罰金
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罰金(ばっきん)とは財産刑の一種であり、行為者から強制的に金銭を取り立てる刑罰。
目次 |
[編集] 概要
罰金の金額は、1万円以上と定められている(刑法15条)。同じく財産刑である科料との違いは、金額の違いによる。科料は1000円以上1万円未満と定められている(刑法17条)。
例えばある条文においてその刑罰が「10万円以下の罰金に処する」と定められている場合、1万円以上10万円以下(10万円を含む)の範囲内で裁判所が具体的に量刑することになる。
刑法では上記のように罰金額の下限を設けているが、上限については一般的に制限していない。そのため、個々の条文で罰金額の上限を定めている。独占禁止法などのように、法律によっては「五億円以下の罰金刑」などと非常に高額な罰金が定められることもある。
50万円以下の罰金刑が言い渡された場合においては、情状によってその刑の執行を猶予することができる(執行猶予)。もっとも、罰金に執行猶予が付されることは滅多にない。
交通違反の際に課される「反則金」や、行政上の手続き違反の際に課される「過料」を「罰金」と呼ぶことがある。しかしこれらは「行政罰」であり、刑事罰たる罰金とは法的性質が異なる。端的に言えば、罰金は前科になる刑罰であるのに対して、反則金や過料は前科にならない。
[編集] 労役場留置
罰金を支払えない場合には、労役場に留置され、判決で決められた一日あたりの金額(一律で5000円で換算)が罰金の総額に達するまでの日数分そこで作業する。
[編集] 窃盗罪・公務執行妨害罪の罰金刑創設
窃盗罪などの財産犯や、公務執行妨害罪などの国家的法益に対する罪は、従来、選択刑として懲役のみが定められ、罰金は定められていなかった。これは、「窃盗は金のない者が犯すのであるから、罰金を科しても実効性がない」ことや、「国家的法益に対する罪は罰金になじまない」ことなどを理由とした。しかし、これらの犯罪への処罰にも柔軟に対応するため、選択刑として罰金が定められた(平成18年法律第36号、平成18年5月28日施行)。
この罰金の創設により、ほとんどが起訴猶予で処理されてきた万引きなど少額の窃盗を処罰することが可能になり、「金がありながら万引を犯す」など新たな態様の犯罪にも、予防効果が期待される。また、教員や公認会計士など、禁錮以上の刑に処されると執行猶予が付いても失職・失格となるため、罰金が選択できないことで過酷な事態に陥りやすい者も、適切に処罰することが可能となった。
[編集] 前科となる刑罰
罰金を科す有罪判決が確定すると、前科として扱われる。
具体的には、罰金以上の刑(道路交通法違反による罰金を除く)を受けた者は、一定期間、市町村役場に備置される犯罪人名簿(戸籍や住民基本台帳ではない)に登載される。また、検察庁にも犯歴記録が保管される。これも、道路交通法違反による罰金以下の刑に処された者は、記録の対象とならない。
前科は、一定期間を経過することにより消滅する(刑の消滅、前科抹消)。
前科者として登載・記録されると、結果として海外移住ができなくなるという説がある。おそらく、長期の海外渡航の際、犯罪経歴証明書(無犯罪証明)の提出を求められることから発したものと思われる。
[編集] 道路交通法違反による罰金
一般の市民が罰金刑を科される最も多い例は、道路交通法違反による罰金であろう。
戦後、自動車台数の急増に伴い、道路交通法の違反者も急増し、迅速な事件処理に支障を来した。これに対処するため、1968年(昭和43年)に交通反則通告制度(交通反則金制度)を創設して、従来の交通事件即決裁判手続(交通事件即決裁判手続法)に替えるものとした。
交通反則通告制度は、道路交通法違反の罪のうち比較的軽微な形式犯を行った者に対し、警視総監または道府県警本部長が、行政処分として反則金を納付させ、反則金を納付した者については刑事訴追を免ずる制度である。実質的には、違反者に対し、簡略な行政上の手続きにより、罰金と同様の財産刑ないし金銭的制裁を与えるものと言える。
交通反則通告制度の対象となるのは、スピード違反、駐車違反、信号無視などの比較的軽微な違反行為である。これらの違反行為を警察官に認知されると、俗に「青切符」と呼ばれる書面により、反則金納付の手続きなどが通知される。反則金を納付しない場合には、通常の刑事事件として刑事処分の対象となる。
過度のスピード違反(速度違反であれば一般道で時速30km、高速道で時速40km以上のオーバー)や、無免許、酒気帯びを伴う場合、または交通事故を引き起こすなど、比較的重大な違反行為の場合には、俗に「赤切符」と呼ばれる書面により、検察庁(区検察庁)への任意出頭などが通知される。この場合には反則金納付による刑事訴追免除が認められず、通常の刑事事件として、刑事処分の対象となる。検察庁へ出頭すると、簡易裁判所での略式手続により、略式命令で罰金が科される。略式手続による処理に異議を申し立てると、通常の刑事訴訟手続に移行する。
なお、罰金の目安は「違反速度×2000円(上限10万円)」と言われている。違反者が少年の場合は罰金が科されることはない。代わりに家庭裁判所に保護者同伴で行くことになり、「保護観察」などの保護処分を受ける。