2000年問題
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2000年問題(にせんねんもんだい)は、グレゴリオ暦2000年になるとコンピュータが誤作動する可能性があるとされた問題。Y2K問題(ワイツーケイもんだい:"Y"は"Year"、"K"は「1000倍」をあらわす"Kilo"の意)とも言われた。
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[編集] 原因
直接の原因は、プログラム内で日を扱う際の年数の表現方法である。年数の表現をグレゴリオ暦の下二桁のみで行っている場合、2000年が内部で00年となり、これを1900年とみなしてしまい、誤作動につながる(例えばデータベースを日付順に並び替える処理をすると、順序が狂うなど)可能性があるとされた。
- 年が4で割り切れる年は閏年とする
- (1)のうち、年が100で割り切れる年は閏年としない
- (2)のうち、年が400で割り切れる年はこれを適用しない(つまり閏年とする)
というルールがあり、このため2000年は閏年だったのだが、誤って1と2のルールしか適用せず、閏年としなかったプログラムが存在したため、この対応も併せて必要とされた。
コンピュータの黎明期は、リソース(特にメモリ関係)の費用負担が重く、出来るだけメモリを節約するプログラムが要求され、年号は、下二桁で表すことによりリソースを節約をするのは、当時のプログラマには、当然のテクニックであった。これらのプログラムの多くは、1960年代から1980年代頃に開発され、当事者は、2000年頃には、何らかの改良が加えられるか、全く新しいプログラムが運用されるであろうとの前提で、特にこの問題に対する対策を施されていない場合が多く、作成した技術者の退職などもあり、手作業でのプログラムの確認と修正が必要になった場合も多い。
これらのプログラムが作成された時点で既に、多くの国で様々な領域や分野でコンピューターが使用されていたため、思わぬところでの機能停止の危険があり得ることが指摘されていた。これらの問題により、物流や、その他の社会運営上の不具合の発生などが連想され、国際経済が深刻な不況に陥る可能性を指摘する声もあったが、一部には、カレンダーを持たない、独立したマイクロコンピュータ応用機器の誤動作の不安を煽るなどの過剰反応も見られた。
[編集] 諸問題
当時、想定された問題としては
などがあった。このため、1990年代末に使用していたプログラムの訂正が世界規模で行われた。この修正作業に費用と期間が取られてしまった、特に中小零細レベルの会社などにおいて大きな打撃となった。
身近なものとしては、2000年を想定した設計がされていない、古いビデオデッキの予約録画、ワープロ機の文書管理機能など、に影響が出た機種もある。
[編集] 2000年1月1日
1999年12月31日から2000年1月1日にまたがる航空便などは、システムの不測の事態に備えて欠航したり、年が明けてからの出発に変更されたりした。
2000年になった時点では、一部のシステムに不具合は出たものの、ほとんどが致命的な問題には至らなかった。
[編集] 2000年2月29日
しかし、2000年2月29日になり、当日を閏日として処理していないために「エラー日付」として取り扱われる問題が発覚し、大きな騒ぎとなった。
- 郵便貯金ATMのうち、約1,200台が停止。同日深夜、郵政省と富士通より、富士通製のLSIに上記の不具合があったために、1996年から1999年にかけて製造された同社および沖電気工業製の一部ATMが停止したことが発表される。
- 札幌市交通局の路線バスから地下鉄へ乗り換えようとすると、バスで発行される「乗り継ぎ券」の日付が2月28日になってしまい、地下鉄の自動改札機を通過できなくなってしまった。
- 気象庁のアメダスが誤作動、長崎県平戸市では降雨がないにもかかわらず、1時間に973mmの降雨量を記録する。
なお、2000年問題の深刻さについて疑問を持つ専門家などは、1月1日よりも2月29日の方が大きな騒ぎとなったことをもって、「そもそも重大な危険が存在しなかった」とする者もいる。
[編集] 関連項目
- コンピュータと社会
- 1999年8月21日問題 - GPSについての問題
- 2001年9月9日問題
- 2007年問題
- 昭和100年問題(2025年問題)
- 旧暦2033年問題
- 2038年問題
- 西暦10000年問題(Y10K問題)