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デスマッチ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

デスマッチ(Death Match)は、プロレスの試合形式のひとつである。

目次

[編集] 意義

デスマッチを行う意義はさまざまである。

ライバル関係にあるレスラー同士の、完全決着をつけるため
1990年以前は、リングアウトや反則裁定などの明確な白黒がつかないことが多かった。それに対し、場外への逃げ道を閉じ、反則も全て許可される方式が考え出された。ランバージャック・デスマッチ、金網デスマッチ、1978年アントニオ猪木上田馬之助の釘板デスマッチが代表的。ルチャリブレにおける、敗者髪切りやマスク剥ぎなどのコントラ・マッチは、広義でこのグループに含まれる。1990年代以降の日本では、通常ルールにおいても反則やリングアウトの裁定をとらないことが多く、この目的でデスマッチが行われることはほとんどない。
スペクタクルを演出するため
FMWにおける大仁田厚ターザン後藤のノーロープ有刺鉄線電流爆破デスマッチを契機に表れた意義。観客は「いつ選手が道具や凶器の餌食になるか」を主眼にして観戦する。地雷爆弾ガラス画鋲マムシ蛍光灯サソリなどが使われるようになる。自作の凶器を持ち込む選手もおり、有刺鉄線を巻きつけたバット、五寸を打ち付けたバット、など、日常的に凶器を使うことでレスラーの個性とすることさえある。当然ながら、これらを用いて死亡事故に至った例はない。また、国際プロレスで行われた金網デスマッチは、完全決着にこだわらずあらゆる会場で行われ、ラッシャー木村が金網にたたきつけられて流血するのが見せ場だったため、意義的にはこちらに属する。
レスラー・団体の独創性を演出するため。
例えばラダー(脚立)の上から飛び技を出したり、蛍光灯や有刺鉄線を利用したプロレス技を繰り出す、など。大日本プロレスが、道具頼りのデスマッチに限界を感じ、伊東竜二などの通常の形式でも十分にできる選手をデスマッチ戦線に送り出すようになってから、このような意義が出ている。特に大日本では「BJW認定デスマッチヘビー級王座」というタイトルを創設。デスマッチとしては最高位のタイトルとして認知されている。ハードコアマッチは、この意義をより推し進めることで編み出された試合形式。

[編集] 形式

[編集] ランバージャック・デスマッチ

リングの四方を対戦者以外のレスラーが取り囲み、選手がリングから落ちた際、すぐさまリング内に押し戻す(転落した位置に対立関係にある選手がいた場合、転落した選手に暴行を加えることがある)形式。カナダのきこり(ランバージャック)のケンカの作法が起源とされる。まれに軍団抗争の最中に対立関係にある軍団の代表同士で行われるが、この場合、完全決着に至るよりもむしろ抗争が激化するケースの方が多い(特にヒール側の軍団が対立関係にある軍団の選手が転落したときに暴行を加えることが多いため)。近年ではほとんど行われないが、2006年にWWEのスマックダウンで行われた、レッスルマニアでのマネー・イン・ザ・バンク戦出場権をかけたフィンレー対ボビー・ラシュリーの試合が両者反則による無効試合となったため、翌週の再試合がこの試合形式となった。ジャイアント馬場が存命中の全日本プロレスでも1度この試合形式を行った事がある。アパッチプロレス軍でも、2006年6月4日の新木場1stRing大会・金村キンタロー佐々木貴でこの試合形式を採用。

[編集] 金網デスマッチ

リングの四方(まれに上空も)を金網で包囲する形式。通常、日本では目の細かい金網を使用するが、アメリカ合衆国では目の粗いスチールパイプを用いることも多い(「スチール・ケージ・マッチ」と称する)。 WWEでは、天井がある形式を「ヘル・イン・ア・セル」、複数人による時間差バトルロイヤル形式を「エリミネーション・チェンバー」と称する。また、WCWにおいて、対戦チームの選手が時間差で交互にリングインする形式を「ウォー・ゲーム」、金網上段に電流が流れる形式を「サンダードーム・ケージマッチ」と称していた。

日本では国際プロレスが有名だが、最近では新日本プロレスでも行われている。フォール・ギブアップのほか、10カウントで勝負を決する方式、先に金網の外に脱出した方を勝者とする形式がある。1970年代の国際プロレスでは、ラッシャー木村が「金網の鬼」と評された。女子でも行われ、1990年ブル中野アジャ・コング戦における、中野の金網最上部からのギロチン・ドロップは、女子プロレス史上最高の名場面に推す声も多い。また、WWE RAWにおいて行われたカート・アングルクリス・ベノワの試合は、RAW史上屈指の名勝負との声もある。

尚、FMWも旗揚げ直後から金網デスマッチを行いたかったが、旗揚げ直後のFMWは資金力に乏しく、金網ゲージが高価な為に製作出来ず諦めている。

一時期、ZERO-ONEにおいてこの形式を乱発していたが、試合後昏倒し重篤状態に陥った選手がおり、迅速な対応により一命を取り留めたものの、その原因が幾度にもわたる転落によるものと思われた為、選手の安全を考慮しこの形式を控えることとなった。

[編集] 有刺鉄線デスマッチ

起源は、プエルトリコで最初に行われたことから命名された「カリビアン・バーブドワイヤーデスマッチ」。ロープの上に有刺鉄線を巻く。この方が、ノーロープ時よりロープの弾力がある分とげが深く刺さるという。

その後ロープの代わりに鉄線を巻く「ノーロープ有刺鉄線デスマッチ」、鉄線を敷きつめた板をコーナーや場外に設置する方式、鉄線を巻いたバットを公認凶器とする方式など、多種多様。

また、大日本プロレス旗揚げ当初、他団体との差別化を図る為、「バラ線」と呼んでいたが、現在では「ボブワイヤー」で統一されている。

[編集] 電流爆破デスマッチ

大仁田厚FMWで開発したスタイルの試合で、有刺鉄線に電流を流し、なおかつ小型爆弾を設置する(電流はダメージを与えることが目的ではなく、接触を検知し小型爆弾を爆発させる為のもの)。視覚面と音響面でインパクトが強いため、90年台には盛んに行われた。初めての試合は大仁田とターザン後藤が汐留で対戦したノーロープ有刺鉄線電流爆破マッチ。その後、大仁田とミスター・ポーゴが対戦した有刺鉄線バリケードマット地雷爆破デスマッチ(リングサイドに有刺鉄線を絡みつかせた板を敷き詰め、その上に振動で爆発する大型の爆弾を設置)や、有刺鉄線電流地雷監獄リング時限爆弾デスマッチ(金網に加え、2面には有刺鉄線電流爆破、もう2面には地雷を設置した有刺鉄線ボードを設置し、試合開始から15分経つとリングサイドの時限爆弾が爆発する)、大仁田とテリー・ファンクが対戦したノーロープ有刺鉄線電流爆破超大型時限爆弾デスマッチ(決まった時間に爆発する超大型爆弾をリングサイドに設置)、代々木プールで行われた水中機雷爆破デスマッチ(プール中央にリングを設置し、選手が水に落ちると水中に仕掛けられた爆弾が爆発)もこの類。尚「選手が有刺鉄線に近づいたら遠隔操作でその面の起爆装置を入れて爆発させる」と誤解している向きもあるが、実際は逆に「選手が有刺鉄線に近づいたら遠隔操作でその面の安全装置を外して爆発させる」である(そうしないと有刺鉄線に一度触れただけで全ての面の爆薬が誘爆で爆発してしまうため)。

消防法の規定により屋内で使用できる火薬に制限がある為、通常は屋外で行われるが、火薬の量を減らした上で屋内で行われる場合もある。視覚面のインパクトは弱まるが、反響により音響面のインパクトはより増す場合がある(会場による)。 IWA・JAPAN新日本プロレスSPWFなどの団体でも開催されている。

[編集] ファイヤー・デスマッチ

文字通り、を使ったデスマッチで、日本ではFMWで初めて行われた。リングを囲む有刺鉄線に灯油をしみこませた松明を取り付けるというスタイルで行われたものの、火の勢いが強すぎて、リング上は酸欠状態になり、試合開始1分ほどで試合続行が不可能になった。この試合で、ぎりぎりまでリング上で粘ったザ・シークは大やけどを負い、入院している(元々は、W★INGでファイヤーデスマッチが行われると聞いた大仁田厚が、機先を制しようと決行したが、急遽決めた為事前に火力の調整具合を見極めずに行ってしまい、上記の様な事態になってしまった)。W★INGは、リングサイドにガスバーナーと熱せられた鉄板を置き、四面のコーナーポストから時限式に火花が発生するというスタイルで、人間焼肉デスマッチの名称で、松永光弘ミスター・ポーゴの間に行われている。又、W★INGで松明を固定したスタンドを四方に囲む「プエルトリコ式ファイヤーデスマッチ」を開催している。

1993年、W★INGで行われたスクランブル・ファイヤーデスマッチでは、金村キンタローが、試合中に自分のコスチュームに染み込んだ油が引火し、大やけどを負う。

最近は、ノーロープ有刺鉄線+ダブルヘル形式を取り、有刺鉄線に灯油がしみ込んだ布を巻きつけ、試合開始から5分毎に片面ずつ点火するというスタイルを取っている。 また、2006年10月1日大日本プロレス晴海大会のファイヤーデスマッチでは、MEN'Sテイオー殺虫剤スプレーに火をつけて火炎放射機にし、沼澤邪鬼を追い回し、観客の度肝を抜いた。テイオーが会場実況を勤める666クレイジーSKB(バカ社長)も、会場・形式を問わず、同じ事をしている為、彼を真似たものと思われる。      

[編集] 画鋲デスマッチ

IWA・JAPANで盛んに行われた試合形式。画鋲を敷き詰めた箱をリングに設置し、中に落としあう。中牧昭二や小野浩が得意とし、頭に刺さった画鋲がキラキラ光る姿はなんともいえない凄惨さがあった。

[編集] 五寸釘デスマッチ(釘板デスマッチ)

釘が突き出た板を、エプロンや場外に敷きつめる方式。1978年の猪木対上田戦、W★INGで行われた松永光弘対レザー・フェイス戦が有名。前者は釘の上に落とそうとする動きはあったものの、結局どちらも落ちることはなかったのに対し、後者は松永が釘の上に背中から転落しKO負けを食らった。W☆INGの過激デスマッチ路線の嚆矢となった。釘の密度が低いと選手に突き刺さって危険なので、荷重を分散させる為びっしりと敷き詰められる。

[編集] インディアン・ストラップデスマッチ

両者の腕を皮製の紐でつないで試合を行う形式。使える技が限定されるため、単調な試合になりやすい。紐は相手の首に巻きつけるなど凶器となることもある。相手を引きずって1周した方が勝者となる。紐の代わりに鎖が使われると「チェーン・デスマッチ」、テキサス州出身の選手がロープを使うと「テキサス・ブルロープ・マッチ」となる。

[編集] オール・ウェポンデスマッチ

一切の凶器使用が認められる形式。別名フリー・ウェポンデスマッチとも呼ばれる。観客が好きなものを持ち寄り、試合中凶器としてレスラーに手渡す形式が行われたこともある。またリングに公認凶器を置くこともある。

[編集] 月光闇討ちデスマッチ

場内の照明を非常灯以外全て消して行われる形式。場外乱闘が何処で起こっているかわからないので、観客は非常に恐怖を味わう。松永光弘対フレディ・クルーガー戦は、明かりがついた瞬間、後楽園ホールのバルコニーから松永が首吊りにされているという衝撃的な結末だった。

[編集] 蛍光灯デスマッチ

ロープに蛍光灯をくくりつけた状況で行う試合形式。

大日本プロレスに所属していた本間朋晃が思いつきで使ってみたことから始められたといわれており、今では大日本プロレス名物として日常的に行われている。

当初は5~6本をくっ付けた薄い板を2枚~3枚用意するものであったが、現在はリングロープに輪ゴムで括りつける方式を取っている。1面に50本くくりつけるので、100本のときは2面に、150本のときは3面に、200本のときは4面、300本のときはさらにキャンバスに蛍光灯を敷き詰める。キャンバスに敷き詰められた蛍光灯は選手が踏みつけたり、ロックアップしたりするだけで割れてしまう。破片が大量に散乱するので、試合が進むに連れて受け身でもダメージになる。破片は客席にも飛び散るので、特に最前列付近の観客も観戦に注意が必要である。

この試合の為に、大量の蛍光灯を送ってくるファンもいると云う。現在、大日本プロレスでは副業の運送業で蛍光灯の無料引取りを行なっており、引き取った蛍光灯はデスマッチで使用される。

時にはオブジェにしたりするが、最終的には破壊される。そのオブジェは、タワー・観覧車神社の鳥居・神輿など様々。

会場の床などに傷がつく恐れから、川崎市体育館など、蛍光灯デスマッチを規制する会場が少なくない。

[編集] 建築現場デスマッチ

両脇をハシゴで支えられた足場がリングに設置された状態で行う試合形式。アブドーラ小林がこれを得意としている。アメリカではスキャフォールド(足場)・デスマッチと呼称され、足場から落ちたら敗北となるルールで行われることもある。1980年代から当時のWWFなどで行われている。

[編集] スクランブル・バンクハウスデスマッチ

リングの中央に公認凶器ひとつ(大抵は有刺鉄線バット)を置き、選手は入場口で待機して、カウントダウンの合図で試合開始、両者はリングへ駆け込み、公認凶器を奪い合いながら戦うという試合形式。

公認凶器を天井に吊るし、それをハシゴに上って取る形式や、リング内のコーナーに凶器が詰め込まれた檻を置き、檻と反対側のコーナーにたてられたポールに吊るしてある鍵を取って檻を開け、中に入ってある凶器を使って戦う形式もある。

[編集] 凶器観客持ち込みデスマッチ

観客から集めた凶器が入ったボックスをリングに置いて試合をする形式。何が凶器として出てくるのかが判らない為、難しい試合を強いられる。

主にやかん・フライパン・大根・便所の汲み取り棒・お手製画鋲バット・フランスパン・ハエ叩きなどが提供される。

[編集] 敗者追放デスマッチ

かつてNWAが健在であった時代によく行われ、今ではメキシコにおいて頻繁に行われている試合形式。敗者はそのテリトリー(例えばテキサス州ダラス地区)を追放となる。ルーザー・リーブ・タウン・デスマッチとも言う。試合そのものは、通常のプロレスルールで行われたり、他のデスマッチと複合する場合がある。あるテリトリーのトップレスラーがその地を離れ別のテリトリーに移る場合、この形式で敗戦することで送り出されることが多かった(そして、その試合の勝者が次のトップレスラーとなる)。WWEでは、故障を抱えた選手の長期欠場が決まった時に、欠場の理由付けを目的にアングルとして敗者を解雇する形式の試合が行われることがある。本当に退団したり他団体に移籍したりする場合もこれに連動させることがあるが、正体が丸分かりのマスクマンとして参戦し続け、いつの間にか元のキャラクタで復帰する場合も多々ある。

メキシコでは、かつてのCMLLでは厳密に守られていた(復帰する場合にも一定期間経過するか、別のマスクを被って別のリングネームを名乗る)が、AAAの台頭後はなし崩しになり、他国と同じような状況にある。

[編集] 著名なデスマッチ・ファイター

テリー・ファンクはラフファイトを得意にし、FMWIWAジャパンで数々のデスマッチを経験した。日本ではやはり大仁田厚が筆頭だろう。独創的なアイデア、負った傷1000針もそうだが、ストロングスタイルを標榜していた新日本プロレスにデスマッチを持ち込んだことも大きな功績。かつて国際プロレスで「金網デスマッチの鬼」と呼ばれたラッシャー木村、そして木村と名勝負を演じたジプシー・ジョーも挙げられよう。IWAジャパン主催のデスマッチトーナメント「悪夢の架け橋」で優勝した経験もあるカクタス・ジャックは、デスマッチをアメリカに持ち込み、同国におけるハードコアマッチを確立させた立役者。他にはミスター・ポーゴ松永光弘金村キンタロー葛西純、山川竜司などが有名。最近では伊東竜二アブドーラ小林佐々木貴が若手の筆頭格である。

[編集] デスマッチの弊害

デスマッチを行う事によって、観客やマスコミにアピール出来る利点はあるが(特にインディー団体にその傾向は強い)、一度見てしまうと、過激な試合でも見慣れてしまう為、より一層過激なデスマッチを開催しなければならない危険性も含んでいる。又、アイデアは凄いものの、実際に行ってみると、拍子抜けするようなデスマッチもあり(特に生き物を使ったデスマッチ(など)、その辺りのさじ加減も難しい。また、デスマッチに使用する動物が試合前に死亡するなどの事故もあるため、動物愛護の観点から批判を受けることもある。

日本で初めて金網デスマッチを行った国際プロレスは、当初金網デスマッチは1回のみの予定で行うはずだったが、評判が高かった為、地方のプロモーターから「うちでもやって欲しい」と言う希望が多く、乱発せざるを得ない状況となり、結果的にインパクトが薄れてしまい、団体の崩壊の一因となってしまった。

[編集] 関連項目

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