トロリーバス
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トロリーバスとは、道路上に張られた架線から取った電気を動力として走るバス。略してトロバスとも呼ばれる。
外観はバスに近いが、日本の法令上は無軌条電車(むきじょうでんしゃ)とされ鉄道として扱われている。かつては無軌道電車(むきどうでんしゃ)と呼ばれていたが、「無軌道」には「常軌を逸した」という意味もあり悪い印象を与えるとして「無軌条電車」に改められた。
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[編集] 構造・特性
道路上の架線から棹状の集電装置(トロリーポール)を用いて集電してモーターを回し、動力とする。このトロリーポールの先端には、架線に接して電気を伝えるための滑車が付いている。この滑車をトロリー(Trolley)といい、このトロリーが付いているので「トロリーバス」と呼ばれる。タイヤは普通の自動車と同じゴムタイヤである。外観も屋根上のトロリーポール以外は普通のバスとほぼ同じだが、動力源は電車に近い。普通の電車と違って線路にアースさせる事が出来ないため、2本のトロリーポールをそれぞれ並行する架線に当てている。
路面電車と違い、ある程度の障害物は避けることができるが、それでもトロリーポールが届かない場所には行くことが出来ないため、運行上の制約は大きい。しかしながら、電気を動力とするため排気ガスやエンジン騒音がなく、環境に与える負荷は非常に小さいという特長を持つ。
また、トロリーポールの剛性と架線の剛性の問題から、カーブを曲がる時などに速度を出しすぎたり、急カーブを切ろうとすると、しばしトロリーポールが架線から外れてしまうことがあり、その場合は一旦車両を停止させ、運転士が車両の後ろに回り、トロリーポールのケーブルを引っぱって、架線にトロリーポールを引っ掛け直す必要がある。
なお、昨今では部分的に架線を取り付けることのできない区間を走行するため、補助エンジンやバッテリーを搭載している車両が主流になっている。
また、かつては車両の絶縁が不十分であったことから、しばしば漏電を起こして乗客や運転士が感電することがあった。
[編集] 日本のトロリーバス
[編集] 法規上の扱い
日本の法規では1947年以降無軌条電車という鉄道に分類され、軌道法または鉄道事業法が適用される。市街地などの一般公道を走行する場合は、路面電車と同様道路交通法に則って運行される。運転士は大型二種免許に加え、動力車操縦者運転免許(無軌条電車運転免許)をも取得しなければならない。従来から大型二種運転免許を保持している者に対しては、動力車操縦者運転免許に関して学科試験および技能試験の全部が免除される。
[編集] 歴史・現況
1882年に、ドイツのヴェルナー・フォン・ジーメンスが540mの区間で試験運行を行ったのが初めとされる。開放式馬車をそのまま用いた形態となっていた。1900年代初めにはフランスなど各国で実用化された。このときは路面電車に準じた車体スタイルであった。
日本においては、1928年に阪神急行電鉄(現、阪急電鉄)花屋敷駅(統合され、現在は雲雀丘花屋敷駅)と新花屋敷(現在の宝塚市満願寺町あたり)の間1.3kmを結ぶ区間で運行を開始した日本無軌道電車が初とされる。当時この付近では温泉が湧いており、それを開発した温泉宿・遊園地へのアクセス路線として、当時のバスでは登坂不可能な急勾配を越すためのものだった。しかし営業は思わしくなく、開業僅か4年で廃線となった。
都市交通機関として初めて開業したのは、1932年の京都市電気局(後、京都市交通局)である。その後しばらくこの路線が日本唯一のトロリーバス路線となったが、戦後になっていくつかの大都市にトロリーバス路線が開業した。その背景には、当時の内燃機関は出力性能・信頼性が低くバスの大型化もまだできない状況であったことから、電車の技術を応用して車体の大型化に対応できるトロリーバスに期待が集まった事と、路面電車に比べて建設費が1/3ですむ事などがあったとされる。
しかし架線下においてしか走れないため、道路交通量の増加とともに走行に困難をきたすようになり、また大型のバスの開発が進んだことから、路面電車と同様に高度経済成長に伴うモータリゼーションの流れによって順次廃止されていった。都市トロリーバスで最後に廃止されたのは、横浜市交通局のもので1972年の事である。なお横浜市のそれは開業も1959年で、これまた都市交通においては日本最後のものとなった。
現在、日本国内では都市交通としてのトロリーバスは存在せず、山岳地帯の立山黒部アルペンルートにおける立山黒部貫光立山トンネルトロリーバス(室堂駅~大観峰駅)、関西電力関電トンネルトロリーバス(黒部ダム駅~扇沢駅)の2路線(いずれも鉄道事業法適用の鉄道)が残るだけである。但し、関電トンネルトロリーバスは長大トンネルにおける排気ガスの問題から採用に至ったもの、そして立山トンネルトロリーバスについては元々普通のディーゼルバスが運行されていたが、全区間がトンネルであるため換気が大変なことと、周辺が国立公園内であることによる自然環境への配慮から、排ガスを出さないトロリーバスに置き換えられたものである。
なお、日本国外では旧東側諸国で多く運行されている他、環境への配慮や交通政策の一環として、都市交通としてのトロリーバスを現在でも運行、もしくは規模を拡大している例が数多くある。
[編集] 現在残る路線
- 立山黒部貫光 - 立山トンネルトロリーバス(室堂駅~大観峰駅)
- 関西電力 - 関電トンネルトロリーバス(黒部ダム駅~扇沢駅)
[編集] かつてトロリーバスが存在した街
- 東京都 - 東京都交通局(都営トロリーバス)
- 川崎市 - 川崎市交通局(川崎市営トロリーバス)
- 横浜市 - 横浜市交通局(横浜市営トロリーバス)
- 名古屋市 - 名古屋市交通局(名古屋市営トロリーバス)
- 京都市 - 京都市交通局(京都市営トロリーバス)
- 大阪市 - 大阪市交通局(大阪市営トロリーバス)
[編集] 日本国外でトロリーバスが存在する主な町
[編集] アジア
[編集] 中国
[編集] 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)
- 平壌など
[編集] モンゴル
[編集] ネパール
[編集] アメリカ
[編集] カナダ
[編集] アメリカ合衆国
アメリカ国内には観光地を中心にトロリーバス又はトロリーと称するバスが多く運行されているが、これらはレトロな雰囲気の車体を使用した通常のバスである。
[編集] メキシコ
[編集] ブラジル
[編集] オセアニア
[編集] ニュージーランド
[編集] ヨーロッパ
[編集] オランダ
[編集] フランス
[編集] イタリア
[編集] ドイツ
[編集] ギリシャ
[編集] ノルウェー
[編集] オーストリア
[編集] スイス
スイス国内ではこの他の都市でもトロリーバスが運行されている。
[編集] ロシア
ロシア国内ではこの外の多くの都市でもトロリーバスが運行されている。
[編集] ベラルーシ
- ミンスクなど
[編集] ウクライナ
ウクライナ国内ではこの外の都市でもトロリーバスが運行されている。
[編集] エストニア
[編集] リトアニア
[編集] ラトビア
[編集] チェコ
[編集] スロヴァキア
- ブラチスラヴァなど
[編集] ハンガリー
- ブダペストなど
[編集] トロリーバスが登場する作品
- 「三丁目の夕日(夕焼けの詩)」(西岸良平)
- 「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(秋本治) - 114巻「トロバス物語」etc.
- いずれも、都営トロリーバスを舞台にしている。
[編集] 関連項目
- ガイドウェイバス(一部通常の自動車道路使用)
[編集] 外部リンク
- 関電トンネルトロリーバスを中心として日本と世界のトロリーバスについて載っている。