打率
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[編集] 概要
打率は打者の打撃機会あたりの安打数を表し、以下の式で求められる。
日本では慣例的に歩合(割・分・厘など)で表すことが多く、百分率(パーセント)は用いない。上記の式で算出された数値の小数第4位を四捨五入して第3位までの値を打率として用いる。整数部分の0は省略することが多い。打率ランキング作成時に小数第3位まで同値の打率が2つ以上ある場合は小数第4位以下を比較する。
[編集] 備考
打率はチームメイトの能力からの独立性が高く、選手個人の能力によって再現可能であると考えられている。そのため、打率の高い選手は「確実性の高い打者」「シュア(確実)なバッター」などと言われる。相手投手のレベルにもよるが、100打数以上で3割以上の打率であれば、おおむね優れた成績とされる。一方、打率は選手の長打を打つ能力、四球を選ぶ能力は反映しないため、チームの成績との関係は限定的である。
打率は、打者に関する統計の中でも注目度が高く、打率1位の打者が首位打者と呼ばれているほどである。このように打率に高い価値が認められてきた背景には、打率の概念が考え出された19世紀後半の野球では、現代より本塁打が少なく、四球が投手のミスと見なされていたことの影響がある。本塁打が増え、四球を選ぶことが打者の能力とされる現代野球では、打率の価値は下がりつつある 打率を指標として打者の能力を評価する場合、打数が少ない時には打者の真の能力とかけ離れた打率が出やすいことに注意する必要がある。例えば、ある打者が常に一定の打率.275を記録できる能力を持っており、安打数が二項分布に従うと仮定すると、この打者の打率が400打数で.300以上となる確率、.250以下となる確率はいずれも約14%である。同様に、120打数で.325以上となる確率、.225以下となる確率はいずれも約13%であり、20打数で.400以上となる確率、.150以下となる確率はいずれも約16%である。打者の実力や調子にまったく変わりがない時でも、ただ単に運の良し悪しだけで、このような打率の差が出てしまうと考えられる。
打率の応用法として、得点圏打率、相手投手別打率、過去一週間の打率といった条件別打率もよく用いられる。しかし、これらの条件別打率には、打数が少なくなるため選手の実力とかけ離れた値が出やすくなる、条件分けの方法が適切でないと通算の打率との違いを見出しにくい、といった問題がある。
[編集] 得点圏打率
得点圏打率(とくてんけんだりつ)とは、野球において二塁または三塁に走者がいる場合の打率のこと。二塁または三塁に走者がいる場合、単打1本で得点できることが多いため、二塁および三塁は得点圏(とくてんけん)と呼ばれる。得点圏打率が高い打者のいるチームは、少ない安打で効率良く得点できるとされる。
得点圏に走者がいる場合は、いない場合より投手にとって不利な状況であるため、得点圏打率は通算の打率より高くなることが多い。得点圏打率が通算の打率より目立って高い打者は「チャンスに強い」「クラッチヒッター」などと言われる。しかしながら、そのような成績が打者個人の能力によるものであるかについては、疑問視する意見もある。セイバーメトリクスにおいても「チャンスでの強さ」という能力は本当に存在するのかが議論されており、現在は懐疑的意見が主流である。
[編集] 打率に関する記録(日本)
[編集] 通算記録
記録は2006年オールスター終了時点。通算4000打数以上の選手が対象。
順位 | 名前 | 打率 | 順位 | 名前 | 打率 |
---|---|---|---|---|---|
1 | レロン・リー | .320 | 11 | *鈴木尚典 | .3071 |
2 | *小笠原道大 | .31925 | 12 | 中西太 | .3066 |
3 | 若松勉 | .31918 | 13 | *前田智徳 | .3055 |
4 | 張本勲 | .31915 | 14 | 長嶋茂雄 | .3052 |
5 | ブーマー・ウェルズ | .317 | 15 | 篠塚和典 | .3043 |
6 | 川上哲治 | .313 | 16 | 松井秀喜 | .3040 |
7 | 与那嶺要 | .3110 | 17 | 大下弘 | .303 |
8 | 落合博満 | .3108 | 18 | 谷沢健一 | .3024 |
9 | 松井稼頭央 | .309 | 19 | *谷佳知 | .3021 |
10 | レオン・リー | .308 | 20 | 王貞治 | .301 |
*は現役選手
[編集] シーズン記録
順位 | 名前 | 所属 | 打席 | 打率 | 達成年 |
---|---|---|---|---|---|
1 | ランディ・バース | 阪神タイガース | 左 | .389 | 1986 |
2 | イチロー | オリックス・ブルーウェーブ | 左 | .387 | 2000 |
3 | イチロー | オリックス・ブルーウェーブ | 左 | .385 | 1994 |
4 | 張本勲 | 東映フライヤーズ | 左 | .3834 | 1970 |
5 | 大下弘 | 東急フライヤーズ | 左 | .3831 | 1951 |
6 | ウォーレン・クロマティ | 読売ジャイアンツ | 左 | .378 | 1989 |
7 | 川上哲治 | 読売ジャイアンツ | 左 | .377 | 1951 |
8 | 中根之 | 名古屋軍 | 左 | .376 | 1936秋 |
9 | ジャック・ブルーム | 近鉄バファローズ | 左 | .374 | 1962 |
10 | 谷沢健一 | 中日ドラゴンズ | 左 | .369 | 1980 |
10 | ロバート・ローズ | 横浜ベイスターズ | 右 | .369 | 1999 |