藤原基経

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藤原基経（ふじわらのもとつね　承和3年（836年）－寛平3年1月13日（891年 2月25日））は、平安時代前期の公卿。日本史上初の関白（「皇族以外で初めて関白になった」と書かれている歴史書もあるが、皇族以外もなにも基経以前に関白は存在しない）に就任。堀川大臣と号する。藤原北家の藤原長良（ふじわらのながら）の三男として生まれる。時の摂政で権力者であった叔父の藤原良房に嫡子がいなかったことから、その養嗣子となる。光孝天皇（時康親王）の母は藤原総継の娘・藤原沢子で、基経の母・藤原乙春とは姉妹関係であり、基経は光孝天皇のいとこにあたる。

貞観6年（864年）参議に任ぜられて公卿に列する。貞観8年（866年）の近衛中将の頃には、応天門の変で大納言伴善男（とものよしお）を追い落として良房に代わり活躍。大伴一族の政界からの追放に成功する。貞観14年（872年）右大臣に就任。同年良房の没後、朝廷において実権を握った。貞観18年（876年）清和天皇は基経の妹・藤原高子との間にうまれた第一皇子陽成天皇（貞明親王）に譲位。基経は摂政に任じられた。しかし、陽成天皇は自身の乳母紀全子の子・源益を殴り殺すなど乱暴な性格であったため元慶8年（884年）暴虐の振る舞いが過ぎるとして退位を迫り、母方のいとこ時康親王を擁立し光孝天皇として即位させた。光孝天皇は基経に報いるために大政を委任し関白職の設置に道を開いた。次いで仁和3年（887年）天皇の臨終に際し、基経は天皇の意向をくんで臣籍降下していた源定省を親王に復し、宇多天皇を即位させる。宇多天皇よりあらためて内覧権を認めさせるため、天皇は近臣の橘広相（ひろみ）の起草した詔勅をだすが、基経はこれに異議を申し立て撤回させる。広相はこの失態により罷免。後、再度天皇より詔を発布させた（阿衡事件）。これにより藤原氏の権力は天皇よりも強いことをあらためて世に認めさせることになり後の藤原氏による摂関政治へと繋がる。また、元慶3年（879年）、菅原是善らと編纂した日本文徳天皇実録全10巻を完成させた。

ちなみに、近代以前には暴君・陽成を廃した「功臣」として前漢の霍光に擬える説が儒学者を中心に唱えられた。

[編集] 系譜

父：藤原長良
母：藤原乙春（父：藤原総継）
義父：藤原良房

妻：操子女王（父：人康親王）
- 長男：藤原時平（871年-909年）
- 次男：藤原兼平（875年-935年）
- 三男：藤原仲平（875年-945年）
- 四男：藤原忠平（880年-949年）
- 五男：藤原良平
- 女子：藤原頼子（清和天皇女御）（?-936年）
- 女子：藤原妹子（清和天皇女御）（856年-?）
- 女子：藤原温子（宇多天皇女御）（872年-907年）
- 女子：藤原穏子（醍醐天皇中宮）（885年-954年）

[編集] 官歴

※日付＝旧暦

852年（仁寿2）1月、蔵人に補任（この頃に良房の養子になったとみられる）
854年（仁寿4）1月、左兵衛少尉に遷任。　　10月11日、従五位下に叙し、侍従に任官。（侍従は11月2日任官の説あり）
855年（斉衡2）1月15日、左兵衛佐を兼任。　　4月20日、蔵人に補任。
857年（天安元）3月、少納言を兼任。
858年（天安2）1月15日、左兵衛佐を兼任。・蔵人・少納言・侍従如元。　　9月14日、左近衛少将に転任。少納言如元。　　10月、蔵人頭に補任。　　11月25日、播磨介を兼任。
860年（貞観2）11月16日、正五位下に昇叙し、蔵人頭・左近衛少将如元。
861年（貞観3）1月8日、従四位下に昇叙し、蔵人頭・左近衛少将如元。
863年（貞観5）2月10日、左近衛中将に転任し、蔵人頭如元。
864年（貞観6）1月16日、参議に補任し、左近衛中将如元。
865年（貞観7）1月27日、阿波権守を兼任。　　3月28日、伊予守を兼任し、阿波権守を去る。
866年（貞観8）1月7日、従四位上に昇叙し、参議・左近衛中将・伊予守如元。　　3月23日、正四位下に昇叙し、参議・左近衛中将・伊予守如元。　　12月8日、中納言に転任し、従三位に昇叙。
867年（貞観9）1月14日、左近衛中将を兼任。
868年（貞観10）5月26日、左近衛中将を去り、左近衛大将を兼任。
869年（貞観11）1月13日、陸奥出羽按察使を兼任。
870年（貞観12）1月13日、大納言に転任。　　1月28日、左近衛大将如元。　2月、陸奥出羽按察使如元。
872年（貞観14）8月25日、正三位に叙し、右大臣に転任。　　8月29日、左近衛大将如元。　　11月29日、摂政宣下。右大臣・左近衛大将如元。
873年（貞観15）1月7日、従二位に昇叙し、摂政・右大臣・左近衛大将如元。
877年（貞観19）2月、左近衛大将を辞任。
880年（元慶4）11月8日、関白に補任。右大臣如元。　　12月4日、太政大臣宣下。関白如元。
881年（元慶5）1月15日、従一位に昇叙し、関白・太政大臣如元。
887年（仁和3）11月21日、関白宣下（正式な詔が降る）。　　11月26日、関白辞すも、阿衡に補任の旨。
888年（仁和4）6月2日、阿衡を止め、関白に復す。
890年（寛平2）2月19日、准三宮宣下。　　12月14日、関白を辞す。
891年（寛平3）1月13日、薨去。享年56。贈正一位。謚号：昭宣公。越前国に封ず。