高校受験
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高校受験(こうこうじゅけん)とは、高等学校の入学試験を受験することである。特にこの試験を高校入試(こうこうにゅうし)と略する。本記事では、高等学校の入学試験以外にも、後期中等教育の学校、すなわち高等学校・高等専門学校・中等教育学校後期課程・盲学校高等部・聾学校高等部・養護学校高等部・専修学校高等課程などの、入学試験と入学についても扱う。
なお公立高校では、入学試験は入学者選抜のための検査であり、「受験」ではなく「受検」と表記する。
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[編集] 入学資格
日本において、高等学校をはじめとする後期中等教育の課程に入学するには、通例、前期中等教育の課程、すなわち、中学校の課程、中等教育学校前期課程、盲学校中学部の課程、聾学校中学部の課程、養護学校中学部の課程のいずれかを修了しなければならない。日本では、学齢(満6歳以上)に達しないと初等教育を行う学校に就学できず、初等教育の修業年限は6年間であり、前期中等教育の修業年限は3年間であるため、後期中等教育の課程への入学年度の4月1日時点(以下「年初」と表記)で、以上の者は満15歳以上となる。ただし、前期中等教育の課程を修了していない者でも、年初に15歳以上であれば、中学校卒業程度認定試験(中検)に合格することで一般の中学校卒業者と同等とされ、同様に前期中等教育の課程に入学できる。なお、一部の後期中等教育の学校では、中検にかえて独自の試験をして出願資格を判断することもある。
日本において、後期中等教育を行う各学校に出願できるのは、以上の入学資格を満たしている者、または入学年度の4月1日の時点で満たす見込みがある者(現役生)である。また、法制度上は、高校をはじめとする後期中等教育の学校に入学できる年齢に上限は設定されておらず、また過年度卒業生の進学が禁止されているわけでもない。しかしながら、各学校等においては、年齢に上限を設ける場合や、過年度卒業生に対して入学資格を設定していない場合もある。
その影響と社会的な風潮のため、現状では、高校等の入学志願者の多くが中学校等を卒業する見込みの者(現役生)であり、浪人などの過年度生は、あまり存在しない。たとえば、一部の国立・私立の高校では、募集要項で「その年度に中学校を卒業する見込みの者(既卒ではない中学生)」のみを対象にしている。この影響もあって、多くの入学志願者が現役生であり、過年度生は少ない。また、募集の対象が「中学校を卒業する見込みの者」(現役生限定)であれば、16歳以上の卒業見込みの中学生も現役生として入学できるかに見えるが、実際には国立・私立の高校では年齢の上限が別に設けられている場合も多く、入学が許可されるとは限らない。ただし帰国子女の場合は、日本国外の学校制度に各国間で違いがあることから、日本国内からの受験生と違って、ある程度年齢に幅を持たせて募集している場合も見られる。ただし、以上の例は高校の大多数を占める全日制高校の場合に多く当てはまるものであり、定時制高校・通信制高校では、過年度生も多い。なお、専修学校高等課程の場合は過年度生もある程度存在する。(詳しくは「過年度生」を参照。)
なお、私立高校では、完全中高一貫校となって、高校からの外部入学者の募集をせず、併設中学校からの内部進学のみとする学校もかなり多く存在する。中高一貫教育を実施している中学校や、中等教育学校の場合は、併設の高校もしくは後期課程にほぼ無試験で進学できる場合が多いので、他により魅力のある学校がない場合はそのまま内部進学することが多い(外部受験をすると、落ちた場合でも内部進学資格が消滅する場合もある)。この高校受験をしなくてすむという点が中高一貫校のメリットでもある。
公立高校では、学習者本人(実質的には保護者)の住所によって通える高校が厳密に指定されている。これを学区制という。近年、徐々に学区の範囲は広がっており、高校の選択肢は増えている。また普通科以外の場合は学区制限がゆるい場合もある。一例として東京都、神奈川県等一部の公立高校は学区が完全に撤廃されている。通信制高校の学区はかなり広い。
国立高校では、学区をかなり制限している場合(筑駒、名大附属など)も、ほとんど制限がない場合(学附、広大附属など)もある。私立高校ではあまり厳密な学区制限はない場合が多い。
[編集] 統計
2003年の統計では、中学校卒業者の97,3%が高等学校・中等教育学校後期課程・高等専門学校・盲学校高等部・聾学校高等部・養護学校高等部に進学している。このうち通信制への進学者を除いた、中学校卒業者に対する割合は96,1%である。都道府県別での最高は石川県で98,6%、次点は富山県で98,5%、最低は沖縄県で94,9%である。
特に中高一貫校や通信制高校など、入学試験のない高校もあるため、上記数値の全員が高校受験をしたわけではない。
[編集] 受験全般
[編集] 現状
日本では、後期中等教育への進学率が高く、多くの中学生が高等学校や高等専門学校を目指している。しかし、定時制高校、専修学校高等課程など、あまり知名度がない校種・課程の人気が低いのも現状である。
また、大学入試と違い、一部の県を除き、基本的には浪人するという通念はあまりない。
[編集] 入試制度
高等学校では、#入学資格がある志願者を対象に、学力検査や、内申書(調査書)などの成績を資料とする、入学者の選抜を行い、これに合格したものが入学を許可される。しかし、中高一貫教育などにおける併設・連携中学校からの入学(内部進学)については、学力検査や内申書による選抜が課されないこともある。また通信制高校などの場合、そもそも入学者の選抜自体が行われないこともある。ほとんどの公立高校では受験時に内申書の提出を求める。
入試は大きく分けて一般入試と推薦入試の二つがあり、一般入試では学力と内申書を、推薦入試では内申書や学校外活動実績などを用いて合否が判断される。一般的には推薦入試は一般入試よりも先に行なわれる。推薦を前期日程、一般を後期日程と呼ぶ県もある。
また私立高校などでは単願(専願)と併願に分け、第一志望者に対して合格ラインを下げるなどの優遇をする場合もある。私立高校の一般入試では内申書や内申点をほとんど参考にしない場合も多い。私立では本試験よりも前に生徒と相談を行い、本試験の成績にあまり左右されないでほとんど合格が決定している場合(入試事前相談)もあり、その不透明さが批判されている。
一例として東京では、国立高校の入学試験日は公立高校と重複していないため、公立と国立の両方を受験することは可能である。しかし、学校説明会の日を公立高校の入試日と重複させて、その日に受験生自身が出向かないと自動的に不合格になるようにしている国立高校もある。このため、公立とその国立の両方に受かることは不可能である。
[編集] 公立高校の入試制度
複数の高校を組み合わせて入試の合否の判定を行う総合選抜・学校群制度・複合選抜などを実施する自治体と、学校単位で選抜を行う単独選抜を行う自治体がある(あった)。
[編集] 入試時期
一般的に私立・国立は1~2月、公立(都道府県市町村立)は2月の初めに推薦入試、終わりに一般入試がある。
[編集] 合格発表
一般的に私立高校は試験日の翌日、公立高校の一般入試の合格発表は3月初めごろである。公立高校は受験校に合格者の受験番号を掲示する形で行われ、私立高校は封書を直接郵送する形が多い。
[編集] 公立高校入試と他入試との比較
公立高校入試は中学入試や大学入試と違い、学力検査の結果のみによって合否が決定されるわけではなく、中学校の内申書(調査書)が持つ力が大きい。これは、他の入試には見られない特徴である。
[編集] 不合格者の受け皿
高等学校は義務教育ではないため、必ずしもすべての学生が希望の高校に進学できるわけではなく、学力が伴わない場合には、進路変更(就職、専門学校進学など)、あるいは「中学浪人」となる場合もある。しかし、「15の春を泣かせない」とのスローガンのもと、希望者の高校進学率を100%にしようとする動きが1960年代に全国的に高まった。その目標がほぼ達成された結果、現在では中学浪人は稀で、学力的にかなり不十分である生徒であっても、偏差値的に下位の公立高校、私立高校(いわゆる底辺校・教育困難校)や、定時制高校、通信制高校などへは入学が可能であり(通信制高校は一般に全入)、これらの学校が、不合格となった生徒の実質的な受け皿として機能していると言える(ただし、公立高校や私立高校などでは、最近は定員未満でも「足切り」して不合格にするケースが目立っている)。しかし、これらの「受け皿」校では、進学後の学習意欲に欠ける生徒が多いため、進学後短期間で高校を中退する率も高い。また、通信制高校に入学した場合は、通信制サポート校にも併せて入学する場合が多い(「サポート校」は自校を卒業すれば高卒資格が得られると謳っているが、実態として高卒学歴を与えることができるのは通信制高校の方であり、サポート校自体は学籍に何ら寄与しない)。ただ現実問題として通信制の高校は中退率が高いことから、サポート校に通ってモチベーションを高めるというのもそれなりに意味があると思われる。
また地域性として、秋田県・福島県・長野県・富山県・熊本県などの一部では、出身高校が学歴として地元で高い意味を持つため、中学浪人してでも名門高校に進学しようとする生徒が存在する。そうした生徒のための全日制の高校受験予備校も存在し、また、出身中学校でも一定の支援体制を整えている場合が多い。
また、高等学校卒業程度認定試験(高認)を受検して、高等学校に進学することなく、高等学校卒業程度の学力が必要な資格(大学進学、国家試験受験)を得る人もいる。(ただし、高認合格者で、高等学校在籍経験がない場合は、集団生活適応力の欠如の疑い等により、一般企業の高卒対象者の就職試験の資格がなかったり、高卒対象者の就職選考に洩れる第一要因になるケースが生じている。)なお、司法試験1次試験は、大学2年修了程度の学力を検定するが、これにより、高校卒業や大学入学資格が認定されるわけではない。
[編集] 地域性
[編集] 校種
私立高校は、私立中学ほど、東京に集中していないが、やはり私立高校がほとんどない地方もある。
[編集] 内申書
都道府県によって内申書の取り扱いはまちまちであり、内申点を重視する都道府県もあれば、学力検査の点数の比重が高い都道府県もある。同じ都道府県内でも、学校によって学力と内申の比率を独自に設定している場合もある。中学3年次の成績のみ判断される場合、1、2年次も判断される場合がある。
なお、難関とされるような私立の進学校などでは、調査書の提出が義務付けられていても、ほとんど学力検査の成績のみで合否が決定され、内申の合否への影響は極めて少ないとされる。最たる例では、鹿児島県ラ・サール高校では出願の際の調査書(内申書)の提出は不要であったり、公立校でも東京都立日比谷高等学校の一般入試では、内申書を無視し学力検査の点数のみで合否を決する特別枠を一部に設けているなどがある。
また、愛知県東三河地方の県立普通科高校では、主要5教科以外でも内申書に1の評点が付いた場合、病気等の特別な事情がない限り、「大勢の生徒と同等の授業をさせるのが困難な生徒」として、学力検査の結果によらず不合格にしたケースがあった。
[編集] 試験対策
[編集] 学習塾
[編集] 自習
高校受験では参考書も活用されている。 東京出版は「高校への数学」という参考書を出版している。
[編集] 模擬試験
高校受験では、かつてと違って中学校の進路指導力が低下したため、模擬試験を受けて自分の学力を確認しないと合格判定ができなくなっている。
[編集] 過去問題集
一般的に「過去問」と呼ばれる。公立にしろ私立にしろ、出題にある一定の傾向がみられる。
例えば東京都公立高校の数学の場合、計算問題数問/確率/方程式/平面図形/空間図形といった具合である。
この傾向を知ることにより学習の効率がアップするため、受験生にとって必携の品。
高校受験の過去問は主に声の教育社や東京学参、英俊社から出版されている。
[編集] 試験内容
入試の科目数は1科目の高校も5科目の高校もあるが、公立は多くが5科目、私立は3科目が多めである。 また、学校によっては5科目・3科目の面接試験を課すところもある。
[編集] 関連項目
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