キャラクターデザイン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
キャラクターデザインとは、アニメ、映画などに登場する登場人物(キャラクター)の外見をデザインすることである。
目次 |
[編集] アニメとコンピューターゲーム
アニメやコンピューターゲームにおけるキャラクターデザインとは、物語に登場する架空の人物(キャラクター)の人相、髪型、服装等の外見を、監督や脚本家の設定を参考に新たにデザインすることである。監督が主人公を「冷徹な人物」と設定したら、冷徹さを感じさせる人物をデザインしなければならない。かつてはアニメーターの業務の一部であったが、現在は独立したデザイン業務となっている。
オリジナルアニメの場合、全ての登場人物はオリジナル、つまりデザイナーの完全な創造物となる。デザイナーは全ての登場人物の外見をデザインするが、人物の正面だけでは無く背面や側面、基本的な動作、喜怒哀楽の表情集、服装バリエーション、アクセサリーなどの小物類や、複数の登場人物が同じフレーム内に登場するシーンの描画に必要な身長比較表なども作成される。登場回数が多い主人公クラスのデザインは詳細に、雑魚キャラ・モブキャラと呼ばれる些細な人物のデザインは簡略に行われるのが普通である。
デザイナーの描いた登場人物のデザイン画は、メカニックやクリーチャーのデザイン画と共にまとめられて設定資料集として多数コピーされ、作画に携わる人々に配布される。各原画マンは登場人物のデザインを参照しつつ、自分が描いた絵が我流にならぬよう、時々チェックする必要がある。そのため表情集などはよく作業机の前に張り出されている。
コンピューターゲームでは必要に応じて3Dモデルも作成される。
登場人物の服装バリエーションを増やすためにはそれぞれを新たにデザインする必要があり、そのためにはデザイナーへデザイン作業を発注する必要があり、それはつまり経費が発生すると言う事である。アニメの登場人物の多くが全編を通して同じ服装であるのはこのためで、一張羅とか着の身着のままという言葉が思い出されるが、ぬるい目で見守るべきであろう。
[編集] 映画
『ウルトラマン』『仮面ライダー』『ゴジラ』といった特撮ヒーロー作品・特撮映画作品においてもキャラクターデザインと言う役職は存在しており、主にヒーローのデザインを行う者を指してキャラクターデザイナーという呼称が用いられる。実写作品は役者が顔出しで演技するのであるから人相の設定は必要が無いが、変身ヒーローの場合はマスクとコスチュームがデザインされる。
- 主な特撮キャラクターデザイナー
- 成田亨『ウルトラマンシリーズ』
[編集] 漫画と小説
新たに発表される小説本に添える挿絵として、小説の登場人物の外見がデザインされることがある。この場合キャラクターデザインではなく、挿絵、本文イラストといった呼称が用いられる。
小説などを原作とする漫画の場合に、既存の人物イメージが無い場合は必要に応じて漫画家が登場人物の外見をデザインする。挿絵などでイメージが存在する場合はそれをもとに漫画用のキャラクターがデザインされる。
漫画、小説のキャラクターデザインの場合、アニメほど厳密な設定は作成されない。挿絵は一枚絵であり、漫画のコマ割りにしても、カメラアングルや人物動作は限られたものになるからである。
[編集] デザインのリファイン
小説原作のアニメでは既存の人物イメージの修正作業もキャラクターデザインの一部である。それはすなわち漫画、小説の挿絵、イラストなどに描かれた人物をアニメーションしやすいようにデザインし直すことである。小説の挿絵、イラストを描いたイラストレーターはキャラクター原案という役職名で区別される。また、メディア毎のプロットの違いなどの必要に応じて、追加のオリジナルキャラクターもデザインされる。
また、オリジナルアニメであっても、キャラクターデザインだけを漫画家、イラストレーターに発注した場合、デザイン画をアニメ用に修正する作業もキャラクターデザインの一部であるが、作画監督などが作業する場合は独立したキャラクターデザインの担当者は立てない。したがってクレジットはキャラクター原案と作画監督だけとなる。
[編集] キャラクターの描き分け
登場人物同士は異なる人物であるから、それらの外見は異なるはずであり、それゆえ異なった人物としてデザインされる。すなわち一本のアニメには、通常多数の人物が登場するが、それらはアニメを見ている人間がそれぞれ別の人物であると認識されるほどには外見が異なっている必要がある。生憎と人物を描き分ける能力はきわめて高度な創造性が要求され、多くの業界関係者にとって困難な作業である。毎シーズン量産されるキャラクター群をそれぞれ異なるようにデザインするためには多くのスキルと天賦の才を必要とする。
結果的に人物の描き分けは、見た目にわかりやすい特徴、すなわちほくろや髪型と言った人相以外の部分に頼ることになる。アニメに登場するけばけばしい色使いの髪、奇怪なデザインの服装、重力制御が行えるがごとく宙に浮く「アホ毛」等は、仕事に煮詰まったデザイナーの苦労の産物であるといえよう。
また、このことは単独の作品に止まらずアニメ作品間の登場人物においても同様である。同じ人物によるキャラクターデザインだからといって、異なるアニメの登場人物が互いにそっくりであってはやはり具合が悪い。この場合も描き分けが必要になる。とはいえ、デザイナーの個性が許される範囲での登場人物の相似は許容されており、アニメ作品のそれぞれの魅力となっている。
なお、血縁やクローン、平行宇宙またはそっくりさんなどの設定のため登場人物のデザインがまったく同じで、描き分けの必要が無い場合でも、作劇の都合上、登場人物間に何らかの違いを設けるのが普通である。例えば『∀ガンダム』では、ディアナ・ソレルとキエル・ハイムは瞳のハイライトの有無や肌と髪の微妙な色合い(キャラクター原案を手がけた安田朗によれば、キエル・ハイムは全キャラクター中最も美しいブロンドであるとしている)によって見分けることができた。
[編集] クリーチャーデザイン
キャラクターデザインとは異なり、人間ではない登場人物(?)をデザインする作業をクリーチャーデザインと呼ぶことがある。特撮やアニメにおいて、仲間、あるいは敵対する怪人、怪獣、異形の生物といったもののデザインを行う。人間では無いとは言えメカニックデザインとは異なり、デザインの対象は必ず何らかの生物またはそれに準ずるものである。また同じ文脈でモンスターデザインと言う呼称の使用も散見される。
[編集] キャラクターデザイナー
- キャラクターデザインの担当者はキャラクターデザイナーと呼ばれる。
- 現在、作品の制作スタッフの当該役職名としてクレジットされるが、1970年代までは専業であることはなく作画に含まれる事が多かった。
1974年に放映されたアルプスの少女ハイジのスタッフロールにて日本で初めて小田部羊一に「キャラクターデザイン」のクレジットがつく。(同アニメで演出を担った高畑勲が命名した。)
- イラストレーター、漫画家(貞本義行、山田章博、村田蓮爾、草彅琢仁)、アニメーター(逢坂浩司、川元利浩)などが本業である。キャラクターデザイナーはアニメの作画関係者にとっては出世すごろくの「上がり」であり、いつかは手がけたい役職の一つである。
- 代表的なキャラクターデザイナー
- 天野喜孝(『タイムボカンシリーズ』、『科学忍者隊ガッチャマン』他)
- 安彦良和(『機動戦士ガンダム』他)
- 塩山紀生(『装甲騎兵ボトムズ』、『鎧伝サムライトルーパー』他)
- 谷口守泰(『蒼き流星SPTレイズナー』他)
- 沖浦啓之(『攻殻機動隊』、『人狼 JIN-ROH』他)
- 高田明美(ぴえろ魔法少女シリーズ、『機動警察パトレイバー』他)
- 貞本義行(『新世紀エヴァンゲリオン』他)
- 平井久司(『機動戦士ガンダムSEED』他)
- 美樹本晴彦(『超時空要塞マクロス』他)
- 関修一(世界名作劇場シリーズ他)
- いとうのいぢ(『灼眼のシャナ』『涼宮ハルヒの憂鬱』他)
アニメ関係者一覧の「キャラクターデザイン」も参照のこと。
カテゴリ: アニメ製作の手法と役職 | デザイン