大学入試センター試験
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大学入試センター試験(だいがくにゅうしせんたーしけん)とは、独立行政法人大学入試センターによって例年1月中旬の土曜日・日曜日の2日間にわたって行われる日本の大学の共通入学試験である。より厳密な名称は大学入学者選抜大学入試センター試験であるが、一般にはセンター試験と呼ぶ場合が多い(大学入試センター自身もセンター試験と称している)。また受験生の間では「センター」「セ試」で通じる場合が多い。なお公式の英語訳はNational Center Test for University Admissionsである。
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[編集] 概説
全問マークシート方式で、各科目の高等学校学習指導要領に沿って出題される。試験が行われる1月中旬は厳冬期に当たるため、雪により公共交通機関のダイヤに混乱が生じた場合には、開始時刻を遅らせたりするなどの措置が取られることが多い。 検定料は2科目以下受験12,000円、3科目以上受験18,000円。成績開示(後述)希望の場合は手数料800円がかかる(2006年度現在)
1979年度から国公立大学の大学共通一次試験(共通一次)が、1989年度まで実施されていた。これは入学試験問題の奇問・難問をなくしたり、歴史などの重箱の隅をつつくような設問をなくし、一定の学力基準を測るものとして導入されたものである。しかし実際にはこういった設問を完全に排除することができず、1990年度より名称を大学入試センター試験に改め、試験自体を流動性のあるものに改めた。2006年には英語科のリスニング試験がICプレイヤーを利用して初めて実施され、トラブルも含めて話題となった。
国公立大学を受験する際にはセンター試験は必須である。生徒の学力低下の懸念からほとんどの国公立大学ではセンター試験で5教科7科目(文系では外国語、国語、数学2科目、地理歴史、公民、理科1科目が、理系では外国語、国語、数学2科目、地理歴史、理科2科目が主流)を必須としている。また近年は私立大学の参加も増加している。私立大学の場合、センター試験の入学者選抜への採用方法は各大学が個別に設定しており、センター試験のみで合否が判定される場合と、センター試験を通過した後に各大学が出題する個別学力検査(いわゆる二次試験)を受験しなければならない場合とがある。後述の#入試における利用も参照。
2006年5月25日、大学入試センターは1984年度以降23年間、解答用紙のマークシートに受験番号などをマークし忘れた受験生の答案でも0点にせずに受験者を割り出して採点していた事実を明らかにした。センターは、「受験番号の塗り忘れがあると採点しない場合がある」旨を表向き伝えてきてはいたが、塗り忘れやマークミスを特定できた受験生の分について以上のような救済措置をとってきた。これについて文部科学省は「何年も受験のためにがんばってきた努力を、たった1つのマークミスですべてを失わせるのは、受験者の大半が現役生であることを考えるとあまりにも酷過ぎる」と、センターの対応に理解を示している。が、受験科目が複数ある教科(地歴公民科など)については、採点者が受験者の回答科目を半ば推測的に判断することになるため、受験科目欄の塗り忘れを救済していない。
問題は前述のとおり、学習指導要領の域を越えてはいけないため、教科書の範囲からの出題だが、ただ単に教科書の例題だけでなく応用問題も出るほか、量が多いため、受験生は模試などでトレーニングをしておかないと思うように得点できない。問題によっては、ある年の問題の難易度が低い(平均点が高い)と、翌年は難易度が上がる(平均点が下がる)といった傾向(逆もあり)もみられる。平均点は大体6割程度になるようになっているが、易しくて7割を超えたり、あまりに難しすぎて5割にも満たなかったこともある。
[編集] 日程・出題科目
2006年度の実施日程と出題科目は以下の通り。全6教科33科目。志望する大学の学部(または学科)が指定した科目を選択して受験する。ただし、例外として外国語では、「英語(筆記)」を受験する場合、志望する大学の学部、学科が「英語(リスニング)」を指定していなくても、リスニング試験を受験しなくてはならない。
[編集] 第1日
2006年1月21日本試験実施
- 外国語(筆記): 各200点満点、試験時間80分
- 外国語(リスニング): 50点満点、試験時間60分(試験時間内訳:機器等説明時間30分、問題解答時間30分)
- 外国語(筆記)で「英語」を選択する受験生は必ず受験しなくてはならない。ただし、重度の聴覚障害者については免除される。また、「英語」以外の外国語を選択した者は受験できない。
- 使用されたICプレイヤー(右):途中停止機能はなく、一度再生ボタンを押すと止めることはできない。試験終了後、希望する者は持ち帰る事ができる。停止後に再度再生をするためにはプレイヤーのリセットが必要。
[編集] 第2日
2006年1月22日本試験実施
- 理科(1): 各100点満点、試験時間60分
- 生物I
- 理科総合B
- ※※生物IA
- ※※総合理科
- 数学(1): 各100点満点、試験時間60分
- ※数学I
- 数学I・数学A
- 数学(2): 各100点満点、試験時間60分
- 理科(2): 各100点満点、試験時間60分
- 化学I
- 理科総合A
- ※※化学IA
- 理科(3): 各100点満点、試験時間60分
- (※印の科目については、新教育課程固有の設問についてのみ、旧教育課程の範囲から同過程履修者のみ選択可能な問題が出題される)
- (※※印の科目は、すべて旧教育課程対応問題で構成され、同課程履修者のみ選択可能)
[編集] 追試験
疾病などやむを得ない事情により本試験を受験することができなかった者は、本試験の1週間後に東京都と兵庫県の2会場で行われる追試験を受験することになる。追試験の方が本試験よりも難度が高いことが多い。なお、2006年度に関しては、追試験の問題が非公表だった。
- 2001年度は、258人が受験対象者になった。
- 2002年度は、平成14年1月26日、27日に東京水産大学(受験対象者138人)・大阪大学(91人)で実施。
- 2003年度は、1月25日、26日に東京商船大学(受験対象者266人)・神戸大学(139人)で実施。
- 2004年度は、1月24日、25日に東京芸術大学(受験対象者253人)・京都大学(119人)・お茶の水大学(点字試験場1人)で実施。
- 雪害のため、北見工業大学で第1日目のみ4人が再試験の対象となった。
- 2005年度は、1月22日、23日に東京海洋大学(受験対象者101人)・大阪大学(76人)で実施。
- 正規の試験時間が確保されなかったため、東北工業大学及び富士常葉大学で50人が再試験の対象となった。
- 2006年度は1月28日と29日に東京芸術大学(受験対象者144人)と神戸大学(受験対象者)で実施され、2会場計174人(追試験165人、再試験9人)が受験した。
- 正規の試験時間が確保されなかったため、山陽学園大学で6人が国語のみ再試験の対象になった。
- 停電のため福岡国際大学で1人が英語(リスニング)のみ再試験の対象になった。
- ICプレーヤーの不具合等で6大学で9人が英語(リスニング)のみ再試験の対象になった。
- 2007年度は、1月27日,28日に東京海洋大学(品川キャンパス)と、京都教育大学で実施される。
[編集] 外国語の点数の扱い
外国語の試験で英語にリスニングが導入された結果、英語の総合得点(素点)が250点満点となるため、他の外国語の200点満点と50点の差が生じる。差分の調整方法は各大学によって異なる。以下にいくつかの例を示す。
- 筆記とリスニングの合計250点満点を0.8倍して、200点満点に換算する方法(東北大学など)。
- 筆記とリスニングの各得点を調整し、合計すると200点満点になるように換算する方法。
- 筆記のみ200点満点の点数と、筆記とリスニングの合計250点満点を0.8倍して200点満点に換算したものとを比較し、得点の高い方を英語の得点として採用する方法(信州大学など)。
- リスニングの得点を考慮しない(筆記の得点のみ考慮する)(東京大学など)。なお東京大学では、英語の二次試験において独自のリスニングテストを実施する。
なお、韓国語・中国語の平均点は、毎年、英語などと比べて数十点高い。これは、朝鮮学校生徒や在日華僑など、それらの言語をいわば母国語または母語として操る人が受験生の中に多いためと推測される。試験における公正さの観点から、これを疑問視する声が上がっており、後述する得点調整を行うべきとの意見もある。
[編集] 内容概略
[編集] 試験形式
ほぼ全ての科目で、設問に対し与えられた選択肢の中から、受験者が正解と思うものの数字を選択し、それを解答用紙(マークシート)の指定された解答欄に鉛筆でマークする(塗りつぶす)、というものである。
外国語(英語リスニングを含む)・国語・地理歴史・公民の問題では、各問いに解答番号が「1」から連続して振られており、表示された番号と同じ解答番号の解答欄にマークする。理科や数学の一部(後述)も同様であるが、マークシートの解答欄は大問ごとに区切られ、解答番号も大問ごとに「1」から振られている。時々確認しないと、最後になってズレに気づいても後のまつりで、大量失点してしまう。
なお、理科、地歴・公民は、必要数以上受験した場合、高得点のものが採用されるので、勉強していないのに一応受けておく、いわゆる記念受験をする人もいるようだ。
[編集] 数学における解答方式
数学(「工業数理」の一部および「簿記」「情報関係基礎」を除く)の解答方式は例外的で、一部の問いを除き、問題文中にある「ア」「イウ」といった枠で囲まれた文字に当てはまる数字や符号を直接マークする形式をとっている。誘導形式が多く、解けない問題があると、その先はできないことがある。また、いわゆる「ダミー」は無いために、自分で出した数値と問題用紙の桁数が違うとその数値は誤答ということになる。
- 例1:第1問の問題文中で『~の最小値は [アイウ]』と書かれた部分に対し「-54」と答えたい場合、問題番号1の解答欄「ア」にある (-) をマークし、同様に解答欄「イ」の (5)、解答欄「ウ」の (4) をそれぞれマークする。
- 例2:問題文中で と書かれた部分に対し と答えたい場合、解答欄「エ」の (-)、「オ」の (2)、「カ」の (a)、「キ」の (3) をマークする。
- なお、分数を含む形で解答する場合は、既約分数で答えなければならないことになっているので、上の例で と答えた場合、数学的に同じ値であっても不正解となる。また、正負の符号は必ず分子に付けることとなっている。
- 例3:問題文中で と書かれた部分に対し と答えたい場合、解答欄「ク」の(6)、解答欄「ケ」の(2)をマークする。
- なお、根号を含む形で解答する場合は、根号の中に現れる自然数が最小となる形で答えなければならないことになっているので、上の例で と答えた場合、数学的に同じ値であっても不正解となる。
- 例4:問題文中で『OD = [コサシ]』と書かれた部分に対し「2BC」と答えたい場合、解答欄「コ」の(2)、解答欄「サ」の(B)、解答欄「シ」の(C)をマークする。なお、合同・相似条件やベクトルのような頂点の対応関係や向きを考慮する必要がある場合を除いては、BCとしてもCBとしてもどちらでも正解になる。
- なお、このように図形上の点を答えさせる場合は、『ただし、[サシ] については、(A)から(G)までの適切な記号を入れよ。』との記述があることが多い。
- 例5:問題文中の [ス] に関して『ただし、[ス] については、当てはまるものを、次の(0)~(4)から一つ選べ。』と指示があり、この部分に対し(2)を選びたい場合、解答欄「ス」の(2)をマークする。
[編集] 科目選択
全科目は9グループに分類されており、この分類は同一日時に行われる科目の群と一致する。受験者は各グループからは1科目ずつ(すなわち、最大9科目)しか受験できない。出願する大学により指定された科目は受験する必要があるが、必要の無い科目は受験しなくてもよい。どの科目を受験するかは、試験当日に決定することができる。ただし、
- 「外国語」グループにおける「英語」以外の科目
- 「数学(2)」グループにおける「工業数理基礎」「簿記・会計」「情報関係基礎」
の選択を希望する受験者は、出願時に特別に申し出なければならない。希望しなかった受験者には、試験当日に上記科目の問題冊子は配布されない。
なお、マークシートに受験した科目をマークしていなかった場合は、理由を問わず0点となる。
[編集] 得点調整
センター試験の本試験において、同一グループの科目間で20点以上の平均点差が生じ、これが問題の難易差に基づくものと認められる場合には、得点調整と呼ばれる統計的処理が行われる。適用対象グループは、「地理歴史のB科目(3科目)」「公民」「理科のI科目(4科目)」の3つのみである。
センター試験終了約1週間後に平均点の中間発表があり、そのときに得点調整を行うか予告され、実施が決定した場合には、対象となるグループ内で平均点が最高の科目と最低の科目の差を15点となるように、そのグループ内の科目を受験した者全員の得点が調整される。
しかし、実際に調整が行われることは極めてまれであり、センター試験の歴史の中でも数回しか行われていない。平成10年度には上記のルールに従い、地理歴史で調整が行われた(日本史の得点を地理に近づけた)。また、平成元年度には物理・生物があまりに低く化学が非常に高かったので調整が行われたが、これについては0点でも50点近くにまで調整されたこともあり、批判が多く出された。
[編集] 成績の開示
希望者には自身の得点の開示が行われる。出願時に希望した受験者のみに対し、すべての大学入試が完了したあとで(通例その年の5月頃)各科目の成績が印刷された用紙が郵送される。
受験生は各大学に出願する前に自身のセンター試験での成績を知ることができないため、解答時に問題用紙に自身の解答をメモしておき、後日、新聞等にて発表される正解・配点と照合して自身の成績を推定する、いわゆる自己採点を行う。
さらに現在では、採点結果を大手予備校に送ることにより、ある大学の志望者の中における成績の位置を知ることのできるシステムも整備されている(代々木ゼミナールのセンターリサーチ、河合塾のセンター・リサーチ、駿台予備学校・ベネッセコーポレーションのデータネットなど。受験者の多くは複数の予備校に自己採点の結果を送るため、予備校ごとに順位や合格判定の結果に大きな差が出ることはあまり無い)。
[編集] 入試における利用
大学入試に関する情報については、大学受験も参照のこと。
大学により、最終判定におけるセンター試験の利用法は異なるが、大きく3系統にまとめることができる。
- センター試験単独判定型
- センター試験の結果のみで合否を判定するタイプ。私立大学で一般入試(大学独自の問題による入試)と並行して行われる場合が多い。国立大学の後期試験でも、センター試験だけで合否を決めている例もある。
- センター試験 + 二次試験型
- センター試験の結果と二次試験(大学によっては、小論文・面接等も課される)の結果を合計して合否を判定するタイプ。ほとんどの国公立大学はこれに当てはまる。センター試験の点数による第一段階選抜(いわゆる「足切り」)が行われる場合がある。
- センター試験独立利用型
- センター試験の結果を第一段階選抜にのみ利用し、最終的な合否の判定は二次試験の結果のみで行うタイプ。東京大学・京都大学などが実施しているが、あまり見られないパターン。
[編集] 過去のトラブル
- 1997年度から、それまで「国語I・II」のみであった国語が、「国語I」「国語I・II」の2科目に分割された。2科目は同一冊子の中で「国語I」「国語I・II」の順に印刷されていたが、両科目とも問題構成が同一であったため、本来「国語I・II」を解答すべきであった学生が、違いに気づかずに「国語I」のみを解答するといった事態が初年度に続出した。大多数の大学では、入試科目として「国語I・II」のみしか認めていなかったため、「国語I・II」のつもりで「国語I」を解答してしまった受験生は大幅に得点を失うこととなったが、これに関する救済措置は一切なされなかった。なお、「国語I」は2005年度を最後に廃止され、2006年度からは再び「国語」1科目に復している。
- 2001年度のセンター試験本試験「英語I・II」第6問の小説文が、三友社出版発行の高等学校英語教科書掲載の文章と出典が同じで、ストーリーも酷似していたことが指摘されている(読売新聞 2001年1月27日)。ただし、この教科書がシェア0.25%(採択部数 4,000部)と少なかった上、当時は現在ほどには入試倫理に関して各所がうるさくなかったためか、さほど大きな問題とはならなかった。
- 2005年度センター試験本試験「国語I」第1問(現代文評論)で、大岡信 「抽象絵画への招待」が出典に用いられたが、この文章は高等学校国語教科書(第一学習社 『高等学校 現代文2』)に所収されていたほか、過年度にも様々な大学入試や模擬試験での使用実績のある文章であった。大学入試センター当局は、問題作成時点でのチェックミスと発表、異例の記者会見を開き謝罪したが、チェック自体がきわめて杜撰なものであったことが後日指摘され、社会的非難を受けた。この件に関しても、大学入試センター側は得点調整・再試験などの措置は一切講じていない。
- 同じく2005年度、電子掲示板に英語・国語の出題内容を示唆する書き込みがなされ、文部科学省は大学入試センターに対して内容流出の有無を含めた調査を要請したが、結局、書き込み自体は流出ではなく単なる偶然として処理された。
- 毎年「試験が遅れて始まったのに定刻通りに終了した」「試験官のミスで定刻より若干早めに終了した」といった、試験時間の確保不足に関するトラブルが相次いでおり、2006年度も数は少ないものの同様のトラブルが起きている。
- 2006年度はリスニング試験導入の初年度であったが、東京など20都府県の試験会場で、ICプレーヤーの故障などが発生したとされて再テストが行われるというトラブルが相次いで発生した。約1100人の内1人にトラブルがあったとされ、三大予備校が実施したリスニング試験の模擬試験に比べるとトラブルの発生率が高かった。大学入試センター側の謝罪は無かったが、小坂文部科学相が陳謝、来年度のセンター試験に向けて大きな課題の残る結果となった。また、「政治・経済」において、実教出版発行の教科書の日本と他国のGDP比較のグラフと類似のものが出たが、教科書に誤りがあったため、間違えた受験生が発生した。しかし、救済措置は取られなかった。
[編集] 試験に関する批判
- 1998年度、センター試験本試験「英語I・II」第5問で虫歯治療に関する英文が出題されたが、その内容が現在の歯科技術に全く反するものであるとして、全国保険医団体連合会歯科協議会会長が大学入試センターに意見書を提出した。
- 2004年度、センター試験本試験「世界史」において、「強制連行」などを確定的事実として扱っており、公正であるべきセンター試験がイデオロギー的に偏向しているという批判が「新しい歴史教科書をつくる会」によってなされ、同7月には当時の受験生が原告となって大学入試センターを提訴するに至った(参考1)。さらに、藤岡信勝は過去のセンター試験の日本史・世界史の問題25年分を検証し、類似の問題点を含む出題が多数あることを指摘している(参考2)。この影響もあってか、センター試験の出題者氏名公表の動きが強まった。
- 2005年度、センター試験本試験「英語I・II」第5問の天気図を素材とした設問で、気象学的にはあり得ない寒冷前線図が素材となっていると、気象予報士の森田正光らが疑義を呈している(2005年1月19日「センター試験 英語の正解 理科なら×」東京新聞)(参考3)。
- これは、前掲の虫歯医療の英文と類似の問題点である。センター試験は、すべての大学受験生が共通に受験する試験という性格から、英語などの読解問題では、特定分野の知識を要求せず、一般常識と語学力のみで解答可能な作問を行う方針が望まれる。しかし、問題作成者(英語の場合は英語教員)が特定分野に素材を取った場合、その分野自体に関しては不案内であるため、常識から見ればさほど問題はなくても、専門分野の人から見ると問題点が見つかるといったケースが生じやすい。こうした背景には、語学教育における、実生活に近い教材(real-life / authentic materials)を使おうとする方針もある。
- また、2000年度、センター試験本試験「英語I・II」第5問でコンピューターゲームに関する英文が出題されたが、このゲームが「常軌を逸したクソゲー」であるという批判も出されている。これは半ばジョークの領域であるが、やはり上述の虫歯治療や天気図に関する英文と同様、専門家(この場合はゲーマー)による専門的立場からの批判の一環であろう。なお、このコンピューターゲームと同じものが再現され、フリーソフトとして配布されている。
- 2005年度、センター試験本試験「国語I・II」第3問(古文)問4に関して、河合塾は「正解をひとつにしぼるのは困難」と指摘し、大学入試センターに対して公開質問状を提出した。問題は『日光山縁起』の一節で、5つの選択肢のうち正しいもの1つを選ぶものだが、選択肢(5)「不孝をわびたい」という気持ちを本文から読み取ることは困難であり、また選択肢(2)にある馬との対話とも読み取れるとしている。
[編集] [参考] 古文の出典一覧
以下は1997年度以降のセンター試験古文の出典一覧である。
年度 | 国語I | 筆者 | 国語I・II | 筆者 | |
---|---|---|---|---|---|
1997年度 本試験 | 今昔物語集 | 松浦宮物語 | |||
1997年度 追試験 | しみのすみか物語 | 石川雅望 | 五代帝王物語 | ||
1998年度 本試験 | 窓のすさみ | 松浦観瀾 | 西鶴名残の友 | 井原西鶴 | |
1998年度 追試験 | 曽呂利物語 | 落窪物語 | |||
1999年度 本試験 | 夢中問答集 | 夢窓疎石 | 井関隆子日記 | ||
1999年度 追試験 | 六帖詠草 | 小沢蘆庵 | 源氏物語 | 紫式部 | |
2000年度 本試験 | 花月草子 | 松平定信 | 宇津保物語 | ||
2000年度 追試験 | 平治物語 | 風につれなき | |||
2001年度 本試験 | しぐれ | 和歌庭訓 | 二条為世 | ||
2001年度 追試験 | 三宝絵詞 | 源為憲 | 浜松中納言物語 | ||
2002年度 本試験 | 盗人入りした後 | 上田秋成 | 松しま日記 | 嘉恵女 | |
2002年度 追試験 | 俵藤太物語 | 歌の大むね | 長野義言 | ||
2003年度 本試験 | 平家物語 | 信濃前司行長か? | 五葉 | 荒木田麗女 | |
2003年度 追試験 | 閑田文草 | 伴蒿蹊 | 源氏物語 | 紫式部 | |
2004年度 本試験 | 木幡の時雨 | うつせ貝 | 中島広足 | ||
2004年度 追試験 | 西行上人談抄 | 蓮阿 | しら露 | ||
2005年度 本試験 | ねさめの記 | 日光山縁起 | |||
2005年度 追試験 | 本朝美人鑑 | 太平記 | |||
2006年度 本試験 | (非実施) | (非実施) | うなゐ松 | 木下長嘯子 | |
2006年度 追試験 | (非実施) | (非実施) |
[編集] 今年度の実施
- 2006年度 - 本試験は1月21日と22日に、追試験は1月28日と29日に行われた。
- 外国語のうち英語にリスニングテスト(配点50点、試験時間30分。ただし、説明のための時間を含めると実質60分、遅刻は一切許されない)の正式導入。
- 国語が1科目に統合。
- 数学(2)の簿記の科目名が簿記・会計に、工業数理が工業数理基礎に変更。
- 総合理科を廃止し、理科総合A(物理・化学分野)と理科総合B(生物・地学分野)に分離し別の科目とする。
- 新課程では廃止される物理、化学、生物、地学のIA科目・総合理科は、2006年度に限り継続して実施。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 独立行政法人大学入試センター
- フリー教材開発コミュニティFTEXT - センター試験の過去問の解答・解説を公開
- 河合塾解答速報ページ - 1997年度以降のセンター試験の過去問題を公開