殿 (軍事用語)

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殿（しんがり）とは、戦闘において退却する軍隊の最後尾の部隊を指す。後備え（あとぞなえ）、殿軍（でんぐん）ともいう。

殿が必要とされるのは大抵が敵軍に対して劣勢の状況下での退却の場合であり、敵方の追撃を自分の部隊に引きつけさせ、他の味方部隊を安全に逃がす事が目的の最も危険な役割であった。このため、古来より武芸、人格に優れた武将が務める大役とされてきた。

有名な例では、1570年に越前の朝倉義景を攻めた織田信長が義弟である近江の浅井長政の離反によって敵中に孤立した際に、羽柴秀吉（後の豊臣秀吉）が殿を引き受けて信長を逃がし、自らは奮戦の末に命からがら戦場を脱出した件が良く知られている。これはこれまで織田家中で知恵者としては知られていても武勇の士とは見なされていなかった秀吉の家中での評価を変え、織田家の重臣としての地位を築くきっかけとなった。

織田武将を表現した、「木綿藤吉（秀吉）、米五郎左（丹羽長秀）、掛かり柴田（勝家）に退き佐久間（信盛）」という言葉があり、佐久間信盛は殿を巧くこなせる人物であったという。

戦闘時以外の使用法には、隊列の最後尾の人や、順番が最後の人に対して使う場合がある。