岸部一徳
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岸部 一徳(きしべ いっとく、本名・岸部修三 きしべしゅうぞう、旧芸名・岸部おさみ または岸部修三 きしべおさみ、1947年1月9日 - )は京都府京都市出身の俳優、ベーシスト。 元ザ・タイガース、PYG、井上堯之バンドのベーシストである。
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[編集] 略歴
1967年2月5日、ザ・タイガースのベーシストおよびリーダー、岸部修三(きしべ・おさみ)としてシングル「僕のマリー/こっちを向いて」でデビュー。愛称は『サリー』。B面の「こっちを向いて」は岸部によるボーカル曲である。ジャッキー吉川とブルー・コメッツ、ザ・スパイダースに次ぐ新世代GSとして大人気を博し、ボーカルの沢田研二やドラムスの瞳みのるのアイドルとしての大ブレイクとも相成って「GSの王者」と呼ばれる大人気グループに成長。「ショーケン」こと萩原健一がボーカルに在籍するザ・テンプターズと人気を二分した。
ザ・タイガース在籍時にはベーシストとしてのみならず、GS界では唯一とも言える本格的なバリトンコーラスで聴衆を魅了した。タイガース時代のみならず、のちのPYGや井上堯之バンド時代を通して、岸部のコーラスは沢田研二のボーカルを引き立てるために欠かせないエッセンスであった。
当時のザ・タイガースのファン層は10代の少女が中心だったこともあって少女の人気は沢田や瞳に集中し、面長で大人びた雰囲気だった岸部の「アイドル」としての人気は伸びなかったが、一方では男性ファンが多く付き、アーティスト志向のミュージシャンたちの間での評判も当時から高かった。またリーダーとしても沢田をはじめメンバーから厚く慕われており、例えばベトナム戦争が激化していた当時に行われた雑誌インタビューに於いても、「一番怖いものは何?」との質問に他のメンバーが「戦争」「武器」などと答えている中で岸部ひとりが「人の心」と答えているなど、当時から、現在の「俳優・岸部一徳」としてのキャラクターに通じる落ち着いた大人の風格を覗かせていた。
岸部は、メンバーの中でもかなりの音楽通として知られていた。当時、アメリカに滞在していた弟の岸部四郎からの最新音楽情報もあり、タイガースのステージでのレパートリーは主に岸部が選曲し、ギターの森本太郎がアレンジをするといった形で決められていった。
1969年には、メンバーの加橋かつみの脱退を受けて岸部四郎を帰国させ、新メンバーとして加入させる。そして1970年には岸部四郎(通称シロー)と兄弟ユニット『サリー&シロー』名義でアルバム「サリー&シロー トラ70619」もリリース。1971年1月24日、日本人アーティストとしては初の単独日本武道館公演となった「ザ・タイガース・ビューティフル・コンサート」をもってザ・タイガースを解散した。
1971年4月、元ザ・タイガースの沢田研二、元ザ・テンプターズの萩原健一、大口広司、元ザ・スパイダースの大野克夫、井上堯之らとPYGを結成。シングル「花・太陽・雨/やすらぎを求めて」でデビュー。岸部が本当にやりたかった音楽=ディープ・パープルやレッド・ツェッペリンスタイルのハードロックバンドを目指すものの、事務所の兼ね合いで思うような音楽ができず、また萩原健一が俳優として認められはじめたため、PYGから萩原健一を除いたメンバーで沢田研二と井上堯之バンドと名乗り、この形態での活動が多くなる。1972年中盤からは萩原健一が主演した太陽にほえろ!がヒットし、音楽活動への参加が難しくなったためPYGは事実上解散。沢田研二と萩原健一を除いたメンバーで「井上堯之バンド」として独立する。
その後井上堯之バンドのベーシストとして、沢田研二のバックバンドや萩原健一主演作品のサントラを中心に活躍。各種音楽誌の人気ベーシスト投票でトップ3の常連になるなど人気ベーシストの地位を築く。ピック弾きながら指板を最大限に多用したメロディアスなベースラインとボトム感のある力強いベースプレイで定評がある。しかし、メンバー間の人間関係などが複雑化し、遂に1975年6月19日の鶴見市民会館「沢田研二コンサート」をもって井上堯之バンドを脱退し、音楽活動を停止する。(岸部自身は、音楽的に向上する努力をしなくなったため、とも語っている。)
ちなみに、現在日本を代表するベーシストとして有名な後藤次利にベースギターの手ほどきをしたのは彼である。
また、日本公演のため来日していたレッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズが、TVで観た岸部のプレイに感動し、しきりに会いたがっていたという逸話もある(1981年、「プレイヤー」誌のインタビューより抜粋---「初めて日本に行ったとき、『PYG』という日本のバンドをテレビで見た。そして、俺たちの『I Gonna Leave You』をやっていたんだ。ボーカルは冴えない奴だったが、ベースの奴はとんでもないスゴ腕でね。俺よりもいいんじゃないかと思ったぐらいだ。会いたがったが結局会えずじまいだった。のちにテツ(山内テツ)に会った時に『あれはお前か』と聞いたんだが、テツではなかったらしいよ。・・・・」)。
1975年、沢田研二が主演し大ヒットしていた、三億円事件を題材にしたTVドラマ『悪魔のようなあいつ』に出演、本格的に俳優に転身する。1979年には、同じ所属事務所だった樹木希林の命名で、「岸部おさみ」から「岸部一徳」へと改名する。
1990年映画「死の棘」にて、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞受賞など数々の賞を受賞。数々のドラマ作品やCMに出演し、名脇役と呼ばれている。
初期の「太陽にほえろ!」メインテーマでベースギターを弾いているのは彼である。今もそのベースの腕前は衰えておらず、木村拓哉、Charと共演した富士通のCMでも久々にすばらしい腕前を披露した。また1997年には元ザ・タイガースの沢田研二、森本太郎とともにロックユニット「TEA FOR THREE」を結成(現在活動休止中)。
※「ザ・タイガース」、「PYG」、「井上堯之バンド」については「沢田研二」の項も参照のこと。
[編集] 主な出演作
[編集] 映画
- ドリフターズだよ!前進!前進!また前進! 1967年 東宝
- ザ・タイガース 世界は僕らを待っている 1968年 東宝
- ザ・タイガース 華やかなる招待 1968年 東宝
- ザ・タイガース ハーイ!ロンドン 1969年 東宝
- 喜劇・右向けェ右! 1970年 東宝
- 炎の肖像 1974年 井上堯之バンドベーシストとして
- 天使を誘惑 1979年 東宝 徳山君彦役
- 時をかける少女 1983年 東映 福島利男役
- お葬式 1984年 ATG 明役
- ゴルフ夜明け前 1987年 東宝 後藤象二郎役
- 首都消失 1987年 東宝 安原北斗電機研究所員役
- その男、凶暴につき 1989年 松竹富士 仁藤役
- 死の棘 1990年 松竹 トシオ役
- ふたり 1991年 松竹 北尾雄一役
- 大誘拐 RAINBOW KIDS 1992年 東宝 柳川大作役
- 青春デンデケデケデケ 1992年 東映 寺内先生役
- 僕らはみんな生きている 1993年 松竹 富田賢造役
- 病院で死ぬということ 1993年 オプトコミュニケーションズ 山岡医師役
- 水の旅人 侍KIDS 1993年 東宝 楠林文博役
- 教祖誕生 1993年 東宝 呉役
- 八つ墓村 1996年 東宝 田治見要蔵、久弥、庄左衛門役
- D坂の殺人事件 1998年 笠森糺役
- 新・仁義なき戦い 2000年 粟野役
- 顔 2000年 花田英一役
- 陰陽師 2001年 東宝 帝役
- 座頭市 2003年 松竹・オフィス北野 銀蔵役
- 69 sixty nine 松永先生役。岸部が所属していたザ・タイガースも登場する。
- ゲロッパ! 2003年 金山正男役。
- ぼくんち(2003年)末吉まもる役。
- ニワトリはハダシだ 2004年 灰原喜重郎役
- いつか読書する日 2004年 スローラーナー 高梨槐多役
- SURVIVE STYLE5+ 2004年 小林達也役
- 亡国のイージス 2005年 瀬戸和馬内閣情報官役
- 寝ずの番 2006年 角川ヘラルド・ピクチャーズ 笑満亭橋弥役
- 暗いところで待ち合わせ(2006年)
- フラガール 2006年 吉本紀夫役
[編集] テレビ
- のんのんばあとオレ(1991年) NHK 父親役
- ふたりっ子(1996年) NHK 朝の連続テレビ小説 将棋棋士・織田信雄役
- 恋のバカンス(1997年) 日本テレビ系
- ブラック・ジャック(2001年) TBS系 諸岡修三役
- 本家のヨメ(2001年) 日本テレビ系
- 『忠臣蔵~決断の時~』 (2003年 テレビ東京 色部又四郎 役)
- 乱歩R(2004年) 日本テレビ系 雷道役
- 瑠璃の島(2005年) 日本テレビ系
- クライマーズ・ハイ(2005年)NHK
- 相棒 テレビ朝日系 小野田公顕役
- 神はサイコロを振らない(2006年) 日本テレビ系 東洋航空・大屋本部長役
- 医龍-Team Medical Dragon-(2006年) フジテレビ系 野口賢雄役
- 連続テレビ小説『芋たこなんきん』(2006年) NHK 花岡常太郎役
[編集] コマーシャル
- 明治製菓(「明治ミルクチョコレート」、「デラ」、「トースト・ココナッツ・バー」など。ザ・タイガースで1967年から1970年までイメージキャラクターを努めた)
- アップルコンピュータ(マッキントッシュ)
- 松下電器産業(インバータ蛍光灯)
- 富士通FMV(木村拓哉と共演)
- 2006年夏モデルの富士通FMVのCMで出てくる地底人はこの人である。
- 大日本除虫菊=金鳥(大滝秀治と共演)
- ロート製薬(パンシロン新胃腸薬)
- ツーカー(関西限定。観月ありさと共演)
- オートバックス
[編集] ディスコグラフィ
[編集] 参加アルバム
- ザ・タイガース・オン・ステージ(ザ・タイガース)
- ザ・タイガース・チャリティー・ショー(オープンリールテープ、ザ・タイガース)
- 世界はボクらを待っている(ザ・タイガース)
- ヒューマン・ルネッサンス(ザ・タイガース)
- ザ・タイガース・アゲイン(ザ・タイガース)
- ザ・タイガース・サウンズ・イン・コロシアム(田園コロシアムライヴ盤、ザ・タイガース)
- 自由と憧れと友情(ザ・タイガース)
- サリー&シロー トラ70619 (サリー&シロー)
- ザ・タイガース・フィナーレ(日本武道館解散コンサート、ザ・タイガース)
- PYG!(PYG)
- FREE WITH PYG(田園コロシアムライヴ盤、PYG)
- 寺内貫太郎一家(井上堯之バンド)
- 今、僕は倖せです(沢田研二)
その他
[編集] 参加シングル
- いいのかな(ザ・ワイルド・ワンズ、コーラスのみ参加)
- 太陽にほえろ!メインテーマ(井上堯之バンド)
- 許されない愛(沢田研二)
- 危険なふたり(沢田研二)
- あなただけでいい(沢田研二)
- 魅せられた夜(沢田研二)
- 恋は邪魔もの(沢田研二)
- 白い部屋(沢田研二)
- 時の過ぎゆくままに(沢田研二)
- 兄貴のブギ(萩原健一&水谷豊)
その他
[編集] ザ・タイガース時代の岸部によるボーカル曲一覧(オリジナル曲)
- こっちを向いて
- 雨のレクイエム
- 730日目の朝(加橋かつみとの掛け合いボーカル)
- ハーフ&ハーフ
- 世界はまわる
- 脱走列車
- マザー・ネイチャー(サリー&シロー)
- どうにかなるさ(サリー&シロー)
- しま模様の空(サリー&シロー)
- 羊大学校歌(サリー&シロー)
- 愛についての一考査(サリー&シロー)
- めちゃめちゃ陽気なバンドのテーマ(再結成タイガース・1982年)
[編集] ザ・タイガース時代の岸部によるボーカル曲一覧(カバー曲)
- イエスタディ(ザ・ビートルズ)
- アズ・ティアーズ・ゴー・バイ(ザ・ローリング・ストーンズ)
- テル・ミー(ザ・ローリング・ストーンズ)
- ザ・ラスト・タイム (ザ・ローリング・ストーンズ)
- アイム・オールライト(ザ・ローリング・ストーンズ)
- ドック・オブ・ザ・ベイ(オーティス・レディング)
[編集] 関連項目
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