ボーイング767
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ボーイング767
ボーイング767(Boeing 767)とは、米ボーイング社によって生産された中型双発旅客機である。グラスコックピット機の草分け的存在。
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[編集] 特徴
767の特徴は、機体規模の割に広い客室幅にある。客室最大幅は4.7mあり、通路を2つ設けることが可能であるが、床下の貨物室はLD3コンテナを2個並列に並べることが出来ず(専用のより小さいLD2コンテナなら並列に入る)、ワイドボディ機の標準からは外れている。これらのことから767の胴体はセミワイドボディ機に分類され、通常2本の通路を挟んで2-3-2の客席配置である。一部の激安エアラインでは2-4-2の8列配置もある.また、エンジンも3種(要目欄参照)から選択して、発注することが可能である。ナローボディーの兄弟機757とは、操縦機器や操縦性をあわせるように作られており、操縦資格を共通化して両機を運用する航空会社の便を図っている。 なお、7列2通路の767と、6列1通路の757とでは機体外径が大きく異なる割には輸送人員の差は少なく、757の経済性は際だっている。しかし販売実績はやや757優位というところか。757は総生産数が1,050機程度で生産を終えたが、767はデリバリーされていないのも含めても1,000機に若干満たない(2006年8月末現在で969機)。
[編集] 歴史
1970年よりB7X7として計画された。このころ日本では次世代旅客機YX計画が進んでおり、ボーイングは同クラスの機体であることから共同開発を打診した。これにイタリアのアエリタリア社が加わり、三国共同開発という形になった。開発分担比はアメリカ70%、日本15%、イタリア15%となっているが、日本とイタリアは一部の開発を請け負ったものの、重要部分の開発には全く参加できず、ほとんど下請けと変わらないものだった。原型機の初飛行は、1981年9月(JT9Dエンジン装備)。1982年9月よりユナイテッド・エアラインで就航を開始した。
最近ではロシアの航空会社もユーザーに加わっており、リース会社経由ながらアエロフロート・ロシア航空でも活躍するようになった。しかし、ヨーロッパを中心に、エアバスの同クラスの機体に市場シェアを奪われ、売り上げが大きく落ち込んでいる。ボーイングは、民間機としては開発中の787に役目を譲り、767は空中給油機や早期警戒管制機など軍需への売り込みを強める姿勢を見せている。なお、非ER型は生産が打ち切られている。
[編集] 日本における採用
現在、日本の航空会社では全日本空輸、日本航空、北海道国際航空、スカイマークで使用されている。中でも全日本空輸は767を大量に保有し世界第2位の767オペレーターである。また、日本航空は767-300のローンチカスタマーである。
エンジンは日本航空がプラット・アンド・ホイットニーJT9D-7Rシリーズ、全日本空輸がジェネラル・エレクトリックCF6-80シリーズを採用したが、JT9Dエンジンの生産中止に伴い、日本航空も1994年以降の機体はボーイング747-400にも使用しているCF6-80シリーズに変更している。
一方、航空自衛隊では早期警戒管制機として改造したE-767を4機導入した。また、空中給油機としてKC-767を導入する予定である。
[編集] 派生型
- 767-100型機:短胴型。計画のみ。
- 767-200型機;1978年に立ち上がり1981年から1994年まで生産された、767型機の初期モデル。1982年にユナイテッド航空が運行し始める。また、全日本空輸で使われていた767-200は貨物機に改造され、アメリカのエアボーン・エクスプレスで使われている。デルタ航空でも引退が始まり、特に同社の有志により導入された「スピリット・オブ・デルタ」ことN102DA(767-232)が2006年3月に引退し、ジョージア州アトランタ市にあるデルタエア・ミュージアムへ寄贈されることとなった。
- 767-200ER型機:航続距離を伸ばした型で、1984年にエル・アル・イスラエル航空が初飛行を行った。
- 767-300型機:-200型の胴体を6.43m延長。日本航空がローンチカスタマー。
- 767-300ER型機:-300型に新型エンジンを搭載し、燃料容量を増加させたもの。
- 767-300F型機:-300型の貨物専用型。
- 767-300ERF型機:-300ER型の貨物専用型。
- 767-400ER型機:-300ER型の胴体を6.42m延長。
[編集] 軍用機型
- E-767 AWACS(空中警戒管制機)型(航空自衛隊採用)-200ERベース
- KC-767 空中給油機型(イタリア空軍、航空自衛隊採用)-200ERベース
- E-10A MC2A(Multi-Sensor Command and Control Aircraft)型 E-8C Joint STARS後継機 -400ERベース
[編集] 一般的な要目
767-200 | 767-200ER | 767-300 | 767-300ER | 767-300F | 767-400ER | |
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全長 | 48.5 m | 54.9 m | 61.4 m | |||
全幅 | 47.6 m | 51.9 m | ||||
乗員/乗客 | 2/181-255 | 2/218-351 | 2/0(貨物専用) | 2/245-375 | ||
貨物室容量 | 81.4 m³ | 106.8 m³ | 454 m³ | 129.6 m³ | ||
航続距離 | 9,400 km (5,200 海里) |
12,200 km (6,600 海里) |
9,700 km (5,230 海里) |
11,305 km (6,105 海里) |
6,050 km (3,270 海里) |
10,450 km (5,650 海里) |
巡航速度 | マッハ0.80 (時速862km) | |||||
エンジン | 高バイパス比ターボファンエンジン2基搭載、エンジンは次のうちのどれかを装備。 ・ゼネラル・エレクトリック製CF6-80型(約29,500kg) |
[編集] 災害と事件
[編集] 日本における全損事故
2002年6月26日、全日本空輸の-200型(JA8254)が下地島空港で訓練中、タッチ&ゴーに失敗して大破している。修理可能なレベルの事故だったが、諸般の事情により(-200型は当時退役が進んでいた)現地解体されることとなった。日本での767初、また全日本空輸としては1971年の雫石事故以来31年ぶりの全損事故となった。
[編集] 同時多発テロ
2001年のアメリカ同時多発テロ事件に2機のボーイング767型機が使用されている。アメリカン航空11便、767-223ER型機は乗客・乗員93名と共にニューヨーク世界貿易センタービルのノースタワーに激突した。ユナイテッド航空175便、767-222型機は乗客・乗員65名と共にサウスタワーに激突した。
[編集] 機器誤作動
1991年5月26日、ラウダ航空004便(タイ・バンコク発オーストリア・ウィーン=シュベヒャート行)が、離陸25分後にタイ国内のジャングル上空で、スラストリバーサの誤作動により第1エンジンが逆噴射し、操縦不能に陥ったまま高度10000フィート以下で空中分解。乗員乗客233名が全員死亡。墜落原因とされたエンジンはプラット・アンド・ホイットニー製であった。
[編集] 原因不明
1999年10月31日、エジプト航空990便(ニューヨーク発カイロ行)が離陸後まもなく大西洋に墜落した。217名死亡。エジプト・パイロット連盟はミサイルとの衝突や機体の問題、エジプト航空は767は尾翼部分に問題があると主張。
ボイスレコーダーには、機長がトイレに立った隙に副操縦士が「神だけが頼りだ(I rely on God.)」を繰り返し唱えながら、エンジンを切る音声が記録されていた。フライトレコーダーによれば、機体は高度35000フィートの上空から垂直に近い状態で墜落した。機長は海面との衝突直前にコクピットに戻ることができ、自ら操縦桿を引いたが、間に合わなかった。
[編集] 事故概略
(2004年現在)
- 機体損失事故:6回、総計568人死亡。
- 他の原因:2回、総計0人死亡。(クウェートに侵攻したイラク軍に強奪されたクウェート航空の2機が湾岸戦争で破壊)
- ハイジャック:5回、総計282人死亡。(同時多発テロ含む)
[編集] 外部リンク
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レシプロ旅客機:40A | 80 | 221 | 247 | 307 | 314 | 377 |
ジェット旅客機:367-80 | 707/720 | 717 | 727 | 737 | 747 | 747-400 | 747-8 | 757 | 767 | 777 | 787 |
構想・開発中止:2707 | 7J7 | NLA | ソニック・クルーザー | Y1 | Y3 |