衆議院議長
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衆議院議長(しゅうぎいんぎちょう)は衆議院で議事を取り扱う役職。衆議院議長は参議院議長とともに立法府を司る三権の長である。
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[編集] 概説
衆議院議長は衆議院議員から選出される。議会召集日または議長が不在の場合は、集会した議員が総議員の3分の1に達した後で、事務総長が議長の職務を行いながら議長選挙を行う。議長選挙は無名投票であり、半数を得たものを当選人とする。投票の過半数を得た者がない場合は投票数上位2人について決選投票を行う。2人の得票数が同じ場合はクジで決定する。慣例として議長は与党第一党、副議長は野党第一党の所属議員から選出される。
国会の開会式は衆議院議長が主宰する。
議長が不在、または議長が永年在職議員として表彰された場合は議長の職務は副議長が行う。副議長も不在の場合は議長職務を継いだ人間が最年長議員を仮議長に指名する慣例となっている。
正副議長の任期は衆議院議員の任期と同じである。
1973年5月29日以降、慣例として正副議長は党籍を離脱し無所属となる。
[編集] 権限
- 議員の議席位置の指定
- 参議院議長と協議して開会式の日時及び場所の指定
- 国会閉会中における議員辞職の許可
- 委員の選任及び辞任の許可
- 議院会議中における委員会開催の許可
- 公聴会開催の承認
- 会議開始時刻の変更
- 午後六時を過ぎた場合の延会宣告
- 発言通告をしない者が発言する場合の発言許可
- 自席で発言している者に対する演壇での発言許可
- 記名投票における投票時間の制限※
- 7日を超えない議員請暇の許可
- 議事堂内の警察権
- 議院内部における現行犯逮捕の命令
- 議場内の秩序を乱した議員に対する退席命令
- 議場又は委員会議室に入る者のつえ携帯の許可
- 演壇登壇の許可
- 全ての紀律についての問題の決定
- 号鈴を鳴らすことによって全ての者を沈黙させること
- 傍聴人の身体検査
- 取締のための傍聴人数の制限
- 可否同数時の決裁権(議長決裁権)
※衆議院にのみ明記されている権限
[編集] 歴代衆議院議長
[編集] その他
- 議題採決前の散会宣言
衆議院で議長が散会できる時は議場を整理し難い時、議事日程に記載した案件の議事を終った時、散会動議が提出されて賛成された時である。しかし、2002年12月10日、綿貫民輔議長が決算採決という議題がまだ残っているにも関わらず散会宣言を行った。これは、議事進行原稿を一気に2枚にめくったことが理由とされる。議長は宣言後に議題が残っていたことに気づいて散会の無効を宣言したが、散会は有効とされた。結局、決算採決は12日に行われたが、その際に本会議冒頭で綿貫議長は10日の議事において不手際があったことを陳謝した。
後に、この事件は2004年6月5日、参議院本会議で議長職を代行した副議長による散会宣言の有効性に関して、議長による散会宣言の例として引用されることがある。これには、散会の取り消しの手続きが異なっていたこと、衆議院の前例は参議院の慣例に縛られないとする反論がある。
- 議長選挙
自由民主党の結党以来、常に与党でありかつ比較第1党である自民党出身者が全会一致で議長に選出されてきたが、1993年の与野党逆転の際、連立与党第1党である日本社会党の土井たか子と比較第1党である自民党の奥野誠亮のどちらを議長とするかという調整がつかず、異例の競合投票によって土井が議長に選出された。なお副議長は自民党から出され、これについては全会一致が踏襲された。
- 全国戦没者追悼式欠席
1963年以降、毎年8月15日に行われる全国戦没者追悼式には、衆参議長、首相、最高裁長官といった三権の長が出席する。しかし、2005年は8月8日に衆議院が解散となったため衆議院議長が空席となり、衆議院議長は追悼式を欠席する異例の事態となった。