クリーンナップ
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クリーンナップ、クリーンアップ (Clean up) とは野球に於いて、塁の上にいる走者を生還させることが期待される打順のことである。走者を掃除すると言う意味からクリーンナップと呼ばれる。クリーンナップには、そのチームに於いて打率・本塁打数などの成績が最も良い選手が置かれるのが普通である。
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[編集] 日本における伝統的な役割付け
日本では3・4・5番を打つ3人の打者を指し、以下のようなセオリーで選手を配置する。
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- 3番打者
- 本塁打よりも打率に重点を置く。役割は1・2番の出塁走者を本塁へ返す。或いは進塁させる。走者がいなければ、出塁する。ここ一番のチャンスで本塁打を狙う、など。3番打者は必ず初回に打順が回ってくるので、先制する確率をあげるために4番より優秀な打者を置く(または結果的にそうすることになる)こともある。そのため高打率を残す選手が多い。
- 打率・本塁打の両方に於いて最高であることを求められるが、どちらかと言えば本塁打等の長打に重点が置かれる。出塁している走者を返す、ここ一番のチャンスで本塁打を狙う、終盤に試合を決める、などチームの主砲としてナインを引っ張ることが求められる。そのため、チーム1のパワーヒッターや総合的な能力が高い選手が務める事が多い。
- 確実性で劣っても長打力に重点を置き、4番が残した走者を掃除する事を求められる。出塁している走者を、さらに返す。長打を打ち、相手投手に留めを刺す。
もちろん、それぞれの打者への役割付けはチーム状況によって千差万別である。近年は福岡ソフトバンクホークスのように、3・4・5番ではなく、4・5・6番をクリーンナップと位置づける球団もある。
4番打者はチームの中で最強の打者が置かれることが多く、そのチームの看板打者となることが多い。特に読売ジャイアンツではこれに拘り、「第○代巨人軍4番打者」などと呼ばれる。しかしバレンタイン監督率いるロッテのように、あくまで「四番目の打者」してと位置づける考えも出て来ている。
[編集] 日本球界における代表的なクリーンナップの例
- 3番秋山幸二・4番清原和博・5番オレステス・デストラーデ(西武ライオンズ)AKD砲と呼ばれた西武黄金時代の中軸
- 3番タフィ・ローズ・4番中村紀洋(大阪近鉄バファローズ)パ・リーグ優勝を果たした2001年のいてまえ打線の中軸
- 3番小笠原道大・4番フェルナンド・セギノール・5番稲葉篤紀(北海道日本ハムファイターズ)日本一となった2006年ビッグバン打線の中軸
[編集] メジャーリーグにおける本来の位置付け
クリーンナップを3・4・5番の打者として位置づけるのは和製用法であり、英語本来の意味では3番打者、もしくは4番打者1人を指す言葉である。
アメリカ合衆国のメジャーリーグでは、最強打者は3番打者である事が多い。これは、精神論を重視して伝統的な4番打者最強説を採用している日本に対し、アメリカ合衆国では、合理主義に基づいて得点期待値の最も高い打順を組むためである。コンピュータによるシミュレーションによって、最も効率的な打順を求めた結果、チームの主力打者のタイプや相性などの様々な要素によって結果は変わるが、最強打者の打順については、メジャーリーグの殆どのチームで3番であった。なお、わずかながら2番や4番というケースも存在した。アメリカ合衆国においては、最強打者は3番という固定観念があるのではなく、効率的な打順を追求した結果、最強打者が3番になる事が多いということである。したがって3番打者だからといって最強打者だとは限らない。もっとも1960年代は日本でも「3番最強説」と「4番最強説」どちらが最強なのかとの議論も出ていた(「月刊ホームラン」1988年8月臨時増刊号内の記事より)。なお、ニューヨーク・ヤンキースに移籍した松井秀喜が4番を任されたことは、アメリカではもちろん、日本でも大きく話題となったが、アメリカは3番重視のため、アメリカ人から見た「4番を打つ」ということは、日本人から見た「5番を打つこと」とほぼ同じ感覚である(無論、主力打者の一角であることに変わりはない)。
またイチローのメジャーリーグ移籍以後は、走者を生還させるためのクリーンナップよりも、チャンスメイクを任される1番打者を重視する考えに日本国内では比重が移っているが、アメリカ合衆国においてはそのような考え方をする者は極めて少ない。むしろ、1番打者はクリーンナップと違い、「足が速く、出塁率が高い」ことが求められるので、どちらが最強かを議論する意味自体に乏しいという考えが支配的である。
[編集] 関連項目
- 読売ジャイアンツ歴代4番打者一覧
- クリナップ - 日本の住宅機器メーカー。社名は「クリーンナップ」からとっている。