大甲子園
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ウィキポータル |
日本の漫画作品 |
日本の漫画家 |
漫画原作者 |
漫画雑誌 |
カテゴリ |
漫画作品 |
漫画 - 漫画家 |
プロジェクト |
漫画作品 - 漫画家 |
『大甲子園』(だいこうしえん)は、『週刊少年チャンピオン』に連載されていた水島新司の野球漫画。『ドカベン』の続編である。ドカベンこと山田太郎が3年生の夏の甲子園の物語である。(『ドカベン』は、春のセンバツまでの物語)
目次 |
[編集] 概要
本作品は「ドカベン」を軸として各誌に掲載されていた水島新司の高校野球漫画のキャラクターが一堂に会するという豪華な作品になっている。これは水島新司のファンが熱望していたものであり、内容も期待に添った素晴らしい作品となった。とくに明訓高校対青田高校の試合は過去の高校野球の名場面を彷彿させ、かつ漫画の主人公でしか成しえない野球を読者に提供した。まさに高校野球漫画の最高峰である。
また、のちに「球道くん」の中西球道や「一球さん」の真田一球・呉九郎が「ドカベン_(プロ野球編)」「ドカベン_(スーパースターズ編)」に登場するなどしたことから、この作品をもって水島の漫画が一堂に集まり大河を形成するような作品に仕上がった。
複数の代表作を持つ漫画家が、過去の自身の主人公を一堂に集めたオールスター的な作品を描こうとすることは数多い。しかし、手塚治虫のようにスターシステムを採用しているのでもない限り、各主人公を登場させること自体が目的となったり、ストーリーに矛盾をきたしてしまったりすることが多く、独立した作品としては不評に終わることが多い。また、そういった作品は、作者が晩年の集大成として取り組むことも多く、未完に終わってしまうケースも多々ある。
その中で『大甲子園』は最も成功した作品のひとつである。要因として、登場人物の多くが高校野球を背景にしており、細かい矛盾を考えなければ、この種の作品でもっとも難しい"世界観の統一"に煩わされずに執筆できたことがあげられる。また、各作品の主人公同士の戦いだけでなく、オリジナルの高校(例:紫義塾、室戸学習塾など)を登場させるなどの配慮が、作品全体に深みを与えている。
水島新司は当初からこの作品を実現させるために、どの高校野球漫画も3年春の全国大会までで終わらせていた。
現在でも、たとえば『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』をさして「CLAMP版大甲子園」と呼ぶことがあるように、本作はこの種の集大成的作品の代名詞ともなっている。
[編集] 時代設定
豊福きこうが『水原勇気0勝3敗11S』(情報センター出版局)で山田、岩鬼、殿馬、里中が明訓高校で活躍した時代を1974年~1976年としている。 ドカベンたちが明訓に入学した年の甲子園、夏の大会は「第56回全国高校野球選手権大会」だった。これは1974年。 高校3年時代を描いた続編『ドカベン』終盤と『大甲子園』は1976年が舞台になる。
しかし、『大甲子園』では「第何回大会」か、作品からはわからないようになっている。
また、この作品の夏の甲子園準決勝で青田高校の中西球道が(1)9者連続三振、(2)1試合26奪三振を記録。テレビ解説者は(1)が1926年の第12回大会以来57年ぶりとコメントしており、これによると中西の記録達成は1983年。また、(2)は1958年の第40大会(※)以来24年ぶりとしており、これによれば中西の記録達成は1982年。
したがって、『大甲子園』での明訓対青田の試合は1982年~1983年の期間になるはずであるが、その準決勝再試合で明訓高校の先発投手である岩鬼が実在のプロ野球投手の物真似で投球する際、「中日ドラゴンズの小松の昭和60年時」と叫んで投球している事や昭和60年当時に阪神タイガースに在籍していたゲイル投手、バース選手らの物真似をしている事から、少なくとも1985年(昭和60年)以降の開催である、と考える事もでき、設定の曖昧さが感じられる。
また、作中で80年代アイドルである松田聖子(1980年デビュー)と小泉今日子(1982年デビュー)の歌が登場する。室戸学習塾の守備陣が打者・殿馬のリズムを狂わせるために同時に民謡(「南国土佐をあとにして」と思われる)からアイドル歌謡曲までバラバラの歌を歌ったが、その中に1983年のヒット曲であった「瞳はダイアモンド」と「艶姿ナミダ娘」があった。殿馬は「瞳はダイアモンド」のリズムだけに集中して残りの歌を遮断し、打ったものの、打球は走者・岩鬼の身体に当たった。さらに対青田戦で殿馬は「秘打・夏の扉松田聖子」(「夏の扉」は1981年4月21日リリース)を披露している。こうなると、対室戸戦から対青田戦までは少なくとも1982年以降である。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] あらすじ
明訓高校野球部ナインや、『球道くん』の中西球道、『ダントツ』の荒木新太郎、『一球さん』の真田一球、『男どアホウ甲子園』の藤村甲子園の双子の弟らが甲子園で激突、山田たちの三年の夏はどうなるか。
[編集] 対戦結果
- 地区予選
- 準々決勝 対 東海高校 10-5
- 準決勝 対 横浜学院 8×-7
- 決勝 対 白新高校 1×-0 (延長10回サヨナラ)
- 「大甲子園」の冒頭で明訓対横浜学院戦が描かれている。準々決勝の対東海高校戦は、前作「ダントツ」の最終回で神奈川県予選の結果を知らせる新聞記事として描かれている。
- 全国大会
- 1回戦 対 室戸学習塾(高知) 4-2 (延長10回)
- 2回戦 対 りんご園農業(青森) 9-5
- 3回戦 対 巨人学園(東東京) 1×-0 (サヨナラ)
- 準々決勝 対 光(西東京) 4-1
- 準決勝 対 青田(千葉) 4-4 (延長18回引き分け)
- 再試合 対 青田(千葉) 2-1
- 決勝 対 紫義塾(京都) 4-3
[編集] 作品の枠を越えた共演
[編集] 作中実現した対戦
従来の原作の枠を越えて実現したいわゆる「夢の対戦」は以下の通り。
- 地区予選
- 青田高校(『球道くん』) 対 クリーン・ハイスクール(『ドカベン』) - 千葉県大会
- 南波高校(『男どアホウ甲子園』) 対 通天閣高校(『ドカベン』) - 大阪府大会
- 全国大会
- 光高校(『ダントツ』、西東京代表) 対 南波高校
- 青田高校 対 江川学院(『ドカベン』、栃木県代表)
- 明訓高校(『ドカベン』、神奈川県代表) 対 巨人学園(『一球さん』、東東京代表)
- 明訓高校 対 光高校
- 明訓高校 対 青田高校
- 明訓高校 対 青田高校 *引き分け再試合
[編集] 対戦以外で実現した場面
- 千葉大会決勝、青田 vs クリーンハイスクールでは, 中西球道の応援に『野球狂の詩』の水原勇気が応援に駆けつける。またこの時勇気と偶然居合わせたのは、球道の中学~高校野球時代にかけてのライバルたちだった。試合中、左腕を負傷した中西は、9回裏、影丸の背負い投法を打ち返してサヨナラホームランを放つも、その激しい衝撃で気絶。1塁に向かう途中でグラウンドに倒れかけた中西を影丸が支えた。ベンチから飛び出してきた大下監督に主審と影丸は「(中西を背負って)ダイヤモンドを1周されてはどうですか」と提案し、大下は涙ながらに中西を背負いながらサヨナラのホームインを果たす。
- 神奈川大会決勝、明訓 vs 白新では、同じく『野球狂の詩』の東京メッツの岩田鉄五郎と五利一平監督が観戦。この2人は甲子園の準決勝及び決勝も観戦した。回想シーンとしてだが、ルーキー時代の王貞治(すでに一本足打法であることから、プロ入り4-5年目ごろと思われるが)に現役のバッテリーとして対戦するくだりも描かれた。
- 『男どアホウ甲子園』の藤村甲子園が、甲子園球場のグランド整備員をしている。藤村は『一球さん』にも登場して、南波と巨人学園の試合を観戦しているが、この時はその身の上について詳しくは語られず、現在よく知られている、「プロ(阪神)入り3年目に当時最速の時速165キロを記録するが、その一球と同時に肩を故障、引退した」という設定は、『大甲子園』で初めて明かされた。また同、東海の竜こと神島竜矢が、何故か竜監督の名で南波高校の監督を務めている。
- 同じく『男どアホウ甲子園』の南波ナインのひとりで、『一球さん』では真田一球の養父だった左文字が甲子園に顔を出している。また、巨人学園の監督は「豆タン」こと岩風五郎だった筈だが、大甲子園には顔を出さない(これは、原作において、岩風が監督を辞任した後、一球が監督を引き受けたと云う設定を、そのまま引き継いだからと思われる)。
- 開会式では、通天閣高校の坂田三吉(『ドカベン』)が、前年度優勝校キャプテンとして優勝旗返還のために行進している。この点が、「明訓がはじめて負けた山田たちの2年夏の翌年の大会」として、本作は『ドカベン』の続編としてひろく認知されている大きな要素でもある。
- 『一球さん』の神宮高校、五味が、巨人学園三球士の1人である堀田を探して甲子園まで連れていき、堀田はギリギリで3回戦の明訓戦に間に合う。
- 『ドカベン』で山田たちの3年春のセンバツで対戦した岩手県代表花巻高校が登場。エース太平洋が山田に「春の借りは返す」との発言をしているため、時間軸的には本作はやはり『ドカベン』の直接の続編ということになる。花巻高校は準決勝まで進出したが、明訓高校最後の対戦校の座は紫義塾に譲ることになった。
[編集] 『大甲子園』オリジナルの高校
- 室戸学習塾
- 高知県代表。かつて明訓を率いた徳川家康が監督を努める。主将の犬飼知三郎(のち西武ライオンズ→四国アイアンドッグス)は、『ドカベン』において明訓の最大のライバルであった土佐丸高校の犬飼小次郎&武蔵兄弟の末弟。高知予選決勝でその土佐丸を破って代表となり、甲子園大会初日第1試合での対明訓を見事に引き当てた。明訓 vs 犬飼兄弟最後の戦いにして、明訓 vs 徳川元監督最後の戦いでもあるこの試合は、『ドカベン』『大甲子園』における屈指の名勝負を描いている。
- りんご園農業
- 青森県代表。実は『週刊少年マガジン』で連載されていた『極道くん』の主人公チームであった清正高校のキャラクターが、名前を変えて使用されている。縁起を担ぐために、前年、明訓高校を破った弁慶高校が泊まっていた浄妙寺を宿舎にしていた。2回戦で明訓と対戦し、主砲である星王光(のち東京スーパースターズに入団)のプレイボールホームランを含む2打席連続ホームランなどで一時5-0と大量リードする(明訓高校が大量リードを許すのは、『ドカベン』『大甲子園』を通じてとても珍しい)。ちなみに、この試合では、岩鬼がど真ん中のストライクを何の作戦もなしにクリーンに打ち返してホームランを放つという、稀有なシーンも描かれている。
- ちなみにりんご園農業は『ドカベン』で山田たちの二年次夏にも甲子園に出場したことになっているが、『大甲子園』では初出場であることになっている。
- 紫義塾
- 京都府代表。もともと剣道部で、全国大会10連覇中だった。剣道ではもはや敵はいないという理由で野球部に鞍替えしたチーム。甲子園では、準々決勝で、春の準優勝校である北海大三を破り、準決勝では明訓の大平監督の息子、洋が主将の花巻高校にサヨナラ勝ちし、決勝で明訓と対戦した。人数が9人ギリギリだったり(実はもうひとりいたが)、常に命を賭けていたりするところなどが完全に弁慶高校の雰囲気であることからも、最後の相手がこのようなキワモノチームであった理由が推し量れるというものである。なお、準決勝の抽選に現れた人物は、こうした設定とは無縁の、絵巻物に登場する公家のような顔をしていたこと、その人物がかぶっている野球帽のマークも決勝戦で登場した時のマークとは異なっている事等から、明訓と光の対戦前はまだ紫義塾高校についての詳細が煮詰まっていなかった可能性もある。
カテゴリ: 水島新司 | 週刊少年チャンピオン | 漫画作品 た | クロスオーバー作品 | 漫画関連のスタブ項目