S-58 (航空機)
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S-58はアメリカ合衆国の航空機メーカー、シコルスキー社が開発したヘリコプター。S-55の機体を大型化し、エンジン出力も増大して実用性を高めた機体である。日本をはじめ世界各国へ輸出、現地生産が行われることで、全世界で2,261機が製造されるベストセラー機種となった。S-58は社内での呼称であるが、販売にもこの名称を使用していた。
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[編集] 概要
アメリカ海軍から対潜哨戒機開発の要求を受けて1952年から開発が始まった。試作機は1954年に初飛行、海軍によってHSS-1と名づけられ、1955年に配備が開始された。
星形空冷式レシプロエンジンを後ろ向きにして機首に搭載し、メインローターシャフトがキャビンを斜めに貫く独特の配置であった。エンジンとシャフトの位置を工夫した為、キャビンの空間をより広く確保することができ、十分な対潜機器を装備することができるほか、対潜機器を備えなければ輸送機として、多くの人員や荷物を積むことができた。HSS-1はソナーを装備した探知用の機体と、爆雷や魚雷を装備した攻撃用の機体がペアを組み、駆逐艦とセットで対潜水艦戦闘を行った。
海軍に続いてアメリカ海兵隊（HUS-1）やアメリカ空軍（H-34）にも導入された。陸軍、沿岸警備隊でも、高い実用性を評価され、輸送機や救難機として採用された。1962年に米軍統一命名基準が定められたため、空軍が付与していたH-34が当機の制式名称となり、対潜哨戒機がSH-34、多用途機がUH-34、輸送機がCH-34となった。後継のS-61（HSS-2）が配備されると、米軍では1980年代はじめに引退した。
イギリスのウェストランド社がWESSEX（ウェセックス）と名づけてライセンス生産していたが、電子装備やエンジンを英国製の物に変更するなどの応用も行っている。イギリス軍ではフォークランド戦争にも参加し、1990年代まで現役であった。
日本では、1957年（昭和32）に海上自衛隊が対潜哨戒機HSS-1として採用したことから、三菱重工業が1958年（昭和33）から5年間に20機をノックダウン生産した。海上自衛隊は8551 - 8558、8561 - 8569号機の17機を導入し、この中には自動操縦装置を追加した改良型もあった。このうちの1機は海上保安庁に移管され、南極観測船「宗谷」に搭載されて、昭和基地との間をピストン輸送することで越冬観測を支え、極地探検でのヘリの実用性を証明した。なお、アメリカが名称変更した後も、日本ではHSS-1の名称を使い続けた。後にHSS-2が導入されると、1972年（昭和47）に退役した。
米軍の中古機や民間型を導入した中南米や東南アジア諸国では、延命措置を施した上で、21世紀に入っても現役で使用されている。
[編集] スペック
- HSS-1
- 全長：14.25m
- 全高：4.85m
- ローター直径：17.07m
- 総重量：5900kg
- 最大速度：198km/h
- 巡航速度：157km/h
- エンジン：R-1820
- エンジン出力：700HP ×1
- エンジン重量：1055ポンド
- 初飛行：1954年3月8日（XHSS－1）
- ウェセックスHC.Mk2
- 全長：14.74m
- 全幅：3.66m
- 全高：4.93m
- ローター直径：17.07m
- 機体自重：3,770kg
- 全備重量：6,100kg
- 最高速度：212km/h
- 巡航速度：195km/h
- 海面上上昇率：503m/分
- 実用上昇限度：3,050m
- 地面効果無しのホバリング限界：1,200m
- 航続距離：540km（内部燃料のみ）、770km（増槽使用）
- エンジン：ロールスロイス・ブリストル グノームMk110/111ターボシャフト×各1
- エンジン出力：1,550hp（機体内燃料搭載量1,100kg）
- 武装：誘導魚雷×2、SS-11ミサイル×4、ロケット弾ポッド×2、ガンポッドなど
- 乗員：2＋兵員16
[編集] 派生型
- XHSS-1：アメリカ海軍の要求により開発した原型機。
- HSS-1：アメリカ海軍の対潜哨戒機。日本の海上自衛隊も採用。
- HSS-1N：アメリカ海軍向け全天候型機
- HUS-1：アメリカ海兵隊向けの機体。
- S-58：社内の名称で、民間向けもこの呼称（外国のライセンス生産あり）。
- S-58T：エンジンをP&WカナダPT6Tに転換した機体。
- H-34A：エンジンをライトR1820に転換したアメリカ陸軍向けの機体。
- CH-34A：旧称 H-34A。
- UH-34D：旧称 HSU-1。
- SH-34G：旧称 HSS-1。
- SH-34J：旧称 HSS-1N。
- HH-34D：アメリカ空軍予備隊の捜索救難任務用の機体。
- ウェストランド製造
- WESSEX：ウェストランド社が輸入したHSS-1原型とウェストランド製原型機。
- WESSEX HAS.Mk1：エンジンをガゼルMk161に転換したイギリス空軍向けの機体。
- WESSEX HC.Mk2：エンジンをグノームMk110/111に転換したイギリス空軍向け機体。
- WESSEX HAS.Mk3：HAS.Mk1のエンジン出力強化とレーダーを搭載した近代化改修型。
- WESSEX HU.Mk5：HC.Mk2を改良したイギリス海軍の強襲・輸送型。
- WESSEX シリーズ60：ウェストランドの民間向け機体。
