侍ジャイアンツ
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『侍ジャイアンツ』(さむらい-)は、梶原一騎原作、井上コオ画の、いわゆるスポ根野球漫画。週刊少年ジャンプに連載された。(1971年8月3日号 - 1974年10月14日号)
テレビアニメ化されて、1973年10月7日から1974年9月15日まで、よみうりテレビ製作・日本テレビ系列で放映された。全46話。
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[編集] 概要
宿敵巨人の打倒を目指しながら巨人のエースとなる剛速球投手、番場蛮の活躍を描いた野球漫画。『巨人の星』と並び、巨人の黄金時代期に作られた。当時の「週刊少年ジャンプ」は読売ジャイアンツと独占契約を結んでおり、長嶋茂雄や王貞治など実在の多くの野球選手が出たことが特徴である。[1]。ハイジャンプ魔球、大回転魔球など、本当に行った場合ボークとなるような魔球が多かったが、さまざまな魔球の開発と攻略がストーリーの軸となっていた。アニメ放映当時の男子小学生は、こぞってこれらの魔球投法のまねをしていた。(分身魔球は軟式テニスのボールで「再現」する)
『巨人の星』を大ヒットさせていた梶原一騎の力で、アニメ化を前提とした企画であった。当時の編集長西村繁男は、ベスト5には入る安定した人気で、人気は常に上位だが新しい読者を引っ張る力がなかったと本作を位置付けている。[2]
本作に対しては、『巨人の星』の「二番煎じ的お子様バージョン」「亜流」という声があった。[3] 比較の対象となる『巨人の星』の主人公である星飛雄馬が道的で真面目な性格だったの対して、本作の主人公の番場蛮のキャラクター設定は、当初は「威張った奴が嫌い」で当初巨人に反発しており、『巨人の星』のに対するアンチテーゼが、多分に含まれていた。しかし、巨人に入団して以降は「巨人の星」をなぞるような魔球対決のストーリーとなった。また、プロ野球編における本作の要素のいくつかは後の『新巨人の星』と共通する点が指摘されている。[要出典]本作と「新巨人の星」は現実と原作では叶わなかった「最終回での巨人の優勝」をアニメで実現してしまった点も共通している。
作画を担当した井上コオは、望月三起也のアシスタントだった新人であり、読み切りでデビューはしていたが、本作が初の連載デビューとなる。事実上のヒット作品はこれ一本。後年、本作品の番場やウルフ、八幡などがスターシステムでてくる日常ギャグ漫画を求人情報誌で連載している。番場蛮の甥が主人公の『よみがえれ侍』や『新・巨人の星』の「井上コオ作画版」も描いている。この井上のアシスタントをしていたのが車田正美である。
巨人の連覇が止まったら、連載も終了するという方針が取られ、原作の連載の後半の頃には巨人と他チームの戦力が拮抗し、連覇が途切れる可能性が強まってきていた。阪神が優勝に王手をかけた1973年には真剣に終了が検討されたが、最終戦で巨人が逆転優勝をつかみ、連載が続くことになった。しかし翌年、実際に巨人の10連覇が中日に阻止されるのを前に連載を終了している。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
漫画版の結末は、セ・リーグの天王山の対中日戦、魔球の投げ過ぎのためライバル大砲万作を打ち取ったのと同時にマウンド上で立ったまま絶命するというものだった。従来のスポ根では選手生命が断たれることはあっても命を失うことはなく、本作によって梶原一騎は野球漫画から遂に死者が出した。この結末については、安直なエスカレートという評価や優勝に導けなかった侍が死をもって責任を取るというという見方などがあるが、死をもって終えたことは読者にインパクトを残し、アニメ化もあいまって長く語られる人気作品となった。[4]
[編集] 番外編
アニメでは番場蛮は存命だが、続編は作られていない。漫画では藤田巨人の時代に対中日戦で番場蛮の甥が登板する『よみがえれ侍』という井上コオ作の番外編が1991年のアルバイト情報誌「フロム・エー」7号に掲載された。番場は「ハイジャンプ」、「大回転」、「分身」の3種の魔球を投げ、落合博満を三振に打ち取る。八幡が番場の妹の子供の甥っ子に魔球を教えたことになっている。2ページの読み切りの作品であり、その後の番場の活躍は描かれていない。
[編集] アニメ
アニメ化は『巨人の星』と同じ東京ムービーが手がけ、監督も同じく『巨人の星』を大ヒットさせた長浜忠夫が担当し、局のプロデューサーも同じだったが、よりコミカルでテンポのよい陽性の作品に仕上げられている。
当初の監督候補には、当時、東京ムービー傘下のAプロダクションに所属していた高畑勲があり、実際に監督就任の打診があったが、結局、高畑は『アルプスの少女ハイジ』を監督することになり退社した。宮崎駿らも1話の原画を描いた後に高畑の後を追った。
[編集] 漫画版とアニメ版の差異
漫画版にはいた何人かのキャラクター、いくつかの魔球がアニメ版では存在しない。
漫画版では、特訓の描写が一切なく、知らない間に習得していることになっているなど漫画版では軽い扱いだった分身魔球が、アニメ版では重要な位置づけになっていたり、各魔球の攻略法も漫画版とアニメで全く違っていたりするなど、それぞれのストーリーには異なる点がかなり多い。この点をキャラクターデザインを含めて、当時の漫画原作のアニメ化作品は、原作側からの縛りが緩かったと作画監督の大塚康生は述べている。
最も異なるのは最終話で、アニメ版は世界最強の打者であるオークランド・アスレチックスのロジー・ジャックス(レジー・ジャクソンがモデルだと思われる)を抑えてワールドシリーズ優勝、MVP獲得というハッピーエンドとなっている。ただし、テレビアニメ放映時は原作は終盤であったがまだ未完であり、また、当時の子供向けテレビアニメとして必要な要素としてのテレビ局側からの要求としてハッピーエンドになった。放映局のよみうりテレビが読売新聞系列であった事も大きく影響している。[要出典]
[編集] 登場人物(声の出演)
- 番場蛮(声:富山敬)
- 八幡太郎平(声:納谷六朗)
- 美波理香(声:武藤礼子)
- 番場ユキ(声:吉田理保子)
- 眉月光(声:井上真樹夫)
- 大砲万作(声:西尾徳)
- ウルフ・チーフ(声:桑原たけし)
- ロジー・ジャックス
[編集] 放送リスト
- ほえろ!バンババーン
- 殺人ノーコンざる野球!
- でっかい奴は嫌いだぜ!
- おれの背番号は死だ!
- 男は地獄で歌うもの
- 待ったぜ!ケンカ野球
- 死球台風吹く!
- 誰も打たなきゃ俺が打つ!
- マウンドの報酬は苦いぜ!
- 多摩の川風・地獄風
- 勝負一本づり投法
- 大勝負!川上対バンババーン
- 嵐の中のタイゲーム
- 殺生河原の決闘
- 飛騨の怪童凄い奴
- 傷だらけのノーコン改良兵器
- 怒涛の海の対決
- 嵐に投げろ侍ガッツ
- インディアン魂対侍魂
- V9へのスタートライン
- 出たぞ!ハイジャンプ魔球
- 怒涛の完全試合宣言
- 死闘!ハイジャンプ魔球対巨砲
- 天下の名医対巨人の侍
- 決戦!宿敵大砲との勝負
- 大砲万作の危機
- 狼酋長現わる!
- 対決!魔球対スクリュー打法
- 渦巻く恐怖の新魔球
- 復讐の大回転魔球
- V9に向かって浮上せよ!
- 危うし大回転魔球
- 涙の逆さ吊り打法
- 命がけの極秘特訓
- 大回転魔球最後の日!
- 必殺の新魔球誕生
- 怒りに燃えた分身魔球
- 大砲・運命の一打
- 輝け苦闘のV9
- 壮烈!日本シリーズ(秘)作戦
- 復讐雨の中の日本シリーズ
- 爆発長嶋流喧嘩野球
- 決戦・日本一をめざせ!
- 大リーガーの凄い奴
- 大決戦・日米ワールドシリーズ
- 世界に輝く侍ジャイアンツ
[編集] スタッフ
- 原作:梶原一騎、井上コオ
- 企画:佐野寿七
- 演出:長浜忠夫
- キャラクターデザイン・作画監督:大塚康生
- 脚本:出崎哲、金子裕、山崎晴哉、七條門、松岡清治、安藤豊弘、谷あきこ
- 絵コンテ:出崎統、出崎哲、富野喜幸、ほか
- 作画プロダクション:Aプロダクション、東京ムービー社内班、マッドハウス、動画工房、スタジオメイツ、スタジオジュニオ
- 美術監督:小林七郎
- 撮影監督:若菜章夫、大和田亨
- 録音技術:千葉耕市
- 音楽:菊池俊輔
- 編集:中静達治、井上和夫
- 音響効果:片岡陽三
- 協力:週刊少年ジャンプ、東京読売巨人軍
- 制作:よみうりテレビ、東京ムービー
- 主題歌:
- 前半OP『侍ジャイアンツ』作詞:東京ムービー企画部 作曲:菊池俊輔 唄:松本茂之
- 前半ED『サムライ 番場蛮』作詞・作曲・歌唱者同上
- 後半OP1『王者 侍ジャイアンツ』作詞:梶原一騎 作曲:政岡一男 唄:ロイヤルナイツ
- 後半OP2『王者 侍ジャイアンツ』作詞:梶原一騎 作曲:政岡一男 唄:子門真人+ロイヤルナイツ(コーラス)※25話のみ
- 後半ED『ゆけ! バンババン』作詞・作曲・歌唱者同上
[編集] 魔球
- ハイジャンプ魔球(漫画・アニメ)
- エビ投げハイジャンプ魔球(アニメ)
- 大回転魔球(漫画・アニメ)
- ハイジャンプ大回転魔球(漫画)
- ハラキリシュート(漫画)
- 分身魔球(漫画・アニメ)
- ミラクルボール(=ハイジャンプ大回転分身魔球、アニメ)
[編集] 時代背景
(参考のため、『巨人の星』関連も追加)
-
- 1970年 [G監督;川上]
- (作品と関連する史実)巨人軍日本シリーズを6連覇(最終的に1973年まで9連覇)
- (作品の流れ)星飛雄馬が対中日戦で完全試合達成後に失踪(『巨人の星』最終回)。番場蛮が巨人に入団(~1974年)。眉月光がヤクルトに入団
- 1971年 [川上]
- (流れ)年初、左門と京子の結婚式(『巨人の星』最終回、「エピローグ」)。番場は対阪神戦で勝利(ウルフ・チーフに打たれるまでノーヒット)。大砲万作が中日に入団
- 1972年 [川上]
- (史実)水原茂に代わり、やはり巨人OBの与那嶺要が中日監督に
- (流れ)番場、「ハイジャンプ魔球」を開発。大砲万作と対決
- 1973年 [川上]
- (史実)長嶋2000試合出場。川上巨人V9
- (流れ)星飛雄馬が宮崎の日向三高野球部を臨時コーチ(『巨人の星外伝・それからの飛雄馬』)。番場蛮は「大回転魔球」と「ハラキリシュート」を開発。番場の活躍で川上巨人V9達成。番場は胴上げ投手になる
- アニメ『侍ジャイアンツ』(終)では設定した年度が1973年で、番場が「分身魔球」、「ミラクルボール」まで開発し、日米ワールドシリーズでジャックスを打ち取り、最優秀選手に選ばれる
- 1974年 [川上]
- (史実)長嶋茂雄現役を引退。巨人V10ならず中日セVで川上監督勇退。後任は長嶋茂雄
- (流れ)原作の『侍ジャイアンツ』で番場蛮が分身魔球を開発。体力の消耗が大きく、3連投の末に試合終了後に急死。巨人V奪回に向かうとの設定
- 1991年頃 [藤田]
- (流れ)巨人・中日戦で番場蛮の甥が登板。落合博満を三振に打ち取る(『よみがえれ侍』)
[編集] エピソード
- アニメ版放送開始時の1973年10月7日の時点で、この作品の舞台となる1973年シーズンの巨人は、セントラル・リーグ優勝がかなり厳しい状態になっていた。この後10月11日巨人×阪神10-10の死闘(第37話「怒りに燃えた分身魔球」の舞台となる)、10月20日巨人ナインが乗る新幹線が脇を通過する中日球場で優勝マジック1の阪神敗戦(第38話「大砲・運命の一打」の舞台)、10月22日阪神×巨人最終決戦で巨人勝利・逆転V9(第39話「輝け苦闘のV9」の舞台)と、プロ野球史上に残る劇的な展開となり、この流れは作品の中でも忠実に再現された(ナゴヤ球場「1973年 10-20」および阪神タイガース「世紀の落球とV9」の項を参照)。本作品企画時にはこのような展開になることも分かっていなかったわけであり、現実のペナントレースの展開がアニメ作品のストーリーに影響を与えてしまったのである。
- 柳田理科雄が『空想科学漫画読本』で「ハイジャンプ魔球」と「大回転魔球」を検証している。柳田は「分身魔球については『空想非科学大全』で検証した」と書いているが、実際、『非科学大全』では忍者の「分身の術」を例に「すばやい動きによる分身」の原理を説明しただけで、直接には「侍ジャイアンツ」の「分身魔球」を扱っていない。
- 分身魔球に目が慣れた結果、捕球できるようになった八幡は、打者となれば分身魔球を打つことも可能だが、誰も八幡のトレードは考えていなかったようだ。『新・巨人の星』の蜃気楼の魔球も一種の分身魔球だが、これは「捕る原理」が同時に「打つ原理」となっていた。
- アニメの名場面を紹介するバラエティー番組で「侍ジャイアンツ」の魔球が紹介される場合、最終回で全ての魔球が出るので、オープニングも含め、最終回のビデオが使われるのが普通である。
- 2006年11月4日よりキッズステーションで行われている再放送では、各話終了後に『侍ジャイアンツのつぼ』というミニ解説が付いている。科学的に見た場合、番場が投げる球のスピードは新幹線より速いことがわかった。
[編集] 脚注
- ↑ 西村繁男『さらばわが青春の「少年ジャンプ」』(1994年、飛鳥新社)によると、講談社の「週刊少年マガジン」に掲載された『巨人の星』はこの独占契約に反するものであったが、当時の長野規編集長が漫画界のためにあえて黙認したという。
- ↑ 前傾『さらばわが青春の「少年ジャンプ」』、同西村繁男『まんが編集術』(1999年、白夜書房)
- ↑ 本作のアニメ版の作画監督を務めた大塚康生による。『リトル・ニモの野望』(2004年、徳間書店)、『大塚康生インタビュー アニメーション縦横無尽』(2006年、実業之日本社)。漫画評論家の米沢嘉博による『戦後野球マンガ史 手塚治虫のいない風景』(2002年、平凡社)
- ↑ 米沢嘉博『戦後野球マンガ史 手塚治虫のいない風景』(2002年、平凡社)。『別冊宝島 70年代マンガ大百科』(宝島社、1996年)
[編集] 参考資料
日本テレビ系 日曜19:30枠 | ||
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