1972), 13--15.
- Kevin G. Hare, New techniques for bounds on the total number of prime factors of an odd perfect number, (preprint). [1]
- Douglas E. Iannucci, The second largest prime divisor of an odd perfect number exceeds ten thousand, Math. Comp. 68 (1999), 1749--1760. [2]
- Douglas E. Iannucci, The third largest prime divisor of an odd perfect number exceeds one hundred, Math. Comp. 69 (2000), 867--879. [3]
- Paul M. Jenkins, Odd perfect numbers have a prime factor exceeding 107, Math. Comp. 72 (2003), 1549--1554. [4]
- M. Kishore, On odd perfect, quasiperfect, and odd almost perfect numbers, Math. Comp. 36(1981), 583--586.
- Wayne L. McDaniel, The non-existence of odd perfect numbers of a certain form, Arch. Math. (Basel) 21 (1970), 52--53.
- Wayne L. McDaniel and P. Hagis Jr., Some results concerning the non-existence of odd perfect numbers of the form paM2β, Fibonacci Quart. 13 (1975), 25--28.
- M. Satyanarayana, Odd perfect numbers, Math. Student 27 (1959), 17--18.
- J. Touchard, On prime numbers and perfect numbers, Scripta Math. 19 (1953), 53--59.
- Tomohiro Yamada, Odd perfect numbers of a special form, Colloq. Math. 103 (2005), 303--307.