マツダ・RX-8
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RX-8(アールエックス・エイト)は、マツダの4人乗りスポーツカーである。現在唯一のロータリーエンジンを搭載した生産されている市販車である。型式番号はSE3P。
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[編集] 概要
ロータリーエンジンを搭載し、RX-7の後継車としてではなく、新規車種として2003年に発売が開始された。プラットフォームは、マツダ・FEプラットフォームが用いられた。名称を見ると、FD3S型RX-7の後継プラットフォームに見えるが、設計はFDから一新されている。
「RX-8」と名付けられた車が最初に発表されたのは、2001年のデトロイト・ショーでのことであるが、これに先立ち1999年の東京モーターショーでコンセプトカー「RX-EVOLV」が公開されており、外観はこの流れを引き継いでいる。
RX-7の後部座席は「ワンマイルシート」と呼ばれる補助的なもので、乗員の長距離移動には不向きであったが、RX-8 では「ファミリースポーツ」という新たな分野を掲げ、大人4人が乗るに堪える形での登場となった。
4人乗りで、スポーツカーとしては珍しく4枚のドアを備える。この4枚ドアはフリースタイルドアと呼ばれ、前後が観音開きになり、後方部分は前部が開くことによって初めて開閉が可能となり、前部が後部ドアをロックする役割も兼ね備えている。また、他社に先駆けピラーと呼ばれるボディーの上下を結ぶ骨組みをドアに組み込んだビルトインピラー によりピラーレス構造を実現。広い開口部はさらに斬新さを助長した。
セーフティ面においても国土交通省による衝突安全性能総合評価において運転席、助手席とも最高ランクの六つ星を獲得(自動車アセスメント情報安全性能試験結果詳細データ(Type S))し、ブレーキ性能試験においても100km/hからの停止距離が38.6m(湿潤時は44.4m)とトップクラスの性能を実現している(但し全ての自動車を評価しているわけではないので注意が必要)。
かつてのRX-7などの本格的スポーツカーと比べて、エンジンの馬力は少なく、速さもないが、NAロータリーならではの爽快な吹けあがりや運転の楽しさなどで、新たなファンを獲得した。
この車は、氷川きよしがKIYOSHI名義で発売したDVDシングル「未来」のプロモーションにも登場している。
[編集] エンジン
エンジンは珠玉のロータリー式であるが、ターボチャージャーは搭載せず自然吸気(NA)となっている。設計の変更によりこの「RENESIS RE」は従来のロータリーエンジンと比較して燃費も向上しており、より大きなトルクを発生するものとなっている。イギリスの「エンジン・テクノロジー・インターナショナル」が主催する「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー2003」を受賞した。過去最高の審査員50人中44人の得票を得て受賞したことから、この「RENESIS RE」の技術力の高さが見てとれる。このエンジンの基となったものを搭載した車が次期RX-7と呼ばれたコンセプトカー「RX-01」(1995年東京モーターショー展示車)で、吸気と同じく排気もサイドポート(これ以前はペリフェラルポート)にすることにより燃費向上とクリーンな排ガスを実現した。しかし、サイド排気にした事により「熱だまり」が出来てしまい、13B-REWよりも冷却が厳しくなってしまった。
マツダのスポーツカーに継承されてきたフロントミッドシップをさらに推し進めた「アドバンスドフロントミッドシップ」レイアウトを採用。車両の重量配分はRX-7の最終型となったFD3S型と同様に「前後50対50」の比率を確保し、エンジンの搭載位置をより低くしたためFD3S型よりもヨー慣性モーメントが5%低減され、高い運動性能を誇っている。
「RENESIS RE」の開発は当時のマツダの経営状況やフォードの経営陣の意向などで、多々の苦労を強いられて開発された。熱によるサイドポートに溜まるスス、極端に少ない開発メンバー、バブル崩壊による少ない開発費などと、様々な壁を乗り越えて開発された。この物語はNHKのドキュメンタリー番組プロジェクトXにも取り上げられている。
また、ロータリーエンジンは水素燃料等のガス燃料を燃焼するのに安全性が高く、一番効率が良いとされ、水素ロータリーエンジン「HYDROGEN RE」を搭載した水素型RX-8「ハイドロジェンRE」がある。スイッチ一つでガソリンと水素を切り替えて使用できるバイフューエルとなっている。2006年現在広島県・山口県・岩谷産業・出光興産に貸与して公道試験走行が行われている。
エンジンの最高出力は標準モデルで210PS、TYPE-E(6AT)仕様は215PS、TYPE-S(6MT)250PS、水素使用時は110PSである。