領空侵犯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
領空侵犯(りょうくうしんぱん)とは、国家がその領空に対して有す権利を侵犯する行為の事であり、具体的には他の国家所属の航空機・飛行物体が当該国の許可を得ず、領空に侵入・通過することを指す。ただし、領空の範囲は大気圏に限られる為、宇宙空間(衛星軌道など)を移動している人工衛星は、領空侵犯に当たらない(軍用のミサイルはこの限りではないが、高度200~300Kmを高速飛行する物体を止める術は無い)。
領空侵犯に対して、当該国は対処措置を取ることができる。対処措置には、強制着陸や撃墜などがある。
目次 |
[編集] 日本における領空侵犯に対する対応
日本においては、領空侵犯に対し航空自衛隊が対応している。周囲を海に囲まれた日本は、特に空と海からの侵犯行為に対処するための防衛体制を敷いている。高速で飛来する軍用機に対して、領空を実際に侵犯してから対応するのでは遅すぎるため、独自に防空識別圏を設置し、警戒線を突破した時点でスクランブル発進している。
領空侵犯機に対する対応手順は以下の順となっている。
- レーダーなどによる領空侵犯事実またはその恐れの確認
- 戦闘機のスクランブル発進による領空侵犯機の要撃
- 当該機へ領空侵犯の警告(自衛隊である旨名乗ってから「日本の領空である、速やかに退去せよ」と国際緊急周波数121.5MHz及び243MHzにて英語で呼びかける)
- 3.が無視された場合、警告射撃
[編集] スクランブル発進
冷戦下では一年間に944回スクランブル発進した年もあり、大半がソ連軍機であった。冷戦終結後は、200回前後まで減少したが、そのほとんどがロシア連邦軍機又は中国軍機によるものと考えられる。その他、韓国軍機・台湾軍機・米軍機などがあるが、現在では中国軍機による領空侵犯が大きく増加しつつある。なお、スクランブルは領空侵犯した時点ではなく、領空侵犯する恐れがある場合に行うため、スクランブルを行った回数=領空侵犯の回数とはならない。例として、韓国空軍による日本の防空識別圏の直前まで南下し、航空自衛隊によるスクランブル発進の直前で反転する飛行訓練がある。このような行為は領空侵犯の可能性が在り得る行為であるが、領空侵犯ではない。現在の日本周辺において、軍用機が意図的に侵犯することは少なく、多くが訓練中に目標を見誤ったものと考えられるが、韓国軍が「実際に日本へ侵入する訓練をしている」との見方もある。 また、冷戦期には自衛隊・在日米軍の迎撃能力や周波数等の情報収集のために、ソ連機が頻繁に領空侵犯を繰り返していたほか、現在でも中国軍機とみられる航空機が日本近海で情報収集を行っていた例がある。
[編集] ソ連軍領空侵犯事件
自衛隊が創設以来初めて他国の兵器に対し実弾射撃を行った事件である。
- 未確認機の接近
1987年(昭和62)12月9日昼頃、沖縄本島の南西から3機の未確認航空機が、防空識別圏を越えて日本領空に接近した。航空自衛隊那覇基地・第302飛行隊のF-4EJ 2機が通常のスクランブル手順に従って発進、航空機に接近した。航空機は3機のソ連軍偵察機ツポレフ Tu-16「バジャー」であった。
- 警告射撃
3機のうち2機は沖縄本島と宮古島の間を抜けて北上したが、一機はそのまま沖縄本島方面へ進行し、領空を侵犯、嘉手納飛行場の上空を通って沖縄本島を横断した。これに対し、レーダーサイトからの無線警告、及びF-4EJ の翼を振る合図(「我に続け」の意味)を行ったが反応はなかった。この為、南西航空混成団司令部は自衛隊初の警告射撃を命令、F-4EJ は Tu-16 の前方に出て、機関砲を2度射撃した。また、南西航空混成団では強制着陸の事態に備え、那覇基地の隊員に小銃と実弾を装填した弾倉を携帯させた。威嚇射撃後、Tu-16 は沖縄の領空を離れたものの沖永良部島と徳之島の間の領空を侵犯、そのまま通過し北へ飛び去った。
- 政府の対応
外務省はソ連政府に抗議、ソ連側も事実を認め、遺憾の意を表明、侵犯機のパイロットを一階級下げる処罰を行ったと通報してきた。一方、射撃した自衛隊員と射撃を命令した幹部に対しては、正当な判断だったのかが厳しく問われた。
[編集] 主な領空侵犯事件
- ベレンコ中尉亡命事件(ソ連軍機の日本侵入)
- U-2撃墜事件(米軍機のソ連侵入)
- 大韓航空機撃墜事件(韓国旅客機のソ連領空侵犯)
[編集] 関連項目
この「領空侵犯」は、軍事に関連した書きかけ項目です。この項目を加筆・訂正などして下さる協力者を求めています。(関連: ウィキポータル 軍事 - ウィキプロジェクト 軍事) |