大学院
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大学院(だいがくいん、英: graduate school, postgraduate school)とは、大学(短期大学を除く)を卒業した者、および大学(短期大学を除く)を卒業した者と同等以上の学力があると認められた者に対して、より高度な教育を行うための教育研究組織のことである。
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[編集] 概要
大学院は、大学(短期大学を除く)におくことができる(学校教育法第62条)。
大学院は、学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめ、または高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い、文化の進展に寄与することを目的とする(学校教育法第65条第1項)。また、大学院のうち、学術の理論および応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識および卓越した能力を培うことを目的とするものは、専門職大学院とされる(学校教育法第65条第2項)。
大学院をおく大学には、研究科をおくことを常例とされる(学校教育法第66条の2本文)。研究科は、専門分野に応じて、教育研究上の目的から組織されるものである(大学院設置基準第5条)。
ただし、当該大学の教育研究上の目的を達成するため有益かつ適切である場合においては、文部科学大臣の定めるところにより、研究科以外の教育研究上の基本となる組織をおくことができる(学校教育法第66条ただし書き)。研究科以外の教育研究上の基本となる組織をおくことができるようになったのは、2000年(平成12年)4月1日からであるが、この日に、九州大学の全ての大学院が学生が所属する教育部として学府、教員が所属する研究部として研究院という組織をもつ大学院へと改組され、東京大学では新たに教育部として学府を研究部として学環をもつ大学院情報学環・学際情報学府が設置された。
大学院には、2以上の大学が協力して教育研究を行う研究科をおくことができる(大学院設置基準第7条)。2以上の大学が協力して教育研究を行う研究科は、連合研究科(れんごうけんきゅうか)、連合大学院などと呼ばれる。例えば、東京学芸大学、横浜国立大学、千葉大学、埼玉大学よりなる東京学芸大学 大学院 連合学校教育学研究科(教育学の博士課程)がある。そのほか、連合農学研究科、連合獣医学研究科がある。
大学には、学部(学部以外の教育研究上の基本となる組織を含む)をおくことを常例としている(学校教育法第53条)。しかし、教育研究上特別の必要がある場合においては、学部(学部以外の教育研究上の基本となる組織を含む)をおくことなく大学院をおくものを大学とすることができる(学校教育法第68条)。学部をおくことなく大学院をおく大学は、大学院大学(だいがくいんだいがく)などと呼ばれ、このような大学院大学におかれる大学院は、独立大学院と呼ばれる。独立大学院のうち、大学以外の研究機関と協力しているものは、連携大学院(れんけいだいがくいん)などと呼ばれることもある。
大学(短期大学を除く)は、学位規則(昭和28年文部省令第9号)などに基づき、大学院(専門職大学院を除く)の課程を修了した者に対し、修士または博士の学位を、専門職大学院の課程を修了した者に対し専門職学位を授与する(学校教育法第68条の2第1項)。大学は、学位規則などに基づき、大学院(専門職大学院を除く)の課程を修了することで博士の学位を授与された者と同等以上の学力があると認める者に対し、博士の学位を授与することができる(学校教育法第68条の2第2項)。大学院(専門職大学院を除く)の課程を修了することで授与をされる博士の学位を課程博士といい、「大学院(専門職大学院を除く)の課程を修了することで博士の学位を授与された者」と同等以上の学力があると認められて授与される博士の学位を論文博士という。
大学院には、各種の課程がある。大学院設置基準(昭和49年文部省令第28号)においては、大学院における課程として、修士課程、博士課程、専門職学位課程(専門職大学院の課程)の3種類の課程が規定されている。専門職大学院の課程は、組織上、各大学がおく大学院に専門職学位課程としておかれる。大学院をおく各大学の学則などでの運用においては、3種類の課程の課程について、細かく分けたり、合わせたりして呼称している。各大学の学則などにおける呼称としては、主に修士課程・博士前期課程、博士後期課程・後期3年博士課程、一貫制博士課程、4年制博士課程、専門職学位課程などがある。
2000年代以降は、社会的な要望から、主に社会人の経歴を有する者を教育する大学院の課程(社会人大学院などとも呼ぶ)の設置も相次いでいる。2003年度(平成15年度)からは、専門職大学院の制度が作られ、法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とする法科大学院などが作られた。専門職大学院については、学術の理論および応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識および卓越した能力を培うことが強調されている。大学院の設置基準としては、大学院設置基準(昭和49年文部省令第28号)などがあり、専門職大学院に関しては、加えて、専門職大学院設置基準(平成15年文部科学省令第16号)などが適用される。
[編集] 大学院の課程に関する定義と用法
大学院における課程について表現するにあたってはいくつかの方法があり、方法ごとに意味が異なっている。
[編集] 大学院設置基準によるもの
大学院設置基準に定められている大学院の課程は、「修士課程」「博士課程」「専門職学位課程」の3種のみである。修士課程は、大学卒業後の標準修業年限が一般に2年である課程であり、修了した者には修士の学位が授与される。博士課程は、大学卒業後の標準修業年限が一般に5年である課程であり、修了した者には博士の学位が授与される。専門職学位課程は、修了した者には専門職学位が授与される課程であり、大学卒業後の標準修業年限は一般に2年以内であり、法科大学院(もっぱら法曹の養成を行う課程)の標準修業年限は3年である。
このうち、博士課程は、前期2年と後期3年に区分するもの(学則等では主に「博士前期課程」「博士後期課程」などと呼称)と、後期3年のみの課程のもの(学則等では主に「後期3年博士課程」などと呼称)、区分を設けないもの(学則等では主に「一貫制博士課程」などと呼称)、医学・歯学・臨床薬学・獣医学を履修するもの(学則等では主に「4年制博士課程」などと呼称)に分かれる。博士課程のうち前期2年に区分された課程は、大学院設置基準上の修士課程とみなすことになっている。
[編集] 学則等に見られる用法
各大学によって異なるが、しばしば学則等では、「博士前期課程」「博士後期課程」「一貫制博士課程」「後期3年博士課程」「4年制博士課程」「修士課程」「専門職学位課程」などに区分する方法が見られる。
博士前期課程と修士課程は、大学卒業後の修業年限を2年とし、修士の学位の授与が得られる課程である。両者の教育内容は同一であるが、当該課程の上に博士後期課程が設けられていれば「博士前期課程」とされ、博士後期課程が設けられていなければ「修士課程」とされる。
一貫制博士課程は、前期2年と後期3年に区分しない博士課程のことである。
後期3年博士課程は、博士前期課程(前期2年の博士課程)との接続がない後期3年のみの博士課程である。また4年制博士課程は、修業年限を6年とする学部に接続する医学・歯学・臨床薬学・獣医学を履修する博士課程である。
専門職学位課程は、修了した者には専門職学位が授与されるという専門職大学院の課程である。
[編集] 俗な用法
俗な用法においては、学則等で用いられる「修士課程」と「博士前期課程」について単に「修士課程」と呼び、学則等で用いられる「博士後期課程」「一貫制博士課程」「後期3年博士課程」「4年制博士課程」を「博士課程」と呼ぶ表現も見られる。
[編集] 大学院の課程と教育内容
一般的には、修士の学位や専門職学位を授与された後に、後期3年の博士課程に進学できるようになっている形態が多い。しかし、一貫制博士課程を設けて修士水準から博士水準までの一貫教育を行う大学院もある。
修士課程・博士前期課程、専門職学位課程では、一般的に2年以上在学して要件を満たすことで学位の授与を受けることができる。授与される学位は、修士課程・博士前期課程では「修士の学位」、専門職学位課程では「専門職学位」である。
「修士の学位」または「専門職学位」の授与を受けた後に、博士後期課程・後期3年博士課程で3年在学して要件を満たせば博士の学位の授与を受けることができる。また、「修士の学位」または「専門職学位」の授与を受けていなくても、一貫制博士課程で5年在学して要件を満たしても「博士の学位」の授与を受けることができる。
なお、以下の課程の分類においては、#学則等に見られる用法を用いた。
[編集] 修士課程・博士前期課程
博士前期課程、修士課程は、「広い視野に立つて精深な学識を授け、専攻分野における研究能力又はこれに加えて高度の専門性が求められる職業を担うための卓越した能力を培うこと」を目的している。大学(短期大学を除く)を卒業した者などが入学できるが、通例として入学者選考が課され、合格したもののみが入学できる。標準修業年限は2年。ただし在学中に特に優れた成果を挙げたものは修業年限を短縮できる学校もある。修了するためには、規定の単位を取得し、研究指導を受け、各大学院による修士論文審査と試験に合格することが必要である。修士論文審査は、課程によっては、研究成果の審査であることもある。修了すると修士の学位が授与される。
[編集] 博士後期課程・後期3年博士課程
博士後期課程・後期3年博士課程は、「専攻分野について、研究者として自立して研究活動を行い、又はその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うこと」を目的としている。修士の学位や専門職学位を授与された者などが入学できるが、通例として入学者選考が課され、合格したもののみが入学できる。標準修業年限は3年。ただし在学中に特に優れた成果を挙げたものは標準修業年限を短縮できる学校もある。修了するためには、規定の単位を取得し、研究指導を受け、各大学院による博士論文審査と試験に合格することが必要である。修了すると博士の学位が授与される。
[編集] 一貫制博士課程
一貫制博士課程は、前期2年および後期3年の課程の区分を設けない課程であり、「専攻分野について、研究者として自立して研究活動を行い、又はその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うこと」を目的として一貫して教育を行う。この課程は、大学(短期大学を除く)を卒業した者などが入学できるが、通例として入学者選考が行われ、合格したもののみが入学できる。修了するためには、規定の単位を取得し、研究指導を受け、各大学院による博士論文審査と試験に合格することが必要である。修業年限は5年。ただし在学中に特に優れた成果を挙げたものは修業年限を短縮できる学校もある。修了すると博士の学位が授与される。
さらに一貫制博士課程に入学し、前述の博士前期課程、修士課程の修了要件を満たした場合、大学院によっては、修士の学位が授与される。
[編集] 4年制博士課程
4年制博士課程は、標準修業年限を4年としている、医学を履修する博士課程、歯学を履修する博士課程、6年制薬学系学部に接続している薬学を履修する博士課程、獣医学を履修する博士課程である。修了すると博士の学位が授与される。4年制博士課程に接続する学部の修業年限は6年であるため、4年制博士課程に入学できる者は、修業年限を6年とする学部を卒業した者、修士の学位を授与された者、専門職学位を授与された者などである。目的、修了要件、授与される学位は、一貫制博士課程と同様である。
[編集] 専門職学位課程(専門職大学院の課程)
専門職学位課程は、専門職大学院の課程であり、「高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うこと」を目的としている。大学(短期大学を除く)を卒業した者などが入学できるが、通例として入学者選考が課され、合格したもののみが入学できる。修了するためには、規定の単位の取得その他の教育課程の履修により課程を修了することが必要である。標準修業年限は、通例2年であるが、専攻分野によっては、1年以上2年未満である。修了すると修士(専門職)の学位が授与される。専門職学位課程で授与される学位は、専門職学位と呼ばれる。
法科大学院は、法曹養成のための特別な専門職学位課程である。修了するためには、規定の単位の取得が必要である。修業年限は3年。修了すると「法務博士(専門職)」の学位が授与される。
[編集] 夜間授業・通信教育
[編集] 大学院の夜間授業
主に夕刻から授業を始める大学院の課程であり、通常の研究科が夜間にも授業を行っている形態と「夜間において授業を行う研究科」(夜間研究科、夜間大学院)の形態の2種類がある。学部の夜間部(第2部)や「夜間において授業を行う学部」(夜間学部)の大学院版ともいえる。日中、仕事を持つ社会人などが、就業後に通学するなど利便性の点で、大学院の通信教育とともに注目されている。なお、修了して授与される学位は、大学院の(昼間において授業を行う)通常の課程を修了して授与されるものと同一のものである。 なお、日本初の夜間大学院は1958年に開設された東京電機大学大学院工学研究科電気工学専攻である。また文科系における日本初の夜間大学院は、1990年開設の青山学院大学大学院国際マネジメント研究科である。さらに社会人を対象とする日本初の夜間大学院は1989年開設の筑波大学大学院修士課程教育研究科である。
[編集] 大学院の通信教育
通信による教育を行う大学院の課程であり、大学通信教育を大学院で行うものである。「印刷教材等による授業」(印刷授業)・「面接授業」などの授業や、研究指導を経て学位が授与される。
修士課程・博士前期課程では、放送大学大学院、明星大学大学院、東北福祉大学大学院、名古屋学院大学大学院、帝京平成大学大学院、中京大学大学院、吉備国際大学大学院、倉敷芸術科学大学大学院、人間総合科学大学大学院、桜美林大学大学院、東京福祉大学大学院、高野山大学大学院、東亜大学大学院などがある。
また、博士後期課程には、日本大学大学院、佛教大学大学院、聖徳大学大学院、日本福祉大学大学院、九州保健福祉大学大学院などがある。
[編集] 学位の取得について
一般に近年まで日本においては人文科学、社会科学においては博士号は、過程期間内で所得するのが困難で、単位取得満期退学で教職に就き、その後研究を積み重ね、定年近くになって名誉称号的に授与されるのが慣例になっていた。しかしながら近年、日本の慣例を嫌う留学生が日本への留学を回避するようになる状況が起こり、文部科学省の指導により、博士号の過程内の取得が可能なる状況にある。
[編集] 大学院卒業後の進路
大学に残って研究者になるもの、民間企業に就職するものが主流である。前者の場合、「ポスドク」といわれる身分になることが多く、問題になっている。後者の場合、理系でしかも工学系など企業に入ってからの職務と結びつくことが多い専攻であれば成功することが多いが、そうでない場合(文系に多い)は苦労することが多いと言われていた。しかし近年では団塊の世代の大量退職によって、売り手市場(応募する学生が有利な状況)になっていることや大学側でも就職支援に乗り出すなどしていることや採用する企業側も人物重視に切り替えている事等から、以前よりは改善されつつある。 また、大学院博士課程では、アメリカと違って就職に苦労するという現実があったが、([1])国立八大学が共同で就職支援を行うSNSの運営に乗り出す等の新たな動きがみられるが、こうした博士課程の就職支援をどのように進めていくかが今後の課題と言える。
※参考:学歴難民
[編集] 関連項目
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前段階の学校 | 現学校 | 次段階の学校 |
大学院修士課程 大学院博士前期課程 大学院専門職学位課程(注1) 2年制 22歳~ |
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同段階の学校 | ||
前段階の学校 | 現学校 | 次段階の学校 |
大学院博士後期課程 3年制 24歳~ |
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同段階の学校 | ||
※一貫制博士課程については表を省略。