修士 (経営学)
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修士(経営学)(しゅうし けいえいがく)とは、経営学に関する修士学位。経営学修士とも。通常MBA(Master of Business Administration)と称される。その上には、博士 (経営学)(DBA、Doctor of Business Administration)という学位がある。
目次 |
[編集] 概説
1980年代初期にはビジネス界の「エリート」の学位として知られていたが、大衆化が進み、今では米国だけで500を超える大学院でMBAが授与される。MBAは経営管理職へのパスポートとして定着しており、特にトップスクールのMBAは高額の初任給で大企業の管理職として迎え入れられる例が多いのも事実。トップスクールとは一般にM7(Majestic-seven)と呼ばれ、ハーバード、スタンフォード、コロンビア、ウォートン、ケロッグ、シカゴ、MITの7校であり、これらの学校の地位はほぼゆるぎなく、MBA受験生には憧れの的となっている。欧州では、ロンドン・ビジネススクール、INSEAD、IMDの3校が、これらに匹敵すると言われている。 最近では大学院によってはEVENING MBAなど働きながら取得できるプログラムの創設にも力を入れており、いかに他大学院との差別化ができるかを競っている。
近年、MBAも社会の要請により姿を変えてきており、1990年代における大企業のマネージャーの養成機関から、最近では起業家養成機関としても脚光を浴びつつある。最近の米国におけるトップMBAスクールの存在価値は、既存のビジネス理論の習得というより、ビジネスで成功するための知恵を勉強する場所と考えたほうが良い。日本人にとってMBA取得には、英語能力と最新ビジネススキル、そして米国等での企業社会構造のリテラシー向上というメリットがあるが、中国はじめアジアからの留学希望者の急増により、トップ校の日本人に対する入学基準は非常に厳しくなっている。例えば、某MBAではバブル期に30名もの日本人が合格していたが、現在では1桁前半、というのが実情であり、トップ10を合計しても年間100名前後である。実際の選考では、英語能力を測るTOEFL、GMATの高得点はもちろん、会話能力を見るための面接を基本として、実務経験の濃さや将来のビジョンを盛り込んだ論文の内容が特に重視される傾向にある。
MBAと一言で言っても、その資格が有する質は各ビジネススクールによって異なる。すなわちそれぞれのビジネススクールが個性を持っているということである。協調性を重んじる所もあれば、個人経営主義を重んじるところもある。ビジネススクールを選択する際には、ただ偏差値や知名度だけを意識するのではなく、そのビジネススクールがどういった文化、性格を持っているのかを考えることが重要になる。
また個人の学習目的によってもMBAの質は多様化する。たとえばマーケティングについての学習に2年間というスクールライフの大部分を費やした学生と、ファイナンスについての研究に時間を注いだ学生では、路線が違う以上その質も確実に異なる。この論点を応用すれば「何」を学びたいのか明確でないと、各々の科目をただ中途半端に学んで、あまり成果を得られない、ということも起こり得るといえる。企業から金銭的援助を受け、ビジネススクールに入学させてもらっても、自分が明確な学習目標を持っていない、あるいは企業から学んでくるべき科目を指定されていないというのであれば、卒業して企業に戻っても著しい結果は望めない。
また、MBAを取得することによって具体的に得られるものは、ファイナンス、会計などの各科目の専門性もさることながら、「グローバルなビジネス観」、「リーダーシップ」、「英語でのコミュニケーション力」、「ツールの拡大」など、ビジネスにおいて有用な能力である。あくまでこれらの能力は2年間というわずかな期間で身につけた能力であり、これらの能力が身についたからといって、全てのビジネスがスムーズに運ぶわけでもない。しかし上記の能力がビジネスで少なからず役に立つこともまた事実である。
「グローバルなビジネス観」は、日本だけでなく世界のビジネスを知る、ということである。ビジネススクールには人種、国境を越え、さまざまな人が集まってくる。その中には元医者やプロスポーツ選手など意外な職種からやってくる人も少なくない。そのような環境の中で学習することで、自分のビジネスに対する視野もより広範なものになる。またとりわけアメリカのビジネス観に触れることで、日本に帰国した際に役立つことは多い。
「リーダーシップ」・「英語でのコミュニケーション力」についてであるが、優先順からいえば、これらはあくまでもビジネススクールで真っ先に得るべきものではなく、卒業後に身についている可能性がある力である。最後に「ツールの拡大」である。ビジネススクールでは、必修・専門科目をあわせると非常に多くの分野を学ぶことになる。その結果、例えばひとつの観察事項に対し、ファイナンスの知識を駆使したり、マーケティングの概念から物事を捉えたり、マクロ経済学のデータに照らし合わせてみたりと、より多面的なアプローチをとることができるようになる。
以上が主にビジネススクールで得られる能力である。繰り返すが、これらがビジネスに必ず通用する絶対的な力ではないことは念頭に置かなければならない。さもないと自分の能力の過大評価、及び、企業のMBAホルダーに対する過度な期待を生む。大切なことは万人がMBAに対してきちんとした認識を持つことだ。MBAをきちんと認識するには、MBA取得の際の目的の明確化、MBA保持者の能力の正確な把握が必要である。そうすることで企業も、そしてMBA保持者自身も、MBAという資格を活用して、より効率的なビジネスを進めることができる。
MBA取得者の欠点として、目先の利益にこだわって問題の根本的な解決を先延ばしして、その場しのぎの方法を用いて短期的には企業の黒字化に成功するものの、後になって取り返しのつかない結果に陥れてしまう傾向がある。ビッグスリー(アメリカ3大自動車メーカー)の経営危機が良い例である。
なお、近年では技術版MBAと呼ばれる、製造業や技術系ベンチャー企業などに関する経営を学ぶMOT(技術経営)にも注目が集まっており、日本でも技術経営大学院を設置する大学も増えている。
[編集] 日本のMBA
日本における独自の「MBA教育」は最近になって設立された。私立の慶應義塾大学、国際大学、青山学院大学と国立の神戸大学のプログラムが、その先駆である。最近では、筑波大学、早稲田大学、一橋大学、立教大学、九州大学、名古屋商科大学、小樽商科大学が力を入れている。文理問わず社会人の入学が多く、ビジネス街の中心部にサテライト教室を設ける大学院も多い。こうした社会人を対象としたMBAプログラムは、週末通学型と完全遠隔型に分かれる。週末通学型は平日の夜や土日を利用して通学しながら、残りを個人学習する。完全遠隔型は、通学をほぼ必要とせず、全国・海外どこからでも受講できるプログラムである。後者の完全遠隔型MBAプログラムは、ビジネス・ブレークスルー大学院大学などがある。日本にもMBAプログラムは増えてきているが、依然として米国トップ校との教育水準の差が大きく開いており、日本の一流とされる大学院でさえMBAでは世界ランキング100位までに入っている大学院は1校のみである。これには英語でのプログラムであるかどうか、米国のMBA認証機関であるAACSBから認証を得ているか、という問題がある。現在、日本国内で開講されているMBAプログラムのうち、英国のエコノミスト誌で世界のMBAトップ100校にランクインしているのは日本からは国際大学の1校のみ、AACSBによる正式な国際認証を得ているのは、慶應義塾大学、名古屋商科大学、テンプル大学の3校。日本のMBAスクールの教授陣および学生の質が一刻も早く世界レベルに近づくことが期待されている。
[編集] アメリカの主なMBAプログラム・ビジネススクール
- ウォートン・スクール(Wharton School):ペンシルバニア州フィラデルフィアにあるペンシルバニア大学の大学院。
- ロス・スクール・オブ・ビジネス(Stephen M. Ross School of Business):ミシガン州アナーバーにあるミシガン大学の経営学部及び大学院。
- シカゴ大学経営大学院(University of Chicago Graduate School of Business、Chicago GSB):イリノイ州シカゴにあるシカゴ大学の経営学部大学院。
- ケロッグ・スクール・オブ・マネジメント(Kellogg School of Management):イリノイ州エバンストンにあるノースウエスタン大学の大学院。
- ハーバード・ビジネス・スクール(Harvard Business School、HBS):マサチューセッツ州ケンブリッジにあるハーバード大学の経営学大学院。
- コロンビア・ビジネス・スクール(Columbia Business School):ニューヨーク州ニューヨーク市にあるコロンビア大学の経営学大学院。
- トービン・カレッジ・ビジネス・スクール (Tobin College of Business School) ニューヨーク州ニューヨーク市にあるセント・ジョーンズ大学の経営学大学院。
- スタンフォード大学経営大学院(Stanford Graduate School of Business):カリフォルニア州スタンフォードにあるスタンフォード大学の経営学大学院。
- MITスローン・スクール・オブ・マネジメント(MIT Sloan School of Management):マサチューセッツ州ケンブリッジにあるマサチューセッツ工科大学の経営大学院。
- タック・スクール・オブ・ビジネス(Tuck School of Business at Dartmouth):ニューハンプシャー州ハノーバーにあるダートマス大学の経営学大学院。
- ハース・スクール・オブ・ビジネス(Haas School of Business):カリフォルニア州バークレーにあるカリフォルニア大学バークレー校(UCB)の経営学部・大学院
- アンダーソン・スクール・オブ・マネジメント(Anderson School of Management):カリフォルニア州ロサンゼルスにあるカリフォルニア大学ロサンゼルス校の大学院
- マーシャル・スクール・オブ・ビジネス(Marshall School of Business):カリフォルニア州ロサンゼルスにある南カリフォルニア大学(USC)の経営大学院
- アトキンソン・グラデュエート・スクール・オブ・マネジメント(Atkinson Graduate School of Management):オレゴン州ウィラメットにあるウィラメット大学の経営学大学院。
- フクア・スクール・オブ・ビジネス(Fuqua School of Business):ノースカロライナ州ダーラムにあるデューク大学の大学院
- ケナン・フラグラー・ビジネス・スクール(Kenan Flagler Business School):ノースカロライナ州チャペルヒルにあるノースカロライナ大学チャペルヒル校の大学院
- テッパー・スクール・オブ・ビジネス(Tepper School of Business):ペンシルバニア州ピッツバーグにあるカーネギーメロン大学の大学院
- ジョンソン・スクール(Johnson School):ニューヨーク州イサカにあるコーネル大学の大学院
- マコームズ・スクール・オブ・ビジネス(McCombs School of Business):テキサス州オースティンにあるテキサス大学オースティン校の大学院
- カールソン・スクール・オブ・マネジメント(Carlson School of Management):ミネソタ州ミネアポリスにあるミネソタ大学ツインシティー校の大学院
- マーティン・J・ウィットマン・スクール・オブ・マネージメント(Martin J. Whitman School of Management):ニューヨーク州シラキューズにあるシラキューズ大学の大学院
(順不同)
[編集] ヨーロッパの主なMBAプログラム・ビジネススクール
- ロンドン・ビジネス・スクール(London Business School):イギリス・ロンドン
- INSEAD:フランス・フォンテーヌブロー及びシンガポールにある大学院大学
- IMD(International Institute for Management Development、国際経営大学院):スイス・ローザンヌ
- IE(Instituto de Empresa):スペイン・マドリード
- HEC(Hautes études commerciales Paris):フランス・パリ
[編集] 日本で取得できる海外のMBA
ボンド大学大学院 - ビジネス・ブレークスルー MBAプログラム
[編集] 中国のMBA事情
中国ではMBAが過剰なまでに注目されており、現在MBA取得者が200万人も居ると言われている。[1]
[編集] 外部リンク
[編集] 関連項目
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