下地島空港
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下地島空港(しもじしまくうこう Shimojishima Airport)は、日本唯一の民間パイロット専用の訓練飛行場。沖縄県が宮古島市下地島に設置し、管理する第三種空港である。3,000m×60mの滑走路が整備され、航空機の操縦訓練が行われる。
目次 |
[編集] 空港データ
ICAO | RORS | IATA | SHI |
空港位置 | 北緯24度49分36秒 | 東経125度08分41秒 | |
標高 | 16m | ||
滑走路 | 17/35 3000×61 | ||
運用時間 | 7時30分~20時30分 |
[編集] 航空管制
GND | 121.7 | |
TWR | 118.3 | 126.2 |
DEP | 125.0 | |
APP | 120.3 | 121.2 |
- APPとDEPの運用時間は、8時00分~19時30分
- TWRの運用時間は、7時30分~20時30分
- 管制は、国土交通省大阪航空局下地島空港事務所が担当
[編集] 航空灯台
局名 | 種別 | 識別信号 | 周波数 | 運用時間 |
下地島 | VORDME | SJE | 117.1 | 7:30~20:30 |
- 保守は、国土交通省大阪航空局下地島空港事務所航空管制技術官が担当
- 受信報告書は、返信用切手を同封の上、上記事務所先任航空管制技術官宛に送ること
[編集] 歴史
- 1973年(昭和48年) 非公共用飛行場として建設される。
- 1979年(昭和54年) 公共用飛行場(第三種空港)として設置、供用開始。航空会社によるパイロットの訓練が開始される。
- 1980年(昭和55年) 南西航空(現日本トランスオーシャン航空)の定期便(YS-11型機)が就航。
- 1994年(平成6年) 利用客が少ないことから定期便運休。以後、現在まで定期便運航は無し。
- 2001年(平成13年)
- 4月18日 伊良部町議会が空港への自衛隊訓練誘致を満場一致で決議。防衛庁は「前向きに検討」とした。
- 4月28日 フィリピン合同軍事演習へ向かう途上の米軍ヘリコプターが飛来して給油。自治体には事前に通達。
- 5月15日 この日発表されたアメリカ国防総省系シンクタンクのランド研究所の報告「アメリカとアジア」で、「下地島など沖縄の空港施設を軍事利用できるようにする」とある。
- 5月17日 フィリピン合同演習から帰還するヘリが再び給油に訪れる。
- 5月22日 在沖縄アメリカ総領事が空港を視察。
- 2002年(平成14年)
- 2005年(平成17年)
- 3月16日 伊良部町議会で空港への自衛隊誘致を賛成9反対8で決議。住民説明会で反対意見が続出。
- 3月25日 伊良部町臨時議会で16日の自衛隊誘致決議と平成13年の自衛隊訓練誘致決議の白紙撤回を賛成16反対1で決議。
- 10月1日 伊良部町が周辺町村と合併して宮古島市となる。
- 2006年(平成18年)
- 2月 航空自衛隊那覇基地司令が「日本の防衛上、下地島を自衛隊が利用できればいい」と発言したことが、地元紙で問題発言として扱われる。
[編集] 下地島空港の軍民共用化問題
[編集] 先島諸島の状況
先島諸島は、宮古島にある航空自衛隊レーダーサイト以外は自衛隊がまったく駐留していない「軍事空白域」になっている。しかも、中華人民共和国、台湾と接しており、尖閣諸島などの領土問題を抱えている。日中間では、排他的経済水域の問題でも対立があり、先島諸島近海では、中国の科学調査船による無許可海洋調査が頻発しており、調査船の護衛名目で、中国艦隊の威力航海が何度も行われている。台湾有事の可能性もあるなど、軍事情勢は不穏である。
[編集] 下地島空港の価値
下地島空港は、沖縄本島と中国大陸の中間にあり、特に、尖閣諸島の目と鼻の先にある。先島諸島で唯一の3,000m級滑走路を持ち、戦闘機の運用に適した唯一の空港である。那覇基地からでは尖閣諸島は中国本土よりも遠く、有事対応できないため、自衛隊の下地島空港使用について、国会でも討論されている。この空港を使用することで、自衛隊は東シナ海での行動範囲が広がり、航空自衛隊の戦闘機部隊、海上自衛隊のP-3C対潜哨戒機部隊の基地、または補給中継施設として非常に重要な拠点となりえる。アメリカ軍も、台湾及びフィリピンへ向かう航空路近くにある下地島空港に関心を示しているとされ、これまでに、緊急の給油を理由として、何度も空港への着陸を行っている。
[編集] 屋良覚書
しかし、下地島空港の利用方法については、飛行場設置に当たって、1971年に日本政府と当時の屋良朝苗琉球政府行政主席との間に交わされた「屋良覚書」が存在しており、これが下地島空港の軍民共用化の足かせになっている。
その内容は
- 下地島飛行場は、琉球政府が所有及び管理を行い、使用方法は管理者である琉球政府(復帰後は沖縄県)が決定する。
- 運輸省(現国土交通省)は航空訓練と民間航空以外に使用する目的はなく、これ以外の目的に使用することを琉球政府に命令する、いかなる法令上の根拠も持たない。
- ただし、緊急時や万が一の事態のときはその限りではない。
というものである。
[編集] 旧伊良部町の請願
それに対して、下地島空港の地元である旧伊良部町では、2005年(平成17年)3月16日に開催された町議会で、下地島空港への自衛隊誘致の請願を賛成9反対8で可決し、沖縄県全体に衝撃が走った。この請願は、2004年11月10日に、宮古島及び石垣島沖合で発生した漢級原子力潜水艦領海侵犯事件において、稲嶺惠一沖縄県知事を始め、沖縄県内の首長が誰一人として中国潜水艦による領海侵犯に抗議の声明を出さず沈黙したことに、事件の地元である伊良部町の一部の住民が憤慨し、政府の責任で自衛隊を駐屯させ、日本の国土である先島諸島を守って欲しいと意思表示を行い、請願したものであった。
結局、この請願は、住民集会で異論が噴出し、3月25日に白紙撤回をせざるを得なかったが、沖縄本島と先島諸島との間の国防に関する温度差が如実に表れた事件だった。
[編集] 現状
伊良部町は、合併により宮古島市になり、軍民共用化反対の立場を取る革新の伊志嶺亮氏が初代市長になった。軍事利用を排して、下地島空港を国際物流拠点とする構想を表明しているが、何ら具体策は示していない。稲嶺沖縄県知事も明確に反対の姿勢を示しており、自衛隊は基地設置を熱望しているものの下地島空港の軍民共用化の道は険しいといえる。
[編集] アクセス
- 佐良浜港からタクシーで約20分
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
空港情報 (RORS) |
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