アッラーフ
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アッラーフ(ألله または الله Allâh)は、アラビア語で神に対する呼称のひとつ。日本では一般に「アッラー」あるいは「アラー」と表記されることが多いが、「アッラーフ」がよりアラビア語発音に近い。
[編集] イスラーム教に於けるアッラーフ
イスラーム教ではアッラーフは、生みも生まれもしない存在とされ、親も子供もいない。また、全知全能で唯一絶対であり、すべての超越者である。そして、目無くして見、耳無くして聞き、口無くして語るとされ、姿形を持たない、意思のみの存在であるため、絵画や彫像に表す事はできない。イスラーム教が偶像崇拝を完全否定しているのも、このためとされている。
さらに他の一神教との大きな相違点として、イスラーム教ではアッラーフは創造神ではないと定義されている。実際、クルアーン(コーラン)には世界の起源に関する記述は無いので、イスラーム教には世界創造及び天地開闢の概念ならびに教義が存在しない。
[編集] アラビア語ならびに他宗教に於けるアッラーフ
アラビア語においては、アッラーフはアブラハムの一神教といわれるユダヤ教、キリスト教、イスラーム教の共通の唯一絶対神を指す。ちなみにアラブ地域の聖書ではヤハウェをアッラーフと表記している。例えば、東方正教会のアンティオキア総主教区、東シリア教会(ネストリウス派)、西シリア教会(単性論)などでは、創造主を「アッラーフ」と訳している。尚、ユダヤ教やキリスト教では、「唯一神=創造神」と解釈されており、イスラーム教のアッラーフとは性格がかなり異なっている。
ジャーヒリーヤと呼ばれた古代アラブの多神教においては、「アッラーフ」は神々のうちの一柱として信仰されていた。イスラーム登場後のアブラハムの唯一神教においては「唯一の崇拝の対象」を意味する言葉とされている。
ただし、考古学的見地では、ヤハウェとイスラーム教の唯一神アッラーフは別の起源であり、イスラーム教の唯一神アッラーフは、630年以前は、カアバ神殿に祭祀されていた最高神である。イスラーム教でいう「無明時代」(アニミズム時代)に、カアバ神殿に祭祀されていた360の神々の最高神がアラーフであり、月からの隕石とされていた。この黒曜石が、アラーフの神体とされたのである。もちろん、偶像崇拝を禁じるイスラーム教では、信仰及び崇拝の対象になっていないが、唯一の例外として、ハッジ(メッカへの巡礼)においてこの石に触れることができれば大変な幸運がもたらされるとされている。因みに現在は、カアバ神殿の東南角に鄭重にはめ込まれている。
[編集] 語源
「アッラーフ」の語源については二つの説が有力である。両説とも、英語の The God(または God)、フランス語の Le Dieu(または Dieu)に相当する普通名詞が特殊化し固有名詞化した、という説である。
- 「神」を意味する普通名詞の「イラーフ(إله ilāh)」に定冠詞「アル(ال al)」を付けた「アル・イラーフ(الإله)」が短縮されたものである、という説。19世紀末にドイツの聖書学者ユリウス・ヴェルハウゼン(Julius Wellhausen)が唱えた。この説はムスリム(イスラーム教徒)に受けがよく、今日しばしば見聞きする解釈である。また、「イラーフ(إله ilāh)」の綴りは声門閉鎖音である「ء(ハムザ)」を打たない場合、アラビア語の語法では定冠詞「アル(ال al)」が付くと語頭の「イ(i)」の音価を持つ「ا」は欠如することとなる(これをハムザ・トゥル・ワスルと呼ぶ)。この結果が「アッラーフ(ألله Allâh)」であるとも考えられる。
- シリア語(アラム語の方言)で神を表す「アラーハー(alāhā)」が訛ったもの、という説。非ムスリム系学者に支持されている説である。また、考古学的にもこの説が支持されている。
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