希望の轍
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『希望の轍』(きぼう-わだち)はサザンオールスターズ(正確には「稲村オーケストラ」)の楽曲。作詞・作曲は桑田佳祐、編曲は桑田佳祐&小林武史。
1990年に発売された映画『稲村ジェーン』のサウンドトラック『稲村ジェーン』に収録され、以降サザンのコンサートでの定番曲になった。“稲村オーケストラ”としてアーティスト名が表記されているようにサザンのオリジナルメンバーは桑田佳祐のみしか参加していない。この作品自体もサザンオールスターズ&オールスターズという名義で発売されている関係上、正確にはサザンのオリジナルアルバムではない。
フジテレビ系列の番組で、番組内で流れる応援歌のような形で流されていたが、めざましテレビのコーナー「ワールドキャラバン」の初代テーマソングとして使用されたことにより一般のお茶の間にも曲が浸透し、2000年8月の『茅ヶ崎ライブ~あなただけの茅ヶ崎~』では初めてオープニング曲として2000年-2001年の年越しライブ『ゴン太くんの集い』では年跨ぎ曲として演奏された。
ちなみにサザンのライブやコンサートで演奏される場合、アレンジはCDに収録されているものとほぼ同じであるがテンポはかなり速くなっている。なお、レコーディングこそ参加していないものの、ライブなどで披露する際には原由子がオープニングのキーボードを担当しており、コンサート時の彼女の見事なキーボードプレイを確認できる一曲ともなっている。また、茅ヶ崎ライブでは、それまでのサザンのライブにあったような、松田のドラムから入るライブオリジナルの前奏や、桑田の煽りなども一切なく、完全に原のピアノからのライブスタートとなる為、リハーサルの段階では原はプレッシャーのあまり桑田に、希望の轍を一曲目にするのはやめてほしいと泣いて頼んだらしいが、桑田の説得もあり、同ライブでは見事一曲目で演奏しきった。
また、めざまし以降よくテレビの挿入歌としても使われるようになり、21世紀最初の年の2001年に放送した『FNSオールスターズ 27時間笑いの夢列島』のテーマソングとしてもこの曲が使用された。
漫画家の臼井儀人がこの曲のファンであり、自身の漫画『クレヨンしんちゃん』内で楽曲の歌詞を載せている回が一度ある(クレヨンしんちゃん24巻)。後日この回がアニメ化されたときにはBGMとしてこの曲がかかっていた。読売ジャイアンツの小久保裕紀が打席に立つ時の入場曲としても使われている。
サザンの楽曲をメドレー化した「江ノ島 ~Southern All Stars Golden Hits Medley」(Z団名義)やサザンオールスターズ名義のベストアルバム数作に収録されているが、これは“サザンオールスターズ”として再録したものではなく、音源はすべてオリジナルにレコーディングしたものがそのまま使われている。
また、近年ではカバーされることも多く、2001年にはザ・ベンチャーズが、2003年には東京スカパラダイスオーケストラをはじめとするBig Shot All Starsが、2005年にはBEAT CRUSADERSがカヴァーアルバム『MUSICRUSADERS』内で唯一の日本語楽曲として取り上げている。
ちなみにめざましテレビ内の「ワールドキャラバン」では、現在でもサザンオールスターズという名義でクレジットされており、テロップでもそのように表記され放送されている。幾度かワールドキャラバンのコーナーはテーマソングが変わっているが、4回も使用されているのはこの曲だけであり、いかにワールドキャラバンのテーマ性が希望の轍に合っているかが伺える。また桑田自身も自身のラジオ番組内でサザンオールスターズ名義の曲だと公表した。公式サイトやレーベルでも特に深入りした説明はされておらず、当時の収録状況などを把握していないファン以外には、完全にサザンの楽曲と認識されていると言える。
FM802のOSAKAN HOT 100で2000年に『バラッド3 ~the album of LOVE~』の収録曲としてチャートインしたが、サザンオールスターズ(正確には番組ウェブサイト及びチャートシートでの表記は「SOUTHERN ALL STARS」)名義でランクインしていた。そのほかにもテレビ番組で「後世に伝えたい名曲」の特集や「カラオケランキング」の特別番組が放送されているときには数多いサザンの作品の中でもほぼ必ずといっていいほどランクインされており、一度もシングル化されていない楽曲としては異例なほど幅広い世代から支持を得ている。
「轍」の読み方をこの作品で知るものも多い。轍の本来の意味は、車が走ったことによって残ったタイヤの跡であり、冒頭の歌詞などから車との関係を見い出すことも出来る。参加ミュージシャンのクレジットを見ても分かるとおり、桑田以外のメンバーは参加していない。ただ、サザンの楽曲として認識されていることもあり2001年にベースの関口和之が関口和之&砂山オールスターズ名義で発売したカバーアルバム『World Hits!? of Southern All Stars』の中ではサザンの楽曲に混じってカバーされている。関口を含め、松田弘と原由子を除くメンバー3人はアルバム(サウンドトラック)自体にも参加していない。ちなみにこのサウンドトラックにはサザン名義での既発曲も収録されているため、形式上は参加していることになっている。
コアなファンにもあまり知られていないが、この楽曲では桑田のボーカルトラックの速度を僅かに上げて収録されている。そのため、歌い方やエフェクトに関係なく桑田の普段の声とは少し違った印象を受ける。現在では桑田1人での多重コーラスやボーカルの重ね録りも多く使われているため、それほど桑田の歌声との大きなギャップを感じることはないのも、知られていない理由だといえる。この楽曲の場合は少し味を出す1つの演出ともいえるが、桑田を中心に結成した期間限定バンドSUPER CHIMPANZEEの『クリといつまでも』では、1.5倍速近くスピードを上げているため、桑田の声とは思えないほどの出来上がりになっている。
桑田の声かけで開催されたTHE 夢人島 Fes.2006では、ライブの最後の曲として、出演ボーカリスト全員によるこの「希望の轍」が歌われた。メンバーは桑田のほか、BEGINの比嘉栄昇、GLAYのTERU、ポルノグラフィティの岡野昭仁、Mr.Childrenの桜井和寿、福山雅治という大変豪華で貴重なものである。
[編集] 参加ミュージシャン (オリジナルの記載に従順)
[編集] 収録アルバム
カテゴリ: 音楽関連のスタブ | ポピュラーソング | サザンオールスターズ | 1990年の楽曲