クラヴ・マガ
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クラヴ・マガ（ヘブライ語：קרב מגע Krav Maga、クラブ・マガ、クラブマガ、クラヴマガと表記されることもある。[1] [2]）は、20世紀前半、イスラエルで考案された護身術及び白兵戦術で、様々なイスラエル保安部隊に採用されることで洗練され、現在、世界中の軍・警察関係者や一般市民にも広まっている。一般市民向けのコースでは、軍・警察関係者向けに教えられている殺人術は除外する形で、マーシャルアーツの一環として護身術に重点を置いたレッスンが提供されている。
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[編集] 名前の由来
名前中、マガ（מגע）は「接近」「接触」、クラヴ（קרב）は「戦闘」を意味する。このため、直訳するとかえって混乱を招きかねないので、ヘブライ語のままクラヴ・マガと呼ばれる。 なお、クラヴ・マガはもともとカパップ（ヘブライ語：קפ"פ Kapap Krav Panim El Panimの省略。白兵戦の意。）と呼ばれていた。
[編集] ロゴ
クラヴ・マガのロゴマークは、ヘブライ文字のK（Koof）とM（Mem）が重ね合わされるかたちで象られている。また、その周囲をとり囲む円の上部と下部に開きがあるのは、クラヴ・マガが閉じたものではなく、実戦の世界に対して開かれ、常にそこから新しい技術を取り入れて古い技術を改善していくシステムの姿の現れでもある。
[編集] 歴史
クラヴ・マガの原型となる仕組みは、1930年代、ハンガリー生まれスロバキア育ちのユダヤ人、イミ・リヒテンフェルドによって、ハンガリーとチェコスロバキアにおいて考案された。リヒテンフェルドはボクシング、レスリング、体操など様々な競技においてヨーロッパチャンピオンのタイトルを手にした、生まれながらのアスリートだった。また、警察官の父親がおり、彼も他の警察官に戦闘・護身技術を指導するほどの、すぐれた能力の持ち主だった。リヒテンフェルドは、そんな父から直接、実戦に即したストリートファイトを学び、当時紛争状態にあった東ヨーロッパのなかで生き延び、同時に数々の仲間の命を救った。
この仕組みは体系化され、ブラチスラヴァ在住のユダヤ人らに、ファシズム信奉者の暴漢らに対する防衛手段として教えられた。
リヒテンフェルドは、イスラエル建国前に英国委任統治領パレスチナに移り住み、ここでユダヤ人民兵組織ハガナに近接戦闘術を教え始めた。イスラエル建国後は、クラヴ・マガとはイスラエル軍・警察に教えられる近接戦闘術を指す一般名詞を意味していた。
イスラエル移住後、リヒテンフェルドは自らの姓をヘブライ語に訳し、スデ=オーと名乗った。リヒテンフェルドは、クラヴ・マガの教官として勤めていたイスラエル軍から退職した後は、一般市民への指導を開始した。こうして、一般的に知られる護身術としてのクラヴ・マガが発達したのである。
1973年に、イスラエル軍は柔道家モニ・アイジックを招聘し、クラヴ・マガを軍特殊部隊の要求に合ったものにするための改革を始めた。アイジックは現在、コマンドー・クラヴ・マガと名乗りクラヴ・マガの指導を続けている。[3]「コマンドー」の名は、クラヴ・マガが一般兵士ではなく特殊部隊に教えられていることを強調するものだった。
1985年以前は、クラヴ・マガのすべての熟練者はイスラエル在住だったが、以降イスラエル国外でも、イスラエル・クラヴ・マガ連盟によって認証された指導者によってクラヴ・マガ道場が開かれだした。リヒテンフェルドの死去後、多数の流派・協会が発達し、誰がリヒテンフェルドの真の後継者であるのかに関しての論争も起こっている。
柔道や空手などの規則が確立されているスポーツに対して、クラヴ・マガにおいてはそういったものは存在しないため、競技として大会が行われることはない。クラヴ・マガはむしろ、実生活で起こりうる状況の中で最高の効率性を発揮することに重点を置いている。また一般的に、学習者にとって不利な状況を想定しており、股間への攻撃、頭突きなど、効率的で相手に最大のダメージを与えることを念頭においている。
[編集] トレーニング
[編集] 基本理念
クラヴ・マガにおける基本理念は、
- 怪我の防止
- 防御から攻撃への素早い転換
- 反射神経の利用
- ダメージを受けやすい部分を狙うこと
- 近くにある道具や物体の利用
がある。
基本的には、相手の最初の攻撃に対処し、次の攻撃を予防し、そして相手を制圧することを、緊迫した状況下で正確に行うことである。中でも、攻撃を仕掛ける相手から、いかに早く主導権を奪うかということが最も重要視されている。
[編集] テクニック
クラヴ・マガは、人間が本能的にもっている条件反射を動きに取り入れており、いざという時に、身体が自然に護身の動きとして反応するという特徴を持っている。その首尾一貫した合理的な考え方により、短期間の訓練で性別、年齢、体格、体力を問わず、誰でも高いレベルの護身スキルの取得を可能とする。
サバットやキックボクシング、ムエタイ（蹴り、パンチの技術）また柔術や柔道、レスリング（身のこなしの技術）などとも共通点を持っているものの、訓練法はこれらと異なっており、不利な状況での護身を重要視している。実戦を徹底的に意識しており、敵は必ずしも素手ではなく、ナイフや拳銃などの凶器を保持しているケースも想定して訓練を実施している。また、敵が一人とも限らないため、複数の相手を想定した訓練も実施している。
訓練はエアロビクスと、敵に見立てたパッドを多用するのが特色である。これにより、訓練を受ける者は手加減なしで反撃の練習が可能だし、パッドを保持する側もクラヴ・マガの効果を、反撃される者の立場で体感することができる。そのため、パッドを保持する者も、攻撃を加える者と同じくらい激しい運動をしたことになるという。
人間は不意に襲われたときはパニック状態に陥り、思考能力が急激に低下するため、訓練においては、ラウドスピーカー、ストロボスコープ、霧発生器といった装置を導入し、生徒が周囲の状況に余計に迷わされず、敵にダメージを与えることに集中するよう指導することもある。また身体や言葉を使い、実力行使をせざるを得ない状況に入ることを未然に防ぐ方法が教えられることもある。
一般的なクラヴ・マガのトレーニングセンターでは、訓練は約1時間で、エアロビクスと護身術を組み合わせた指導が行われるが、難度が上がるにつれ次第にエアロビクスよりも護身法に重点が移される。まず、指導員は心拍数を上げるための激しい運動を行わせる。そしてストレッチを行った後、いくつかの護身法が教えられる。この中では、まず相手にダメージを与える方法（パンチ、蹴りなど）または身のこなしの技術（相手の制圧下からの抜け出し方など）が指導され、その後にこれらの技術とエアロビクスを組み合わせた指導がされる。最後に、生徒をバーンアウトさせて終了するが、これは訓練の最初に実施されることもある。
[編集] トレーニングプログラム
クラヴ・マガ ワールドワイド認定のトレーニングでは、ブラックベルトまで5つのレベルがある。
- Level 1 (イエローベルト) ： 基本的な攻撃・護身の動きを身につけることを目的として、パンチ（数種類）、立った姿勢でのキック、横になった状態でのキック、ひじ打ち（エルボー）、膝蹴り（ニーアタック）、首絞め、ヘッドロック、手首をつかまれた状態等に対する護身テクニックを習得する。
- Level 2 (オレンジベルト) ： レベル1にて習得した技術に加えて、より多様なパンチやキック、カウンターアタックを伴うパンチに対する防御、キックに対する防御、より多様な首絞め・ヘッドロック・抱きつき（ベアーハッグ）に対する護身テクニックを習得する。
- Level 3 (グリーンベルト) ： 中級者レベルとして、攻撃や攻撃に対する護身テクニックを高度な技術とあわせて、ナイフ・銃・棒などの武器を持った相手に対する護身テクニックを習得する。
- Level 4 (ブルーベルト) ： より高度なパンチ・キックのコンビネーションとともに、より高度なパンチ・キック・武器（ナイフ、銃、棒）に対する護身テクニックを習得する。また、より高度な寝技（グランドファイト）も習得する。
- Level 5 (ブラウンベルト) ： あらゆる状況や環境下における攻撃・護身、武器に対する護身、寝技などを含むクラヴ・マガ上級者専用のトレーニングと共に、第3者の護身（自己以外の護身）のテクニックを習得する。
ブラックベルトは、特殊部隊や軍・警察関係者向けのトレーニングを中心に、手榴弾やライフル所持者への反撃、第3者グループの保護、偵察等々のトレーニングを実施する。
[編集] トレーニングセンター
日本国内では、クラヴマガ ジャパンの東京 市ヶ谷 ・ 恵比寿にあるトレーニングセンターにて定期的にメンバー募集を実施しており、クラヴ・マガ ワールドワイド認定のトレーニングを受けることができる。また、クラブ・マガや他の格闘技の経験者向けに、インストラクターコースも開講されている。
なお、Worldwide Krav Maga Directoryでは、世界に点在するクラヴ・マガスクールの検索ができる。
[編集] セミナー
クラヴマガ ジャパンより、東京 市ヶ谷のトレーニングセンター以外で、年に数回のセミナーが開催されている。
[編集] 書籍
- 『イスラエル軍式護身術 クラブマガ入門』 イミ スデ・オー、エヤル・ヤニロブ（共著）
- 『Complete Krav Maga: The Ultimate Guide to over 200 Self-defense And Combative Techniques』 ダレン・レバイン（著）
- 『The Essential Krav Maga: Self-Defense Techniques for Everyone』 Christophe Philippe（著）
[編集] 採用例
1964年に、創始者リヒテンフェルドはイスラエル軍から退職して一般市民へのクラヴ・マガの指導を始めた。現在のイスラエルでは、小学校から高校までに及ぶ国立の指導要領に加え、ウィンゲート・インスティテュートと呼ばれる体育学校、またイスラエル・スポーツ・教育省管轄下のすべての人にも指導されている。また、イスラエル軍、警察、特殊部隊、反テロリスト部隊、諜報・情報機関（モサド）に、公式の護身術として導入されている。
クラヴ・マガは世界各地のコミュニティー・センター、学校、クラブにて、年齢、体力を問わず教えられている。スカイ・マーシャル（民間の航空機に乗り込む、治安維持を目的とした警察官）にも指導されており、現在ではイスラエルのみならず、アメリカ合衆国、カナダ、ブラジル、イギリス、アイルランド、フランス、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、ドイツ、オーストリア、スイス、ベルギー、オランダ、ロシア、イタリア、ポーランド、タイ、オーストラリア、ハンガリー、デンマーク、ニュージーランド、インドなどでも教えられている。またCIA、FBI、イラン警察、ブラジル警察など、イスラエル以外の国のいくつかの省庁でも導入されている。それだけに留まらず、SWAT、GIGNなどイスラエル国外の特殊部隊にも、クラヴ・マガを導入しているところがある。
日本国内では、警備会社・警察・自衛隊（特殊部隊を含む）の指導や指導者育成をクラヴマガ ジャパン チーフインストラクター 松元国士より実施されている。
[編集] メディア掲載
クラヴ・マガは国内外を問わず、広くメディアにて取り上げられている。
[編集] クラヴ・マガの紹介映像 （ Licensed by YouTube )
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