S-61
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S-61 は、アメリカ合衆国の航空機メーカー、シコルスキー社が開発した双発タービンエンジンの大型ヘリコプター。S-61 はシコルスキー社内での呼び名で、各国軍では別の名称を使用している。
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[編集] 概要
アメリカ海軍が使用していた対潜ヘリコプター HSS-1（S-58/SH-34）の後継機として計画された。1959年3月11日に初飛行。吊り下げ式のディッピングソーナーやソノブイ投下システムなどを装備している。キャビンは対潜機器が装備できるように大型であり、対潜機器を外すと輸送ヘリとしても十分使用できる。イギリスのウェストランド、日本の三菱重工業、イタリアのアグスタ社がライセンス生産し、各国軍に採用された。多用途向きで使い勝手が良いため、世界中に輸出され、運用されている。
[編集] アメリカ
1961年にアメリカ海軍で運用が始められた。海軍向け機体では、索敵・捕捉・攻撃の全能力を持つ対潜哨戒機となっており、アメリカ海軍ではHSS-2 シーキング（Sea King）と呼称したが、後に軍の機体名称変更によってH-3となり、海軍の哨戒機は SH-3 シーキングとされた。海軍の大統領専用機「マリーン・ワン」（海兵隊1号）としても使用されている。
哨戒機などは同じくシコルスキー社のSH-60 シーホークに切り替えられ、活躍の舞台は狭められている。
[編集] 派生型
- SH-3A：旧HSS-2。最初の生産型。
- SH-3D：A型のエンジン出力を増強したタイプ。
- SH-3H：D型に新型の対潜探知装備とレーダーを搭載したタイプ。
- RH-3A：掃海ヘリコプター
- HH-3A：海軍の救難捜索機
- HH-3E：空軍の救難捜索機
- VH-3A：海兵隊が運用する政府専用輸送機（大統領の短距離移動機「マリーン・ワン」に使用される）。
[編集] スペック
- SH-3H
- 全長：16.69m
- 全高：5.13m
- ローター直径：18.9m
- ローター込み全長：22.15m
- 自重：6,201kg
- 全備重量：9,525kg
- 最大速度：267km/h
- 巡航速度：219km/h
- 海面上上昇率：616m/分
- 絶対上昇限度：4,480m
- ホバリング限界：3,200m
- 連続航続距離：970km
- エンジン：ジェネラルエレクトリック T58-GE-10ターボシャフト ×2
- エンジン出力：1,400hp。
- 機体内燃料容量：3,180リットル
- 武装：対潜魚雷または爆雷×4/対艦ミサイル×2
- 乗員：4名
[編集] イギリス
イギリスのウェストランド社でライセンス生産された機体はイギリス海軍の対潜任務のほか、救難機や兵員輸送機、さらに対地攻撃機や早期警戒機型も生産され、ヨーロッパや中東、インドなどへ輸出された。
[編集] 派生型
ウェストランドがライセンス生産した機体。独自の改良型が多数ある。
- HAS.Mk.1：イギリス海軍用の対潜哨戒用機（米軍SH-3D相当）。
- HAS.Mk.2：HAS.Mk1 の出力増強型。
- HAS.Mk.2A：Mk.1をMK.2 並に改装した機体。
- ASW.Mk.2：HAS.Mk1 の海上哨戒機。
- HAS.Mk.3：HAS.Mk2 の捜索救難機。
- HC.Mk.4：COMMAND Mk.2 のイギリス海軍用戦術輸送型機。
- HAS.Mk.5：HAS.Mk2 の電子装備を新型に換装した機体。
- HAS.Mk.6：HAS.Mk5 の出力増強型。
- Mk.41：HAS.Mk.1 からソナー装備を撤去したドイツ海軍向けの捜索救難型機。
- Mk.42：対艦ミサイル搭載可能なインド海軍向け機体（HAS.Mk.1 に相当）。
- Mk.43：ノルウェー軍向けの捜索救難型機（Mk.41 に相当）。
- Mk.45：HAS.Mk.1 にエグゾセ搭載能力を付加した、パキスタン軍向けの機体。
- Mk.47：エジプト海軍向けの海上哨戒機型（HAS.Mk.2 相当）。
- Mk.48：ベルギー軍向けの捜索救難型機（Mk.41 に相当）。
- Mk.50：オーストラリア海軍向けの海上哨戒機型（HAS.Mk.1 に相当）。
- COMMAND Mk.1：エジプト空軍向けの捜索救難型機。Mk.41 と同等
- COMMAND Mk.2：COMMAND Mk.1 の出力を増強した戦術輸送機型。エジプト、カタール軍が採用。
- COMMAND Mk.3：カタール軍向けの武装多用途型機。
[編集] 日本
日本でも、1963年（昭和38）に海上自衛隊の対潜哨戒機（護衛艦搭載）HSS-2として導入された。三菱重工業がライセンス生産した機体が1964年（昭和39）に初飛行、同年に納入された。防衛庁ではHSS-2の寿命を決めるために、機体構造の疲労試験を行ったが、この作業は新機種の開発期間を決めることにつながるため、それ以降の日本ヘリコプター産業および研究開発の作業量を決定するのに役立った。また、海上自衛隊では輸送機としてS-61A も3機採用し、同じく三菱重工業でライセンス生産された。海自ではHSS-2/S-61Aを「ちどり」と命名している。HSS-2は1987年（昭和62）に退役したが、日本で独自に開発された機体が後継機として採用されている。
1991年（平成3）から同じくシコルスキーのSH-60J シーホーク（S-70/H-60）の導入が始まり、後に艦載機はSH-60Jに完全に置き換えられたため、HSS-2は沿岸哨戒に移されたが、2003年（平成15）に全機が退役した。
[編集] 派生型
日本のS-61は1991年（平成3）まで26年間にわたり185機が生産されたが、そのうち167機がHSS-2で、26年間に日本独自の改造を2度行った。
- HSS-2A：HSS-2のエンジンのパワーアップと電子機器を改良装備したもの。衝突防止用レーダ（ロータ・ヘッド・レーダー）を開発して新たに搭載した。1974年（昭和49）に納入、1987年（昭和62）退役。
- HSS-2B：HSS-2を全般にわたって近代化の改造開発を行ったもの。改造の具体例としては、デジタルASE（Automatic Stabilization Equipment）、TDDS（Tactical Data Display System）の開発、計器板のソフトマウント化、アイス・ディフレクタの開発などが挙げられる。1979年（昭和54）納入、2003年（平成15）退役。
- S-61A-1：輸送機S-61Aの代替として導入された。1976年（昭和51）から三菱で新造された2機が納入され、後に2機のHSS-2Bが哨戒機器を撤去され、S-61A-1となった。これらは南極観測船「しらせ」の艦載機で、1機は早くに退役し、3機体制となった。この3機は海自に最後まで残ったS-61であったが、2007年（平成19）からCH-101に転換される。
[編集] スペック
- HSS-2
- 全長：22.29m（ローター回転時）
- 全幅：18.9m（ローター回転時）
- 全高：5.21m
- エンジン：1,500shp ×2
- 最大速度：112 ノット
- 全備重量：9,300kg
- S-61A
- 乗員： 3名
- 巡航速度：115ノット
- エンジン： T-58-IHI-10M1（1,400馬力×2基）
- 全幅：59フィート4インチ
- 全長：68フィート6インチ
- 全高：16フィート8インチ
- 全備重量：7,679kg
